海上自衛官が渡辺曜の妹になりました   作:しがみの

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第21話 堕天使ムービー

善子ロッカー立て篭り事件(勝手に命名)が発生した次の日、1年生の教室には善子の姿があった。1、2ヶ月ぶりに学校に来た為なのか、善子はクラスメート全員に囲まれていた。

 

「雰囲気変わってたからびっくりしちゃった。」

 

「みんなで話してたんだよ。どうして休んでるんだろうって。」

 

「ごめんね。今日からちゃんと来るから。宜しく。」

 

ただ・・・、善子の今の外面を見てみると・・・誰だこいつっておもう。だって、声も言葉遣いも違うし。同じなのは頭に善子玉(笑)があるくらいだもん。

 

「こちらこそ。津島さんって、名前なんだっけ。」

 

「!!!」

 

「酷いなー。あれだよー、アレ。」

 

「確か、ヨ、ヨハ・・・」

 

これはひどい。クラスメートが善子の名前を思い出そうとしているのだが(そもそも俺と善子自身を入れて13人しか居ないのに忘れられるとか・・・)全く覚えられていない。しかも覚えているのは堕天使ヨハネの部分だけ。

 

「善子!!!私は津島善子だよ!!!」

 

「そうだよね。」

 

そして、善子との雑談タイムが始まったのだった。その光景を俺、花丸、ルビィの3人が奥から見守っている。

 

「津島さん、学校来たんだね。」

 

「ずらっ。マルと百香ちゃんがお願い聞いたずら。」

 

「お願い?」

 

「そ。堕天使が出ちゃうから、危なくなったら止めてって。」

 

花丸は、胸を張り、胸のどデカいみかん(比喩)を強調しながら言う。

 

「堕天使が出ちゃうの?」

 

「津島さんって、趣味とか無いの?」

 

ルビィが善子が昨日言ったことについて疑問に思っている時、遂にクラスメートがあの話題に入り出した。アニメを見た俺なら分かるが、他のみんなは知らない。だから焦り顔にならない様に気をつけならなければならない。

 

「趣味?と、特に何も・・・。

 

占いをちょっと・・・。」

 

何故何も無いと言いかけたし。

 

「本当?私占ってくれるー?」

 

「私も私も!!!」

 

しかも、女子は占いが好きという人が多いらしく、次々と占って欲しいという人が続出してきた。善子自爆への道が着々と整備されていっている。

 

「良いよ。えーっと・・・。

 

あ、今占ってあげるね。」

 

「やったぁ!!!」

 

クラスメートは嬉しがっていたが、この状況はヤバい。

 

「百香ちゃん、この状況どう思うずら?」

 

「非常にやばいな。これは。」

 

「マルも右に同じずら・・・。」

 

「?」

 

アニメを見た俺と昔からの善子を知っている花丸はこの後どうなるかを直ぐに想像出来たのだが、善子とあまり面識がないルビィは何も分かってない様な顔をしている。

 

「「え?」」

 

そして、善子のバッグの中から魔法陣が描かれた布が小道具と共に机の上に出され、黒いローブを羽織る善子の姿があった。クラスメートは、いきなりの事に唖然としている。

 

「これで良し!!!」

 

・・・どうしてこうなった。

 

「はい、火をつけて。」

 

蝋燭を一人のクラスメートの目の前に出したのだが、クラスメートは明らかに引いてる。なのに善子は気づく気配はない。気づけ、善子!!!

 

「え?」

 

「あ、ちょっと待ってね、百円ライターだけど、はい。」

 

「ありがとう、師匠。」

 

「「師匠・・・?」」

 

クラスメートが固まってしまっていたので、俺がすかさずライターを出し、火をつけたのだが、善子が俺の事を師匠と呼びやがった。俺に飛び火したら許さんからな。

 

「天界と魔界に蔓延る遍く全て、煉獄に落ちたる眷属に告げます。」

 

「「・・・。」」

 

善子がマイワールド全開になっているのか、全く周りが見えていない。引いているクラスメートそっちのけで占いを始めている。

 

「ルシファー、アスモデウスの従者、堕天使ヨハネと共に、堕天の時が来たのです!!!」

 

そこまで善子が言い切った時、ようやく善子は花丸からの冷ややかな視線と、自分がやらかしてしまったことに気づいた。

 

