学級委員長委員会委員長って言いにくいね   作:こっここーまん

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5年と姫守り
1話 帰宅と出発の段


「いっちば~~ん!」

 

 門と潜ったのが、1時間ほど前。

 

 

「――だと思ったんだけどなぁ」

 

 と、山道を下っているのが現在。

 

「申し訳ありません。私事に付き合わせてしまい……」

「あぁ、すみません。気にしないでください」

 

 振り返り謝った上質な着物を身に付けた女と後ろに控えこちらを睨む側近の男。

 周りには、困ったように笑う5年生。

 

「日頃の行いのせいじゃないですか?」

「勘ちゃん。三郎、ハチと屋敷までダッシュ」

「「勘右衛門!!!」」

「横暴だぁ~~!」

 

 文句を言われながらも駆け出す勘右衛門を、三郎と八左ヱ門も追いかけていった。

 残った5年の兵助と雷蔵は、なんとも言えない表情で「がんばってー」と手を振る。

 

「えっ……あの」

「良いのです。もうすぐ山を抜けます。護衛の数が多過ぎるのは逆に目立ちます。むしろ、屋敷に敵が潜り込んでいれば大事。彼らはそれを指示されたのです」

「そ、そうなんですか……」

 

 動揺していた女も側近の言葉を聞いて、兵助に目を向けると、頷かれた。

 

「……お嬢様?」

 

 浮かない表情の女に側近も首をかしげると、首を横に振った。

 

「私のせいでいろいろな方に迷惑をかけてしまって……」

「迷惑など……! 私どもは貴方様の幸せを願い」

「そうですよ! 武家同士の結婚に護衛はつきものですし!」

「迷惑とは思っていません!」

 

 雷蔵と兵助も慌てて頷くが、女はなんとも言えない表情で礼を言われた。

 

「お互い納得し合ってる結婚なんて、こちらとしては参列者の感覚ですよ。花でも撒きましょうか」

 

 笑う青葉に、女も少しだけ表情を緩めた。

 

 今回の任務は、武家の娘である彼女、圧波奈(おしはな)と武家の息子鳥野古凛(とりのこりん)の祝言のための護衛だった。

 武家同士の結婚のため、反対派閥からは刺客が送り込まれる可能性はあるが、両家は仲も良好、本人たちも互いに思いあっているという、比較的気楽な任務だった。

 これが、両家の仲は最悪、それを取りなすための政治的結婚であり、本人たちも気持ちでは同意しておらず、片方は想い人がいる。などのことがあれば、もう大変だ。

 

「――とはいえ」

 

 両家の縁がより強固になることを良しとしない人間もいるだろう。

 気を抜いてはいけないことは、変わりない。

 

「勘右衛門。どうだった?」

「屋敷の周りに曲者は見当たりませんでした。今はハチが見張ってます。三郎は屋敷の中を確認を」

 

 屋敷について、早速勘右衛門から報告を聞いてから、波奈のいる部屋に戻れば、兵助と波奈しかいなかった。

 

「あれ? 雷蔵は?」

「間借さんに、波奈さんの部屋を案内してもらってます」

 

 その雷蔵と間借は、一通り波奈の部屋に誰も潜んでいないことを確認すると、部屋を出た。

 

「おかりなさいませ」

 

 出たところにいた女中はふたりに頭を下げる。

 間借がそのまま脇を通り過ぎ、雷蔵が通り過ぎようとした時、聞こえた音。

 

「……あの! すみません。間借さん」

「はい」

「こちら何があるのでしょうか?」

 

 雷蔵が、波奈の部屋の向こう、歩く方向と逆の方を指せば、間借は少し考えたあと、

 

「当主様のお部屋です。その先は、一部の人間しか入ることが許可されていません。当然、貴方もです」

「間借さんは許可されているのですよね? 護衛にあたり、一度ご挨拶をしたいのですが」

「……構いませんが、6年生の彼が挨拶をするのではないのですか?」

「今、呼んできます」

「わかりました」

「私でよろしければお客様をお呼びしてきますが……」

「じゃあ、お願いします」

 

 女中が早足で客室に向かった。

 

 青葉が当主へ挨拶に行っている頃、勘右衛門と兵助は波奈の部屋で、結納品を見ていた。

 

「からくり箱?」

「こんなに大きなのは初めて見たのだ」

 

 手のひらサイズなら何度か見たことがあるが、クナイでも簡単に入りそうな程大きなからくり箱は初めてだった。

 

「挑戦してみますか?」

「え! いいんですか? なら……」

 

 勘右衛門がからくり箱に挑戦していると、近づいてくる足音。

 三つだ。

 

「ただいまーって、デカい箱だな……からくり箱?」

「本当だ……」

「! それは、明後日、結納するための!」

「私が許可したんです」

「お、お嬢様……わかりました。今日だけですよ。明日には、中に物をいれるのですから」

「はい」

 

 ため息をついた間借に、また近づいてくる足音。

 

「お茶をお持ちしました」

 

 女中が持ってきた湯呑みは、6つ。

 

「では、私は少し席を外し――」

「おや……急ぎの用でないのでしたら、お茶を一杯飲んで行かれませんか? せっかくのお茶が余ってしまいますし。今日、明日の警護について決めてしまいましょう」

「……わかりました」

 

 そう言われては、仕方がない。

 間借も中には入り、座る。

 

「こちらの屋敷から警護はどのようになっていますか?」

「特別に設けているのは、この棟にひとり。当主様の部屋にひとりです」

「では、寝室の警護にひとり、屋敷の警護に二人としましょう」

「明後日の結納日はどうされるおつもりですか?」

「確認が終わり次第判断します。今夜中にはお伝え致します」

 

 間借が、お茶に口をつけようとするが、まだ熱く、一気には煽れない。

 それはどうやら、他の者も同じようで、青葉も息を吹きかけていた。

 

「あ、ところで、先程仰ってた物というのは?」

「あぁ、この箱に、赤ん坊用の服や玩具、櫛などを入れるのが習わしなんです」

「えぇ。本当に大事な箱なのですよ」

「す、すみません……」

「いいんですよ。明日までは何も入っていないんですから」

「勘ちゃんファイト。そんな大きなからくり箱開ける機会そうないよ」

 

 任務中だというのに、緩い様子の青葉に呆れながらため息をつくと、ようやく飲める程度にぬるくなったお茶を一気に煽った。

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