BLEACH come back the agent   作:寒桜

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2.少女と虚

 

 

 

 

 

 世界は巡る

 夜が明け、日が出るように

 

 世界は廻る

 出会い別れ、理を肥大させながら

 

 

 

 

 

 

 

 

 虚を倒した一護は浮上していく霊子が大気へと消えていくのを横目に斬月を背にかけ、倒れた子供へと近寄る。

 恐怖の為か疲労によるものなのか抱き起こした子供は反応を示さず、ただ規則正しい寝息を立てている。

 抱き起こした振動で被っていたフードがズレ、子供の容姿が露になる。

 街灯の光を全反射するように輝かしい金の長髪。まるで人形を手にしているように思ってしまうほど整った顔の造詣。微かに腕を通して伝わってくる熱と、発する微弱な霊圧から気を失っているだけだと改めて確認する。

 一護が少女から東の夜空に顔を向けた。

 目を細め気配を探ると、一人の霊圧を感じた。

 一護はその者がもう一体の虚を倒し終え、こちらに向かっていると理解すると数分後には来るであろう現空座町の担当に後始末を任せ空を駆けた。

 重力を無視すると言わんばかりの跳躍で屋根を伝い、一護と抱えられた少女は夜の闇に消えていった。

 

 ■

 

 ―― 午前一時十九分 浦原商店前 ――

 

 

 浦原商店と掲げられたとある一軒の店の前で一護は脚を止め、地に下りた。

 店の玄関硝子からは微少ながら明かりが覗き、住人がまだ起きていることを知らせている。

 一護は成れた手つきで引き戸を開き、中へと進む。両端に並べられた商品の店奥には障子張りの戸があり、一人の男が戸を開け出てくる。

「おや黒崎サン、こんな夜遅くにどうしました?」

 飄々とした様子で浦原商店店主、浦原喜助は来客に挨拶した。

 深く被った帽子の奥から覗く目は、一護の抱いているモノを見定めるように探っていた。

 一護は喜助に見易いよう近づくと、被せていた布を剥がし中を見せた。

 ――――瞬間、それを見た喜助の目が見開き、抱えられている子供から一護に視線を変える。何やら信じられない様なものを目の当たりにした様子でこちらを見てきた喜助に一護は静かに頷いた。いつもは掴み所のない態度をとっていた喜助がここまで狼狽する事態が、この手の中にある子供にはあるのかと一護の全身に緊張が走る。

 喜助が恐々と口を開き、一護はその言葉を漏らすことのないよう真剣に聞き入った。

「く、黒崎サン……ついに誘拐しちゃ、あぶろぅ!?」

 狭い空間の中、器用にも手が塞がっている中、一護の回し蹴りが喜助の顔面を打ち抜いた。

 

 

 

 ― 午前一時三十分 浦原商店居間 ―

 

 

「痛たたたた……も~冗談じゃないですか」

 喜助は蹴られた箇所を氷嚢で冷やしながら、扇子を胡坐を掻いて座る一護に向かって扇ぐ。

「うるせえ。冗談でも言っていいモンがあるだろうが! 何だよ誘拐って」

「いやね、瑠璃千代サンの件もあったんで黒崎サン、そういう気があるのかなーって」

「ねえよっ! 人を犯罪者予備軍見たいな目で見てんじゃねえ!」

 と、居間奥の襖から一人静かに入ってくる。

「鉄裁サン、どうですかあの子の様子は?」

「大きな怪我は見受けられませんでした。恐らくは疲労による気絶でしょう」

 鉄裁と呼ばれた男の報告を聞き一護は安堵の息を漏らす。

「それで?」

 喜助が鉄裁から視線を変えずに追の言葉を促す。

「間違いなくあの子供は霊体です」

「だが何処にも無かったと……」

「はい。雨殿に頼んで調べさせましたが、何処にもそれは無かったと」

 扇子を閉じ、喜助は一護に視線を戻す。

「妙ですねえ。魂魄ならば本来あるべき筈の因果の鎖が何処にも存在しないというのは……」

「そんなに変なことなのか?」

「まあ例外はいくつかありますが、死神でもないただの魂魄がそんな異常な状態にあることは限りなくゼロに近い確立ですね」

 と、ここで喜助は軽い音と共に扇を閉じた。

「ところで黒崎サン、その子といた虚に何か変わった点はありませんでしたか?」

「虚? 別にそれといって普通の虚だったぜ」

 霊圧だって高くはなかったし、と続ける一護に浦原は矛盾な問いをかけた。

「……その虚、虚閃を打ちませんでしたか?」

「はあ!? 虚閃って大虚以外でも打てるもんなのか?」

 浦原の質問に、一護は張っていた空気が一気に抜けた声を出す。

 通常、虚閃とは虚が幾百と混じり合った大虚が放つ技であり、虚の打てるようなものではない。

 そんな死神として当たり前のことを、自分よりもその分野を遥かに極めている喜助は聞いてきた。

「……なにかあったのか?」

「数ヶ月前からですが、ある同特殊の虚が何体か尸魂界に報告されているんです。外見も発する霊圧も変哲もない虚なんですが……どうにもその虚、大虚と同等の力を持っているらしいんです。大虚のように超速再生を行い、大虚のように虚閃を打つ。ここまででも異例な事なんですけど、数日前、その虚に居合わせた席官が重症、さらに三番隊の副隊長サンが負傷したそうです」

「――――ッ!?」

「その虚が初めに発見されたのが山梨の大月市、次に埼玉の秩父、川越、志木、川口、そして数日前に東京の鳴木市。その虚の行路を推測するに次に現れるのはココだと思ったんですが……どうにも違ったようですね」

 当てが外れた、というよりは可能性として聞いただけなのだろう。

「とりあえず、あの子供のことはこちらでお世話をしますので、今日の所はおやすみになってください。虚のことはまた後日説明しますんで」

 といい喜助は一護の帰宅を促した。

 居間にかけてある時計を見れば既に日が変わり二時間が経とうとしていた。たしかにこれ以上は翌日の授業にかかわる。折角、一年時の不調が消えたというのに、また前回の校門前の騒動のように教員にぶり返されては意味がない。

 渋々といったように一護は立つ。

 さよならというように扇を振る喜助と頭を下げる鉄裁を通り外に出る。

 春になったとはいえ、夜は四季に関係なく冷え凍る。

 これから……否、何時かは何かが起きるのであろう事態にどうしたものかと一息し。

 それから一護は静かに空へと飛んだ。

 深い深い夜の町に紛れる様に。

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