──副長!!!威嚇だけでは危険です!!!攻撃命令を!!!
──だが・・・
──撃ってきました!!!
──『艦橋左舷に命中!!!』
──『艦橋左舷、
──『艦橋内部、死傷者数名有り!!!予備応急隊、衛生班、至急艦橋へ!!!』
───俺の妹の
妹の早苗が
早苗が死んだ──
──そう
──〝撃つ〟という判断を下せなかった俺の責任だ
俺は──、俺はこの事を忘れる事はない──
──絶対に、、、忘れない
──忘れるもんか
─────────────────────
「・・・」
俺は、周りですやすやと寝ている同級生達のいるテントの中でゆっくりと目を覚ました。前世のある一つの事が夢に出てきたことによるのか、俺自身にとっては最悪の目覚めだった。
朝日が上り始めてまだあまり経っていないのか、テントの中はまだ薄暗い。
自身のスマホの画面をつけ、時刻を確認すると午前5時前。起床時刻の6時半までまだ1時間半以上もある。
トイレに行き、スッキリとした気分でもう一度寝ようと思い、毛布の中に入り、目を閉じた。もう少しで夢の世界に入ろうとした瞬間、肩を揺すぶられた。
ゆっくりと目を開け、肩を揺すぶられた方向を見ると、そこには俺の顔を覗き込んでいるルビィがいた。
髪を解いているルビィは、顔をほんのりと赤く、そしてもじもじしながらこちらを見ている。
「あのね、百香ちゃん。お願いがあるの。それは──」
ルビィから言われた事。それは、トイレに行くから着いて来て欲しいということだった。
ルビィ曰く、薄暗い中、1人で外のトイレに行くのが怖いらしい。幼稚園児かよ。と、思ったのだが、特に断る理由もなったため、こうしてついていった。待っている間、水音とかが聞こえたのだが、その音は聞いていない事にしよう。覚えてたら絶対目が笑っていないダイヤに殺される。きっとそうだ。
「終わったよ。」
「ん。じゃあ行くか。」
ルビィが個室の中から出てきて、手を洗ったため、スマホをジャージのポケットに入れた俺と合流してテントに戻る道を歩き始めた。
「ねえ、百香ちゃん。ちょっと話いい?」
トイレ棟から歩き始めて少しだけ経った時、ルビィがふと、そんな事を言ってきたのだった。
「どれがいい?」
「いちごオレ。」
ボタンを押すと、自販機はガタンと音を立て、取り出し口にいちごオレの缶を落としてきた。
俺は、取り出し口で拾ったいちごオレの缶をルビィに渡し、ルビィからのお礼を聞きながらもう一度自販機の前に立ったのだった。
自販機で俺の飲む飲み物、ブラックコーヒーを買った俺は、あのカレー事件のあった東屋の椅子に座っているルビィの横に座った。ルビィの手にはさっき購入したいちごオレ、俺の手にはついさっき買ったブラックコーヒーの缶が握りしめてある。ルビィは、ずっと、空いたままの缶の飲み口を見ていた。
「・・・コーヒーなんて、大人だね。百香ちゃん。」
「え?そうか?コーヒーは昔から飲んでるが、そんな事思った事すらないぞ。」
ルビィが振ってきたのは俺が飲んでるコーヒーの事だった。ブラックコーヒーは、前世で毎日のように出されていたし、仕事中も飲んでいる事が多かったため、気づかぬうちこっちの世界でも習慣化されていたのだろう。転生後初めて飲んだ時のコーヒーの味は忘れられない。一口飲んだとき驚いたからな。ブラックコーヒーってこんなに苦いのかーってな。今ではすっかり慣れて毎日のように飲んでるんだけどな。
俺は、コーヒーをグイッと二、三口ほど飲み、ルビィの方を向いた。
「なあ、ルビィ。」
「な、何?」
「もしかして、私の左肩の事、まだ気にしてんのか?」
俺は、昨日の入浴中からずっと気づいていた。ルビィが俺の左腕をずっと見ていたことを。
ルビィは、俺の話を聞いた瞬間、バツの悪そうな顔をしながら頷いた。
そうなるのも当然なのかもしれない。こうなった原因はルビィにあるのだから。
だからといって俺はルビィを責めたりしない。
「別に気にしちゃいねぇよ。俺とルビィ、どっちも無事だったし、それでいいじゃねえか。」
俺は、そう言いながら缶の中に残っている残り僅かなコーヒーを一気に飲み干し、10メートル先にある鉄網のゴミ箱に缶を投げた。
俺の手を離れ、しばらく空中を漂った缶はコーンと高い音を鳴らしながら鉄網の箱の中に消えていった。
「先戻ってるよ。」
俺は、木製椅子から立ち上がりながらルビィにそう言い、東屋から出た。すると、ルビィに待って百香ちゃんと呼び止められた。
