海上自衛官が渡辺曜の妹になりました   作:しがみの

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第24話 りーんかんがっこーいちにちめーぜんぺーん

5月20日金曜日。朝、俺達は学校に行くためにバスに乗っている。いつも通りの光景だが、俺と善子、花丸、ルビィ、要するに1年生組の服装にはいつもとは違う違和感がある。そう、学校指定のジャージだ。今日から明日まで林間学校。だから、荷物はいつも持って行ってる教科書類の入ったバッグではなく、着替えや、お菓子、その他用品などが入った登山用に近い少し大きめのリュックだ。

 

俺達の通う浦の星女学院は、1年次にクラスメイトとの友情を深める為に御殿場にある国立の青少年教育施設で林間学校を行う事になっているのだ。Aqours3thシングル〝HAPPY PARTY TRAIN〟のドラマCDに登場した、あの大瀬テント村ではない。あのCDはいろんな意味で酷かった。だって、キャンプをするのに千歌が用意した荷物の中身がボウリングのピンとボウリングの球やタイヤだったり・・・。テントや食材は準備すらしてなかったし・・・。いろいろ酷かった・・・。でも、今回はそんな事は無い。

 

そもそも1年生の林間学校なのに千歌が来る事は吉田〇保里3人vs日馬〇士で日〇富士がビール瓶を使う可能性よりも少ないからな。え?今の世界線が2016年なのに2017年の話を知ってるっておかしいって?大丈夫だ。俺は転生者だからな。

 

で、林間学校で行うことは御殿場にある散策コースをみんなで歩いたりとか、あらかじめ分けておいた班で飯盒炊爨とか、テントで2班一緒に寝たりとかをするのだ。いやー、楽しみだ。Aqoursの1年生組と宿泊できるんだから。

 

バスは学校坂下にあるバス停につき、そこから俺達は、歩いて坂を登る。坂を登っている最中、静岡東部観光と車体に書かれた小型の観光バスが俺たちの横を登っていった。静岡東部観光という会社は静岡東部自動車サービスという東証2部上場の会社のグループ企業だったりする。

 

あ、じつはその2部上場の静岡東部自動車サービスという会社の社長、知り合いなんだ。何故だか知らないけど、俺の車を修理している場所がこのグループ会社なんだけど、ある日車をそこに持ってった時、ちょうど社長がいて、話したら趣味が合ったから連絡先を交換したんだ。

 

閑話休題。

 

 

学校まで登ると、そこには、ついさっき横を登って行ったバスが既に転回を終えてドアを開けて止まっていた。バスの前には理事長の鞠莉、学校長の志田川(しだがわ) 由紀子(ゆきこ)先生、教頭であり、数少ない男性の1人の山下(やました)遼一(りょういち)先生、40代なのにどう見てもロリみたいな感じで年齢詐称している様な見た目の1年次の学年主任の時雨先生、1年A組担任の佐藤(さとう) 洋子(ようこ)先生、そして、1年A組副担任であり、この場にいて、さらに林間学校に参加する唯一の男性の(さき) 和也(かずや)先生、そして、5,6人くらいのクラスメート達が立っていた。

 

「「「おはようございます。」」」

「お、おはようございます!!!」

 

俺達が鞠莉や教師陣に挨拶すると、「おはよう」とか、「シャイニーィィ!!!」とか・・・。そんな声が教師陣の塊の方から聞こえてきた。挨拶の中で俺達にシャイニーとか言った奴は分かるよな?鞠莉しかいねーだろ?シャイニーとか言うのは。

 

そして、5分くらい経ち、クラスメート総勢13人はバスの前に集合した。集合後には理事長挨拶と校長挨拶があった。鞠莉の挨拶は相変わらずハイテンションで綺麗に要点もまとめられている話だったので、飽きずに楽しく聞くことが出来た。・・・校長の話は・・・言わずもがな長い。前世、護衛艦に乗艦してた時、たまに朝会があったんだが、その時の高田艦長(現:沢木さん)の話よりも長い。だから、俺も含めみんな聞き飽きてる。

 