「善子。やっちまったな。」

 

善子は、ドン引きしているクラスメートと呆れながらろうそくの火を消した花丸と、俺の前で、ただ、固まる事しか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

「何で止めてくれなかったのー!!!せっかくうまくいってたのにー!!!」

 

ところ変わってスクールアイドル部部室。部室の中、いや、体育館周辺には、善子の悲痛な叫びが響き渡った。

 

「まさかあんな物持ってきてるとは思わなかったずら・・・。」

 

そんな叫びを聞いた花丸は、そう言いながら机の下を覗いた。善子は、恥ずかしかったのか、ずっと机の下に姿を隠している。

 

「どういう事?」

 

「ルビィもさっき聞いたんですけど、善子ちゃん、中学時代、ずっと自分は堕天使だと思い込んでいたらしくて・・・。まだその頃の癖が抜けきれてないって・・・。」

 

梨子が疑問に思った時、ルビィが花丸とかから聞いた話をそっくりそのまま返した。

 

善子は「わかってる・・・。自分が堕天使なはずは無いって・・・。そもそもそんなもん居ないんだし・・・。」と言いながら出てきた。

 

「だったら、どうしてあんな物学校に持って来たの?」

 

梨子が苦い顔をしながら善子に聞くと、善子は、「それは・・・、まあ、ヨハネのアイデンティティのようなもので、あれが無かったら私は私で居られないっていうか」と言い、そこまで言った時に、また自分はやってしまったと感じていた。やっぱり善子は堕天使から抜け出せないような気がするんだがなぁ・・・。

 

「なんか、心が複雑な状態にあるということはよくわかった気がする・・・。」

 

「ですね。実際今でもネットで占いやってますし・・・。・・・、あれ、パスワードなんだっけ・・・?」

 

ルビィは、梨子の言ったことに対し、証拠の動画を見せようと、千歌の私物のパソコンをいじっていたが、自分のアカウントのパスワードを忘れてしまったようだ。

 

「貸して。私の使うから。」

 

『またヨハネと堕天しましょう』

 

俺は、パソコンをルビィから受けとると、直ぐにメールアドレスとパスワードを入力し、某コメントが流れる動画投稿サイトを開き、善子のアカウントの投稿履歴から動画を出し、流し出した。

 

善子は、動画を流されたくなかったのか、机の上に乗り、その勢いでパソコンも同時に閉め、みんなに必死に普通の女子高生になりたいと言っていたのだが、反応は、花丸が難しそうに「ずら・・・。」と言っていただけだった。

 

・・・のだが、千歌の「可愛い」の一言で事態は急変する。周りのみんな(俺も含め)は疑問に思っている。

 

「これ、これだよ!!!」

 

「千歌ちゃん?」

 

曜が千歌が何をしようとするのかが分からなく、千歌に呼びかけたのだが、千歌の耳にはそんなこと届いていなかった。千歌は、善子の乗っかっている机の上に乗り

 

「津島善子ちゃん、いや、堕天使ヨハネちゃん!!!スクールアイドル、やりませんか!?」

 

と、言ったのだった。その事に対し、善子は・・・

 

「なに・・・?」

 

現状をよく理解出来ていないようだった。

 

 

 

 

それから俺、曜、善子の3人で我が家、渡辺家のリビングで衣装作りを始めた。つくるのは6着。何故1着多いのか曜に聞いてみたところ、予備と言っていた。本当に予備なのか不安なのだが・・・。俺の担当はルビィと花丸、梨子の分、曜の担当が千歌と曜、そして、予備の分だ。善子はデザインや指導、生地を切る係として呼ばれた。俺の家なら大通り2本分と、善子の家もかなり近いから便利だ。

 

それから3時間ほどで1着ずつ仕上げ、残り4着のデザインが終わったところで解散となった。解散と言っても俺と曜は同じ家に住んでいるのだがな。そして、それから仕事から帰宅した母も混ぜ、5着は完成させた。残り1着、それは次の日に持ち越しになった。次の日はこれから行われる1年生の林間学校の代休で一応、全学年休みだ。午後に練習をするため、集合は午後1時なので、早起きすれば完成できる。そう思いながら俺は眠りについたのだが・・・

 

 

 

「何で起こさなかったぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

「寝顔が可愛かったから♡」

 

目覚めた時、時計の短針は11、長針は6を指している、つまり、11時30分だ。そう、寝坊だ。完全に。俺は、急いで髪をとかし、制服に着替え、朝食(もう昼食なのだが、気にしたら負け)をかき込むように食べ、歯を磨き、顔を洗ったあと、机の上に置いておいた明日に持ち越した分の衣装を縫うべく、生地を探したのだが、何故か無くなっていた。俺は裁縫はどうなっているのか曜に聞いてみると、曜が俺の寝顔を見ながら縫ったとか返してきた。ハイスペックなのはいいのだが、なんか曜がどんどんシスコンになってってないか?

