学級委員長委員会委員長って言いにくいね   作:こっここーまん

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6話 試合終了の段

「時間もないこの状況で、あいつらがやれることは少ない」

 

 兵助ももう一度火縄銃を確認すると、森の奥を警戒した。

 佐吉は木像を半分土に埋めて、その表面をよく固めながら、文次郎を見上げる。

 

「陣に像を持ち帰ることを諦めるだろう。そして、全員に負けさせる」

「そ、そんなことが可能なのですか?」

 

 佐吉が聞けば、文次郎は頷く。

 

「ルールにあっただろう。木像は各組の旗から十尺の範囲内にある個数でカウントすると。つまり、その範囲から出してしまえば、俺たちも0になる」

「え!? そんなのありなんですか!?」

「ヘリクツですよ!」

「ヘリクツだろうがルールはルールだ」

 

 学園長もそれを踏まえた上で、あのルールを作ったのだろう。それに、青葉ならひと組みだけうまい汁を吸わせる訳がない。引きずり落としにくるはずだ。

 

「各方向の守備は久々知と尾浜を中心に行う。俺はここで像を死守する。仙蔵と孫兵も戻り次第、手助けに入るだろうが、今度はろ組とは組からの攻撃だ。ギンギンに気合を入れろ」

 

 低学年は悲鳴を上げ、五年生もまたくるであろう六年の影に喉の奥で悲鳴を上げていた。

 

 仙蔵は予定とは違う道で陣地へ戻ろうとしていれば、目に入った小さな人影。

 

「立花先輩!」

「ふ、福富しんべヱ、山村喜三太……!? なんでお前たちがここに?」

 

 聞く必要もない。青葉のせいだ。

 

「先輩の木像を受け取ってこいって、青葉先輩に言われましたー!」

 

 やはり。

 

「そうか。それはわざわざすまなかったな。だが、これは渡せない」

「えぇ!?」

「どうしてですかぁ!?」

「むしろ素直に渡すと思ったのか?」

「「はい」」

 

 即答されて、コケそうになりながらも、体制を元に戻せば、二人を諭すように言う。

 

「いいか? 忍者ならまず疑え。信じるな。約束は裏切られることを考えて行動しろ。いいな?」

 

 それだけ伝えると、二人の泣き声を背中に聞きながら、急いで遠ざかった。

 

***

 

「死なば諸共作戦?」

 

 小平太は陣地に戻ってくると、首をかしげた。

 作兵衛があの後また、は組の様子を伺い聞こえた作戦を伝えれば、長次も腕を組み頷いていた。

 

「つまり、すべての像がい組にあるから、陣を捨てて、せめてい組にも勝たせない。って、いうことですよね?」

「もそ……」

「確かに、先輩ならやりかねない。むしろ、最後に焙烙火矢でい組の陣地も爆破しそうだ」

「やりそうだな!」

 

 笑っている小平太に、八左ヱ門が頬をひきつらせているしかない。

 

「で、い組の場所はわかってるわけですけど、僕たちはどうします?」

「……」

 

 このままいけばろ組も負けだ。ここでおとなしく時間が終わるのを待つよりは、い組の勝利を阻む方がいい。

 

「イケイケどんどーん!」

「あ、道案内は俺が! 印のない罠地帯があるので……」

 

 あの危険地帯を抜けられたのは、八左ヱ門が確認できただけで喜八郎ただひとりのはずだ。

 

「ある程度把握してますが、気を付けてください……」

 

 疲れたように息を吐く八左ヱ門に、雷蔵も三郎も同情するように肩を叩いた。

 

***

 

 地平線に日が触れ始めた時、火縄銃の音が響いた。

 

「まったく……」

 

 青葉は、頭上に降りかかった豆を落としながら、火縄銃を撃った相手を見た。

 

「勘ちゃんってば、だいたーん。今度の会議でカステラの紙あげるね」

「そういうのパワハラって言うんですよー?」

 

 笑いながら、伊作に矢羽根で合図すれば、もっぱんが投げられた。

 

「うわっ!!」

 

 慌てて逃げ出す勘右衛門に、あとを追う一年生と二年生。い組の陣地へと走っていた。

 

「伊作」

「大丈夫。伝えてあるよ」

「ならいい。ようやくかぁ……んじゃ、留さん、文次郎の足止め頼むよ」

「おう。あのムカツク顔、ボッコボコにしてやるよ」

「それは足止めっていわないけど、まぁいいや」

「二人共怪我しないようにね」

 