話が終わる頃になると、もう誰も校長の話を聞いていない。あの花丸でさえでもだ。花丸の目線は校長の方向を向いてるが、ぼーっとしてるのか、何かしら考えてるような顔をしてる。善子は前の子の背中に本を隠しながら読んでいる。流石にこれは怒られるだろと思ったが、浦女の校長は話がクソ長いのに話す内容は金網のようにかなりスッカスカで、聞く価値すらない。だから誰も善子を咎めようとしない。いや、咎めないどころか学年主任は寝てる。立ちながら寝てる。教頭に至ってはTwi〇terで〝校長話長すぎワロエナイ〟とかツイートしてた。生徒も教師も自由過ぎるなこの学校。

 

だが、こんな状況になっても校長の話は止まないどころか現状を理解してない。しかも今の校長の話は娘が修学旅行に行った──とか、息子が可愛くて仕方がない。男の娘にしたい──とか。林間学校どころか学校生活に関係ない話になり始めた。だから呆れ顔の鞠莉の「・・・もう行っていいよ。」という鶴の一声で俺達はバスに乗る準備を始めた。校長はこんな状況でも電源が切れないラジオのようにずっと話をしているだけだ。

 

「「「行ってきます!!!」」」

 

バスの前で見送ってくれる鞠莉と教頭に挨拶をし、バスの中に乗り込み始めた。校長はまだ気づく様子すらなく話をしているだけだ。哀れ校長。

 

 

 

 

 

日本古来からの街道である東海道、今日は国道1号線と呼ばれている道路。俺達を乗せたバスはその国道1号線を越え、東名高速沿いの国道を御殿場方面に走っていた。バスの車内は人数が少なくても騒がしい。恐らく、車内で行われているクイズゲームのレクリエーションの影響だろう。横に座っているルビィも上機嫌になってる。

 

「じゃあ次の問題!!!」

 

1番前にいるレクリエーション担当の生徒がマイクを握りながら言ってる。次の問題は何だろう。でも、さっきからろくな問題が出てない。

たとえば、「渡辺 百香さんのスリーサイズは?」

とか、「μ'sの中で黒澤ダイヤさんの推しは?」とかばっかりだった。全部ルビィが答えたが。ってかなんでルビィが俺のスリーサイズ知ってるんだという話になるのだが、あまり良く考えない方がいいだろう。最悪、嫌な事になるかもしれないからだ。

 

「今回はイラストクイズです!!!出されたイラスト4つのうち2つ以上答えられたらチョコ1個!!!全部答えられたらチョコ3個!!!」

 

どうやら次はイラストクイズらしい。レクリエーション担当が絵が描かれたスケッチブックをバス車内に見せている。全部アニメ関連だったのだが。

 

「わかった人ー?」

 

レクリエーション担当が聞くと、みんなが「はい!!!はいっ!!!」と言う声で車内は今以上に騒がしくなった。

 

「じゃあ国木田さん!!!」

 

「ずらっ!!!」

 

どうやら指されたのは花丸だった。花丸って本ばっか読んでてアニメとか無知だと思っていたが、その考えは改める必要があると思う。

 

「これは?」

 

「ら〇☆すたずらっ!!!」

 

「これは?」

 

「らき☆〇たずらっ!!!」

 

「じゃあこれ。」

 

「らき☆す〇ずらっ!!!」

 

「はい・・・。」

 

「〇き☆すたずらァ!!!」

 

「らき〇すた一本縛り止めろ。」

 

前言撤回。花丸はアニメについて全く無知だったようだ。このことについてはどうやら善子に指図されたようだ。善子がくすくす笑ってる。これ、花丸怒るわ。絶対「津島善子ゥァア ゙ーッ!!!」って展開になるだろう。

 

 

「・・・善子ちゃん?」

 

「はいっ!!!」

 

花丸が背すじが凍るような声を出しながら善子を見てる。あ、これ怒ってるわ。

 

「みかん、食べる?」

 

「すみませんでしたァァァ!!!」

 

花丸のポケットから善子が嫌いなみかんを5個出された瞬間(なんで持ってるかって?気にしたら負け)、すぐに謝った。これ以降、こういうネタは花丸にやらせてはいけないと感じた俺だった。

 

 

バスは御殿場市街地を抜け、登山口前の駐車場に停車した。ここからは歩いてハイキングだ。ここから標高1,213mの山に登るのだ。・・・これハイキングじゃなくて登山じゃねーか!!!

