魔法少女きょうこ☆マギカ 流れ者達の平凡な日常(魔法少女まどか☆マギカシリーズ×新ゲッターロボ)   作:凡庸

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第31話 母を求めて④

 佐倉杏子は眼を開いた。

 知らない天井が見えた。今日二回目の事だった。

 電灯が落とされ、室内には闇が満ちていたが魔法少女の視力であれば問題ない。

 

 

「起きてるかい、ナガレ」

 

「今起きた」

 

 

 キリカのベッドで眠る杏子の声に、床で眠るナガレは即座に反応した。

 常に交戦状態に等しい環境で生きてる為に、熟睡からの覚醒も異常に速いのであった。

 

 

「昼間寝たせいかな。寝つきが悪いや。他人の家に泊るのは久々だから、緊張してんのかもな」

 

「普通のコトだろ」

 

「別に気負ってる訳じゃないよ」

 

 

 杏子の反論は気負っているという事を認めるための補助にしかなっていなかった。

 彼を前にすると見栄を張りたくなるようだ。

 

 

「にしてもアレ……凄かったな」

 

「なぁ」

 

「なにさ、相棒」

 

 

 相棒の発音は、あいぼぉと言ったものだった。

 甘ったるいというか、哀願するというか。

 乗せられた意思は「話を聞け」であった。

 なんでもない、とナガレは返した。彼も随分と成長したものである。

 

 

「ちょろいな」

 

 

 反射的に杏子は呟いた。

 ナガレは歯軋りで返した。水晶が砕けたような音が響いた。

 しかしそれだけで、ナガレは前言を撤回しなかった。

 男に二言はないということだろう。

 

 ゾクっという感覚が杏子の背を走った。

 一瞬ではあるが、彼を支配下に置いたような感覚を覚えたのだった。

 やべぇ、これ、クセになりそう。

 と杏子は思った。

 

 これは覚えとこう。

 杏子はそう、肝に銘じた。

 

 

「大人の女の身体って、あたしと全然違うんだな…すっげぇ柔らかくて、温かかった」

 

 

 言いながら杏子は毛布の中で身体を手でまさぐった。

 張りと柔らかさのある肌であるが、その下の脂肪は薄い。

 ゆえに肉よりも骨の感触の方が強い。

 自分がキリカ母からされた行為を思い出すと、それらが相手の肉と肌に包まれる感触が全身を覆っていた。

 

 

「柔らかくて…温かくて……包まれてる気がした……子宮って場所の役割、それが分かった気がしたよ」

 

 

 腹を摩りながら杏子は言った。

 

 

「そうか」

 

 

 彼はそう返した。そうとしか言えなかった。彼は男であるからだ。

 何時終わんのかな、この話。

 とナガレは思った。

 そう思った事を、誰が責められるのか。

 

 

「あれは凄かったなぁ……あたしの全身を這い廻る綺麗な指……あたしの恥ずかしいところも触られて、中身もしっかり丁寧に洗われちまった……洗われちゃったよぉ……」

 

 

 彼は沈黙した。

 何も言えないからだ。

 

 最後の台詞の辺りが、惣流の台詞のパクリじゃねえかと思った。

 杏子自身は相変わらず惣流アスカが嫌いだが、案外ウマが合うんじゃないかと彼は考えていた。

 赤い髪と衣装の少女と赤毛で赤いスーツの少女。

 並んだらいい絵になりそうだった。

 

 

「……ハァ」

 

 

 杏子の溜息が聞こえた。

 熱く濡れた声だった。

 もはやよく聞く声である。

 構えた方が良さそうだなと、彼は思っていた。

 

 

「駄目だ。もう限界」

 

 

 それ来た、と彼は跳ね起きた。

 蒲団を跳ねのけ、ベッドから距離を取る。

 無音且つ無衝撃で両足を着いて着地する。

 その間も彼の視線はベッドから離れない。

 闇の中、ベッドの上で立ち上がる杏子の姿が見えた。

 ダラリと両手を下げ、背中を丸めた姿はまるで亡霊のようだった。

 

 その身体から、身に纏うゴスロリ衣装がするりと脱げていく。

 顕れたのは杏子の裸体…ではなかった。

 

 

「なんだよ。良い顔してさ」

 

 