 無茶な注意をしながら、三人もい組へ向かった。

 

 い組の陣地周辺は、残った生徒たちで乱戦状態だった。

 中でも派手なのは、焙烙火矢と石火矢を容赦なく撃っている仙蔵と三木ヱ門だ。

 

「仙蔵くん、俺が好きなの? 焙烙火矢をプレゼントしてくれるなら、火がついてないのがいいなぁ」

「そういうな。燃えるような気分が味わえるぞ」

 

 一番警戒すべき青葉を常に警戒しながらも、太陽にも目を向ける。あと少し、あと少しで完全に日が沈む。そうなれば、い組の勝ちだ。

 半分地面に埋めて、取り出しにくくした像の近くには文次郎が、

 

「いない!?」

 

 視線を巡らせれば、留三郎と勝負している。五年はといえば、二人共長次の足止めをしているらしい。伊作は、見当たらない。おそらく、喜八郎の作った罠にでもはまっているのだろう。

 もう一人の六年である小平太も見当たらない。ついでに、滝夜叉丸も見当たらない。

 

「……連れてかれたか」

「ある意味一番の被害者かもなぁ……」

 

 よく見てみれば、金吾もいない。もはや、敵味方はあまり関係ないらしい。

 

「おっと……」

 

 木像に近づくい組の姿に、仙蔵がひとつ焙烙火矢を投げれば、慌てたように下がる二人。

 

「敵味方関係なしか……!?」

「この状況で近づく奴は、味方ではないからな。鉢屋」

 

 三郎も眉をひそめる中、青葉は一歩下がると、大きく息を吸い指をくわえ、吹いた。

 

 

ピィィィィイイィィ!!!!

 

 

 試合が終了のような指笛の音に、その場にいた全員の視線が青葉に向く。

 そして、数秒もしない内に、本当の実習終わりを告げる法螺貝が森に響いた。

 

「……おーしまい」

 

 その瞬間、青葉の目が弧を描いた。

 

 

***

 

 

「組別サバイバル実習、優勝は……は組ッ!!!」

 

 学園長の言葉に、驚きの声を上げたのは、は組の一部を除いて全員だった。

 仙蔵たちもすぐに木像を確認するが、半分埋まったままでその場から動いていない。

 

「な、なぜです!? なぜは組が!?」

 

 学園長が笑いながら指したのは、歪な“は”の文字が書かれた幕。

 その近くには、恥ずかしそうに筆を持った三反田和馬の姿。

 

「…………ま、まさか」

 

 和馬は忍術学園で特に影が薄い。それこそ、同じ委員会や同じ組の人に名前を忘れられるくらいに。

 そんな人物があの乱戦の中、気配を殺して、“い”の文字を上から“は”と書き換えていても、気づけるはずがなかった。

 

「あー……ただで負けるとは思ってなかったけど、そう来たかぁ……」

「焙烙火矢だと思ったんだがなぁ」

「それで体育委員会のメンバーいなかったのか……」

 

 あの乱戦の中、体育委員会が見当たらないと思ったら、小平太が避難させていたらしい。

 

「というか、今回、俺、焙烙火矢系ひとつも持ってきてないからな……」

 

 ため息混じりに言った青葉に、目を丸くした二人がいたが、二人が声を出す前に、一年は組が青葉を取り囲む。

 

「先輩、なんで言ってくれなかったんですか!」

「えー……は組のよい子たちは、嘘をつくのが下手だから。それに……」

 

 はっきりと言ってしまう青葉に、一年生は照れ、文次郎は悔しそうに激しく頭を木に打ち付けた。

 

「ずっと監視されてたし」

「最初からこれを狙ってやがったなァ!!」

 

 青葉は最初から警戒していたのだ。だから、ずっと孫兵を偵察としては組の陣の近くに潜ませていた。作戦は常に筒抜けのはずだった。少なくとも、最初の交渉があった後から、ここへ突入し、勘右衛門と接触するまでの作戦は。

 つまり、知らない作戦となれば、それはこの森へ移動する前から考えていたということになる。

 

「いやぁ……みんな、本当に俺が好きすぎて、照れちゃうわ」

 

 笑う青葉に、文次郎はまた強く頭を打ち付けた。

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