魔法少女きょうこ☆マギカ 流れ者達の平凡な日常(魔法少女まどか☆マギカシリーズ×新ゲッターロボ) 作:凡庸
青い月光が少女の姿を映し出す。
炎のような紅の髪は滝のように垂れ下がり、風を孕んで儚く揺れている。
薄いシーツのような黒いドレスの中に、少女の裸体が見えていた。
細い鎖骨、あばら骨の形が薄く浮かぶ慎ましい膨らみの胸、存在を主張してやや上向きに先端を向けた朱鷺色の突起。
痩せている事により腹筋が浮かぶ腹、くびれた腰、細い太腿。
そしてその間にある女の部分。そこを彩る薄い赤の翳りも見えた。
白い肌と黒い布地との対比で、その部分はよりはっきりと浮き上がって見える。
その全てが艶めかしく、妖しい色香を放っている。
月光による光と闇を思わせる黒いドレスの融和による幻想的な色合いも相俟って、男を狂わせる魅力に溢れていた。
「聞こえてねぇみたいだから、もう一度言うぞ」
女の魅力と雌の色気を毒蛾の鱗粉のように振り撒きながら、佐倉杏子はゆっくりと口を開いた。
唇から零れた吐息には熱が籠もり、艶やかな声音で囁く。
それはまるで恋人に愛の言葉を伝えるように甘く――だが同時に酷薄な響きを持っていた。
そうして紡ぎ出された言葉は、ナガレの耳ではなく心に直接語りかけるような不思議な音色だった。
「あたしを抱け。ていうか、好きにしな」
そう言うと、彼女はソファに座るナガレの元へと倒れ込んだ。
こちらに身体の正面を向けている彼の身体の背に手を回し、その身を這い上がる様に身体を寄せて彼の両膝の上に尻を置いた。
彼女の体重を受けて僅かにバランスが崩れるが、ナガレはそれを気にした様子もなく黙ったままだ。
そんな彼に杏子の方から顔を近づけていく。
二人の顔の距離が急速に縮まり、鼻先が触れ合うまでになった時……ようやくナガレが動いた。
彼は右手を持ち上げると、杏子の肩に置いて押し留める。それを押し退け、杏子が迫る。
「お前、それでいいのか」
「よく見てみろよ。貧相だけど、あたしもちゃあんと女してるだろ?」
彼の問い掛けを完全に無視し、指先に触れた小さな肉芽を布ごと摘まんで引っ張る。
慎ましい膨らみも後を追って引かれ、彼女が指を離すと柔らかい弾力を示すようにたゆんと揺れた。
小さくはあっても、確かにそれは乳房であった。
「だから、それでいいのかって訊いてんだろが」
それを見ても尚、ナガレは一切の情欲を見せずに怒気を孕んだ言葉を彼女に与える。
対する杏子はつまらなさそうな顔をしながら、自分の左肩に添えられた彼の手に自らの掌を重ねて体表をスライドさせる。
向かう先は、先程まで触れていた彼女の胸だった。自分の鼓動を刷り込む様に、彼の手を自分の肉に押し付ける。
「抱け」
杏子は言葉を繰り返す。
それは懇願するような声でも、自分を求めて欲しいと望むような声でもなかった。
暴君が奴隷に命じるような、或いは絶対的な敵対者に向けるかのような声だった。
しかしそれでも、彼女の瞳の奥底には微かな怯えがあった。
ナガレはそれに気が付いていたが、敢えて気付かないフリをして彼女の誘いを拒絶し続ける。
柔らかく温かい杏子の胸に触れたナガレの手は、その形を楽しもうともせずにただ二人を隔てる壁のように重ねられているだけだった。
その頑なな反応を見て、杏子は目を細めた。
紅い瞳が発する視線の温度が低下していく。
紅い氷のような眼に込められている感情は失望か諦観か。
あるいはどちらも違うものなのか。
それは彼女自身にしか分からない事だろう。
だが彼女は行動を止めなかった。
「なら、勝手にやらせてもらうぜ」
そう言って杏子は彼の首筋に舌を這わせた。
唾液をたっぷりと着けた剥き出しの粘膜が、彼の肌を擦り上げる。
これまでこういった事は一切行わず、当然ながら処女でありながら、杏子の舌遣いは爛熟した娼婦のそれだった。
狙ってやったのではなく、知識で得たものを行使したわけではない。
ただ湧き上がる欲望と生来に備わった本能のままに行っているのがこれなのである。
杏子が彼の首を舐め廻し始めてから十秒が経った。
並の男なら既に快楽の虜となり、絶え間ない射精を繰り返してる頃だろう。
だが、相手が悪い。悪すぎた。
「お前、マジでどうしちまったんだよ」
ナガレは再び問い掛ける。淡々とした言い方を心がけてはいたが、声に滲むのは嫌気であった。
性欲など欠片も無い。
今受けている行為は、16歳とはいえ子供が行う不相応な背伸びであるという認識しかない。
「別に何とも思わねぇさ。ただ、これが一番てっとり早いと思っただけだよ」
言い終えると、杏子は彼の首に噛み付いた。
歯を立てるのではなく、唇と口腔を用いて吸い付き唇の跡を刻むべく行為に励む。
杏子の声に一切の変化はない。だが、それが強がりだとわかる程度には付き合いが長い。
たとえ、これまでの関係が、人間性を廃した破滅的なものであったとしても。
どうしたもんかね、と思いつつ、更にはイラっとしつつもナガレは彼女の好きなままにさせている。
昨日起きたコトがコトであるし、ここで拒絶してまた濁られでもしたら嫌に過ぎる。
