魔法少女きょうこ☆マギカ 流れ者達の平凡な日常(魔法少女まどか☆マギカシリーズ×新ゲッターロボ)   作:凡庸

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第45話 開戦③

「サンダァァァアアアアアアアブレェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエク!!!!!」

 

 

 聞き覚えの無い名称、見覚えのある技。

 されど桁違いの範囲と威力となった雷撃に、サキもまた雷撃で返した。

 一瞬の拮抗、直後に蹂躙。

 

 

「くぁっ……!」

 

 

 皮膚の表面が爆ぜ、衣装が炭化する。

 悲鳴を上げる口からも雷撃が零れ、桃色の舌が炭と化す。

 両手足は棒のように伸び切り、指先が紫電に焼かれて半ばから剝落する。

 その両手が肘の辺りで爆散した。

 

『ドリルプレッシャー』『アトミック』。

 そんな言葉を、焼き切られる寸前のサキの鼓膜が捉えていた。

 蕩けた眼鏡が眼球に張り付き、白濁の後に破裂する。

 その視界の端に、自分の両手を砕いて飛翔する何かが見えた気がした。

 そして宙で仰け反るサキの首を黒い手が掴んだ。

 

 

「ユルサナイ」

 

 

 鼓膜は既に破れている、どころか消えている。

 その声は首を握る手から振動として伝わったものだった。

 短い言葉だったが、煮え滾る様な憎悪が込められていた。

 

 硬直した腕を強引に動かし、サキは首を拘束する手に焼け焦げた両腕を添えた。

 それは抵抗を示す為のものではなかった。

 ただ寄り添う為に、重ねられた腕だった。

 

 

「ごめん……なさい………」

 

 

 紡がれる謝罪の言葉。

 雷撃によって体内は焼かれており、歯も殆どが消し炭となりかけている。

 絞り出された言葉に対し、かずみは答えた。

 首を拘束する右腕がぐいと引かれ、耳まで裂けたような口へとサキの顔が招かれる。

 

 かずみの口内に生え揃った歯は全て、鮫の牙の様な獰悪な形状へと変化していた。

 彼女の背で外套が靡き、翼のように広がる。

 その内側では、かずみの顔と同じ形の無数の顔が蠢いている。それらがさざ波のように広がり、マントの表面で跳ねる。

 

 顔に生じた口の中には牙が生え揃い、顔と顔の間からは細く黒い手が伸びた。

 それらが一斉に、サキの身体に触れた。

 炭になった肉が砕け、内側の桃色の肉が曝け出され、そして。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「てんめぇええええええええええええええええ!!!!!」

 

「うるせえええええええええええええええええ!!!!!」

 

 

 金属同士の激突が奏でる轟音に、年少者二人の咆哮が鳴り響く。

 剣戟は火花と鮮血が伴っていた。

 振うのは斧槍と大剣。共に全長が三メートルにも達する巨大な兵器であった。

 にも拘らず、二人が追った負傷は浅い。

 精々、腕の半ばまで斬られて筋肉と骨の断面が見える程度である。

 通常なら重傷だが、この程度では戦闘不能どころか続行に差支えは殆ど無い。

 

 

「何が戦う気は無いだ!自分の行動を見てみろ!!」

 

「ああ!今もその積りだがな!だから武器を置くから少しだけ離れ」

 

「るわけねぇだろおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

 

 

 破壊の乱風の中で言葉を交わす。

 全くとして噛み合わず、話が一向に進行しない。

 この二人は初対面だが、こういった現象は人物を問わず何時もの事である。

 斬撃が互いの獲物を刻み、衝撃波だけで互いの肉が刻まれる。

 桃色の少女の顔にイラつきによって歪む。

 ラチが明かない、その表情はそう言っていた。

 互いの剣技はほぼ互角であり、状況を動かす為には変化が必要だった。

 

 

「ラ・ベスティアアアアアアアアア!!!!」

 

 

 少女が叫ぶ。

 露出度が高いに過ぎる衣装を纏った全身から魔力が迸り、少女の周囲に無数の光が浮かぶ。

 不吉さを感じ、ナガレは少女の斬撃を斬り払って後方へと退避した。

 硝子化した地面を砕きながら背後に跳ぶ彼に向かい、複数の影が迫る。

 

 斧槍の一閃が奔り、それらを纏めて両断する。

 切り裂かれたのは子猫くらいの大きさの熊の縫いぐるみ、魔力で作られたテディベアであった。個性があるのか、個体ごとに微妙に体毛の色が異なっていた。

 牙を生やして鋭い爪を生え揃わせていたが、その形には確かな可愛さがあった。

 枕元に置けば、持ち主に癒しを与えるであろう愛しさを備えている。

 

 それが数十数百もの群れとなって、津波のように彼に向って押し寄せていた。

 

 

「喰い尽くせ!ボクそいつ嫌い!!嫌いだからキライ!!」

 

 

