ヒーロー・アドベンチャー・コブラ・ザ・サイコガン 作:ガラガラガララ
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「……俺は体操着に着替えるようにいったはずだが?」
そう言いながら、イレイザーヘッドがコブラを横目で見つめた。
「何いってんだい、これが俺の体操着さ」
コブラが胸を自分のパンと一つ叩き、悪びれずにウインクを飛ばしてみせる。
赤タイツ調に黒いベルトだけのそのスタイルは、確かに動きやすそうではある。
相澤はそれ以上、何も言わずにテスト開始の号令を出した。
それから次々に課される個性と体力把握のテストを生徒達は受けていった。
最初はボール投げで、このテストで一位を取ったのが麗日お茶子という女子生徒だった。
ちなみにテスト結果は『∞』になっている。
二位が爆豪勝己で『705.2m』そしてコブラは三位の『701m』になっている。
ただし、コブラは上記二名の生徒と違い、個性は使っていない。
50m走では、コブラが一位の『2秒ジャスト』を叩き出した。
それに続いて握力テストでは二位の『500キロ』で、一位との差は40キロほどになっている。
コブラは全ての能力において高い数値を叩き出したが、
だからといって何か一つでも突出しているかというと、そうではない。
総合的な能力はずば抜けてはいるが、それだけとも言える。
ただし、これらは譲の純粋な身体能力の数値でもある。
ゆえにイレイザーヘッドは、内心では酷く驚いていた。
個性を使うことなく、これほどまでの数値を出せる人間が、いると言う事実に。
個性を使えば、コブラ以上の数値を出せる人間はいる。
だが、無個性であればコブラ以上の数値を出せる人間はいない。
相澤からすれば、これほど相性の悪い存在もいない。
相手の個性を消すことが、自身の個性であるイレイザーヘッドにとって、この手の輩は純粋に厄介だ。
例え個性を消しても、その圧倒的な身体能力で突っ込まれれば、面倒になる。
「……譲、最後にあの時、君が巨大ロボに放った力を見せてもらえるか?」
「悪いが俺のサイコガンは見世物じゃないぜ」
イレイザーヘッドの申し出に、肩をすくめて首を振ってみせるコブラ、
それでもなお、相澤は食い下がった。
無言でコブラをじっと見続ける。
それは、終戦直後の飢えた孤児が、進駐軍の持っているチョコレートに注ぐ視線にも似ていた。
「わかった、わかったよ。頼むからそんな目で俺を見ないでくれ」
ついに根負けしたコブラが、イレイザーヘッドの頼みを渋々ながら承諾する。
人は泣く子と地頭には敵わないように、コブラも無言でチョコレートを見つめる飢えた孤児のような視線には敵わなかった。
「協力に感謝する」
「言っておくが、見せるのは一発だけだからな」
右掌を振りながら釘を刺すコブラ、イレイザーヘッドはその言葉にわかったと頷いた。
左腕の義手を取り外し、コブラが青空めがけてサイコガンをショットする。
その時、イレイザーヘッドは目を見張った。
左腕に見える銃は、コブラの個性ではなかったのだ。
(……奴のあのサイコガンという銃は、奴の個性ではないのか。それならやつの個性はなんだ。
それとも無個性なのか?)
イレイザーヘッドは、しばし思案した。
そんなイレイザーヘッドの横顔を見透かすように見やると、コブラは鼻で笑うようにグラウンドを後にした。
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「俺は峰田実、あの時は助けてくれてありがとなっ」
ブドウの房のような髪型をした背の低い少年が、コブラにそう声を掛けてきた。
「おや、そういう君はあの時の。義理庵譲、よろしくな、峰田」
電子葉巻を加えたまま、コブラが峰田に挨拶を返す。
「それにしてもすげえんだな、譲ってっ、個性も使わずにあれだけの記録出すなんてさっ、秘訣を教えてくれよっ」
「そりゃ、毎朝、大盛りのコーンフレークを二杯食べてるからな」
「なるほどなっ、つまり、虎はもともと強いから虎ってことだなっ」
「まあ、そういうことだな、理解が早くて助かるぜ」
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繁華街を練り歩く。点滅するカラフルなネオンが、通行人達の網膜を刺激した。
ナイトクラブ<グレイトフル・デッド>は今夜も賑やかだ
このナイトクラブの経営者は、コブラの顔なじみだ。
だから時折、バウンサーを頼まれることもあった。
用心棒をしている時は酒はタダで飲めるし、揉め事が起きない時は、カウンターの一番端に座っているだけでいい。
バウンサー代は弾んでもらえるし、可愛い娘とも知り合えるので、コブラは結構気に入っている。
琥珀色に輝くショットグラスの液体を一息で飲み干した。
途端に食道から胃袋が、かあっと熱く火照った。
ほんのりとした芳醇な甘味が、口腔内から鼻腔を満たしていく。
舌と喉奥に残るまろやかなコク、フォアローゼズ・プラチナはやはり旨い。
ボトルからグラスに酒を継ぎ足すと、次はじっくりと舌で味わう。
「やっぱり良い酒だな、こいつは……これで隣にカワイコちゃんでもいりゃ、言うことなしなんだがね」
そんな事をボヤいていると、クラブのホールが何やら騒がしくなってきた。
また、揉め事か。
やれやれと芝居がかった調子で、スツールから立ち上がると、コブラは騒ぎのする方へ足を運んだ。
「うおおおおっ、俺の弟がっ、僧帽ヘッドギアの奴が捕まっちまったぁっっ!!」
ホールで暴れているのは、巨漢の男だった。
この前捕まったと、ニュースで報道されていた僧帽ヘッドギアというヴィランにそっくりな男だ。
「オタクの弟が捕まっちまったのは可哀想だが、ここで暴れるのはよしてくれよ」
コブラが男をたしなめる。
だが、ドラッグで激高状態になっている男には、そんな言葉は通じなかった。
「うるせいっ、ぶっ殺すぞっ!!」
持っていたボトルをぶん投げ、男が大声で怒鳴る。
「悪いがオタクに殺されたくはないね。ベッドの上で美女に殺されるってんなら大歓迎だがね」
上半身の服を脱ぎ捨て、ファイティングスタイルを取るコブラ、その時、周りから歓声があがった。
「ヒューっ、見ろよっ、まるで鋼のような筋肉だぜっ」
「俺は譲に三万賭けるぜっ」
「だったら俺は僧帽ヘッドギアの兄貴に二万だっ」
周りの客にはやし立てられながら対峙する二人、最初に動いたのは巨漢の男だった。
男のハンマーフックをヘッドスリップでかわし、コブラが相手の脇腹に鋭いストレートパンチを突き刺す。
そこから体勢を崩した男の顎にアッパーを叩き込んだ。
それで相手はおねんねだ。
「良い夢見ろよ」
投げキッスを飛ばし、上着を肩に垂らすと、コブラはカウンターに戻って残りの酒を味わった。