 

そんなことを思いながら曜と一緒に千歌の家に向かう為に、準備をし、家を出たのだった。

 

 

 

そして、千歌の家、旅館〝十千万〟では、堕天使風の衣装に着替えた9人と俺の姿があった。

 

「こっ、これで歌うの?この前より短い・・・。これでダンスしたらさすがに見えるわ・・・。」

 

「だいじょぶー!!!」

 

「そういう事しないの!!!」

 

梨子が堕天使衣装でダンスをするのを恥ずかしがっていたところ、千歌が自分自身のスカートを捲り、中に履いているハーフパンツを見せてきた。まあ、梨子に咎められたのだが。でも、それ以前に言いたいことがある。

 

「はあ・・・。良いのかなぁ・・・本当に・・・。」

 

梨子が溜息をつきながら言ったところ、千歌は、「調べたら堕天使アイドルって居ないし、結構インパクトあると思うんだよね。」とか、訳の分からないことを言っていた。

 

「なんか恥ずかしい・・・。」

 

「落ち着かないずら・・・。」

 

ルビィや花丸も恥ずかしそうにしているが、一番の問題は俺だ。だって・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何で私まで・・・。」

 

「可愛いじゃん♡」

 

・・・曜によって俺まで無理矢理堕天使衣装を着せられていたからだ。しかもサイズぴったり。

 

「もしかして、昨日の予備って・・・。」

 

「百香ちゃんのだよ?」

 

曜は悪びれることもなく白状してきた。

 

「謀ったな、曜!!!」

 

しかも、曜と手を組んだのだろう花丸に「曜さんに自己紹介のことバラすずら」とか脅迫まがいの事を言われたため、脱ぐことは出来なかった。

 

「ねえ、本当に大丈夫なの?こんな格好で歌って・・・。」

 

梨子は心配そうに千歌に聞くが、千歌は「可愛いねぇー!!!」と、全く違うことしか言わない。千歌は本当にアレだな。なんて言うか、あれだ。話を聞いていないというか・・・。

 

「そういう問題じゃない。」

 

「そうよ。本当に良いの?」

 

梨子にツッコミに続き、善子も千歌に尋ねてくる。

 

「これでいいんだよ!!!ステージ上では堕天使の魅力をみんなで思いっきり振りまくの!!!」

 

「堕天使の・・・魅力を・・・?

 

ダメダメ!!!そんなのドン引かれるに決まってるでしょ!!!」

 

「だいじょぶだよ!!!きっと、大人気になるよ!!!」

 

「大人気・・・。」

 

善子も最初は堕天使衣装に否定的だったのだが、千歌の〝大人気になる〟という一言で善子も直ぐに協力ムードになってしまった。

 

「もう・・・、しょうがないわね・・・。」

 

曜は、部屋から出ていこうとする梨子に「どこ行くの」と尋ねると、短く「お手洗い。」と答え、梨子は千歌の部屋から出て行った。

 

・・・アニメ通りなら、梨子はこの後、美渡としいたけに出会い、美渡の静止も間に合わずにしいたけが梨子を追い始めるだろう。

 

「イヤぁぁぁぁぁあ!!!」

 

「ちょっ、しいたけ!!!」

 

梨子の悲鳴と美渡がしいたけを止める声、そして、バタバタと動き回る音が廊下から聞こえてき始めた。

 

「ちょ、梨子ちゃん?」

 

「やめて!!!来ないでぇ!!!」

 

千歌が梨子の様子を確認しようと梨子に呼びかけてみるのだが、梨子はしいたけを撒こうと必死なのか、走り回って聞く耳すら持たなかった。

 

「だいじょーぶ?しいたけは大人しヴァッ!?

