魔法少女きょうこ☆マギカ 流れ者達の平凡な日常(魔法少女まどか☆マギカシリーズ×新ゲッターロボ)   作:凡庸

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第68話 真紅の少女、垣間見た地獄 そして

「あいつは…」

 

 呟く声。誰のかって言われれば、あたしの声。

 佐倉杏子の声だ。って誰に言ってんだよ、バカバカしい。

 

「何を考えてやがんだ?」

 

 でもさ、思わず言いたくなるもんだよ。

 こんな光景を見せられりゃさ。

 

 あの胸糞悪い京都?みてぇな町並みを抜けたと思ったら今度はこれだよ。

 血みたいに赤い空、壊れた街並み。

 落っこちてる看板を見ると『新宿』って書いてやがる。

 ああ、そうかい。あたしを地方民だってバカにしてんだな。

 

 くそったれ、って思ってそれを蹴った。

 スカった。知ってる。今のあたしは裸の姿で闇で出来てる。

 何にも干渉できねぇし、干渉されねぇ。クソつまんねぇ状態だ。

 

 ああ、そうかよ。

 辿りつくまでが長いってんだな。それまで世界を観ろってか。テメェが見てきたものを。

 

「上等だ。地獄ってのを見せて貰おうか」

 

 そう言ってあたしは飛んだ。

 百メートルくらいかな。

 そしたら見えた。

 地獄が。

 

 

 人間みたいな姿の奴らがウジャウジャといて、互いに殺し合って身体を引き千切って奪い合ってる。

 抉り出した心臓みたいなのを引っ張り合って、もぎ取った首を誇らしげに掲げてやがる。

 形は色々だけど、うちの教会なんざ軽くぶっ潰せるくらいの大きさだな。五十メートルってとこか。

 魔女でも握るか…いや、指先で押し潰すだけで殺せるだろうよ。

 

「同じじゃねえか」

 

 それを見たあたしはそう呟いてた。

 同じってのは、あたしらとってコトだ。

 生きる為に何かをブッ殺して、互いに資源を奪い合って殺し合う。

 確かにそりゃあ、生き物が生きていくためには必要な行為だろうさ。

 食物連鎖って奴か。

 

 でも、あいつらは…あたしらは違う。

 戦いたいから戦い、殺したいから殺す。

 魔女と戦ってる時のあたしは、明らかにあいつらの悲鳴や弾ける肉の様子を楽しんでるし、遣ろうと思った技が決まってブチのめした時は良い気分になる。

 

 魔法少女を殺したことはまだねぇけど、多分同じ気分になるんだろうな。

 戦いってんなら、今探してるあのヤロウとの殺し合いは……ああ、認めたくねぇけど楽しくて仕方ねぇ。

 魔法少女や魔女相手だと感じねぇ何かを感じちまう。

 腹の奥が疼くのは、あたしも雌だってことなのかね。変態かよ。

 

 話が逸れちまった。で、だ。

 見てる限り、あの連中も楽しんで殺してる。

 単独だったり徒党を組んでたり、でもその群れも戦いが終われば餌食を取り合う敵に早変わり。

 また殺し合いを始めやがる。

 

 傷付いても殺した部品を自分の身体に埋め込んだりして欠損した部分を補ってまた戦って、殺されていく。

 傷口からは血みてぇなのをボドボドと零して、傷口も生き物っぽい感じがありやがる。

 全部が金属で出来た機械だってのに。

 

 そうだ、機械だ。

 形は大まかに分けて三つ、人間に一番近い形なのと、それより痩せてるのと、下半身が戦車みてぇになってる奴。

 

 そうか。

 そうかよ。

 こいつらは、やっぱり…。

 

 そう思ってると、目の前にデカい何かが落ちてきた。

 あたしの前を落ちて、地面に落下してグシャって潰れる。

 それ目掛けて連中が向かって行って、機械の死体を漁る。

 そしたらその上にも落っこちてきて、ノシイカになる。

 

 それは次々と続いた。壊れた機械人形の雨あられだ。一つの街、風見野なら壊滅するくれぇの範囲で降って来やがった。

 あたしには全然問題ねぇけど、連中は堪ったもんじゃねえだろうな。知った事か。

 その時ふと、へんな感じがした。

 気になって少し移動したら……冗談だろ。

 

 それを見た時、最悪の気分になった。

 

 

 

 

 赤ん坊だ。

 

 生まれたばかりの、産声を上げてるんだろうな。

 

 寸詰まりの手を震わせて泣き叫んでる赤ん坊がいたんだ。

 でもな、ああ、ちくしょう。

 

「あああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」

 

 自分の頭の中だけで聞こえる叫びを挙げて、あたしは飛んだ。

 真っ赤な血みたいな空を目指した。

 逃げたんだ。

 

 そこにあったものが信じられなくて。

 胸の奥から、身体の中から外側に向けて突き出る無数の針みたいな痛みに耐えられなくってよ。

 手や腕、腹に足に顔に脳味噌にって感じで、全身を内側から喰い破られる痛みがした。

 

 なんでかって聞かれたりしても、あたしにも分からねぇよ。

 善の心だとか、正義感とか、そういうのじゃないんだ。

 

 あれは本能だ。

 あたしは女だから、クソ忌々しい生理も来てるしヤる事ヤれば子供を産んで親になれる。

 だからか、そんな機能があるせいか、赤ん坊には弱いんだろうよ。

 本能で生まれたばかりの命を守る様に出来てるんだと思う。

 

 だから耐えられなかった、そう思うと少し気分が楽になれる。

 

 

 

 

 ……訳ねぇだろうがくそったれ!!

