夏の日の出会い   作:流離う旅人

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日間ルーキーで48位にランクインしてました。これからも投稿頑張っていきます。


S.O.N.G.

連れられてやってきたのは、なんと潜水艦だった。

緒川さんが気を利かせてくれたのか、手錠を隠すために自分のスーツを貸してくれた。

 

……連行される人たちの気持ちがほんの少し分かったような気がした。

 

後ろから複数人の堪えたような笑い声なんて聞こえない。聞こえないったら聞こえないのだ。特に立花さんと暁さんの笑い声が目立つが、僕には何も聞こえてない。というより、何故暁さんもここにいるのだろうか?この現状で心が大分磨り減ったせいで、疑問には思うがあまり深く考えることはしなかった。

 

これから僕はどうなるのだろうか?

緒川さんは悪いようにはしないと言っていたが、そう簡単に信用することはできない。いざ考えてしまうと悪い方へと思考が傾いていってしまう。生きてまた陽の光を浴びられるように祈ることしか、僕にはできなかった。

 

「ここですよ」

 

緒川さんが足を止めた先には、鉄で拵えられた扉が鎮座している。

「ここに入るんですか?」と目で訴えるとニコリと笑顔で返された。

ゴクリと生唾を呑み込む。その音が嫌にハッキリと聞こえた。冷や汗が背中を流れ落ちていく。鬼が出るか蛇が出るか、入ってみなければ分からない。

 

「よしッ」と覚悟を決めて、鉄の扉へと一歩を踏み出す。扉は自動だったようで、左右に消えていった。

何が待ち受けているのかと身構えた僕を襲ったのは、

 

「「「ようこそ、S.O.N.G.へ!皐月千佳くん、私達は君を歓迎する!」」」

 

ーーー大量のクラッカーだった。

僕はポカンとして口を開けたまま固まっていた。開いた口が塞がらないとはまさにこのことか。もっと恐ろしいモノがあると思っていたため、拍子抜けした感を否めない。

 

あ、でも赤いカッターシャツの筋骨隆々な男性には素直に驚きました。漫画みたいにデタラメな筋肉をしているので、歓迎してくれている他の人たちよりも一際目につく。どうやったらこんな筋肉になるんだろうなぁ、と半ば現実逃避に浸るのも仕方ないことだろう。

 

「えっと、これは?」

「貴方の歓迎会ですよ、皐月さん」

「いや、何でだよ」

 

思わずタメ口で返してしまうぐらいには、頭が混乱しているようだ。

緒川さんに料理が並べられたテーブルへと案内され、いつの間にか料理が盛り付けられた紙皿を手渡される。

 

今この人僕と一緒に来たよね?どんだけ早業だよ。その素早さもっと他のところに活かしてください。

 

僕は深いため息を吐いて、チラリと紙皿の上にある料理を見た。貶している訳ではないのだが、お昼に食べたファミレスの料理よりも美味しそうだった。

 

…………ゴクリ。

 

ま、まあ?散々街の中を走り回って小腹が空いていたし、折角なのでありがたくことにしよう。うん、そうしよう!

 

手始めに唐揚げを口に運び、分厚い肉を噛むと肉汁が溢れ出す。あれだ。これは白米と一緒に食べたら唐揚げ一つでお茶碗三杯はいける。

すでに僕は先ほどまでの混乱が嘘のように、料理に舌鼓を打っていた。

そのまま次の料理に箸を伸ばそうとした時、右から貫くような視線を感じたので、目を向ける。

 

「じっーーーーー」

「うぉお!?って月読さんか。全然気が付かなかったや。今度はいつからいたの?まさかまた最初からだったりして」

「うん、そうだよ。美味しそうに食べてるから、いつ声をかけようか伺ってたら皐月が私に気付いた」

「あ、やっぱり最初からなんだ……」

 

僕は冗談のつもりだったんだが、本当だったらしい。料理を食べる前なら気付けたはずなのに……。侮りがたし月読さん。

月読さんはまだ不機嫌のようで僕を睨んでいる。若干だが、先ほどよりは鋭さがなくなったような気がした。

僕は、ずっと気になっていた街でのあの姿について聞こうか迷っていると僕たちの間に割って入る暁さんがやってきた。

 

