生徒会室にあるパソコンからは、スクールアイドル部の新しい部員紹介─善子のムービーが流されている。あの、俺と梨子の黒歴史になってしまったムービーだ。
「Oh!!!Pretty bomber head!!!」
「プリティー?どこがですの!?こういうのは破廉恥と言うのですわ!!!」
鞠莉は、可愛いと言ってくれたのだが、ダイヤはかなり御立腹みたいだ。まあ、破廉恥とは言わないが、(俺が)着たくないこんな衣装を妹が着させられたらこうなるのも分からなくない。いや、俺は着たくなかった。なのに、曜と花丸のせいで着る羽目になってしまった。まあ、破廉恥では無いような気がするが・・・。
「いやー・・・、そう衣装というか・・・」
「キャラというか・・・」
「だから私は良いの?って言ったのに・・・」
千歌と曜が一応、この衣装にした言い訳なんやらをするのだが、梨子はダイヤ側につくようだ。まあ、俺もダイヤ側だが・・・。
「一番の常識人だと思った百香さんまであのような格好をしたのですか!?」
「・・・ダイヤさん・・・、殺してくれ・・・。一思いに・・・。死にたい・・・。」
ダイヤ・・・俺の黒歴史をほじくり返すな・・・。死にたくなるだろう・・・。
「どうなったら百香さんがこうなるのですか!?顧問の
ダイヤは、半ば放心状態になっている俺に驚きながら言ったところ、千歌は、
「あはは・・・。時雨先生は基本的に私達にほぼ全て丸投げしてるので・・・。」
と言った。アニメでは放送されていないのだが、実は、スクールアイドル部にも顧問がいたのだ。1年次主任でロリババアの時雨先生。彼女は、先生が少ない為なのか、スクールアイドル部だけでなく、卓球部、吹奏楽部、サッカー部の顧問をしており、スクールアイドル部は、出来のいい(と、校内では勝手に言われている)俺が居るためなのか、完全に俺に顧問の仕事を放り投げている。まあ、4つも正顧問に任せられるのは大変だから仕方ない事だろう。
「・・・生まれ変わったら砂利になりたい・・・。」
だが、こんな事を思っていながらも俺の心の修復は終わっていない。
「・・・そもそも、
「ごめんなさい・・・お姉ちゃん・・・。」
ルビィは、ダイヤの言ったことに対し、謝ったところ、ダイヤは、自分が少しヒートしすぎたことに気づいたらしい。
「生まれ変わったらバランになりたい・・・。」
ダイヤは、俺の独り言を無視しながら一息をつくと、
「とにかく、キャラが立ってないとか、個性がないと人気が出ないとか、そういう狙いでこんなことするのは頂けませんわ。」
と、言った。
「生まれ変わったら八ッ場ダムになりたい・・・。」
「でも・・・一応順位は上がったし・・・。」
「そんなもの一瞬に決まってるでしょう?試しに今、ランキングを見てみるといいですわ!!!」
曜の呟きに反応したダイヤは、生徒会長机の上に置いてあったノートパソコンを俺達の方向に投げてるように渡した。曜がすぐさまそのパソコンでランキングを確認したところ・・・
「あっ!!!」
案の定順位は下がっていた。まあ、仕方ないね。アニメ通りだし。
「本気で目指すならどうすればいいか・・・、もう一度考えることですね!!!」
「はっ、はい・・・。」
千歌は、ダイヤの態度に押され、ただ、言われた事を肯定するしかなかった。雰囲気に耐えられなかった俺達は、その後、生徒会室から脱兎のごとく抜け出したのだった。
その後、反省会っぽいことをするため、浦女前バス停が面している小さな岬っぽい場所にみんなで腰掛けていた。
「失敗したなぁー・・・。確かにダイヤさんの言う通りだね・・・。こんなことでμ'sになりたいなんて失礼だよ・・・。」
千歌がそう言うと、ルビィは千歌さんが悪いわけじゃないですと、言った。確かに、みんな止めてなかった(梨子は止めたけど)から、連帯責任でみんな悪いでいいと俺は思う。
・・・俺はそう思うのだが、善子は全て自分が悪いと思ってしまったのだろう。
「そうよ。
いけなかったの、堕天使。」
だから善子は自身の堕天使を否定し始めた。
「え?」
「やっぱり高校生になっても通じないよ。」
「それは・・・!!!」「なんかスッキリした。明日から普通の高校生になれそう。」
千歌は、否定し始める善子に何か言おうとしたのだが、善子に言葉を被せられ、完全に黙ってしまった。ルビィは、スクールアイドルはどうするのかと善子に問いかけて見ると、善子は、
「うーん・・・、やめとく。迷惑かけそうだし・・・。じゃあ。」
