魔法少女きょうこ☆マギカ 流れ者達の平凡な日常(魔法少女まどか☆マギカシリーズ×新ゲッターロボ) 作:凡庸
「ん…く…ぅ」
「ふぁ…!ん…んんっ……くぅ…」
闇の中、二人の少女が身を絡ませていた。
照明を落とされた室内には、既に雌の香りが濃厚に漂っている。
当然ながら共に裸体であり、片方はやや身長が高く、胸と尻に着いた肉の量が多かった。
片方はやや低く、胸と尻は貧相であったが言い方を変えればコンパクトにまとまっていた。
もう一人の少女はそれらを愛おし気に撫で、そして朱鷺色の突起を口に含んで愛撫していた。
その動きは優しくも激しかった。
まるで、何かから逃げるように。
互いに肌を重ねて愛欲を貪るのは、人見リナと優木沙々であった。
既に行為の時間は二時間に達しており、両者ともに汗の珠を肌に浮かばせ、白い肌を桃色に染めている。
唇や胸、太腿や腹には幾つもの唇の痕が刻まれていた。
互いが互いを自らの所有物という証を刻むような、狂気を感じるほどの執拗さがあった。
言葉はなく、ただ互いを舐め廻して指を触れ合わせ、互いの体温と体液を共有し合う。
優木はリナの背に爪を立てた。リナはそれを受け入れた。
既に彼女の背には、幾筋もの爪痕が刻まれていた。
優木は背中を弓なりにしならせ、身体を蠢動させた。
リナは優木の身体を優しく抱き、離すまいとするかのように腕を優木の背中に絡めた。
そのまま二人は絡み合う発条ように身を動かし、互いの身を寄せた。
そして同時に快楽の頂点へと至った。
雌の部分から熱い雫が溢れ出す。それが互いの同じ部分を濡らした。そこは口づけのように重ね合わされていたからだ。
「優…木……」
リナは絞り出すように言った。そしてゆっくりと眼を閉じた。閉じ切られるまで、彼女は優木の顔を見ていた。
リナは優木の薄い胸の上に顔を置いて、寝息を立て始めた。
意識が消えるのを見計らって、優木は表情を変えた。
快楽に沈む少女の顔から、欲望と悪意に喜悦を輝かせた女の顔へ。
「くふっ……」
特徴的な笑い声を上げ、優木はまどろむ中で思考する。
リナは随分と自分に夢中になってきた。
理由は分かる。
怖いからだ。
あれから。
一月ほど前に垣間見たあの光景から逃げたいから。
伝説の魔女と、あの機械の鬼が繰り広げた地獄の光景から。
「ひきっ!」
そう思い返した時、彼女の意識は恐怖に沈んだ。
彼女もまたそれから逃げるようにリナの顔を抱いた。
気に喰わない奴である事は変わらないが、今はこの体温が欲しかった。
そして今の彼女には、リナしかいないのであった。
今抱いている此れが彼であったなら…そう思った時、優木は再び達していた。
熱く弾ける快感と、そこに滲む恐怖を感じながら優木は意識を失った。
「相変わらず、元気だね」
朗らかな声が回廊に木霊した。
うす暗い縦長の回廊の中を、黒い奇術師風の衣装に身を包んだ少女が歩む。
その左右には不思議な光景が広がっていた。
縦に五メートルほどの柱が大量に並んでいる。
柱は氷のような青白さで輝いていた。
内部には液体が充満しているのか、その中に時折気泡が生じた。
その柱の真ん中から少し上の辺りには………。
「こらこら、はしゃぎすぎだよ。でもそんなことはその、あれだ、ささいだ。だから赦してあげる」
それらを完全に無視して、少女は、呉キリカは歩んでいく。
回廊は床ではなく、二つ隣同士に並んだブロック状の足場が連なる遺跡じみた構造をしていた。
足場の下にはさらさらと水が流れていた。
空気も冷たく、時折白い冷気が少女の歩みを阻む様に回廊に広がる。
しかし当然ながらそれでキリカが足を止めることは無かった。
冷気は黒い衣装の表面で分かたれ、彼女の歩みによって引き裂かれた。
「大丈夫。何も心配しなくていい」
彼女は語りかけていた。
これまでも、ずっと続けていた事だった。
しかし、今の彼女は一人だけで歩いていた。
その前後や左右にも、共に歩む者はいない。
「冷たい思いなんてさせないよ。私の熱でぬくぬくしていておくれ」
愛おしそうに腹を摩りながら、呉キリカは言った。
太腿や尻に胸。
性を連想させる部位に魅惑的な肉を纏いつつも、彼女の姿は例えるならアシナガグモのような線の細い繊細さで構成されている。
その中に異変が生じていた。
それは彼女が常に手を添えている腹にあった。黄水晶の瞳もまた、そこを見つめていた。
「おかあさんが、まもってあげるから」
呉キリカの腹は、臨月もかくやと言った膨らみを帯びていた。
膨らんだ腹に触れぬよう、細長い脚が織り成す歩みの歩幅は狭く、膝も上げられていなかった。
それでいて、軽やかに足場を渡っていく。
その動きはゆったりであっても停滞はない。
腹に配慮しつつも、その歩みは軽やかだった。
