魔法少女きょうこ☆マギカ 流れ者達の平凡な日常(魔法少女まどか☆マギカシリーズ×新ゲッターロボ)   作:凡庸

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第44話 再会②

 山道を二人の少女が歩く。

 丈の短いワンピースに長ズボン、黒い長袖の上着にミニスカートといった、登山にはやや不向きそうな服装の二人だった。

 前者は少女にしては長身、ショートヘアの髪型に眼鏡が良く似合っていた。

 後者はモコモコとした質感の長髪を腰まで伸ばした、小動物じみた少女だった。

 

 

「あーいーつー!」

 

 

 怒りを隠しもせず、長髪の少女が言った。

 外見に反して、やや攻撃的な性質を持つらしい。

 

 

「あれほど先に行くなって言ってたのにい!」

 

「そう怒るな、と言いたいが見つけたら説教の上にしばらく外出は差し控えだな」

 

「ねぇねぇ、あいつは私達の仲間だと思う?」

 

「難しい問い掛けだが、そうであると思いたい」

 

 

 言葉を交わす二人。

 斜面は平面になり掛けていた。

 二人の少女の視線の先に、湧き上がる温泉からの白煙を友とした建物があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「聞こえてねぇんなら、もう一度言ってやる」

 

 

 静かに燃える炎のような声で杏子は言う。

 

 

「テメェが胎に溜め込んだソウルジェムを返しやがれ。そいつらを我が子って呼んで妊婦ごっこしてるんなら、テメェの股からそいつらをあたしが引っ掻き出して堕胎の体験コースもさせてやら」

 

「最悪」

 

 

 双樹の返しは、正にその通りだろう。

 だがしかし、双樹も双樹で最悪の性癖を今も実行中である。

 彼女の趣味は魔法少女からソウルジェムを奪ってそれを嚥下し、魔法を用いて子宮内に格納して愛でる事なのだから。

 

 

「しかしながら、まぁ、いいでしょう」

 

「ああそうかい。じゃあさっそく股でも広げな。上手いとこ膜だけは残してやるから……え?」

 

 

 最悪の発言を中止する杏子。

 同意されるとは思っておらず、彼女はその発言を実行に移す気だった。

 

 

「その最低最悪な発言の事は今は見逃すよ。返すって言ってるの」

 

 

 呆気にとられる杏子であった。これに関しては、ナガレも同じである。

 

 

「なーんか、最近寝つきが良くなくて。君らを仕舞ってからなんだよねぇ。なんか汚染されてる気分」

 

「そいつぁ良かったな。で、例えば?」

 

「そうですねぇ。朧気ですが、三つの光だか闇だかな影が互いを喰らいあってる、または犯し合ってるみたいな悪夢を見るね」

 

「想像力が豊かで、よろしいこって」

 

 

 皮肉と呆れを口にする杏子だが、彼女も大概だろう。

 寧ろ行動ではなく発言で見れば、現状では杏子の方が遥かに酷い。

 

 

「まぁ、そこも愛おしくもあるのですが」

 

 

 うふふと微笑み下腹部を撫でる。

 彼女にとって、子宮の中に詰め込んだソウルジェムは我が子同然なのだろう。

 そこで杏子は疑問を抱いた。

 答えは決まり切っていそうだったが、問わずにはいられなかった。

 

 

「お前、罪悪感とかねぇの?」

 

「???????」

 

 

 双樹は首を傾げた。

 だろうなと杏子は思った。

 あまりにも予測通りだったため、肩透かしを感じた。

 その一方で、双樹の狂気を再認識した。

 さっさとこいつとは永遠にオサラバしたい。

 杏子はそう思った。当然だろう。

 

 

「しかしながら、条件があります」

 

「なんだ?安楽死がお望みか?」

 

「これです」

 

 

 杏子の言葉を完全に無視し、双樹は浴衣の胸元に手を入れた。

 胸元がはだけ、それなりに大きな胸が少し零れた。

 自分のそこと比べたのか、杏子は歯軋りした。

 本来の用途として使う予定は無いが、性的な道具としての用途を考えれば大きい方がいいというコンプレックスがそうさせていた。

 そんな杏子を他所に、双樹はテーブルの上に何かを置いた。

 500ミリ入りのペットボトル程度の大きさの物体だった。

 それは銀色の光沢を放っていた。

 

 

「なんだ、これ」

 

「メタルゲラスです」

 

「ゴジラ映画の怪獣か?」

 

「それは宣戦布告と受け取ってよろしいでしょうか?」

 

「知らねぇから訊いてんだよ」

 

「ならよろしい。自らの無知を恥じないところはスキくなくない」

 

 

 双樹は満足げに頷いた。

 それを無視して杏子は、テーブルの上に置かれた物体を見た。

 直立歩行したサイのソフビ人形だった。年季が入っており、銀の装甲が所々で剥げている。

 

 

「で、これが条件だって?」

 

「そう言ってるでしょうに。これが欲しいのです」

 

「本物が欲しいっての?」

 

「イエス」

 

「こいつは空想の産物だろ?」

 

「?だから?」

 

 

 双樹は首を傾げた。杏子の言葉の意図が伝わっていないらしい。

 或いは理解する気もないのか。

 杏子は黙った。

 双樹の狂気に圧されたのだろう。

 

 

「そもそもこの存在の素晴らしさと私の出逢いについては」

 

 