と答え、バス停の方向に少し、歩いて行く。そして、善子は、何かを思い出したかのように1回足を止めると、くるっとこっちを向くと、
「少しの間だけど、堕天使に付き合ってくれて、ありがとね。楽しかったよ。」
笑顔でそう言った。その時の善子の顔は清々しいような顔のように普通の人は思うが、俺は、無理して作っている顔にしか見えなかった。だから俺は・・・
「善子、ちょっと待て。」
善子を止めた。善子は、何?と言いながらもう一度振り向く。
「本当にそれがお前の本心か?自分の気持ちに嘘ついてないのか?」
「・・・ええ・・・。」
俺が、少し善子に迫ってみても、善子は笑顔のままだった。ただ、少しだけ顔を暗くしたが・・・。
そして、善子は沼津駅行きのバスに乗って帰って行ってしまった。
その光景を見ていた梨子がぼそっと言った。
「どうして堕天使だったんだろう。」
と。すると、花丸は海面を眺めながら言い出した。
「マル、わかる気がします。ずっと、普通だったんだと思うんです。私達と同じで、あまり目立たなくて。そういう時、思いませんか?これが本当の自分なのかなって。元々は堕天使みたいにキラキラ輝いていて。何かの弾みで、こうなっちゃってるんじゃないかって。」
「確かにそういう気持ち、あった気がする。」
梨子が肯定したように、実際、アニメの世界だけでなく、現実世界でもありえる話だと思える。人々の荒波に揉まれていくうちに、本当の自分って何だろうと思ってしまうことだってある。俺だって、百香と慶喜の2つを使い分けているのだが、たまにどれが本当の自分なのか分からなくなっている。今も、昔も──。
「・・・幼稚園の頃の善子ちゃん、いつも言ってたんです。〝私、本当は天使なの。いつか羽が生えて、天に帰るんだ!!!〟って・・・。」
花丸がそう言うと、千歌は、何かを決心したかのように水平線上を見つめ始めた。恐らく、また勧誘しに行くのだろう・・・、
・・・善子を。
「・・・千歌姉、善子の家、行くんでしょ?」
俺がそう尋ねると、千歌は千歌はコクっと頷いた。やっぱりな・・・。多分、明日に行くだろう。鉄は熱いうちに打てと言うからな。多分、俺も堕天使衣装を着せられるのだろうか?いや、千歌の事だ。絶対着せてくるだろう。まあ、明日くらいは我慢しよう。明日、善子の家を訪問した時、善子は十中八九逃げ出すだろう。で、今の一番の問題は、その逃げ出したルートだ。善子と俺達が走るのは沼津駅南口をぐるぐるしてから沼津港まで行くルートだ。全長約3km、女子高生が走るのには厳しいルートだ。特に体力がない花丸には。
恐らく、走る以外の別の手段があるのだろう。例えばバスとか。明日までによく考えておこう。
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そして、次の日、善子の住むマンションの1階、倉庫入り口で善子のことを狩野川沿いで待っていた。まあ、待っていたと言うより、待ち伏せていたという方が正しいのだが。
「堕天使ヨハネちゃん。」
1階の倉庫から出てくる善子に千歌が呼びかけると、善子は、ゆっくりながらもこちらを振り向いた。
「「「スクールアイドルに入りませんか?」」」
俺達みんなで声を合わせて善子を勧誘すると、善子は、「はあ?」と言いながら首を傾げた。
「ううん。入ってください、Aqoursに!!!堕天使ヨハネとして!!!」
「何言ってるの!?昨日話したでしょ?私は・・・」
「良いんだよ!!!堕天使で!!!自分が好きならそれでいいんだよ!!!」
千歌が善子を説得し始めた。
「昨日、質問した時の善子、未練がましい顔してたぞ?」
「・・・駄目よ。」
俺も善子に言い寄ると、善子は走りだした。全長約3kmの鬼ごっこの始まりだ。
「あ、待って!!!」
堕天使衣装のまま、俺達は善子を追いかける。この格好で表通りを走るなんて正気の沙汰ではないと思うのだが、そんな事考える暇なんてない。
「生徒会長に怒られたでしょ!!!」
「うん!!!それは私達が悪かったんだよ!!!善子ちゃんは良いんだよ!!!そのまんまで!!!」
「どういう意味ー!?」
千歌の走りながらの説得を聞きながらアーケード名店街や仲見世商店街、沼津駅、リコー通りなどを抜けて善子は逃走する。運がいいのか悪いのか、善子が横断歩道を横断する時は必ず車の流れが途切れたり、信号が青になったりしていた。
「しつこーい!!!」
そして、ついに善子は、しつこく追ってくる俺達を振り切るためにバスに乗ってしまった。俺は、昨日の時点でこの事も想定済みだったため、動揺せず、すぐに手を挙げて走っていた空車中のタクシーを1台停めた。
