魔法少女きょうこ☆マギカ 流れ者達の平凡な日常(魔法少女まどか☆マギカシリーズ×新ゲッターロボ)   作:凡庸

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第26話 会合

「お忙しいところ、お越し頂き感謝します」

 

「別にいいさ。こっちは暇を持て余してんだ」

 

 

 休日の昼下がり。

 風見野にあるファミレスの一つ。

 テーブル席を挟んで佐倉杏子と人見リナが対峙していた。

 真っすぐに互いの顔を見て、言葉を交わす。

 ほんの短いやりとり、更には敵意の欠片もない口調なのに、店内の雰囲気は剣呑なものとなっていた。

 大気が毒に変調し、呼吸するだけで不快感が身を苛む。

 そんな雰囲気が店内に満ちていた。

 

 

「んー!イタリアンプリンおいっしー!ナガレはどう思うー?」

 

「ああ。この固さがクセになるな。物を食ってる気がする」

 

「そっかぁ!じゃあ今度は飲めるくらいに柔らかいプリン作ってあげるね!好き嫌いはしちゃ駄目だよ?」

 

 

 その雰囲気を全く意に介さず、というよりも完全に平気な様子でナガレとかずみは会話している。

 ナガレは上記の会話の内容を自分の中で整理していた。

 

 硬いプリンが好き→柔らかいのは嫌い→じゃあ好き嫌いを無くすために一肌脱ごう。

 多分こんな感じだろうなと認識し、固めのプリンをスプーンの先で掬って口に運んだ。

 舌先と歯に感じる確かな抵抗が心地よい。

 確かに硬いものの方が、喰ってる感じがして好きなのだった。

 

 その二人の様子を意図的に無視するようにして、杏子とリナは対峙していた。

 そちらに注視すると、雰囲気が飲まれかねないと感じたからである。

 

 

「……産んだの?」

 

 

 その呟きは、この連中が座る席を基点に店内を汚染する、剣呑さと春風のような雰囲気に投じられた一石だった。

 リナ側の席に座る佐木京が呟いた一言だった。

 何を指しているのかは言うまでも無いだろう。

 闇のような黒い髪、血とも炎とも見える紅の瞳。

 そして服装はナガレと杏子の中間、というか私服の寄せ集め。

 

 リナは隣の京へとゆっくりと視線を動かした。

 ストローに口を付け、メロンソーダを啜る京がそこにいた。

 栗色の眼の中には、空ろな虚無が溜まっていた。

 何故そうなったのか、リナには痛いほど分かっていた。

 

 

「麻衣ちゃんはいなくなっちゃったのに」

 

 

 ずぞぞと啜り、京は言う。

 その言葉は、風見野自警団の長であるリナにも突き刺さった。

 京自身も、自分の無力さに加えてリナへの糾弾を含めていることを自覚していた。

 それが的外れであり、卑しい事とは知りつつも言葉は止められなかった。

 

 

「だから、なんだっつうの」

 

 

 横に向いていた視線を、リナは前に戻した。

 

 

「だったらどうしたってのさ?あたしはこいつの彼女でこいつはあたしの彼氏。ならヤることヤってるに決まってんだろが」

 

 

 ニヤ付きながら、グラスを片手でブラブラとさせ、挑発的な視線を送りながら杏子は言った。

 グラスの中身がコーラではなくアルコールでさえあれば、中々に様になる様子だった。

 

 

『おい』

 

 

 かずみと会話しつつ、ナガレは杏子に思念を送った。

 ちなみにかずみとの会話内容は、テーブルに置かれた妙に難易度の高い間違い探しについてだった。

 

 

ピシッ

 

 

 二つの陣営の間でその音は鳴った。

 京がストローで接しているグラスにヒビが入った音だった。

 杏子の態度に苛立ち、口を介して魔力が放たれたようだ。

 

 死んだような眼で、そしてゴミを見る視線で京は杏子を見た。

 杏子は平然として炭酸水を飲み干し、何が楽しいのか喉を鳴らして笑った。

 突き刺さるような視線など、意に介していないどころか酒ではないが飲み物の肴とでも思っているのだろうか。

 ついでにこれが佐倉杏子と佐木京の、会話になっていない初会話だった。

 

 名前が微妙に似ている二人であったが、仲良くしようという考えは皆無らしい。

 喧嘩を売った側なのは京だが、杏子の返事も大概どころか不健全に過ぎている。

 

 杏子を見ていた京の視線が流れた。

 その隣へと。そこに座る少年に。

 京だけではなく、リナも彼に視線を注いでいた。

 軽蔑と侮蔑と警戒。リナはそれに加えて嫉妬の眼差しを送っている。

 

