魔法少女きょうこ☆マギカ 流れ者達の平凡な日常(魔法少女まどか☆マギカシリーズ×新ゲッターロボ)   作:凡庸

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第44話 再会

 ずぞぞぞぞ、と液体を啜る音が鳴る。

 続いてごくんという嚥下の音。

 

 

「ぷはっ」

 

 

 という呼吸音。

 栗色の髪をツインテールで束ねた少女が、正座をしながら発した音だった。

 手に持った湯呑をテーブルに置き、浴衣の胸元から取り出したハンカチで唇を軽く拭う。

 和室の中、机を挟んで少女の先には三人の年少者達がいた。

 少女から見て左にはかずみ、右にはナガレ、そして中央には佐倉杏子がいた。

 

 

「さて」

 

 

 極めて平静な様子で杏子が口を開く。

 

 

「バラすか」

 

 

 それは殺す、ではなく解体を意味する言葉だった。

 相手の、双樹の死はついでである。

 バラバラにして死ねばよし、死んでなければ殺せばよし。

 全て殺せば大解決。

 

 呼応するように、ナガレは左手を掲げた。

 部屋の端まで届きそうな、長大な斧槍が召喚され異界の道を開き始める。

 

 

「やめようよ」

 

 

 静かな声でかずみは言った。

 

 

「さっきのこと、もう忘れたの?人の迷惑になるからダメだって言ったでしょ」

 

 

 子供に諭すように、棘を含みつつも優しく告げるかずみ。

 言われた二人はシュンとなったような気がした。

 ナガレは即座に牛の魔女を消し去り、手を膝の上に置いた。

 この場の四人は、室内の雰囲気に合わせたのか全員が正座となっていた。

 

 

『回想するか?』

 

『いや、セルフでいいだろ』

 

 

 杏子の提案にナガレはそう返した。

 思い出された事は単純だった。

 山頂付近の温泉宿の入り口から浴衣姿の双樹が現れた瞬間、杏子は沸騰し襲い掛かった。

 だがその背後に宿の管理人である若い女性が見え、杏子は寸前で動きを止めた。

 どうするか、と思った矢先に肩を抱かれた。

 

 

「私のお友達です!」

 

 

 彼女を抱き締めたのは双樹だった。

 困惑と怒りが混在する杏子の思考に、

 

 

『人に迷惑を掛けるのはスキくない。あとで戦ってあげるから、今は私に合わせて。お願い』

 

 

 という思念が割り込んだ。

 少し考え、

 

 

『知るかボケ』

 

 

 と返した。

 そして口を開いた。発達した八重歯が煌く。首を喰い千切る積りなのだろう。

 その体が更に引かれた。

 少女の形に似た、しかし逞しい腕が彼女の肩を抱く。

 

 

「朝早くから騒がせてすんません。自分らも泊まります」

 

 

 とナガレは言った。

 管理人の女性は少し怪訝そうな表情をしたが、すぐに営業の笑顔となって「こちらへどうぞ」と言った。

 フロントで部屋のカギを渡され宿泊室へと案内される。

 移動中、ナガレは杏子から手を離していたが杏子は彼の腕にしがみ付いていた。

 二部屋に区切られた和室だった。

 去り際に女性は杏子の耳に

 

 

「壁は厚いのでご心配なく」

 

 

 そう呟いた。

 分かっていると言わんばかりの言葉に杏子は耳まで赤くなり、しばし顔を両手で覆ってその場で悶絶した。

 自分の口からは爛れた性発言を言えても、言われる事には慣れないらしい。

 

 

「ちょっと今後のお話をしましょう。私の部屋はあちらなので、どうぞこちらに」

 

「おう」

 

「うん」

 

 

 その杏子を放置し、三人は双樹の部屋へと移った。

 杏子が来たのは、それから五分後の事だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「何でここに居やがる」

 

「自然が好きなので」

 

 

 杏子の問いに双樹は答えた。

 真っ当な返事であった。

 

 

「自然は美しい。命に満ちた場所に来ると心が洗われる」

 

 

 うっとりとした表情で双樹は言う。

 洗われた川はヘドロになりそうだなと杏子は思った。

 言葉として言わなかったのは、キリカの家で入浴した際に湯船に浮いた身体の汚れや髪の脂を思い出して憂鬱になるからだ。

 

 

「それを邪魔するなんて…そもそも佐倉杏子、君は入浴のマナーがなってないよ」

 

「は?」

 

「平和に湯浴みをしていた私に向かって、水死体みたいにプカプカ浮いて近付いて来たでしょ?」

 

 

 杏子は記憶を辿る。そして「あ」と言った。

 

 

「あれお前だったのか。悪かったね」

 

 

