オラリオにピエロがいるのは間違っているだろうか 作:れもね〜ど
西のメインストリートにピエロが現れた翌朝。
オラリオの南東、イシュタルファミリアの運営する色街の一室に1人の男がいた。
「1年?いや、2年ぶりくらい?いきなり来た時は驚いたよ。もしかしたら死んだんじゃないかなんて噂もあったからね」
男の横で褐色の肌をした、美しい肢体に一糸纏わぬ姿を晒している女性が話しかける。
「はは、そんな噂あったのか。いっそのこと本当にこのまま死ぬのもありかな?なんてね。一応置き手紙はしてったのになぁ、そうか俺は死んでることになってるのか面白いな」
今からちょうど1年半前、男は当時所属していたファミリアに一通の置き手紙──一枚のメモ──を残してオラリオを出た。当時から数少ない貴重な戦力である第一級の冒険者である彼をギルドがオラリオの外に出ることを許可するはずもなく、ギルドに何も知らせず彼は神から授かり昇華させた
男がオラリオに戻ってきたのは昨日正午、出て行った時とは違い荷馬車に忍び込んで帰ってきた。──男が荷馬車に乗っていたことは荷馬車の所有者も気づいていない──オラリオに入り荷馬車を降りた後、泣いている子供を見つけた。男は元気づけようといくつかの曲芸を披露した。子供が泣き止む頃にはいつの間にやら人集りが出来ていた。そして、そこにロキファミリアも来てしまった。彼等に一早く気づいた男はその場を逃げ出し、逃げるようにして入った色街で旧友と一夜を過ごしていた。
「死ぬ気なんかさらさらないくせによく言うよ。せっかく帰って来たのになんでファミリアに帰らないんだい?真っ先に私のところに来て、そんなに私が恋しかったのかい?」
「確かに恋しかったなぁ。俺もオラリオ出る時はこんなに長い間外にいるとは思ってなかったんだよ。それで置き手紙にも『1ヶ月ほど遊んでくる』って書いたからさ、それがどうしてか1ヶ月のはずが1年半だよ?帰ったら確実に殺されるに決まってる」
「な!!バカ!!思ってもないことを口にするんじゃないよ!!まぁ分からん訳でもでもないね、実際私も楽しませてくれなければ半殺しにしてただろうからね。」
女は思ってもなかった返事に戸惑いながらも続けた。
「でも一度姿を見られてるんだろ?それだったらもう時間の問題じゃないか?分ったなら観念して帰りな、捕まって帰ってくるかか自分から帰るってくるかで結構変わったりするもんさ。自分から帰って来たら案外許してくれたりするんじゃないか?」
「無理だよ。3日間ほどしばき倒されて半年はただ働きさせられるとこまで見えてる。自分から殺されに行くなんてそんな無様なことしたくないね。それとも
「アホ、あんな化け物の巣窟なんか誰が行くか。うちはただでさえあのヒキガエルのせいで立場が悪いのさ、行ったら何されるかわかったもんじゃない」
男の横にいるアマゾネスの女性(アイシャ・ベルカ)の所属するイシュタルファミリアは、団長であるフリュネ・ジャミールのせいで男の所属するロキファミリアとは犬猿の仲である。戦力的に何倍も劣っているイシュタルファミリアがもしロキファミリアと戦争になったとしたらするまでもなく結果は見えている。なのでアイシャには友人である男は別として、なるべくロキファミリアは関わりたくない存在であった。
「バレて死ぬか謝って半殺しかしかないんだから諦めな。まぁ嫌なことがあったらまた私のとこに来てまた楽しませてくれればいいさ」
「んじゃあ死ぬまで頑張ってみっかな!」
男は太陽が照らす今は閑散としている色街へと出て行った。