「二人だけで話してないで、調と千佳もこっちで一緒に食べるデスよ!朔也さーん!二人を連れてきたデス!」

「おかえり切歌ちゃん。料理も一通り持ってきてあるから、わざわざ取りに行かなくても大丈夫だよ」

 

「ありがとうデース!」と朔也と呼ばれている男性に、暁さんは嬉しそうに抱きついていた。今のやりとりから察するに二人はそういう関係なのだろう。念のため、隣にいる月読さんに確認を取ると案の定だった。

 

「初めまして。ここのオペレーターを務めている藤尭朔也っていいます」

「は、初めまして!皐月千佳です」

「そう緊張しないでくれ、皐月くん。まだ不安だったり、知りたいことがあるとおもうけど。この歓迎会が終わった後に必ず説明するから、それまで楽しまなかったら損だよ」

「そういうものですか?」

「そういうものなんだよ。あとーーー」

 

藤尭さんはポンッと僕の手を肩に乗せる。

正面にはイイ笑顔を浮かべた藤尭さんが立っていた。イイ笑顔を浮かべた藤尭さんが立っていた!大事なことだから二回言ったよ!

 

「切歌ちゃんは俺の彼女なんだ。かわいいかわいい自慢の彼女なんだよ。初対面で何言ってんだって思うだろう。でも、これだけは言わせてくれ。ーーーもし切歌ちゃんに手を出したらどうなるか、分かるよね?」

「イエス、サー!」

 

あまりの剣幕に僕は震えあがった。もし本当に手を出したら、いったい何をされるというのだろうか。考えるのはやめておこう。ロクでもないことは明らかだ。しかし、人間は好奇心には弱く、気になってしまうのは仕方ないことだと思う。

 

 

「あ、あの?参考までに聞くんですけど。もし、暁さんに手を出したらどうなるんですか?」

「…………」ニコリ。

「ねえ何するの⁉︎いったい何するの⁉︎」

 

藤尭さんは僕の問いに、ニコリと笑うことで返答した。

明確な答えを得られなかった僕は激しく狼狽してしまう。やはり聞くべきではなかった、と後悔しても遅かった。

 

「ていうか朔也さん今おいくつなんですか?」

「二十四だけど、それがどうかしたかい?」

「二十四歳で八歳年下の暁さんに手を出したんですね!」

「グハッ!」

 

たった一言だったが、藤尭さんにとっては右ストレート並みの口撃が炸裂した。心に大打撃を受けた藤尭さんはその場に膝をつく。これぐらいの意趣返しをしてもバチは当たらないだろう。

まあ、人の恋路の邪魔をするほど僕も野暮ではないので、今のネタはあまり使わないでおこう。え?何でそこであまりなのかって?ーーー今みたいな状況になった時に使うからに決まっているじゃないか。

 

「皐月。いくら藤尭さんが切ちゃんに手を出したロリコンだったとしてもそれは言い過ぎ。二人は相思相愛だから年齢なんて関係ない」

「うん、そうだね。でも前半部分は要らなかったと思うんだ。ほら、そこで藤尭さんが屍になってるから」

 

月読さんの容赦のない口撃に、藤尭さんはとうとう倒れ伏してしまった。僅かに痙攣していて、陸に打ち上げられた魚を連想させる。

暁さんが「朔也⁉︎」と叫び、慌てて駆け寄っていく。さん付けがなくなっていることから、きっと二人の時は呼び捨てているんだろうと思われる。

 

僕と月読さんは何事もなかったように、平然と料理を食べ進めていく。溜飲が下がったのか月読さんはいつもの無表情に戻っていた。機嫌を直すことに貢献してくれた藤尭さんの犠牲を僕は今日一日は忘れないだろう。

 