 謝罪はしつつも、ゴミを見るような視線で見ながらの言葉だった。

 そして視線が嘲弄へと変化する。

 

 

「そういやあの後、逃げる奴の背中が見えたな。あー、そっか。てことはテメェ、裸で登山したのか。すっげぇ変態だな。金カムに出れるんじゃねえの?そのままツキノワグマや鹿とでもよろしくやったのかよ?」

 

 

 悪魔のような表情で笑いながら杏子は言う。

 その傍らでは、ナガレがかずみの耳を塞いでいた。

 

 

「変態、淫乱、露出狂、獣姦女、ヤリ〇ン」

 

 

 その他聞くに堪えない悪罵が杏子の口から漏れていく。

 この時、杏子は双樹の顔を見ていなかった。

 テーブルの端で隠れた、彼女の下腹部に視線を落としてそう言っていた。

 

 

「よくもまぁ、そこまで立石に水で言えるもんだね。ここには自分もいるっていうのに」

 

 

 腹を摩りながら双樹も返す。

 

 

「ああ、なんと愛おしい魂たち。まるで、いいえ、正に私が宿した新しい命のよう」

 

   

 眼を細ませてうっとりとする双樹。

 胎の奥には、奪い取った魂の宝石がぎっちりと詰め込まれている。

 呉キリカと朱音麻衣、そして今彼女と会話している佐倉杏子のものも。

 

 

「ああ、そういやそうだったな」

 

 

 今気付いたように杏子は言った。

 そして表情に殺意が宿る。

 

 

「じゃあ早速言うけどさ。おい変態女、穏便に済ませてやるから朱音麻衣のソウルジェムを寄越しな」

 

「へ?」

 

「何さ、難しい事言ってねぇだろ?」

 

「いや、あの、自分のじゃなくていいんですか?」

 

 

 異次元的な会話の中、双樹は困惑していた。

 

 

「ああ、別に不便してねぇからな。今はまだいい」

 

 

 これは事実である。

 佐倉杏子のソウルジェムは、何故か距離制限が消え去っており挙句の果てに破壊不能となっている。

 また双樹の体内にある魂に穢れの蓄積は感じられない。

 よって、手元に置いておく必要が今のところはないのであった。

 今の佐倉杏子は、魔法少女かも疑わしい存在と化していた。

 

 

「あの…佐倉杏子、二次創作って知ってます?原作ありきの作品に手を加えるものなのですが、あなたはその世界の住人なので?」

 

「知るかバァカ。あと二次創作くらい知ってるよ。趣味でエヴァの二次書いて、ハメに投稿してるしな」

 

「脱線しますが、内容は?」

 

「暗い部屋に監禁された惣流が鑿やノコギリに金槌、紙やすりや硫酸に釘や針、あと苦悩の梨で」

 

「分かりました、ごめんなさい。私そういう生々しいの苦手なの。グロ耐性とか無いの」

 

 

 首を左右に振って双樹は続きを聞くのを拒んだ。

 これからがいいとこなのに、という表情を杏子はした。

 そのまま彼女は横を向いた。

 かずみの両耳を手で押さえているナガレの顔を見た。

 

 

「なんなんだよこいつ。話通じねぇんだけど」

 

「やかましい」

 

 

 怒りを顕わに彼は返した。

 それは不健全過ぎる会話に業を煮やしたのか、それともかずみの前でなんてコトをという怒りか。

 多分その両方だろう。

 当のかずみはと言えば、場の雰囲気には流されずに熱いお茶を飲みながら茶菓子を食べている。

 逞しいに過ぎる少女だった。

 

 

「前にも言ったけど、オリ主といえばそちらの彼もだね。何なの君ら、世界の法則を乱してるよ?自覚ある?」

 

 

 心底からの疑問と不信感の言葉を双樹は言う。

 

 

「知るか」

 

 

 彼の返しは、それらを切って捨てるかのようだった。

 

 

「いいから、奪った連中を返しやがれ」

 

 

 短い言葉だったが、その声に秘められた意思は室内の気温を温暖から冷気に変えたかのようだった。

 双樹も思わず息を呑む。

 半面、杏子に灯るのは灼熱の意思。

 

 

「もういいだろう。さっき言ってた、後で戦ってやるのをそろそろやってもらおうじゃねぇか」

 

 

 双樹を睨む杏子。

 獲物を見つけた雌獅子の視線であった。

 

 

「その腹掻っ捌いて取り出してやる。さっき自分を妊婦みてぇに言ってたけど、妊婦ごっこついでに疑似的な堕胎経験も味わえばいい」

 

 

 悍ましいに過ぎる言葉を、獰悪な表情のままに杏子は告げた。

 

 

 











口が悪すぎる
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