海上自衛官が渡辺曜の妹になりました   作:しがみの

16 / 87
第14話 ファーストライブ

俺は、駿豆線伊豆長岡駅前ロータリーに停車している(R33)に制服姿で乗っていた。

 

現在の伊豆の国市の空は灰色の雲に覆われ、風も強く、いつ雨が降り出しても可笑しくないような状態だった。

 

俺は今、伊豆長岡駅前に10分くらい滞在している。それは、千歌達のライブに行くある人を待つためである。千歌達3人には既に〝迎えに行く〟と言ってあるため、ノープロブレムである。

 

俺は暇そうにスマホを弄りだした時と同時にコンコンと車の窓を叩かれた。

 

「久しぶりー。」

 

微笑みながら車内を覗いてくる茶髪ロングの髪の毛をサイドテールにしている沢木(さわき) 陽葵(ひまり)さん。東京の私立神田川大学に通う大学3年生で、俺の昔からの知り合いの人だ。

 

沢木さんを助手席に乗せると、俺は車を発進し、浦の星女学院に進路をとった。

 

しばらく沢木さんとスクールアイドル関連についての話をしていると、ちょうど内浦に通じる県道のカーブの辺りで渋滞にはまった。ローカル局のカーラジオを聞くと、ついさっきにこの道でトラックと乗用車の衝突事故があり、渋滞がどんどん伸びていっていると何回も繰り返していた。

 

間に合わないかもしれないと感じた俺はカーナビを弄り、ハンズフリー通話で曜の携帯に繋げた。

プルルル・・・、プルルル・・・。とコールが2回程鳴ると、直ぐに千歌と梨子の話し声が聞こえてきた。

 

『もしもし。』

 

「あ、曜姉。ゴメン、帰りのバスが渋滞にはまっちゃった。もし間に合わなかったら先に始めといて!!!」

 

『わかった!!!』

 

曜は直ぐに事情を理解したのか、直ぐに千歌達に報告していた。その途中に通話は切れたのだが。

 

俺は、車のハンドルに顎を載せ、少しずつしか進まない渋滞にため息をついた。それと同時にフロントガラスに水滴がポツポツと着き始めた。

 

 

 

 

 

渋滞にはまってから15分後経ち、どうにか現場の緊急車両の赤色灯を目視できる場所まで移動できた。しかし、雨脚はだんだんと強まり、車内で流れる音楽の音の大半が天井とガラスに打ち付ける雨の音と時折鳴り響く雷の音で掻き消される程まち強くなっていた。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

浦の星女学院の体育館のステージ裏。私と曜ちゃん、そして、梨子ちゃんの3人は曜ちゃんの作った衣装を身にまとって、刻々と迫る開演時間を待っていた。

 

「百香ちゃん、渋滞に嵌って身動き取れないみたいだよ。」

 

「嘘・・・。」

 

曜ちゃんから一言。百香ちゃんが渋滞に巻き込まれ、身動きが取れないらしい。だから、百香ちゃんがまだ来ないのか。それに渋滞が発生したなら、このライブに来る人も減るかもしれない・・・。

 

「事故だから仕方ないよ。」

 

「じゃあ代わりの人を入れないとね。」

 

「誰か一人欠けても大丈夫な様にしてて良かった・・・。」

 

「もうすぐで時間だから先に始めてようよ。」

 

「うん。」

 

私達は3人で手を繋ぎ、輪っかを作った。辺りは静寂に包まれ、聞こえてくる音は体育館の屋根にうちつける雨の音と時折鳴ってくる雷の音だけだった。

 

「雨・・・、だね・・・。」

 

「来てくれるかな?」

 

「じゃあここでやめて終わりにする?」

 

曜の一言に対する答えは、3人の笑い声だった。それを聞いて安心した私は笑いながら、身体を2人に近づけた。

 

「さあ、行こう!!!」

 

「今、全力で輝こう!!!」

 

「「「Aqours、サーンシャイーン!!!」」」

 

ステージ裏に聞こえる声で、なおかつ、体育館の運動場に聞こえない声で叫び、開演の準備は完了した。

 

 

私達がステージに立つと、ブザーが鳴り響き、幕がゆっくりと上がっていった。

 

だが、幕の先には厳しい現実しか待っていなかった。きっと満員にすると決めたのに、体育館の運動場にいるのは、たった7、8人。思わず泣きそうになったのだが、涙をこらえ、挨拶を始めた。

