白露型深夜の真剣創作60分一本勝負 投稿作品集 作:なぁのいも
江風はいつも気が気では無い。それは恋人である提督が誰かにとられてしまうのではと言う疑念が晴れないからだ。
江風は姉妹の中でも数少ない改二と言う優位に立てるアピールポイントがある。だけど、それは女性的な魅力としては優位な点とは言い切れない。あくまで、艦娘として、人類存続の為に戦う戦士としての優位点でしかない。
姉妹の中でも女性的な魅力が薄い事はわかっている。起伏に富んだ体を持つ姉達、少女の可憐さと幼さが残る故の庇護欲を掻き立てる容姿の妹達、更に姉妹の殆どは炊事に洗濯に家事とお手の物。長い間、海風に頼りっきりで簡単にしか出来ない自分とは違う。今は少しずつ出来るように修行はしているが、少女らしい姉妹達とは違って江風は一段と少年のような性格だ。どうしてもコンプレックスは抱いてしまう。
だから、いつも不安なのだ。提督が姉妹の誰かにとられてしまうのではないのかと。自分よりほかの子に魅力を感じてそっちに行ってしまうのではないかと。
提督と恋仲になった事で、ライバルから応援に回ってくれた子もいるには居るが、逆に対抗意識に火をつけてしまった人もいる。姉妹の中では夕立がその筆頭、その次に五月雨か。
「提督さん!褒めてー!!」
今日も一番活躍した夕立が褒美をねだる。提督は仕方がないと言うような、だけど姉の事をしっかりと労う様に顔を破顔させて夕立の頭を撫でる。
それを見ていた江風は、何も言う事が出来ず、ただただ目を細めて睨む事しか出来ない。働きぶりにはそれに応じた報酬を報いるベし。提督が軍に就く前に働いていたブラックなバイト先で培われたその精神をこの時ばかりは恨むしかない。
別に夕立は江風の当てつけにやっているわけでない事はわかっている。純度100%の水みたいな純粋で素直な人だから、そう言う悪意がある事は出来ない位、妹である江風がわかっている
わかっていても提督と江風の仲を知っていてやってる様にしか見えないそれに、浮き出ようとする心の中の汚泥を小さく唇を噛んでまた沈ませる。
犬耳の様な夕立の髪の横はねが羽ばたく様に動くのを見て、癇癪を起こす事なんて出来ないからだ。
「んっ!!ありがとう提督さん!!」
沢山頭を撫でられて満足したようで、腕がちぎれるのではないかという勢いで降りつつ執務室から退室していく。
提督と江風だけになった執務室。江風は相変わらず提督の事を睨んでいる。
「か、江風?」
提督に対してはしたことが無かった睨むと言う行為。江風の睨みから感じる背筋が凍り付くような感覚に提督の声まで震えてしまう。
江風は何も言わずに提督に詰め寄って彼の腕を掴むと、来客用のソファに引き倒す。
提督の被っていた制帽はソファに倒れ込んだ勢いで落ちてしまうが江風は気にしない。ソファの上に仰向けにして寝るように倒れた提督のお腹に江風のお尻を乗せて重しにする。
何をされるのかと提督の瞳は焦燥に揺れる。江風は提督の頭を両手で包んで逃げ場を無くすと、提督の耳に彼女の唇を軽く触れさせた。
それである程度満たされたのか、江風は提督の鎖骨辺りに鼻をくっつけるようにして顔を埋める。
「てーとく、江風の事、ちょっと抱きしめて欲しい…」
「…わかった」
珍しく猫なで声で懇願する江風のお願いを拒否することなど出来る筈がない。提督は彼女の背に腕を回して抱きしめる。
まるで、提督と江風の体温が溶け合って一つになった様。江風はこの感覚が好きだった。
そして、江風にはもう一つ好きな事がある。それは、提督の首元につけた爪によって出来た傷痕と至近距離で見る事。
彼の首元の傷は提督と江風が別の意味で初めて一つになった時につけてしまった物。深く傷けてしまった為に至近距離でよく見ると未だに消えて無いのだ。
江風だけがわかる所有印。提督は自分の物だと言う証。彼女がつけた提督への首輪。
小さく舌を出して江風は彼についた首輪をなぞる。提督はくすぐったそうに笑う。
証を確認し提督は自分のモノだと言う安心感を得れた江風は、提督の腕の中で淫蕩な笑みを浮かべた。