「あ、蹴った。元気だなぁ……『キリカ』は」
自らの名前をキリカは言った。自分の腹に向けて。
「あ、また蹴った。ははは、わがままなベイビーちゃんだなぁ」
春の風のような朗らかな表情でキリカは言う。
愛に満ちた表情には、普段は空気のように纏われている狂気の欠片も無い。
しかしそれは、無いからではない。
彼女の存在自体が狂気そのものである為に、発露していないだけである。
「そういうところ、友人とそっくりだね……大好きだよ」
慈愛を込めて、キリカは語る。
腹を撫でつつ進む。
そして彼女は歩みを止めた。
その先は壁で閉ざされていた。回廊の最奥へと、彼女は辿り着いていた。
青白い壁の正面には、巨大な柱があった。
高さは左右のものと同程度だが、幅と厚みは三倍もあった。
柱の左右には複雑な形状の機械が配され、微細な音と共に稼働していた。
記録か維持か。
或いは------封印か。
その中にある者を、キリカは見上げていた。
無言のままに。
魅入られたように、じっと見つめる。
そこにあったのは、青い液体の中に浮かぶ女体であった。
キリカよりも二十センチは高い長身は、細くしなやかな四肢と珠のような白い肌に覆われていた。
豊満な胸と、前からでも分かる尻の膨らみは異性のみならず同性すら魅了するだろう。
それらに被さる様に、白銀の長い毛髪が水の中で揺れていた。
呉キリカは、それを、柱の中で眼を閉じて浮かぶ少女の姿を見つめていた。
もしも時の概念が存在していなければ、何も無ければ、彼女は永劫にそれを見続けたかもしれなかった。
しかしそれは果たせなかった。
背後で生じた音に、呉キリカは振り返った。それは足音だった。
振り返るその一瞬の間に彼女の腹は平常に、軽く抱くだけで折れそうな細いウエストへと戻っていた。
振り返ったキリカの背で、青紫のダイヤ状の宝石が輝いている。
宝石の中には、渦のように滞留する赤黒い流動体の存在が見えた。
そして彼女の表情もまた一変していた。
苛立ちを隠そうともしない、獰悪な美しい獣の貌と化していた。
「これはまた……性懲りも無く、随分と造ったものだねぇ」
そこにいたのは、黒い影たち。
鍔の広い三角帽子に黒いローブを纏った姿は、おとぎ話の魔女の姿を連想させた。
ゆったりとした服装であっても、それらが小柄な体格をしている事は見てとれた。
不気味なのは、その体格が完全に均一である事だった。
そしてその数もまた。
狭い足場の上には勿論の事、その姿は天井にも存在していた。
洞窟の蝙蝠の如く、両脚を歯車が並ぶ天井に張り付けてぶら下がっている。
それでいて帽子や衣服は重力に引かれていない。魔法によるものだろう。
呉キリカの前方には、彼女と同じ色を纏った無数の魔法少女達が群れていた。
眼深に被られた帽子によって、表情の半分は覆われていたが、それだけで十分だった。
隠れていない口元に浮かんでいるのは、揃いも揃って獣の表情。
鋭い牙を見せ、小さな唸り声を上げる可憐で狂暴な獣の貌がそこにあった。
「じゃ、始めようか。ちょっと今嫉妬で疼いてるし、大切な時間を奪われた罰を与えないと気が済まないんだ」
全くの怯えも見せず、キリカは両手から魔爪を放った。
赤黒い刃が、回廊に溜まる冷たい空気を切り裂いた。
それが合図だった。
無数の黒い魔法少女達は、一斉に呉キリカへ向けて襲い掛かった。
疾走や天井からの落下の際に帽子が傾き、彼女らの眼が見えた。
そこにあったのは、深紅の瞳。その隣も、背後の魔法少女も同じ色の眼をしていた。
憎悪と、そして飢えに満ちた輝きを放っていた。
牙を剥き出しにした口元からも唾液が滴り、顎まで垂れ落ちていた。
彼女たちは呉キリカを、文字通りの獲物としてみているようだった。
それに向けて、キリカも走った。そこには微塵の恐怖もない。
「きひっ」
狂気の吐息を漏らしながら、キリカの速度低下魔法と魔爪が放たれた。
直後に弾ける鮮血。
そして咆哮と金属音が鳴り響いた。
「私の妊婦さんごっこを邪魔した罪は、貴様らを臓物の山に変えて晴らしてやる。……生き損ないの紛い物共め」
湧き上がる憎悪を形にしたかのように、黒い禍つ風と化して暴れ狂うキリカ。
大量の血飛沫が回廊の中で跳ね、足場の下の水を深紅に染めて左右の柱を赤黒で穢す。
その柱の中にもまた、裸体の少女の姿があった。
全ての柱の中に、それが浮かんでいる。
封印された少女の裸体が無数に並ぶ異様な空間の中、黒を纏った者同士の凄惨な死闘が続いていく。
それらを眺めるように、柱の中に浮かぶ白銀の少女は一切の動きを見せずに静かに佇んでいた。
物語の裏で随分と進んでいたお二人
そしてまたロクな事にならなそうな事をしてるキリカさんでありました(いつもの)