 

マップによると、駐車場から頂上まで登りは145分、帰りは60分なのだが、女子の集団のため、絶対行きだけで160分くらいはかかるだろう。

 

ゆっくりと山を登る16人の集団、その最後尾に俺と副担任の崎先生が居る。

 

俺は女子の中では体力がある方にいるため、こういう登山などの時は一番後ろが多いのだ。

 

ちなみにルビィや花丸は体力のない方なので前の方、善子は花丸にべったりみたいな感じだから前と、一番後ろには、Aqoursの1年生組が居ない。居るのは若い男性数学教師(崎教諭)だけだ。彼と話をするのもいいだろうが、はたして趣味が合うだろうか・・・。

 

「渡辺。お前ってなにか趣味あるのか?」

 

崎教諭が話してきたのは趣味の事だ。普通の女子なら裁縫とか、料理とかそんなんだろうと彼は考えているのだろう。裁縫は、出来るけど趣味じゃない。料理も同じだ。競馬や競輪・・・。近所になかったし、そもそもやったことないし出来るのは二十歳から。そうなると・・・、あれかな・・・。

 

「車とかですかね・・・。」

 

そう俺が言うと、崎教諭はへぇ・・・。と、声を出した。そりゃそうだ。女子が車に興味を持つなんてほんのひと握りくらいしかいないからだ。

 

「車ってどんなのが好みなんだ?」

 

「R33ですね。」

 

俺は即答した。別にそれ以外の車に興味が無いという事ではなくて、一番、誰よりも付き合いが長いからだ。大学生の時に買い、丁寧に整備し、乗りこなしてきて早30年くらいは経っているからな。正直、この世界で一番付き合いが長いのはこの車だったりする。

 

「珍しいな。失敗作だって言われてんのに。」

 

失敗作。そう、R33は失敗作と巷では言われている。それは、あの峠の走り屋の漫画のせいだ。そう、その中にあるあるセリフを紹介しよう。

〝俺はGTRだけでももう4台乗り継いで来ている・・

R32がデビューした時にはすげーインパクトだった。

2代目のR33を買ったときには()()()()()()()()・・

あれは日産の()()()だ〟

 

・・・かなり酷い評価をされている。だが、それは峠を攻める時の話。一般人は峠を攻めないし、攻める必要もない。そして、R33は、ボディがかなり大きいが、その大きいボディは空力を優先し、効く。

そして、R33の長いホイールベースは超高速域で急激な変化を押さえこみ、信じられない一体感安定感を出す。結果R33は恐ろしい速さで右に左に舞える。

そして、R33は真っすぐ走ろうとする。普通の車は真っすぐ走らない。その領域で真っすぐ走る車は世界中何処にもない。

そう、R33は市販車の中で一番高速走行に適した車なのだ。

 

・・・そんな事を崎教諭に話したら「おお、そうか・・・。」と、引き気味に言われた。

 

 

・・・その瞬間だった。

 

 

 

 

「ピギャァ!!!」

 

ある1人の叫び声が聞こえた。ルビィだ。紛れもなく。

 

俺と崎教諭は頷き合うと、すぐにルビィの元に走り出した。

 

 

 

「ルビィ!!!」

「黒澤!!!」

 

俺と崎教諭が駆けつけると、ルビィが尻餅をついていた。恐らく、転んだのだろう。崎教諭は、心配そうにルビィに触れそうになったため、俺は

 

「ちょっと待ってください。」

 

崎教諭を止めた。こんなところで叫ばれちゃあ、たまんないからだ。叫ばれたら崎教諭は周りの一般人から見るとただの不審者扱いされてしまう。だからだ。

 

「ルビィ、立てるか?」

 

「こ・・・、ここ、腰が抜けちゃったよぉ・・・。」

 

俺がルビィに話しかけると、ルビィは、そう言っていた。とにかく、怪我がなくてよかった。

 

「ルビィ、リュック、崎先生に持たせてもいい?」

 