そして経験上、魔法少女は欲望に忠実でこちらの話を聞きそうにも無い。
結論。
殺意を感じないし、今は子供が行う無害な遊びだから好きにさせとこうというコトになった。
彼がそう思う中、杏子は彼の首筋に5か所ほど唇の跡を刻むと彼の頭に手を回し、自分の胸をナガレの顔に押し付け彼の腹に下腹部を寄せて長い脚を彼の背に回した。
蜘蛛が獲物を捕らえたように。
「だいしゅきホールドっていうらしいな、コレ」
「知らねぇよ」
「また一つ賢くなったな」
杏子の胸に視界を塞がれる中、喉奥で彼はガルルと狼のように唸った。
「キリカみてぇな言い回しだな」という思いは頭の中で打ち消した。言ったら即座に彼女はキレたに違いないからだ。
そして杏子はその体勢のまま、彼に触れた部分をもぞもぞと動かし始めた。
自らの身体の匂いを、彼に刷り込むように。お前は自分の所有物だと示すように。
「覚えてるかい?前に、『力づくであたしを黙らせて、モノにしてみろ』って言ったコトをさ」
呪いのように自らの体臭を彼に刷り込みながら、杏子は言う。その香りは、ひどく甘ったるかった。
「そういやんなコト言ってたな」
彼もまた思い出す。
幾度か分からないほど繰り広げた、焼け爛れた大地に毒液を振り撒いたような不健全極まりない会話の中で、杏子が彼に告げた毒花のような言葉であった。
「覚えてるたぁ上出来だね。だからさ、それだよ。あんたのモノにされてやる」
彼から胸を剥がし、代わりに顔を近付け牙を見せながら威嚇のように、それでいて妖艶な表情で杏子は嗤う。
「食物連鎖って、習ったっつうか知ってるだろうけどさ。アレと同じさ。弱い奴を強い奴が喰う、その連鎖。これもその一つさ、あんたはあたしに勝ったんだからあたしを貪る権利がある」
息を吐きかけながらそう告げる。
彼女の息もまた、毒液を育む花の様に甘かった。
「…お前なぁ」
短い言葉であったが、そこには呆れの成分が多分に含有されていた。
これは想像以上に何かを拗らせてるな、という。
杏子はその反応すら織り込んでいたかのように話を続ける。
「ああ、やり方が分かんねぇんだな。悪ィ悪ィ」
弄ぶように言うや、杏子はドレスの中に右手を入れた。
その繊手の先で下腹部を素早く撫で、そして彼の前で五指を広げた。
指と指の間は、蜘蛛の巣のように拡がって照り光る粘液で濡れていた。
「………」
「へぇ」
何やってるんだこいつ、といった表情で無言のナガレ。
対する杏子は感心したような呟き。
真紅の視線は、自らが広げた五指に注がれていた。
「弄る時にそうなるのは知ってるけど…ふぅん。それ以外でも、こんなあたしでも股は濡れるんだな」
手を表裏に何度かやりつつ杏子は言う。
「まぁ、アレだよ。難しい事なんざねぇさ。あんたのアレをコレで濡れたあたしのココに突っ込んでブチ犯してくれりゃいい。心配すんなよ。こんな生活送ってるけど、ウリなんてしたコトねぇしする気もねぇからあたしのココは綺麗なままさ」
喜劇でも観てるかのようにケラケラと嗤いながら彼女はそう言った。
「だからさ、壊してくれよ」
「…あ?」
怒気を隠さずに、彼は訊き返した。
「大丈夫さ、あたしは正気だ」
怯えを隠しながら、杏子は返す。
たしかに、言葉は狂ってはいても眼はいつもの彼女のままである。
少なくとも見掛けの上は。
「多分、これはあんたのせいだよ」
「言いたいコトがあるなら言いな」
「あたしの中に溜まってたドロドロを、あんたが貪り食っただろ」
「ああ」
事実を彼は肯定する。そしてその喰らった感情の渦は、今も彼を苛んでいる。
「そのお陰であたしは今は心が軽い。こんなコトは初めてかもね。それで、気が弾んじまってるんだろうよ」
杏子は自分の心をそう分析していた。
案外にまともな思考に、ほんの少しだけ、些かという程度に安堵を覚えた。
「でも心が軽いってコトは、空っぽってこった。伽藍洞って感じだね。だから、それを埋めたいのさ。あんたが、ナガレが欲しい。というか……喰いたい」
自分を貪る権利があるといいつつ、彼を喰いたいという杏子。
矛盾があるという意識は、彼女にあるのかどうか。
「空っぽってのは結構不安なんだよ。だから新しい何かが、それも記憶と身体を切り刻むような刺激が欲しいし、空っぽの部分を埋めたいんだ。だから…頼むよ」
杏子の表情が変化した。
捕食者の顔から、哀願する少女のものに。
彼女が言う通りの不安感が押し寄せてきたという事か。
「情けねぇってのは分かってる。分かってるケド…。これもさっきみたいな……人助けか、アフターフォローだと思ってさ」
そう言って、杏子は腰を彼の太腿の上に置いた。
女の器から溢れた熱い体液が彼のズボンの布地を濡らし、柔らかい肉の感触とその温度を彼の肌へと届ける。
「一発だけでもいいから、あたしのココをブチ抜いてくれよ。あたしが痛みに強くて、傷なんてすぐに治るのはあんたも知ってるんだからさ」
彼の背に回した両手で、ナガレの背中を擦りながら彼女は言った。
嘘偽りは無さそうだと、彼は思った。
そして、彼はこう告げた。
「抱けば、いいんだな」