学級委員長委員会委員長って言いにくいね   作:こっここーまん

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5話 攻め時の段

 ろ組の陣の一部で情けない悲鳴と笑い声が上がっていた。

 正確に言えば、タカ丸によって変な髪に結われた下級生の悲鳴とそれを見て笑う守一郎の声。

 

「……」

 

 その様子に苦笑いになりながらも、周囲に目を向けるものの、人が少なすぎる。

 しかし、守っている忍たまはいないが木像はある。明らかに罠だ。

 

「よし」

 

 逃す手はない。

 一気に駆け寄ろうとすれば、その瞬間飛んできた縄標。体を反らして避ければ、縄標は後ろの木を抉った。

 

「あれ? 見つかってた?」

「もそ……」

「あー、確かに松ちよ先生に比べられたら勝てないな……うん。おわっ!?」

 

 また投げられた縄標を避け、距離をとる。

 

「いやいや、長次。本気すぎない……?」

「もそ……青葉の口は、開かせないのが、一番」

 

 揃いも揃って、話を聞かない、喋らせないが一番の解決法とは。

 

「悲しくなってきたな……俺、なにかやったか……?」

 

 すぐさま頷かれては、青葉も悲しげに目を伏せるしかない。

 しかし、容赦なく飛んできた縄標。

 

「長次君ッ!?」

「哀車の術……」

「お、俺、そんなに信用ない!? 逆に吹っ切れるぞ!? コレ!!」

「……」

 

 青葉と長次が戦っている頃、ろ組の陣の近くでは、作兵衛たちが悲鳴を聞きつけて走っているところだった。

 方向音痴とはいえ、さすがに前を走る作兵衛の後ろを走るだけなら大きくは間違えないようで、作兵衛の労力もずいぶん減っていた。

 

「三人共。ストップ」

 

 声と共に降ってきた顔のよく似た二人に、三人とも足を止める。

 五年生の鉢屋三郎と不破雷蔵だ。

 

「今、は組とい組がろ組に攻めてきている」

「やっぱり!!」

「なら急いで戻らないと!」

「いーや! 私たちは戻らなくていい」

 

 三郎の言葉に、三人は首をかしげると、三郎はそのまま続けた。

 

「は組の陣地は見つけたか?」

「はい」

「じゃあ、僕たちは今から、は組へ奇襲をかける」

「作兵衛たちは、ここで青葉先輩が来たときは足止めをしていてくれ。見破られる危険がある」

 

 そう言うと、三郎は変装すると、ニヤリと笑った。

 

「私が先輩のフリをして、木像を奪う」

 

***

 

「みんな、交代で休憩も取るんだよー?」

 

 は組の陣地で伊作が声をかければ、一年生たちの元気な返事が返ってくる。

 

「それじゃあ、二人ずつ交代で休もう」

「誰からにしようか」

「そうだなぁ……」

 

 庄左ヱ門が考えていると、後ろの草むらから枝が折れる音。一斉に振り返ると棒を構え、息をのむ。

 

「だ、誰だ!」

 

 乱太郎が声を上げれば、その草むらは揺れを増し、少し汚れた深緑の忍装束が現れた。一人はボロボロでもう一人に肩を借りており、支えている一人は呆れたような苦笑いを浮かべていた。

 

「俺だよ。そんなに怒鳴らないの。乱太郎」

「す、すみません……衣笠先輩って、アレ?」

 

 青葉が抱えているのは、伊作だ。

 

「伊作先輩……?」

「い、いやぁ……少し様子を見に行ったら落とし穴に落ちて……みんな、僕がいない間、大丈夫だった? 誰も怪我してないかい?」

「え、え? え?」

 

 乱太郎だけではない。ここにいる全員が目を丸くして、奥に座っている伊作と、ボロボロの伊作を交互に見ていた。

 

「伊作先輩が、二人?」

「ま、まさか!!」

「鉢屋先輩の変装!!!」

 

 忍術学園一の変装名人の三郎の変装を、見ただけで見分けられる忍たまはあまりいない。ましてや、本気で変装している三郎を見破るのは、先生だって難しい。

 

「ど、どっちが本物の伊作先輩!?」

「庄ちゃん」

「ぼ、僕にもこれはさすがに……せ、先輩」

 

 この中では唯一、三郎の変装を見破るのに長けているのは、同じ学級委員長委員会の青葉だ。

 庄左ヱ門が助けを求めれば、困ったように眉を下げる。

 

「この状況で、俺がこっちの伊作を擁護したところで、信憑性に欠けると思うが……そうだなぁ、強いて言うなら、伊作がここまで不運に見舞われてないのは、少しおかしいってことくらいだな」

 

 不運大魔王と呼ばれるほどの伊作が、今の今までなにも不運に見舞われてないのは、確かにおかしかった。

 むしろ、落とし穴に落ちたという伊作の方が本物のように感じる。

 

「つまり……」

「「「こっちが偽物だァァ!!!」」」

 

 一年生の叫びと、伊作と巻き込まれた数馬の叫びが、は組の陣地にこだました。

 

 

 

「……で、奪われたと」

 

 本物の青葉が戻ってきた頃には、すでには組に置かれていた偽物の木像は無くなっていた。

 

「ごめんなさい……」

「三郎の奴がいないから、まさかとは思ったが……本当に性格読まれてるってのはやりにくいな」

 

 ため息をついた青葉に、一年生がもう一度謝ると、怒ってないと笑った。そして、本当にボロボロになった伊作がろ組の話を聞いた。

 

「あっちの木像は仙蔵がうまくやってくれた。しんべヱ、喜三太。仙蔵が通るであろう道で、木像を受け取ってきてくれ」

「「わかりましたぁ!」」

 

 青葉に場所を聞くと、喜三太としんべヱは楽しげに駆け足で走っていった。

 

「素直に渡してくれるかな?」

「ま、裏切られるだろうなぁ……」

 

 だからこそ、青葉が奪えるなら奪うつもりだったのだが、仙蔵も同じように考え、先に見つかった青葉が長次の気を引くしかなかったのだ。

 

「ま、仙蔵が奪ったところは長次にも見せたし、三郎が持って帰ったのが偽物だって長次ならすぐ気づくだろ」

「え゛!? 偽物!?」

 

 なんでもないように頷く青葉に、低学年は驚き、魂を飛ばしかける。

 

「じゃあ、本物はい組にあるということですか?」

 

 ただ一人、冷静な庄左ヱ門のおかげで、飛び出しかけた魂は体に吸い込まれていく。

 

「庄ちゃんってば、相変わらず冷静ね」

「あれ? でもそれって、まずくないっすか?」

「きり丸? まずいって?」

「だってそうだろ? 俺たちの木像はい組、ろ組の木像も立花先輩が持ってて、それは俺たちは組がもらえるはずだけど、素直に渡す訳がない」

「あ゛!」

 

 それはつまり、い組にすべての木像が集まることを意味していた。

 

「どどどどどどうしよう!!」

「このままじゃ、実技も勉強もできるい組って、伝七とか佐吉に言われ続けるぜ」

「そこなんだ……」

「で、でも、どうすれば……!!!」

 

 一年生たちが青葉に助けを求めるように見上げれば、青葉は困ったように頭をかくと、笑った。

 

「いやーこれはもう、アレだな!」

 

 吹っ切れたように伊作に一度目を向けると言い放った。

 

「死なばもろとも作戦、だな!」

 

 

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