「前のバスを追ってください。」
2年生3人を乗せ、助手席に座った梨子に2000円を渡した後、運転手にそう伝えると、直ぐに外からドアを閉めた。セダン型の為、全員が乗り切れない。そのため、俺達1年生3人は別のタクシーに乗ることになるのだ。
・・・
乗ることになるのだが・・・、空車のタクシーがなかなか来ない。善子が乗ったバスと2年生が乗ったタクシーはもう既に見えない。タクシー、早く来い・・・。
・・・それから5分ほどしてから千歌達の乗ったタクシーとは別の会社のタクシーを捕まえた。もしすぐにタクシーが捕まったならば直ぐに追えたのにと、思ったのだが、もうこうなってしまっては仕方ない。先回りしかない。
「深海水族館まで!!!」
助手席に滑り込むようにして乗り込み、即座にタクシー運転士のおっちゃんに伝えた。後部座席に座った1年生2人は疑問に思ってるが、まあ、勘だと言えば大丈夫だろう。
「!!!止めてください!!!」
「え?お客さん。まだ水族館前だよ?」
「いいから!!!」
タクシーは沼津港まで通じる県道を走り、沼津深海水族館前のバス停でのところで、俺は、タクシーを止めた。バス停には、善子の乗ったバスと2年生組が乗ったタクシーが止まっていたからだ。
「お釣りはいりません!!!」
俺は、そうドライバーに言うと花丸とルビィと共にすぐにタクシーから飛び出した。そして、2年生と合流し、善子善子追跡劇を再開させる。
「私ね、どうしてμ'sが伝説を作れたのか、どうしてスクールアイドルがそこまで繋がって来てるのか、考えてみて分かったんだ!!!」
「もー、いい加減にしてー!!!」
沼津深海水族館と沼津 みなと新鮮館の前を抜け、沼津港北西側付近まで善子の追跡劇は続いた。ついに、善子は諦めたのか、体力が無くなったのか、沼津港大型展望水門びゅうおの北側出入口付近で走るのをやめてしまった。
「ステージの上で、自分の好きを迷わず見せることなんだよ!!!お客さんにどう思われるとか、人気がどうとかじゃない。自分が一番好きな姿を、輝いている姿を見せることなんだよ。
だから善子ちゃんは捨てちゃダメなんだよ!!!自分が堕天使を好きな限り!!!」
「良いの?変な事言うわよ。」
千歌の最後の説得で、善子は本当に受け入れてくれるのかと疑問に思っているのか、そう訪ねてきた。
「良いよ。」
「時々、儀式とかもするかも。」
曜が二つ返事で答えると、善子は少し希望を持った感じでまた俺達に尋ねた。
「そのくらい我慢するわ。」
「リトルデーモンになれって言うかも・・・!!!」
梨子が答えると、善子は、さっきよりも強い希望を持った感じで最後の問を尋ねた。
「それは・・・。でも、ヤダったらヤダって言う。
だから。」
流石に千歌もリトルデーモンになるのはちょっとアレだったらしい。けれども、千歌は嫌そうな素振りは全く見せずに善子に近づき、微笑みながら黒い羽を差し出した。善子は、すべてを受け入れてくれたらしく、黒い羽を受け取った──
Aqoursメンバーの6人目、津島善子Aqours加入
Aqours完成まで
残り3人
そしてその頃、静岡県沼津市の反対側ら辺に位置する石川県加賀市の福井県側にある地区のある民家の部屋では、1人の男子高校生が深刻そうな顔をしながらパソコンの画面をずっと見つめていたのだった。
〇次回予告〇
次回は千歌のBirthdayStory!!!
次回、Happy Birthday 千歌
次回更新予定日は8月1日0時0分です。
※更新回数についてのお知らせ※
次回更新から(特別編を含み)今年の8月中のみ毎週水曜日更新となります。ご注意ください。
時間的に余裕が出てきたので1話だけ番外編ストーリーを書きたいと思います
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渡辺百香と前世の娘
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スクスタ時空─スクフェス!─
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百香とルビィの入れ替わり!
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スクスタ時空─虹学・Aqours対決!─
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ロリ辺百香