「この唐揚げ美味しいね、月読さん」

「こっちのパスタも美味しい。食べてみる?」

「食べる食べる。この皿に乗せてもらえるかな?」

「うん。……はい、どうぞ」

「ありがとう。あ、ほんとだ。このパスタ美味しいね」

「二人は何平然と料理を食べてるデスか⁉︎」

 

暁さんの悲鳴にも似た叫びが聞こえた気がするが、気にすることなく僕たちは談笑しながら料理に舌鼓を打っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

歓迎会?が終わり、あらかた片付けが終わった途端に、この場の雰囲気が張り詰められるのを感じ、思わず身構える。

その発生源は僕の目の前にいる筋骨隆々な男性ーーー風鳴弦十郎からだった。その姿は圧巻の一言に尽きる。

 

多大な貫禄を感じさせられるその姿に、僕は内心憧れた。自分もあの人のように堂々とありたいと思った。あの人のようになれななら、今の中途半端な立ち位置から一刻も早く抜け出せる。そんな気がした。

「それじゃあ、改めて自己紹介をしよう。俺は風鳴弦十郎。ここ、S.O.N.G.の司令官をしている。あそこにいる二人がオペレーターの藤尭と友里くんだ」

 

藤尭さんは彼女である暁さんのお陰で、まだ若干顔が青いが何とか一命を取り留めたようだ。そして、その隣にいるのが友里さん。先ほど少し話してみたが、とてもいい人だった。周りの気配りができていて、頼りになる大人だ。

 

「それでは皐月くん。君の気になっていることを言ってくれ。その疑問には俺たちが答えよう」

「えっと、じゃあ。先ずはS.O.N.G.とは何ですか?」

「我々S.O.N.G.は超常災害対策を主とした機動部隊だ。例えば、今日皐月くんが遭遇したーーー」

「……ノイズ」

 

どうやら僕は本当にとんでもない場所にいるらしい、ということは漠然と理解した。引っ込んだはずの汗が再び流れ出す。

 

「次は、あの時月読さんが纏っていたもの何ですか?」

「それについてはボクが説明します」

 

何処からか、まだ幼い感じを残した少女の声が響いた。周囲に目をやるが、その主を発見することができない。

「こっちですよ」とは再び声が聞こえた。よく見ると弦十郎さんの後ろに一人の少女が立っていた。月読さんよりも小さく、白衣を羽織ったその少女はゆっくりとした足取りで前に出てきた。

何故こんなに小さな少女がこんなところに?

至極当然の疑問が浮かんだが、ここにいる時点でただの少女ではないと悟り、乾いた笑いを浮かべた。

 

「初めまして。ボクはエルフナインといいます」

「ぼ、僕は皐月千佳です」

 

礼儀正しく頭を下げる少女ーーーエルフナインに倣い、僕も頭を下げる。

 

「それでは皐月さん。調さんが纏っていたものをボクたちは《シンフォギア》と呼んでいます」

「シンフォギア?」

「はい。詳しい説明は省きますが、シンフォギアとは聖遺物の欠片から創り出され、ノイズに対抗する手段となり得ます。皐月さんは聖遺物と聞かれたら何を思い浮かべますか?この場合は伝説上の武器などで構いません」

 

エルフナインの問いかけに僕は頭を捻る。伝説上の武器といったら何だろうか?あまりそういった類の本を読んだことがないので、思い浮かばない。

何かないかと記憶の中を探していると、ふと学校の図書館で見かけた『円卓の騎士』について思い出した。その物語に登場するアーサー王の持つ剣がそれに当たるはずだ。

 

「えっと、エクスカリバーとか?」

「そうです。現在S.O.N.G.が所有している聖遺物は六つ。それをシンフォギアとして起動できるのは女性のみで、シンフォギアと適合した人を装者と言います。いま後ろにいる人たちがそうですね」

 

振り返ると、月読さんと暁さん、立花さんと他三名が立っていた。月読さんが街にいた理由もこれで納得だ。

しかし、この話は一般人に話しても大丈夫なのだろうか?