 

「私達、スクールアイドル」

 

「「「Aqoursです。」」」

 

「私達は、その輝きと、」

 

「諦めない気持ちを、」

 

「信じる力にあこがれ、スクールアイドルを始めました。目標は、スクールアイドル、μ'sですっ!!!聞いて下さい!!!」

 

曜、梨子の後に私が始まりのコールをすると、ほぼ空の状態に運動場に音楽が鳴り響き、私達は歌い、そして、踊り始めた・・・

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

どうにか2()()()の渋滞を抜け、学校にたどり着いた。校舎前の駐車場に車を止めた時、近隣の建物の避雷針に雷が落ちたのか、バァン!!!と鳴り響いた。

 

さっきまで点灯していた街頭は消え、辺りを照らす明かりはグラウンドと学校に通じる道からの車達のヘッドライトだけだった。そう、停電だ。

 

「艦長!!!車の鍵、お願いします!!!」

 

俺は、ハンドブレーキを上げると、シートベルトを外して雨の降る外に走り出した。向かった先は、体育館裏の防災倉庫だ。

 

 

雨に濡れながら体育館裏に向かうと、案の定、ダイヤが発電機を防災倉庫から運び出そうとしていた・・・のだが、重いのか、防災倉庫から1mすら離れていなかった。

 

「ダイヤ!!!」

 

「百香さん・・・何故ここを・・・?」

 

「話は後だ!!!さっさとそっち持つ!!!せーので行くぞ?いいな!?」

 

「え?あ、は、はい。わかりましたわ。」

 

ダイヤが少し混乱気味になってるが、そんなの気になっている時間は無い。一刻も早く電気を流さなければならない。千歌、梨子、曜、そして、これからのAqoursの為に・・・。

 

「せーのっ!!!」

 

俺の掛け声で発電機を持ち上げ、裏口からステージ裏の配電盤室に発電機2機を移動させた。

 

俺は胸ポケットからペンライトを出し、配電盤を照らし、コード類を繋げ、電気がスポットライトと放送機器に流れる様に配線をし、ダイヤは多少時間がかかりながらも2機の発電機のエンジンをかけていた。

 

5分ほどかかったが、配電盤とエンジンが繋ぎ終わり、電気が発電され始まると、俺は発電機からの電気を流す切り替えスイッチを切り替えた。ステージが照らされるのが配電盤室からでも見える。よかった。ちゃんと流れたようだ。

 

「バカ千歌!!!あんた開演時間間違えたでしょ!!!」

 

その瞬間、運動場の方から美渡の声が聞こえ、人々の歓声が上がった。

 

どうやら体育館のアリーナは満員になったらしい。それもそのはずだ。渋滞は2箇所でおきていたからだ。1箇所はさっきの事故現場、そして、もう1箇所は、学校前の坂だ。

地元の人々がみんなでこぞって車で見に来て、さらに学校に登る道路が狭いため、道路のキャパシティが直ぐにオーバーしてしまい、渋滞が発生していたのだ。

 

そして、たくさんの人々で埋め尽くされた体育館で千歌達のファーストライブは最初から再開された。

 

美渡ってなんだかんだ言って優しいよね。妹の為に色々やるなんてね。会社にポスターとか貼ってたりしていたから。

 

 

 

そして、ファーストライブは大成功、そして、アリーナは大歓声に包まれた。

 

「彼女達は言いました!!!」

 

「スクールアイドルはこれからも広がって行く。どこまでだって行ける!!!どんな夢だって叶えられるって!!!」

 

そして、ステージで、アリーナに集まった人々に向けて梨子、千歌が言い出す。

 

「これは、今までのスクールアイドルの努力と、町の人の善意があっての成功ですわ。勘違いしないように。」

 

その言葉を聞いたダイヤは、ステージの目の前に向かい、千歌達に厳しい声で言った。全く・・・、素直じゃなねぇんだから・・・。

 

「わかってます!!!」

 

「!!!」

 

ダイヤは千歌から反論がないと思ったのか、千歌からの反論をびっくりしながら聞いている。

 

「でも、見てるだけじゃ、始まらないって。うまく言えないけど、今しかない、瞬間だから・・・。」

 

千歌達はそう言いながら2人と手を繋ぎ、前を向きなおす。

 