 半月の笑みを浮かべ、杏子は嘲笑うように言う。

 良い顔とは、彼が今浮かべている愕然とした表情である。

 半年以上、彼と一緒に生活をしている杏子であるが、一度だけ見た事がある顔だった。

 自分の魂の宝石から、闇が噴き出た光景を見た時の彼の表情だった。

 だがしかし、今は…。

 

 

「お前……恥ずかしく…ねぇのか」

 

「恥ずかしいに決まってんだろ!!」

 

 

 呻くような彼の言葉を、杏子は叫びで返した。

 彼にははっきり聞こえる声で、尚且つ声量としては大したことが無い。

 このあたり、杏子の真人間さが伺えた。

 しかし、しかしである。

 そう赤面しながら叫んだ杏子の今の姿は。

 

 

「……肌、綺麗だな」

 

「それを見せつけるための服だからねぇ」

 

 

 言葉を選んだ彼の言葉。

 そして杏子は服と言った。

 確かに服だろう。

 胸の頂点と股の部分は隠れている。

 そこだけが、隠れている。

 

 太腿、膝、空に首。

 それらに通された、細長い黒を除いて。

 

 杏子が身に纏っていたのは、ラバー製のボンデージだった。

 ほぼ裸である上に、身体に衣装が喰い込んでいる故に余計に肉感と肌の具合が強調されている。

 彼からは前からだけが見えるが、後ろも想像が付く。尻はほぼ剥き出して、秘所だけが覆われているのだろう。

 

 男を悩ませ、欲情を促す為の衣装だった。

 その出処は考えたくない。

 未来永劫、地獄の中での闘争を続ける事を定められた彼をしても、直視したくない現実はあるのである。

 

 

「ナガレ」

 

「なんだ」

 

「あたしの処女、喰わせてやるよ」

 

 

 喰わせてやると言いながらも、杏子の表情は捕食者のそれである。

 今回はそれが、殊更に狂暴性を増していた。

 

 

「ここ、キリカの部屋だぞ」

 

 

 直接拒絶するより、そう言った方が欲望の鎮静化に繋がるだろう。

 彼はそう考えていた。

 何をやっても裏目に出る彼にしては、いい考えだった。

 

 

「だからいいんじゃねえか」

 

 

 艶然と微笑み、黒ボンデージ姿の杏子は返した。

 彼の考えは良い線をいっていたが、やはりロクな眼に合わないという因果が待っているのである。

 ふううう…と杏子は息を吐いた。

 

 彼が杏子に告げた言葉は、却って欲情と背徳感、そしてキリカへの征服感を促した。

 ベッドの上で、杏子は両手をワキワキと動かしていた。

 まるで肉に爪を立てた獣の手である。

 彼もまた身構えた。

 床板一枚の被害で済めばいいな、と思いながら。

 

 

「あ」

 

 

 そんな中、杏子が呟いた。

 喉が詰まったような声だった。

 

 

「あ」

 

 

 再び同音の声。

 手は下げられ、眼は虚ろとなっていた。

 ごく短期間の間で、杏子の表情は一変していた。

 

 

「ああ、あああああああ、ああああああああ」

 

 

 その声が続いた。

 明らかな異常だった。

 

 

「おい、お前」

 

 

 罠と疑いつつも、彼は接近して声を掛けた。

 その彼を、杏子の紅い眼が見た。

 

 ふとそこに、彼は違和感を抱いた。

 それは杏子の眼ではある。

 だが、視線がどうもしっくりこない。

 

 そう思っている間に、杏子の身体はベッドの上に崩れ落ちた。

 膝が曲がり、ほぼ剥き出しの尻がベッドのシーツの上にぺたんと落ち、背中から仰向けに倒れる。

 上半身を見せつけるようなポーズは、中々に煽情的だったが例によって、彼は欲情などしなかった。 

 

 

「……どうしよう」

 

 

 誰へともなく、彼は呟いた。

 とりあえず、これ以上脱がせるわけにもいかず、痴女同然の杏子の姿の上にゴスロリ衣装を着せた。

 そのまま二時間様子を見て、異常なしと判断してから彼は寝た。

 ここまで異常しかないのだが、彼も慣れたものである。

 彼自身、まともな存在ではないが故に。

 















佐倉さんの服装に関しましては、

『弓さやか パイロットスーツ』

とグーグル画像検索していただければと思います
大体あんな感じです
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