僕の心配を察知した弦十郎さんが、

 

「ああ、安心してくれ。別に何もしない。君にはS.O.N.G.の協力者になってもらいたい」

「僕が?いったい何故ですか?はっきり言って、僕がここにいるのは場違いだ。ノイズと戦える訳でもなく、何もできやしない僕を協力者にするメリットもない」

「あまり自分を卑下するなよ。では、君には聞こう。何故君はシェルターに避難せずにあの街へとやってきた?」

「おばあちゃんが心配だったからです」

 

特に嘘を吐く必要もないので即答する。

 

「シェルターに避難しているとは思わなかったのか?」

「いま考えれば、そうかも知れません。あの時の僕はそんなこと頭になくて、気付いたら走り出してました」

「では、何故少年を助けた?助けずに逃げ出せば良かっただろう。何故わざわざ助けるという危険なことをした?」

 

確かにそうだ。弦十郎さんが言っていることは正しい。

確実に自分だけが助かることを考えれば、それが最善だ。けれど、僕にはそんな選択肢。ハナから存在していなかった。

 

「ーーーほっとけなかったからです」

「それはどういう意味だ?」

「目の前で誰かが炭になって消える辛さを、僕は知っています。だからそんなところを見たくなかった。それにあそこで助けなかったら、きっと僕は後悔したはずだから」

「その気持ちは痛いほど分かるが、君の行動は危うく、生身の体では無茶だったはずだ」

「そうですね。でも、僕は僕にできる無茶をした。……結果論ですけど、そのお陰で僕は今ここにいます」

「もし、また同じ状況に陥った時。君は今日と同じ行動を取るか?」

「はい。必ず」

 

ジッと僕を値踏みするように観察する弦十郎さん。僕はその瞳から目を逸らさずに見返した。やがて、弦十郎さんは強張っていた顔を緩めるとフッと微笑んだ。

 

「君の真意を確かめたかった。責めるようなことを言ってすまなかった」

「そ、そんな!いま言われたことは全部本当のことですし。だから、頭を上げてください!」

 

突然、頭を下げた弦十郎さんに、僕は狼狽してしまう。

 

「そんな君だから俺は君に協力者になってほしい。それにこれは君を守るためでもあるんだぞ?」

「へ?それってどういう意味ですか?」

「君は調くんと交友を持っている。そして調くんはシンフォギア装者だ。君なら自分より強い敵を倒すならどうする?」

「ーーーつまり、僕が人質に取られたりすると?」

「まあ、そういう意味で君を保護したいということもある」

 

成る程。確かに一般人である僕を盾にすれば、そういった行動も取れる訳だ。聞けば、もう一人協力者がいて、その人はほぼシンフォギア装者の近くにいて安心らしい。

反対に僕には何もない。その後ろ盾になる意味でも、協力者という立ち位置はお互いに意味のあるものになる。そういうことならと、僕がその提案を呑んだ。

弦十郎さんは満足したように頷いて、

 

「よし、そうと決まればこれから一週間俺とともに山に籠るぞ」

「いや、その結論はおかしい。何ですかその「これから遊びにいくぞ」みたいな軽さは⁉︎」

「む?俺たちも人間で、万全ではない。そのために君の基礎体力などを一から鍛え直そうと思ってな」

 

拙いッ!言っていることは正しいが、このままでは本当に山籠りする羽目になってしまう。何か、山籠りを回避する理論武装(言い訳)はないかと探し出す。

 

「あ、明日は学校がありますし……」

「街の復旧に一週間はかかる。当然、君の通っている学校もだ」

「お、おばあちゃんの手伝いもしないといけないですし……」

「慎次」

「皐月さん。これをどうぞ」

 

忽然と隣に姿を現した緒川さんに驚愕しつつ受け取ったのは、僕の携帯だった。画面はちょうど着信中で、相手はおばあちゃんだった。

 

『千佳かい?』

「そうだけど、どうしたの?」

『あんたに一週間暇をやるから帰ってこなくていいよ』

「ちょっとその話詳しく」

『あんたがいなくても、店は私一人でなんとかなるからね。話を聞かせてもらったらあんた。結構な無茶やらかしたそうじゃないか。そのお仕置きも兼ねてるからあんたに拒否権はないよ。それじゃあね』