 

梨子ちゃん!?」

 

「とりゃぁぁぁぁぁぁあ!!!」

 

「「「飛んだ・・・。」」」

 

「わん!!!」

 

梨子は、しいたけから逃げるのに必死で、隣の美渡の部屋に逃げ込み、しいたけもそれを追う。千歌は、襖越しだが、梨子にどうにか呼びかけてみるのだが、梨子は、襖をぶち破り、下敷きになった千歌を踏み越え、窓から梨子の部屋に通じるベランダに向かって飛んだのだった。

 

「ひっ!?」

 

「「「おおおー!!!」」」

 

ベランダの床にお尻を打ち付けられた梨子は、悲鳴をあげたが、千歌の部屋にいる(俺を除く)6人は拍手をしながら歓声をあげていた。

 

「おかえりー・・・。」

 

「ただいま・・・。」

 

梨子は、何かを言おうとして、ベランダからこちらを見たのだが、梨子の母親が挨拶をしたことで、母親がいる事に気づき、そのせいで怒りより恥ずかしさが上回り、その場でへなへなと座り込んでしまい、結局何も言う事は無かった。

 

そして、俺達は学校の屋上に移動し、ムービー撮影をした・・・のだった・・・。だったんだけども・・・。

 

『みんなも一緒に堕天しない?』

 

『『『しない?』』』

 

こんな物がインターネットで全世界に配信されたなんて絶対に信じたくない。ビデオの中身は堕天使ヨハネを紹介するムービーと、宣伝を兼ねているので、メンバーは全員出るようになっている・・・。

 

・・・なっているのだが何故マネージャーまで入れられなくちゃならないのだ。しかも、このムービーは我々(俺と梨子)に大変なものを作りました。心のキズです。

 

「やってしまった・・・。」

 

「俺達の黒歴史が生み出されたな、梨子。」

 

「ええ。今すぐにでも消したいくらい・・・。」

 

そう、心にキズを作ってしまい、俺と梨子は、部室の隅に暗い雰囲気でいる。

 

「でも、順位はかなり高いよ?」

 

曜が言っているように、Aqoursの順位がかなりの高ペースで上がっているのは分かってる。分かってるけど

・・・見たくない嗚呼見たくない見たくない

 

「コメントもたくさん!!!凄い!!!」

 

「〝ルビィちゃんと一緒に堕天する〟!!!」

 

「百香ちゃんお持ち帰りしたい!!!」

 

「〝ルビィちゃん最高〟」

 

「百香ちゃん〇したい♡」

 

「〝ルビィちゃんのミニスカートがとてもいいです〟」

 

ルビィの一言で、みんながパソコンに表示されたAqoursファン(この世界の俺ら)のコメントを読み始めた。俺は、壁に突っ伏しているので直接画面は見えないので、当然、この中には曜の私情も入っていると思われる。いや、入ってる。

 

「もうやめてくれもうやめてくれやめてくれやめてくれやめてくれやめてくれ・・・。」

 

「百香ちゃんがただの案山子になっちゃったずら。」

 

「案山子は喋らないよ?」

 

もう俺には、ムービーを止める気力すらなかった。さらに花丸が俺の事を案山子扱いしてくる。曜は否定してる様だが、何故かご満悦曜スマイルになっている。(何だよご満悦曜スマイルって)俺が部室から逃げ出そうとした時、スピーカーから放送が始まる前の3点チャイムが鳴り、

 

『スクールアイドル部!!!今すぐ生徒会室に来なさい!!!今すぐに!!!ですわぁ!!!』

 

ダイヤのキレ声での呼び出しの放送が鳴ったのだった。

 

「誰か・・・、・・・誰か俺の心を補強する時間をください・・・。」

 

そんな俺の小さな呟きは、呼び出しによって騒がしくなった6人のスクールアイドル達の声によって掻き消されたのだった。




〇次回予告〇
次回は善子ヨハネのBirthdayStory!!!

次回、Happy Birthday善子ヨハネ
次回更新予定日は7月13日0時0分です。

時間的に余裕が出てきたので1話だけ番外編ストーリーを書きたいと思います

  • 渡辺百香と前世の娘
  • スクスタ時空─スクフェス!─
  • 百香とルビィの入れ替わり!
  • スクスタ時空─虹学・Aqours対決!─
  • ロリ辺百香
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