魔法少女きょうこ☆マギカ 流れ者達の平凡な日常(魔法少女まどか☆マギカシリーズ×新ゲッターロボ) 作:凡庸
「見滝原ほどじゃねえけど」
佐倉杏子がそう呟いた。
「ここも、まぁなんつうか」
彼女の呟きを、ナガレが引き継いだ。
肩を並べて歩く二人の前方では、輝くような街並みを、それ以上の輝きを宿した眼で見渡す少女がいた。
はしゃぎながら、舞うように歩道を歩いていく。
「「ハイカラな場所だなぁ」」
妙に古臭い例えを放ち、二人は従者のようにかずみの後に続いた。
見滝原同様に、風見野と比べると嫌になるほどに発展した街並みに複雑な思いを抱きつつ、楽しそうな表情であすなろ市を練り歩いていく。
「たしかこの辺りだったよな」
「テンプレみてぇな言い方」
杏子への問い掛けに、彼女は皮肉っぽい笑みで返した。
ムッとした彼は、彼女の挑発に乗ることにした。
「何も変なコト言ってねぇだろが。絡む必要あんのかよ」
「別に。強いて言えば原点回帰さ」
「原点回帰ぃ?」
「ああ。半年前のあたしのね。こんな感じだったろ?あんたの言葉とか態度に片っ端から喰らい付いて皮肉言ってた時」
「…その心は?」
「マンネリ化の予防ってヤツかな。付き合いは今後も長そうだしな」
「まぁな。てかそろそろ十か月くらいか」
「あんたが最初にあたしを犯してたら、今頃臨月か」
「笑えねぇ冗談だな」
「ちなみに採点したら何点よ?」
「着いたよ!!」
不健全で虚無の会話を重ねる二人に、かずみの眩い笑顔の声が割り込む。
彼女の手には地図と、目的地について記載された雑誌の切り抜きが握られている。
かずみが指さす方向へと二人は視線を送った。
直後、二人は落胆と胸の疼痛を覚えた。
「…こいつは」
「そういう…コトだろな」
苦々しさに満ちた呟き。
『バケツパフェ』なる代物が名物の喫茶店があるとされる場所には、巨大な建物が建っていた。
しかも。
「潰れてる…っていうか」
「造ったはいいが、とん挫したって感じだな」
気の抜けた声を出す二人。
首を傾げているかずみ。
なんともしまらない場面である。
二人が言った通り、その新しい建物は営業を行っていなかった。
外見や、フィルムが貼られたままのウインドウから中を見るにショッピングセンターのようだが、室内には照明はなく昼間だと云うのに陰鬱な気配を滲ませていた。
始まってすらいない、されど終わった場所。
二人は、孵化する前に死んだ卵を見たような気分になっていた。
「ねーねー」
ん?と杏子とナガレは全く同じタイミングで同じリアクションを取った。
異形の間柄ながら、やはり仲は良いのだろう。
「次行こうよ!次!」
気持ちの切り替えの早いかずみであった。
こういったところは見習わねぇとな、と二人は思った。
それからしばらくの間、三人はあすなろの街を散策した。
広場に放置された移動図書館の廃車を前に立って写真撮影をした。
なんかゲージュツ性をかんじるっ!とはかずみの言である。
次に近場に止められていたキッチンカーでクレープを買った。
「全部で。それを三セット」
という杏子の注文に店主は困惑し、ナガレは説得を行った。
ほどなくして納得する杏子。
その結果、
「六セットに変更で」
となった。
両手で抱えるほどの量のクレープが、数分足らずで年少者三人の体内に消えていった光景を店主は死ぬまで忘れないだろう。
美味い美味いと惜しげも無く口にし、その言葉通りの態度で綺麗に食べ尽くした事も。
そして直後、直ぐ近くのホットドッグ屋に赴き
「三十本」
と注文していたことも。
その後も練り歩く中で興味を持った店に片っ端から入り、料理を食べるなり飲み物を飲むなどして過ごしていた。
糖尿病だとか肥満だとか、全く気にしていない連中である。
いくら食べようとも腹は平坦で、それでいて食欲は無尽蔵なのが怖ろしい。
常人の十日分は軽く食べると、風見野発のストリートチルドレンたちは音を頼りにある場所へと向かった。
人々の歓声に絶叫に笑い声が満ちる場所へ。
接近に連れて、歩む足は早まった。
それはやがて疾走となって、そこを目指した。
「はしゃいでんな。そういうトコは子供かよ」
「真っ先に走り出した奴が言うんじゃないよ」
ナガレの言葉に杏子が噛み付くように楽しそうに返す。
「無駄口言ってないで、行こうよ!!」
急かすどころか怒りの様なかずみの声。
連中の前には広大な施設が広がっていた。
城を模した建物が連なり、その奥には高く伸びて蛇行し急降下していく線路とその支柱が見えた。
煌びやかな門には兎のマスコットが飾られ、ファンシーな筆記体にて『あすなろ市遊園地 ラビーランド』の文字が見えた。
先行するかずみを追おうとするナガレ。ふと右手に違和感を感じた。
「どうしたよ?」
その原因に対して尋ねる。彼の手を横に並ぶ杏子の左手が握っていた。
「彼女の役割果たしてる。忘れかけてたけど、あたしらは付き合ってるって間柄だろ?セックスしてくれねぇんだから、せめてたまにはその設定を使わせてくれよ」
そう言って彼の手を強く握り、犬の散歩のように前へと引いた。
毎夜の口付けや夜這い擬きは、彼女にとっての呼吸同然の生活の一部であるためか交際関係のイベントには含まれないようだった。
その事については特に考えず、引っ張られるのは癪なので彼は杏子を追い抜く勢いで先に進んだ。
張り合うかと思いきや、杏子は彼に合わせて引かれる側となった。
調子狂うなと彼は思いつつも、彼はその手を離さなかった。