「あ、ちょ、おばあちゃん!」

 

通話を切られ、僕には逃げ場がなくなった。

 

「安心しろ、死にはしない。それに映画鑑賞もあるから楽しいぞ」

「ダウトォ!死にはしないけどそれ以外はあり得るってことですよね⁉︎それに映画観賞のする意味は⁉︎」

「映画見て、飯食って寝る!それだけでも人は強くなれる」

「ダウトォォォォォ!あり得ません!そんなんで強くなれたら苦労しませんよ。それに本当にそれの効果があるなら、実際にそれを試して強くなった人を目の前に連れてきてくださいよ!もちろん、弦十郎さん以外ですからね!」

 

フッフッフッ!どうだ、言い返せまい!そんなんで強くなれたら今頃世界中猛者で溢れてるはずだ。ここからなんとか回避していこうという考えは儚く崩れ去ることになる。

 

「あ、私それで強くなったよ?」

「本当にいた⁉︎お願いです立花さん嘘だと言って!」

「うわぁ⁉︎そう言われても事実だし……」

 

立花さんの手を取って、僕は懇願した。けれど、彼女は申し訳なさそうに顔を晒してしまった。

 

「な、なら緒川さん!緒川さんにチェンジしてください」

「すみません、皐月くん。表ではアイドルのマネージャーをしてまして、とても皐月くんに構っている暇はないんです」

「なん、だと⁉︎……でも、それなら仕方ないですよね」

「あれ?嫌に素直に引くんだね」

「いや、流石に人に迷惑をかけたくないといいますか」

 

そのアイドルの人にも仕事があるし、それを支えたいる緒川さんに迷惑はかけられない。今度そのアイドルに会えないか緒川さんに頼んでおこう。

そんな風に考えていると、突如わき腹に鋭い痛みが走った。

 

「痛い⁉︎誰が…………月読さんなんで僕のわき腹をつねってるの?」

「うるさい。皐月はさっさと司令と山に籠るべき。それと、いつまで響先輩の手を握ってるつもり?」

「あ、すみません」

 

すぐに手を離すと同時に、僕は正座に移行した。

 

「あの、月読さん?怒ってません?」

「別に怒ってない。それとも、皐月は私が怒るようなことをしたの?」

 

そんなはずはないと思い返してみるが、心当たりはない。困惑している僕を見つめる月読さんの瞳は冷たく、光が宿っていないような錯覚を覚えた。

 

「やっぱり怒ってるよ」

「別に怒ってない。皐月が自意識過剰なだけ」

「そこでムキになるってことは怒ってるよ。僕、月読さんを怒らせるようなことしたかな?」

「……司令。このまま皐月と山に籠ってきていいですよ」

「分かった。任せておけ。山を降りる頃には今とは比べ物にならないほど強くしてやる」

「ちょ、待っーーーー!」

 

僕は弦十郎さんに首を掴まれ、ひょいっと簡単に持ち上げられた。うわぁ、人って片手で持ち上げられるんだなぁ……。

軽く現実逃避をしている僕の視界に藤尭さんが映ったので、助けを懇願する。

 

「助けて藤尭さん!」

「皐月くん。僕はまだ死ねないんだ。何故ならもっと切歌ちゃんとイチャイチャしていたいから!」

「あんた開き直りすぎだろ⁉︎この状況で惚気とかどんな嫌味だよ!盛大に爆発しろ!」

 

それを最後に、僕は持ち上げられたまま部屋から出て山へと連行された。最後まで助けを求めたが、全員苦笑いを浮かべるだけだった。その中で一人だけ。月読さんは拗ねるように頬を膨らませていたけれど、それは何でだろう?今の僕にそれを確かめる術はなかった。

僕は憂鬱な気分で、嬉しそうに笑う弦十郎さんに見えないようにため息を吐いた。

 

 

 

 

 




調:拗ねてるところ可愛い
千佳:山に拉致られる
藤尭:爆発しろ!
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