・・・今度は何だ。
「百香ちゃんは、スクールアイドルやりなくないの!?」
「何でだ。」
俺は、咄嗟にそう返していた。その返答を聞いたルビィは、すぐさま答えを返して来た。
「だって、百香ちゃん楽しそうにしてたもん!!!皆に手本を見せてた時!!!百香ちゃんも一緒に踊ろうよ!!!ルビィ達のように!!!」
確かに、踊るのは楽しかった。Aqoursの皆とステージに立って踊りたいと思った時もあった。でも、それは叶えられない。俺は異物。異物にそんな事は出来ない。
「無理だ。そんな事。」
出来っこない、皆と踊るなんて。皆と同じステージに上がってしまえば、この世界を変えてしまう事となる。この世界を変えてしまうと、未来も大きく変わる。浦の星女学院の廃校を少しだけでも先延ばしにできるならやるに越したことはない。だが、ハイリスクローリターン、つまり、リスクが高すぎるのだ。危ない橋を渡っても、その先には大したものすらない。だって、廃校を先延ばしに出来るのは数年だけだと思うからだ。
「なんで諦めるの?」
「諦めてなんかない。最初から資格がないだけなんだ。」
「なんで・・・、
・・・いや、何でもないや・・・。」
ルビィは、まだ何か聞こうとして、何か言い出したのだが、俺の答えようとしない様子を感じ取ったからなのか、ずっと黙っていた。
「じゃあ、戻るわ。ルビィも点呼までには戻って来いよ。」
そんな俺の言葉に対してのルビィの呼び止めはもう無かった。チラッと東屋の方を向くと、ルビィは、缶を握ったまま俯いていた。
俺は、ルビィに気にすることなく、テントに向かって歩き始めた。
入って欲しいと説得してきたルビィの気持ちも分かる。〝大切なのは出来るかどうかじゃない。やりたいかどうかだよ〟って千歌も言っていた。が、それはあくまでもアニメのストーリー通り、そして、Aqoursのメンバーだから成り立つ言葉だ。
俺が加入したらどうなるか?その後の活動がいい方向に進めば廃校阻止。悪い方向に進めば、夏中に廃校決定、最悪、Aqours解散になるかもしれない。そうならないから、リスクが低い無難なルートを通る。そうすれば、誰も失敗しないし、悲しむことがあっても、すぐに対処できるからだ。
だから、俺は踊らない。
逃げた?ああ、逃げたさ、俺は。最初はあまりそういう歴史とか、ストーリーとかどうでもいいって思ってた。だが、高校進学前に一度、ルビィをAqours未加入ルートに進ませようとしてしまった事があった。
だから、俺は逃げたんだ。あのストーリー通りのAqoursを作るために。
帰りのバスは、俺とルビィの座っている席だけ妙に静かで、盛り上がる周りに壁を作っているような感じだった。
学校に到着し、解散した後もルビィと話はしなかった。何となく気まずい感じがしたからだ。ただ、唯一話した事は「じゃあね」という、サヨナラの言葉だけだった。
ルビィと別れた後、ポケットに手を突っ込立ち止まった俺は空を見上げた。その時の空は、少しだけ黒っぽい曇り空だった。
次回更新予定日は9月12日0時0分です。次回から月2更新に戻ります。
アンケートをとりたいと思います。現在、オリ主をライブに出そうかどうか迷っております。(想いよ一つになれのライブを除く)
期限は9月26日です。
なお、アンケートは
活動報告↓
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=190908&uid=133483
時間的に余裕が出てきたので1話だけ番外編ストーリーを書きたいと思います
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渡辺百香と前世の娘
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スクスタ時空─スクフェス!─
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百香とルビィの入れ替わり!
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スクスタ時空─虹学・Aqours対決!─
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ロリ辺百香