俺がそう尋ねると、ルビィはコクリと頷いた。この時、崎教諭はムッとした顔をしていたが。

 

俺は、ルビィが背負っていたリュックを崎教諭に渡し、ルビィをお姫様抱っこした。ルビィは、顔を赤くし、どうにかして降りようとしていたのだが、腰が抜けているためか、暴れられていなかった。

 

クラスメートからは黄色い声援が飛んでくるが、無視して登り始めた。

 

そして、それから1時間から2時間くらい滑りやすい階段状の登山道を登ったくらいだろうか。ついに山の頂上に着いた。ついでにルビィは、お姫様抱っこしてから5分くらいしたら降ろしといた。叫ばれたら、たまったもんじゃないからね。その時のルビィの顔は何故か不満そうだったが。

 

山の山頂であるため、たくさんの人が写真を撮ったりしている。山頂からは日本の象徴でもある富士山が見える。

 

そうそう、富士山は表富士と裏富士があるが、静岡県側と山梨県側、どっちが表富士か知ってるか?実際、決まってないらしい。表富士か裏富士は山頂が何県にあるかで決まるのだが、両県とも境界争いはしたくないのだろうか、静岡県知事と山梨県知事の合意の上で山頂の境界は未確定になっている。だから別にどっちが表富士かは県民性で変わってくる。静岡県民だと、静岡県側を表富士だと言うし、山梨県民なら山梨県側を表富士と言う。俺は、今は静岡県民なので、静岡県側を表富士としよう。山梨県民の皆さんごめんなさい。

 

・・・閑話休題。

 

で、今、俺達は山頂で富士山をバックに集合写真を撮り、昼食を食べてから下山することとなった。なお、帰りは別ルートになる。

 

急な下りが15分くらい続いたが、すぐに緩やかな下り坂となった。途中、金太郎やその母親が住んでいたと言われている宿り石の前で一旦休憩し、一気に下山することとなった。

 

・・・特に何も無かったな。

 

駐車場に着いた俺達は、待機していたバスに乗り込み、国立の青少年育成施設に向かった。御殿場にある青少年育成施設は、伊豆地方一帯では一番大きく、俺達のような少人数が使うのにはちょっともったいないくらい大きい。だって、キャンプサイト3つのうち俺達が使う1つのサイトには、元々8つのテントが設営されている。なのに、俺達の人数では2つしか使わない。先生はって?引率者専用のログハウスだよ。

 

そして、施設到着後に炊事係とそれ以外に別れて作業に移る。炊事係は炊事場で夕食を作り、それ以外の人達はキャンプファイヤーのための薪を倉庫から持ってくる。みんな一本づつ持ってるのだが、俺と崎先生は何故かペアを組ませられ、リアカーで運ばされている。何故だ・・・!!!

 

 

話によると俺は怪力だとかなんとか。クラスメートは俺をなんだと思ってんだよ。

 

 

そして、嫌々言いながら薪を全て運び終わったと同時に夕食が完成した。完成していたのだが・・・。

 

 

「これはカレーだよな・・・?」

 

黒と紫色に混ざった色のようなルーがかけられているカレーから禍々しい紫色の湯気が立ち込めていた。

 

「うん!!!美味しいよ!!!食べて食べて!!!」

 

原田さんが目を輝かせながら言ってくるから多分こんな見た目でも()()味見をしてるから美味しいのだろう。

 

「じゃあ、いただきまーす。」

 

俺は、カレーを一口頬張った瞬間、この世のものとは感じられない味を感じ、目の前が真っ暗になった・・・。

 




次回更新予定日は2018年8月22日0時0分です。

アンケートをとりたいと思います。現在、オリ主をライブに出そうかどうか迷っております。(想いよ一つになれのライブを除く)
期限は9月26日です。
なお、アンケートは()()()()で行いますので、返答は()()()()の方でお願いします。

活動報告↓
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=190908&uid=133483

時間的に余裕が出てきたので1話だけ番外編ストーリーを書きたいと思います

  • 渡辺百香と前世の娘
  • スクスタ時空─スクフェス!─
  • 百香とルビィの入れ替わり!
  • スクスタ時空─虹学・Aqours対決!─
  • ロリ辺百香

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