魔法少女きょうこ☆マギカ 流れ者達の平凡な日常(魔法少女まどか☆マギカシリーズ×新ゲッターロボ)   作:凡庸

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第42話 紅の回想③

「あー…いいなぁ。こういうの」

 

「ほんとだねぇ。生きてるって気がするっ」

 

「あんまり先に行くなよ。熊とか出るみてぇだからな」

 

「はーい!きゃははははっ!」

 

 

 あすなろの郊外。

 名前は気にしていなかったが、整備された登山道をナガレとかずみが歩いていく。

 周囲に満ちるのは小鳥の囀りと、青々とした葉を宿らせた木々。

 そこに風が流れた。

 今はもう朝となり、白い輝きの陽光が木々を染めている。

 風には植物の青さと土の香りが含まれていた。

 生き物としての本能をくすぐるような匂いだった。

 

 そのせいか、その中にいる者達は実に生き生きしているように見えた。

 ただ一人を除いて。

 

 

「うー……あぁ……うう……あ」

 

 

 喃語を発しながら、口の端から涎を垂らし、表情に虚無を宿した佐倉杏子は陽光を浴びる。

 顔には影が降り、喉元までが陽光から遮られていた。

 杏子は今、ナガレの背中にいた。

 彼は大きなリュックサックを背負い、その上に更に杏子を乗せていた。

 

 リュックには簡易的な椅子が取り付けられていた。

 素材として用いられているのは蔓と枝。

 どうやら道中に拾い集めたもので造ったらしい。

 

 そこに杏子が乗せられている。椅子には背もたれから伸びた庇までが付けられていた。

 体勢的にはナガレと杏子はリュックを隔てて背中合わせとなっていた。

 それはまるで昔話に出てくる、薪を拾う農夫の様な姿…と、いうよりも。

 

 

「(………姥捨て山…………)」

 

 

 かずみはそう思った。

 決して思念には出さないように、表情にも出さないようにして思った。

 

 

「どうだ、杏子。良い眺めだろ」

 

 

 リュックの中の各種用品とジャケットに隠した武装、そして杏子を含め、彼の背負った重量は二百キロにも達していた。

 されどしっかりとした足取りで、重さを感じさせる事も無くナガレは歩いていく。

 その中で発した問い掛けだった。

 

 

「う……ぅ」

 

 

 杏子の返事は唸り声に近い。

 聞こえてはいるのだろうなと彼は思った。

 

 

「俺の代わりに景色はよく見ておいてくれよ。あとで感想教えてくれや」

 

「ぁ……あ……あ」

 

 

 努めて普段の様子を意識しながら彼は言った。

 そして新たに一歩を踏み出す。

 地面に触れたのは、土で出来た上向きの傾斜ではなく平面だった。

 景色も一変し、空には星々が煌き、周囲には白煙の如き霧が立ち込める。

 その中を、彼は進んだ。

 五歩歩いたとき、

 

 

「アトミック、パーンチ!!」

 

 

 叫びが聞こえ、爆音の様な風切り音が鳴った。

 直後、魔女を模した存在の『魔女モドキ』の発する結界が崩壊した。

 踏み出した歩みも傾斜を踏みしめた。

 現世を歩くナガレの元に何かが飛んでいく。

 右腕を伸ばして五指を開く。

 

 牛の魔女が召喚され、その手に握られる。

 形状は普段の斧槍ではなく、槍としての顕現となっていた。

 黒い槍穂が飛翔体を貫いた。

 その瞬間、再び異界が顕れた。

 更に数歩歩く。すると、

 

 

「ブレスト…バァーーーーーーーン!!」

 

 

 叫び、熱風、爆発。

 それはほぼ同時だった。

 先程と同じく異界が崩壊し、現世に戻った。

 その瞬間にまた何かが飛来し、ナガレは槍でそれを貫いた。

 

 しばらくすると、また同じことが起きた。

 

 

「サンダァァァァアアアアブレエエエエエエエエエエエエエエク!!!」

 

 

 星々を覆い尽くす曇天が空に広がり、そこから落雷が落ちた。

 かずみの魔女帽子がそれを受け、伸ばされた右手の人差し指から増幅されて放たれる。

 白光が異界を染め上げ、直後に山道へと戻った。

 また飛んで来たものを槍で受け止めた。

 

 

「マギカブレード!!」

 

 

「マギカタイフーン!!」

 

 

「ドリルプレッシャー…パーンチ!!」

 

 

「バックスピンキック!!」

 

 

「ニーインパルスキック!!」

 

 

 以下略。

 数歩ごとに生じる異界、襲い来る異形。

 それらを片っ端から、文字通りに蹴散らしていく。

 そうして生じた残骸を、かずみはナガレへと投擲する。

 それを槍で受け、異形の串刺しを作っていく。

 

 焼け焦げた白銀の翼を広げた白鳥、緑色の巨大なカメレオン、こんがりと焼けた蟹、胴体を貫かれた蜘蛛、捩じれた角を生やしたレイヨウ。

 消し飛ばされたものを除けば、そんな連中が撃破されていた。

 串刺しが増えると、ナガレは魔女に命じて遺骸を魔女の中へと格納させた。

 何かに使うのだろう。

 

 

「さっきから気になってたんだけどよ……」

 

 

 躍る様に軽やかに歩き、先を行くかずみの方を見ながらナガレは言う。

 

 

「お前、随分と力の扱いが巧くなってきたな。大したもんだ」 

 

「えへ、そうかなぁ」

 

 

 照れ笑いを浮かべるかずみ。

 

 

「うん、ちょっとだけね。頑張ってるんだ、わたしも」

 

「偉いぞ。俺も見習わねぇとな」

 

 

 笑いながらナガレは答える。

 そこに、ぱちぱちという音が続いた。

 手を鳴らす音だった。

 

 

「えらい、えらい」

 

 

 音と声の出処は杏子であった。

 この状態となって三日目、漸く希望が見え始めた。

 

 やがて、歩み続ける二人は山道を抜けた。

 木々と草花に囲まれた広い空間に出た。

 そこでナガレは立ち止まり、周囲を見渡した。

 

 

「これか」

 

 

 広がる光景に、彼はあすなろのガイドブックに乗せられた情報を重ねた。

 

 

「おぉ~」

 

 

 かずみも感嘆の声を上げる。

 木造の小屋があった。

 小屋の裏手からは白煙が昇り、熱と硫黄の香りがした。

 温泉である。

 

 ナガレは背後から振動を感じた。

 杏子が振り返り、彼の頭に左手を置いていた。

 

 

「……くひっ……ひ……ひひ」

 

 

 背後から聞こえたその声には、確かな意思を感じた。

 気にしない訳でもないが、立ち止まってても仕方ないので、彼は前へと歩を進めた。

 

 










…あーあ
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