 全身を覆い尽くすテディベアの内側で、彼は理不尽に過ぎる叫びを聞いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そこです」

 

 

 冷ややかな声で突き出される剣、切り裂かれる頬。

 剣に宿るのは凍てつく冷気。

 弾けた皮膚や溢れた鮮血が、与えられた運動エネルギーの形を維持して氷結する。

 

 

「あら素敵。まるで睫毛が増えたみたい」

 

「ああそうですか死ね!!」

 

 

 双樹の言葉通り、杏子の頬に刻まれた傷はそんな形に凍っていた。

 皮膚と血で出来た、凄惨な睫毛である。

 怒りを宿した裂帛の突きを、双樹はひらりと躱した。

 

 

「死なないってば。私は主人公なんだから」

 

 

 回避の最中、交差した一瞬で剣が振られた。

 それは杏子の頬の『睫毛』を正確になぞった。

 今度は逆に、剣先の熱が皮膚を焦がして血液を蒸発させた。

 熱は斬線から近い彼女の右眼にも伝わり、深紅の眼を高熱により白濁させた。

 

 

「ぐがぁあああああ!!」

 

 

 苦痛の叫びを上げて槍を繰り出す杏子。

 対する双樹は微笑みを崩さず、躍る様にステップを踏む。

 厚底のヒールが硝子を踏み割り、可憐な音を立てて宝石のように破片をバラ撒く。

 

 聖女のように微笑みながら双樹は右手を突き出した。

 五本の繊手が束ねられた掌の先にあるのは、杏子の額。

 

 

「カーゾ・フレッド」

 

 

 詠唱された瞬間、杏子は身を捩った。

 左半分を冷気が掠めた。発生源は双樹の掌から放たれた氷塊。

 ツララ状のそれが杏子の左側頭部を通り過ぎ、掠めた皮膚を氷結させて捥ぎ取った。

 杏子の左眼が、赤い瞳を内に宿した氷となって砕け散る。

 熱と冷気によって盲目となった杏子、双樹は刃を振い続けた。

 

 

「ほらほら」

 

「こちらですよ」

 

「佐倉さんちの」

 

「お嬢さん」

 

「私達の」

 

「剣の方へ」

 

「「鬼さん、こちら」」

 

 

 一刀ごとに人格を変え、時に重ね合わせながら双樹は杏子を切り刻む。

 肉がそぎ落とされ、肉の断面に詰められた黄色い脂肪が熱で焙られて肉汁を滴らせてから冷気で氷結させられる。

 腹を貫いた剣の切っ先からの冷気が腸を凍らせ、そこに放たれた蹴りによって体内で腸が砕かれる。

 異常極まりない苦痛に杏子は無言で耐えた。

 その様子にカチンと来たのか、双樹は更に刃を振った。

 

 可能な限り破壊は最小限に留めつつ、杏子の肌に火傷と凍傷を斬撃による切創を刻んでいく。

 それはまるで、佐倉杏子というキャンパスに傷という名の筆を走らせて自らの感性を描いていくかのようだった。

 事実、その際の双樹の顔は綻び、時折悩み、そして新しい描き方を見出した閃きによって輝いていた。

 

 対する杏子は防戦一方。

 盲目のままに双樹の攻撃に対抗するが、動きが遅く傷の程度を軽くするくらいにしかなっていない。

 ついに杏子の両膝が崩れ、膝立ちの姿勢となって停止した。

 全身の傷からは血と体液が、凍った皮膚の上を伝って滴り、また焼けた肉の上を赤黄色の氷が滑り落ちた。

 その様子に双樹は、正確にはあやせとルカは

 

 

『やっと理解してくれたんだ』

 

 

 という共通認識を抱いた。

 魂だけでなく、肉体も自分達に差し出してくれる。

 今の自分は杏子の魂を身に宿した、つまりは母に等しき存在であり、そんな自分に対し杏子は奉仕してくれてるのだと。

 双樹の美しい顔には感動が滲み、眼には涙が溜まっていた。眼の許容量を超え、両眼から涙が溢れた。

 頬を伝う涙の熱さと冷たさ。

 それを感じながら、双樹は最後の仕上げに入った。

 

 高々と振り翳した両手の剣に灼熱と極寒の力を宿して剣同士を融合させ、その柄を握る指同士を絡ませる。

 氷炎の力を宿した一本の大剣を、杏子の頭頂目掛けて振り下ろした。

 頭頂から股間までを切り裂かれ、断面を晒して倒れ伏す杏子の姿。

 それを想像した時、双樹の雌は疼いて肉欲を迸らせ、複数の魂の宝石を宿した肉の袋は淫らに蠢いた。

 

 そのせいか、双樹たちは気付かなかった。

 白濁した杏子の右眼の奥で、血色の光が輝いたことを。

 破裂し、僅かな破片だけを眼窩に残した杏子の左眼が、黄水晶の色を宿したことを。

 

 

 

 

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