「だから」

 

「「「輝きたい!!!」」」

 

最後の一言を言い終わってから、体育館の運動場は拍手に包まれた。さっきまで滝のように降っていた雨はいつの間にか止んでいて、内浦、いや、伊豆半島、いや、静岡東部一帯に雨を降らせた灰色の雲の隙間から青空が見えてき始めた。まるで、この先への道が開いたように・・・。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

雨が完全に止んだ内浦。1台のスポーツカーが浦の星女学院から伊豆長岡駅方面に向かって走っていた。

 

運転しているのは、もちろん俺で、助手席には沢木さんが乗っている。ちなみにライブの片付けは、千歌から「私達がするから送ったついでに先に帰っていいよ。」と言われたため、免除されたも同然である。

 

「いやあ、一時はどうなるかと思いましたよ。」

 

「全くね。あのまま停電してたらライブ自体出来なかったんじゃないの?」

 

俺と沢木さんは、しばらくライブについて話し合うが、あまり長く話が続かなく、直ぐに車内は沈黙に変わる。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、沈黙のまま、車は伊豆長岡駅のある伊豆の国市に入る。すると、沢木さんが沈黙を破った。

 

「なあ、副長。」

 

「はい?」

 

しかし、それは、彼女が、沢木陽葵ではなく、前世の護衛艦〝はくう〟艦長の高田壱頼二等海佐、いや、〝Aqours〟がラブライブ!の第2作のコンテンツとして存在している世界の人間として発した言葉だった。

 

「君は、何かAqoursに関わっているだろ。」

 

「ええ。今はマネージャーとして、支えています。」

 

俺は、ハンドルを握りながら答える。沢木さんいや、高田艦長は、こちらを見ようとせず、ただ、窓から外を見ているだけだ。

 

「そうか・・・。

 

変えるのか・・・?Aqoursの歩む道を・・・。」

 

「いえ、そんな気は更々ありませんよ。マネージャーになったのは、幼馴染になってしまった千歌からの勧誘が激しくなると見越したからです。」

 

高田艦長からの問いかけに対し、俺は、思ったことをそのまま返すと、高田艦長は、なら良かった・・・。と言い、柔らかい笑顔になったのだった。

 

車は伊豆長岡駅前のロータリーに滑り込み、沢木さん(艦長)を降ろし、千歌に言われたとおりにすぐに帰宅したのだった。しかし、俺は雨に濡れて体を冷やしたまま放置したのが原因なのか、次の日に風邪をひいたのだった。




沢木さんも転生者ですが、今のところ本編にあまり関係ないので今出しました。

〇次回予告〇
国内共通の飲み物を強制的に珈琲にする、珈琲王国が地球の大半を侵略していた。その勢力に対抗するため、ある1人の特殊能力を持つ少女が立ち上がった。
少女の名は〝チカチーカ・チーカカ〟
みかん真剣の使い手である少女の戦いが、今、始まる!!!
次回、チカチーカ・チーカカ
※予告と異なる場合があります。
次回更新予定日は4月11日0時0分です。

◎オリキャラ紹介(2)
・名前
沢木(さわき) 陽葵(ひまり)
・誕生日
7月16日
・血液型
B
・身長
157cm
・好きな食べ物
〆鯖
・嫌いな食べ物
ミョウバン
・趣味
海釣り、ドライブ
・スリーサイズ
B79/W60/H77
・学年
3年
・所属先
私立神田川大学経済学部経済学科
・前所属先
国立音ノ木坂学院高校
・出身地
東京都千代田区外神田(秋葉原)近辺

〇前世
・名前
高田(たかだ)壱頼(かずより)
・誕生日
7月16日
・血液型
B
・身長
169cm
・好きな食べ物
〆鯖
・嫌いな食べ物
ミョウバン
・趣味
海釣り、ドライブ
・出身地
新潟県新発田市
・殉職時階級
二等海佐(二階級昇進で海将補に)
・殉職時役職
護衛艦〝はくう〟艦長
・殉職時年齢
46歳

時間的に余裕が出てきたので1話だけ番外編ストーリーを書きたいと思います

  • 渡辺百香と前世の娘
  • スクスタ時空─スクフェス!─
  • 百香とルビィの入れ替わり!
  • スクスタ時空─虹学・Aqours対決!─
  • ロリ辺百香

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。