 

 なんだよアレ!?

 

 なんで生まれたばかりの赤ん坊に、たくさんの鉄の管が突き刺さってやがるんだ!?

 

 なんであんなふわふわとした柔らかい肌に、硬くて冷たい金属の回路が突き刺さって、しかも肉と溶け合ってやがる!? 

 

 なんでこれが揺り篭やベッドだって言わんばかりに、金属の丸い塊で覆われた座席みたいなのに乗ってんだ!?

 

 なんで、なんでだよ!?

 

 

 地獄だ。

 

 ここは本当の地獄だ。

 

 そう気づくと、嫌な事が分かっちまう。

 あの機械人形を動かしてる連中も、こうやって生まれてくる。

 そして殺し合って、殺し合って、何時か殺されるまで殺し続ける。

 

「ふざけんなああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」

 

 叫びでもしなきゃ、無理やりにでも怒らなけりゃ、湧き上がった恐怖にあたしは潰されてたかもしれねぇ。

 だから必死に叫んだ。そして飛んだ。

 雲の中には、まるでイナゴの群れみてぇに沢山の機械人形共がいた。

 

 そいつらは何処かを目指してた。あたしもそこを目指した。

 雲からは毒蛇の群れみたいに雷が落ちてきて、それを喰らった連中が次々と落下していった。

 さっきのはコレが原因か。

 でもお仲間達が無残に死んでいくってのに、誰も逃げようとしやしねえ。

 それだけの価値があるってコトかい。

 

 そしてあたしは空を見た。

 赤が広がってた。相変わらず、いや、もっと色が濃くなった血みたいな空。

 

 

 

 違う。

 空じゃねえ。

 あれは、雲みたいにデカくて雲みてぇに広がってるけど、あれは…まるで昆虫みてぇな形をしたあれは……。

 

 

 

 

「ゲッター」

 

 

 

 

 

 なんでそう呟いたのか、あたしには分からねえ。

 でもそれが正しい事だってのは分かった。

 ここは地獄だ。

 

 『ゲッター』って存在が人間と一体化して、延々と殺し合う世界だ。

 そして、あいつが…あの異様な形と異常なデカさのあの化け物がこの世界をーーー。

 

 

 

てめぇか

 

 

 聞こえた。  

 というか、響いた。

 音と言うか、意思が。

 

 

 

てめぇがこんな吐き気のしそうな世界を創りやがったのかぁぁぁああああああああ!!!!

 

 

 そいつは、激烈な…炎みてぇな意思だった。

 込められた感情は、無数の刃みたいな殺意と言うか怒り。

 

 ああ…これは。

 

 よくよく考えりゃ、喧嘩はしてもここまでいった事はねぇな…。

 

 そうか。

 

 これがあいつの、お前の本当の怒りかよ。

 

 

「怪物か」

 

 

 そう呟いた。あんな怒りは、人間が出せるものなのか。

 

 その怒りの根源は、あの化け物の前にいた。

 血色の鬼みたいな外見の、あいつが。

 大きさの差は、比べ物にもならないってのに全く怖気づいちゃいねえ。

 

 長柄の斧を振り回して向かって行きやがる。

 そして斧を叩き付けた。

 

 そうしたら、あの化け物の表面が崩れ始めた。

 その瞬間、あたしの意識が弾けた。

 弾けて何もかもが消えてく中、あたしは二つの気配に気が付いた。

 

 一つは、あいつの気配。

 

 

 それともう一つは………それと、よく似た気配。

 あたしはそれを、あの空みたいな大きさの化け物から感じた。

 おい、待てよ。

 

 ってコトはよ………。

 

 あいつと、あの化け物は………。

 

 最悪の気付きに吐き気を催したあたしの事なんて、全く顧みもされないで、またあたしの視界が歪んだ。

 

 今度は何処に行くんだろうな。

 地獄である事は間違いはねぇんだろうけどよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここにいやがったか」

 

 

 吐き気の苦しみで満ちた心の奥から、声が聞こえた。

 

 

「久々だな、杏子」

 

 

 あいつの声だって事は、口調で分かった。

 だけどあいつの声じゃなかった。

 若くて荒々しい、男って存在を声に変えたみてぇな、忌々しい程に男らしい声だった。

 













新ゲッターロボ第九話
『地獄変』より
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