 双樹は熱の入った言葉を吐き始めた。

 展開が予想外過ぎて、杏子は黙るしかなかった。

 どうするかと考える杏子の眼の前で、双樹が熱心に語っている。

 杏子の傍らでは、ナガレがソフビ人形に対する既視感を思い出していた。

 

 

「そういやキリカが言ってたな。ヤンデレなホモがどうたらとか」

 

「「「シャラァアアアアアアアアアアアアアップ!!!」」」

 

 

 双樹がシャウトを放った。

 声は一つだが、三人分の声だった。

 声は怒りと嫌悪で出来ていた。

 余程触れられたくない話題らしい。

 

 

「うっさい」

 

 

 かずみは五杯目のお茶を飲みながら言った。

 ナガレが耳を塞いでいたが無意味だったようだ。

 

 

「失礼。私達はメタルゲラスは好きですが付属品と言う事になってるコスプレ怪人と中身は大嫌いなので」

 

 

 吐き捨てる双樹であった。

 悪意は止まらず更に続いた。

 

 

「というか他の全てが嫌いですね。あの作品は尊敬できる人が殆どいない」

 

 

 嘆きさえ交えて双樹は言う。

 何を言ってるのか分からないが、ナガレは「何の話だ?」とは言わなかった。

 また話が長くなりそうで、更に他人の趣味趣向に興味は無いからだ。

 しかしながら、双樹の発言の数々から光明が見えた。

 

 杏子を見ると、彼女も察した。

 テーブルの両サイドに回って持ち、壁の隅に除ける。

 始まった奇行を、双樹は怪訝な顔で見守った。 

 かずみはお茶と茶菓子を確保して移動していた。

 

 手を伸ばすナガレ。

 牛の魔女が召喚されて握られる。

 ほぼ同時に魔女は斧の中央に開いた孔から何かを放出した。

 空中に躍る巨体、それに向けて彼は斧槍の乱舞を見舞った。

 

 物体が切り刻まれて破片が散る。

 それらを魔女は強力な吸引力で以て捕食した。

 落下する前に加工が完了した。

 床に接触する寸前、ナガレの右足がそれを受け止めて衝撃を緩和させ、静かに置いた。

 

 

「ざっとこんなもんか」

 

 

 斧槍を肩に担いで彼は言った。

 彼の足元には、全長五メートルから三メートル程度に縮んだ魔女モドキの遺骸が置かれていた。

 その外見は、

 

 

「め…メタル……ゲラス……!?」

 

 

 仰向けに置かれたそれに前に跪き、震える声で双樹は言った。

 

 

「素晴らしい……この造型、光沢、そして角…嗚呼、正に完璧な生物」

 

 

 杏子はナガレを見た。

 

 

『さっき、冗談で獣姦女って言ったけど…案外間違って無さそうだな』

 

『………』

 

 

 ナガレは黙った。

 なにも返したくなかった。

 

 

「私は幼いころから自然が、生命が好きでした。その切っ掛けはこの存在にあったといっていい。将来はサイや像、獣の毛皮を狙う腐れ密猟者たちを粉砕する取締官になりたいのですが、その夢はメタルゲラスあってのものでした」

 

「テメェ本人が薄汚ぇ狩人だろ」

 

「魔法少女全般がそうでは?」

 

「だろうな。その中でもテメェは特級のド汚さだ」

 

 

 眉間に亀裂の様な皺を刻んで言う杏子。

 特級のと言ったが、同じかそれ以上に汚いと思っているものが二人いる。

 呉キリカと朱音麻衣である。

 かつて汚さの最筆頭だった道化が除外されているあたり、憎悪にもインフレがあるのだと杏子は実感した。

 

 

「?私はソウルジェムを常に綺麗にしているのですが」

 

 

 やはりというか全くの自覚のない双樹であった。

 しかし同時に杏子とナガレは疑問を抱いた。

 何故こいつが持っているソウルジェムは、輝いた状態が維持されるのかと。

 だが今はそれよりも大事なことがある。

 

 

「さっきの続きだ。こいつはくれてやるから、さっさとこいつらの魂を」

 

 

 そう言っているとき、背後の扉が開いた。同時に

 

 

「やい双樹ども!!勝手に先に行くなって散々に」

 

 

 少女の叫びが轟いた。

 そして、途中で停止した。

 室内にいる四人の存在、その内の一人を見た時に。

 長い髪の少女の視線は、黒い長髪の少女に注がれていた。

 闖入者の少女は、眼と口を見開きながら黙っていた。

 口と肩は、わなわなと震えていた。

 

 その背後には長身の少女がいた。

 そちらもまた、かずみを見ていた。

 

 

「そん……な……」

 

 

 愕然とした言葉が漏れた。

 その二人を、かずみも見ていた。

 赤い瞳が、二人の少女を凝視している。

 

 

「………えら」

 

 

 小さな声を呟いた。

 真っ先に反応したのはナガレだった。

 

 

『やべぇぞ』

 

 

 杏子にそう思念を送る。

 杏子は即座に反応し、魔法少女へと変身した。

 同時に、かずみの全身を黒い光が包んで弾けた。

 

 

「お、ま、え、ら、ああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

 

 

 魔法少女姿となったかずみが、背後の二人へと向かって跳躍した。

 両手には十字の杖を変形させた剣が握られていた。

 接触の寸前、牛の魔女が異界を発生させ、その場にいた全員を自らの領域へと誘った。

 

 

 

 

 

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