 それらに気付かないふりをして愚者を演じつつ、ナガレは脳内でのたうち回っていた。

 風見野自警団の二人の脳内では、自分が杏子と性行為に明け暮れている様子が思い描かれていると思うと、今すぐ怒りの咆哮を叫びたくなるのであった。

 

 その様子が、彼の脳裏に映る。

 夜の廃教会、その前に広がる広場の草むら。

 地面に四肢を付けた杏子に自分が背後から覆い被さり、彼女の首筋を噛んで動きを止めている。

 首筋を牙が貫いたことで、そこからは血の滴が垂れる。

 しかしながら、杏子が上げるのは苦痛よりも嬌声が多い。

 

 彼の腰が前後に激しく振られ、裸体の胸を壊すかのように激しく揉み、杏子の胎内を肉の凶器で抉る。

 そんな場面が色や音、更には性の臭気も伴って脳裏に響く。

 

 それは妄想の域を超えたリアルさを持っていた。

 一つの世界、仮想現実とさえいってもいい。

 それが何かは分かり切っている。杏子の幻惑魔法である。

 

 

『安心しな。教育に悪いもんは、かずみには見せねぇしこのバカ共にも勿体ないから見せてやらねぇよ』

 

 

 杏子はそう、ナガレに思念を送った。

 ナガレは無言で耐えた。何か反応すると、それに応じて何をするか分かったものじゃない。

 

 

『……あの、ナガレさぁ。この女、さっきから何言ってるの……』

 

 

 杏子の思念が去ってから、今度はかずみが思念を送った。

 その声色には恐怖と不信感。

 暴走時の記憶は完全に無いとのことだが、先の敗北というか相討ちがあった為に杏子の事は本能的に怖がっているようだ。

 

 

『気にすんな。それより間違い探しの方が大事だ』

 

 

 強引に話を切り替えるナガレであった。

 苦労してるんだな、と記憶喪失の少女であるかずみも察し、今幾つ見つけたかの情報共有を行った。

 全10個の間違いの内、残り二つがまだ見つからない。

 

 

「さて、そろそろ本題に入りましょうか」

 

 

 静かな声でリナは言った。

 視線は冷たいままだが、仕方ない。とナガレは思うことにした。

 

 

「ソウルジェムが奪われた、とのことですが。麻衣が行動を停止する因果関係が不明です」

 

 

 リナの指摘に、杏子は眼をぱちくりとさせた。

 ソウルジェムは魔法少女の本体で、壊れたりしたら死ぬ。

 100メートル程度離れたら、ジェムからの信号だかが外れて肉体は死体になる。

 

 常識だろうがと杏子は思った。

 とはいえ彼女も、その事実は少し前に知ったばかりである。

 敵対に近い存在にはとりあえず、内心でもマウントを取るというのが基本方針のようだ。

 

 そして現在自分もソウルジェムから離れているが、無事な事については極力考えないようにしていた。

 考えても仕方ないし、今無事なのだから別にいいと。

 強がりではあるのだが、思い込みは大事である。

 実際、彼女が家族の死によって心を破滅させなかったのも、自分は死や地獄行きすら生ぬるいと、業罰を求める為に生きる必要があると認識しているが為である。

 

 しかしながら、リナの言葉には杏子も参っていた。

 口ぶりからすると魔女化の事すら知らないらしい。

 どうしたものか、と考えている彼女の傍らで、ナガレは手を掲げた。

 

 広げた右掌に魔力が集中し、形を成していく。

 形成されたのは、手のひら大の小さな黒斧。

 縮小された牛の魔女だった。

 

 当然ながら、リナは緊張した。

 戦端を開くべきか、常識人な彼女は迷った。

 その間に、ナガレは斧の中央の孔に左手を埋没させた。

 異空間に繋がる内部へと指先が入り、そしてすぐに出た。

 

 細くしなやかな指先には、白い物体が握られていた。

 翼のような、手のような。

 白い体毛に覆われた、生物の一部。

 

 一気に引かれると、全容が露わになった。

 猫に似た大きさ、耳から生えた長い翼か腕のような器官。

 その半ばには金色の輪が通され、身体に触れもせずに滞空している。

 顔は形状で言えば、子宮と卵巣の断面図にも似ている。その顔の下の首には、赤い首輪が通されていた。

 

 外界に触れた赤い眼が、ぱちぱちと瞬いた。

 

 

「久々だな、白丸。早速で悪いが、説明責任を果たしな」

 

 

 白丸と固有名詞を付けたキュゥべえの一体を掴み上げながら、ナガレは面白くもなさそうにそう言った。
















第一部の第30話 鏡映すは屍山に血河③
からずーーーーーーーーっと牛の魔女さんの中に入れられてた模様
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