魔法少女きょうこ☆マギカ 流れ者達の平凡な日常(魔法少女まどか☆マギカシリーズ×新ゲッターロボ) 作:凡庸
ばりばり
ぐちゃぐちゃ
ずるり
ごくん
あたしの目の前で繰り広げられるそれは、そんな音を立てていた。
あたしの胸から、ソウルジェムから湧き出す穢れ。
あたしの心を形にしたみてぇに、虫や百足、それと爬虫類とかをごちゃ混ぜにした醜い見た目になったそれを。
あいつが、喰っていた。
恐竜みたいな牙を生やして、あたしの穢れを、心を貪り食ってやがる。
噛み砕いて、砕いて、砕いて切り裂いて、飲み込む。
そしてまた、湧き出してくる黒い穢れを喰っていく。
あたしの髪と腹を手で押さえて、まるで犯すみたいにして食っていきやがる。
犯す。
レイプ。
強姦。
ああ。
そんな感じだな。
自分でする時に思い浮かべちまう光景に少し似てやがる。
肉が疼いて弄ってると、どうしても自分が滅茶苦茶にされる光景が浮かんでくる。
ボコボコにされて投げ飛ばされて、動かなくなった体に覆い被されて、アレをあたしの股の穴に突っ込まれて犯される。
嫌に決まってるんだけど、それ以外のシチュエーションなんてあたしには思い浮かべられねぇし、いちゃいちゃとした子作り目的の幸せなセックスなんざ似合わねぇ。
あたしの疼きは、気の迷いと暇つぶし、それと一時の快感の確保で良い。
だけど、これは…これは、似てるけど違う。
助けようとしてるってのは分かる。
分かるけどよ。
割り切れねぇよ。
犯される側としちゃあよ。
でも実際、あいつに喰われる度に楽になっていくのが分かる。
心の中で暴れまわって、外に出たがっているどす黒い感情が減っていくのが分かる。
胸の内側をデカい百足が暴れまわってるような、体の内側をナイフで切り刻まれていくような痛みが減ってく。
痛みが消える。
楽になる。
あいつが噛み千切って、口に咥えた穢れがあいつに噛み砕かれて嚥下される。
そしてまた、あいつはあたしの胸に顔を埋めた。
その前に、あたしは見た。
あいつの渦を巻いた黒い瞳の中に、穢れと同じ色が浮かぶのを。
そしてあたしの穢れが、あいつの渦の中に消えていくのを。
「あ」
あたしはそう呟いた。
そして、楽になって軽くなっていた心の中に何かが広がっていった。
「あああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!」
あたしは叫んだ。
「あああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」
叫びながら、あたしはあいつの顔を殴った。
左手でナガレの首を掴んで、右手で殴り続ける。
それでも、あいつは止まらなかった。
殴られながら顔をあたしの胸に埋めて、一心不乱に喰い続ける。
「ぐぅぅぅううううううあああああああああああ!!!!!!!!!!!!」
今度は蹴った。
両腕をあいつの頭に絡めて、両脚の膝であいつの腹を蹴りまくる。
鳩尾と腹に何発もクリーンヒットして、あいつは苦しそうな呻き声を上げた。
普段ならこれで仕舞だろうな。
さすがのあいつでも、内臓が全部破裂して心臓を破壊されてるはずだ。
それなのに、ナガレは止まらねぇ。
気が狂ってもおかしくない痛みを与えてやってるはずなのに、渦巻く瞳の中の光はあいつが正気だって示してやがる。
やめろ。
やめろ。
やめろ!!
叫びつつあいつの身体を殴る蹴るしながら、心の中でもあたしは叫んでた。
こいつは、この穢れは、この苦痛はあたしのものだ。
だから。
てめぇの、この行為は。
余計なお世話だ。
あたしの心を、喰うんじゃねぇ。
「ぐぅぅあああああああああ!!!」
あたしはまた叫んだ。
そして開いた口を、そこにずらっと並んだ牙を、あいつの首に突き立てた。
喉笛をやれりゃよかったんだけど、微妙に交わされちまったからうなじに喰いつく羽目になった。
噛んだ感触は、まるで分厚いゴムで覆われた岩みてぇだ。
現実と同様、幾ら殴っても折れやしない頑丈さのままらしいや。
感覚的に、全部の牙の切っ先があいつの中に喰い込んだのを感じた。
まだ足りねぇな。
「ぐがあああああああああ!!」
叫びながら力を込める。
牙が全部、歯茎まであいつに埋まった。
感覚が妙なのは、弾かれてるってコトだろな。
喰い込んではいても切り裂けちゃいない、傷付いちゃいねぇってこった。
そうかい。
なら、やってやるよ。
傷付かないなら、傷付けてやる。
もっと鋭く、もっと強く。
伸びやがれ、あたしの牙。
もっと尖れ、あたしの心。
あたしの憎悪。
何かを憎んでねぇと、落ち着けねぇ歪んだ心。
でも、唸りながら牙を尖らせるあたしを、ナガレは見てすらいやがらねぇ。
口元は穢れの残骸で真っ黒に染まっていた。
相変わらず、狂ったみてぇにあたしの心を貪ってやがる。
その顔には、はっきりと苦痛が浮かんでる。
血深泥で斬り合って殴り合って、いつ死んでも分からねぇ、寧ろなんで生きてるか分からなくなるぐらいに互いを切り刻んだ時の顔と似た表情をしてやがる。
ああ、流石にてめぇでも辛いんだな。
そうか。
あたしの心はてめぇに苦痛を与えられてるのか。
そりゃあ良かった。
なら、ついでにこれも受け取りな。
ぶつん、て音があたしの口の中で鳴った。
あいつの魂をあたしが傷付けた音だった。
ざまぁみろ。
即座にあたしはそう思った。
ざまあみろ。
ざまあみろ。
ざまあみろ!
てめぇに喰われ続けたあたしの苦しみを思い知れ!
喰われたあたしの憎しみを思い知りやがれ!!
あたしはあいつのうなじに喰らい付いたまま笑い続ける。
笑う。
嗤う。
てめぇの心にあたしの毒を、呪いを刻み込む。
てめぇの身体にあたしの感情を流し込んでやる。
てめぇの全てを、あたしの想いで塗り潰す。
てめぇを、あたしが喰ってやる。
ああ、喰ってやる。
喰ってやるよ。
ナガレ。
いや。
流竜馬。
「ぐぅあああああああ!!!」
いったん口を離して、吠えて、そしてまた同じ場所を力いっぱいに噛む。
さっきよりも深くに突き刺さって、唇はあいつの体温を強く感じるようになった。
そしてあたしは、唇に力を込めて啜ろうとした。
あいつの魂の中身を。
その意思が、がくっと揺らいだ。
というよりも、消えていく。
流れてく。
あいつと触れてる口元が妙に熱い。
それで分かった。
「て…め…ぇ…!」
啜られてるのは、あたしだった。
あたしの牙を介して、あいつはあたしを喰い始めた。
そうか。
だからてめぇは。
ワザとあたしに、自分を傷つけさせやがったのか。
化け物か。
本物の化け物かよ。てめぇって奴は。
名は体を表すってもよ。
大概過ぎるだろうが。
竜。
怪物の中の、怪物。
その時、あたしは異変に気が付いた。
あたしに覆い被さるナガレの背中に、その奥に何かがいる事に。
見るな、とあたしの本能が叫んだ。遅かった。
あたしはそいつを見ちまった。
その瞬間、あたしは叫んでた。
無様な悲鳴を上げていた。