ヒーロー・アドベンチャー・コブラ・ザ・サイコガン 作:ガラガラガララ
「今年の新入生はおもしれえ奴らが多いなっ」
生徒達の資料を片手に、プレゼントマイクが笑みを浮かべて言う。
「ええ、特に爆豪少年と轟少年は、能力的にはかなりの逸材といってもいいわ。爆豪少年は性格的に問題があるみたいだけど。
救助ポイントゼロはちょっとね……」
ミッドナイトの言葉に頷く教師陣。
「逸材というなら、義理庵少年も相当なものだな。状況判断や情報収集と、その分析力は一流のベテランレベル、身体能力も超人的と言ってもいい」
イレイザーヘッドが譲の資料を片手に呟く。
「でも土宮町の生まれっていうのが気になるわね。あそこはヴィジランテの聖地とも言える場所柄だし、住民達は警察もヒーローも信用してないわ」
「俺っち個人としちゃ、嫌いになれないタイプなんだがな。陽気でノリも良さそうだしよ」
その時、無言だったオールマイトが初めて口を開いた。
「コブラ……それが彼の異名だそうだ」
「でも、あれは都市伝説でしょう。ヴィラン達の間で囁かれてる毒蛇を食らう毒蛇……」
声を潜め、ミッドナイトがオールマイトに聞き返した。
「いいや、都市伝説ではない。コブラは実在する。彼は一部のヴィランからは死神と呼ばれ、私以上に恐れられている存在だ」
「相当な厄ネタが紛れ込んできたってわけか。だったら不合格にしてはどうだ?」
死んだ魚のような目をしたイレイザーヘッドが提案する。
「いや、それは早計ってもんだろっ、それにここにいるヒーローが駆け出しの頃、土宮町の連中に命を救われたり、
助けられた奴も何人かいるはずだぜっ」
イレイザーヘッドに反論するプレゼントマイク。
「確かに僕もヒーローになりたての頃、土宮町のヴィジランテに命を救われたり、協力してヴィランを捕縛したことがあったな」
セメントスが何かを思い出すように頷いてみせる。
「あるいは義理庵少年が、土宮町と我らの架け橋になってくれるかもしれない。
最悪、彼がヴィラン側に回った場合、恐ろしく厄介な脅威になりうるだろうし」
思案げにしていた根津校長が言う。
そうだ、良くも悪くもコブラは驚異的な存在だ。
そして単純な話、強者がヒーローになれば、これほど頼もしい存在はないが、ヴィランにでも寝返られると、新たな脅威が増える事になる。
また、得てして人間とは、自らの力に溺れやすい。
強力な個性を持った人間ほど、ヒーローかヴィランを選択し、更に言えば、統計的にはヴィラン側に陥りやすい。
「それならば、我々の陣営に引き込み、次世代を担うヒーローとして教育すればいい」
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ここは地下室の射撃場だ。
居並ぶ六つの標的を瞬時に撃ち抜くコブラの射撃の腕は、もはや神技といっても過言ではないだろう。
「今日も調子が良さそうだな、譲よ」
壁に背を預け、黒いウールハットを目深に被った老人がコブラに声を掛ける。
「そういう次元の爺さんも調子はどうだい、この前は肩こりが酷いとぼやいてたっけな」
「俺も寄る年波にゃ、勝てんさ、譲」
「かつては世界一と呼ばれたガンマンも、これじゃあ形無しだな」
次元大介──かつては裏社会にその名を轟かせ、悪党共を震え上がらえた凄腕のガンマンだ。
そしてコブラの射撃の腕前は、この次元老人仕込みによる。
「次の事はお前ら若い世代に任せた。老兵はこの町で静かに暮らすさ。ああ、それよりもルパンの奴が新型の酸素ボンベ葉巻を作ったそうだ。
受け取っておくといい。これまでは百二十分しか持たなかったが、今回は水中で三時間は持つって話だぜ」
「へえ、そりゃいいな。所でゴルゴの爺さんはどうしてるんだ?」
「ゴルゴの奴なら、政府の要人から依頼を受けたってんで、ヨーロッパに飛んでるよ。
あの年で、まだ現役だってんだから恐れ入るぜ。ありゃ、化物だ」
咥えタバコに火を点け、次元が煙をくゆらせながら肩をすぼめてみせる。
「次元の爺さんもゴルゴの爺さんを少しは見習うといいぜ。男は生涯現役が一番ってもんさ」
愛銃を腰にぶら下げたホルスターに突っ込むと、譲は二階にあるバーへと昇っていった。
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グラスの中の氷が、カラカラと音を立てて笑った。
カウンターのスツールに腰を下ろし、コブラがワイルドターキーを一口、クチに含む。
店内に流れるマイルス・デイビスのトランペット演奏に耳を傾けながら。
その時、譲は横に座っていた女と眼があった。
目も覚めるような美女だ。
椅子から腰を浮かせ、譲が美女に声を掛ける。
「どこかで一度、君と逢ったことはあるかな?」
「いいえ、ありませんわ。譲さん……いいえ、盗賊コブラ」
「誰からその話を?」
「知り合いからです。譲さん、折り入ってお願いがあります。母親の形見を奪い返してもらえませんか。
十分な報酬をお支払いしますから……」
切羽詰まった視線をコブラに注ぐ美女、そんな女の哀切とも言える無言の訴えを譲が受け止めてやる。
「いいだろう。君の話を聞かせてもらえるかい」