「え?みかんケーキを作りたい?」
俺は、休み時間に俺の教室にやってきた梨子に不思議そうに尋ねた。だって、俺の教室に来て開口一番に「みかんケーキ作りたい。」とか言い出したしたからだ。
「そう。みかんケーキ作るの。出来る?」
あんまり現状を理解してない俺に梨子はそう言う。そもそも誘うなら部室でもいい筈だ。2年生の梨子が単身で1年生の俺のところに来ること自体がわからない。
「え?まあ、できないことは無いけど・・・、何で?」
「その・・・、今度千歌ちゃんの「分かった。千歌姉の誕生日にケーキを出すんだな。」まだ言ってないけど・・・、合ってるわ・・・。」
梨子が驚きながら言ってるが、みかんケーキなんて好むのは千歌くらいだろ?それに梨子は千歌の事が大好きだからな。
・・・千歌気づかれたくないから俺の教室なのか!!!なるほどな。
「で、今度作るの手伝ってくれる?」
「え、いいけど・・・。」
2つ返事で俺は答える。みかんケーキとかを作るのはもう決まりだからな。というか、今、クラスの中では「まさか、桜内先輩と渡辺さんが!!!」とか「え?桜内先輩って高海先輩とじゃない?」とか「桜内先輩を呼びつけで読んでるからワンチャン。」とか「え?きっと渡辺先輩も高海先輩のこと好きだから・・・、いったい何角関係なの!?複雑!!!」とか聞こえてきている。特にここ、浦女の生徒達は百合に飢えてるのか知らないがこういう類の話は広がるのは早い。だから誤解が広まる前に帰ってほしい。俺のため、梨子のため、そして、千歌のために。
「じゃあ決まりね。日時とかは後で連絡するわ。」
梨子はそう俺に言うと教室から出て行った。その後、俺はクラスメートに質問攻めにされたのは言うまでもない。
「ただいまー。」
「お邪魔します・・・。」
そして、ある日の昼、俺は梨子を家に連れて来た。別にみかんケーキを作るなら梨子の家でもいいのだが、千歌からその事を隠すために俺の家でみかんケーキを作ることになったのだ。
「おかえりー。
あ、梨子ちゃん、いらっしゃーい。」
メガネをしてラフな格好をしている曜は、俺と梨子の姿を見ると、挨拶しながら部屋に上って行った。反応が無関係な人みたいな感じだったなあ・・・。これでも同級生で友人、さらに同じ部の部員なのか?
俺と梨子は、リビング横のキッチンに移動した。キッチンには既に材料とレシピを見るためのタブレット端末を用意してある。
俺と梨子はエプロンを着け、髪をポニーテールに纏めてからいざみかんケーキ作りを開始しよう。
「あ、百香ちゃん可愛いエプロンね。」
梨子は、そんな言葉を俺にかけてきた。俺のエプロンは、ピンク色でウサギのイラストが描いてあるエプロンだった。男勝り(どう考えても中身は中年男だから仕方ない)だと心配した母さんが俺の誕生日に買ってくれたのだ。
そんなことはどうでもいい。さっさとみかんケーキ作りを始めよう。
俺は、手を洗ってから、前日茹でて、リビングのテーブル冷やしていたみかんを持ってきて、その間に梨子がオーブンの余熱を始めた。設定は──190度。うん、大丈夫だな。
「じゃあ、みかんのヘタ取ってフードプロセッサーに入れて潰しといて。」
俺は、梨子にそう指示すると丸い型を用意し、側面にバターを塗ったりして、オーブンで焼く準備をする。梨子は、ルンルン言いながらみかんのヘタを取ってフードプロセッサーの中に入れている。
「スイッチー、オーン!!!」
梨子は、そう言いながらフードプロセッサーの電源を入れている。
・・・こんなに上機嫌な梨子はあまり見ないな・・・。
みかんがミンチになると、フードプロセッサーには卵、砂糖、ベーキングパウダー、アーモンドプードルを加え・・・て・・・。
・・・。
何故か梨子が俺の方をガン見してくる。
「ねえ、百香ちゃん。」
「な、何?」
梨子が気まずそうに聞いてくるため、俺は少し気まずそうに返してしまう。
俺、何かしたか?
「ねえ、百香ちゃんも私のようにして。」
だが、そんな不安はすぐに壊された。めっちゃ上目遣いで見てくる。しかも、やれと言うのはあの〝スイッチー、オーン!!!〟のようなやつらしい。これやったら黒歴史化するぞ。冗談抜きで。
「いや、恥ずかしいから・・・。無理かな・・・?」
そう俺が答えると、梨子はあからさまにしゅんとしている。それほどやって欲しいのか。
・・・わかったよ。やればいいんだろ?やれば!!!(ヤケクソ)そして、俺はフードプロセッサーのスイッチを入れると同時に言った。
「・・・お、美味しくなーれ♡」
・・・おえぇ・・・。キモ。吐き気がするし、自分でやって自分で引いてる。見た目や声は曜に似てるが、これやってんの中身40歳のオッサンだぞ。ドアの隙間から見ていた曜は悶え死にそうになってるし、梨子はめっちゃ笑顔で動画を撮っていた。
「じゃあ、グループチャットに上げるわね。」
「やめろぉ!!!」
「ナイスゥ!!!」
「ふりじゃねーよ!!!マジでやんなよな!!!マジで!!!」
「それは上げていい合図ね」
「ダチ〇ウ倶楽部じゃねーよ!!!」
俺は、梨子から携帯を取り上げようとすると、梨子は、笑いながらキッチンから逃げ出して、グループチャットに俺の動画を上げているような素振りをしている。
「・・・はあ・・・。」
俺は、溜息をつきながらフードプロセッサーの中で潰れて混ぜ合わったものを型に入れ始めた。
「冗談よ。」
そんな俺を見た梨子はグループチャットに動画を上げていないことを確認できるようにチャットの画面を見せてくれた。
確かに、動画は上げられてはいないのだが、俺の黒歴史が爆誕し、さらに、梨子に弱みを握られた結果となったのだ。俺も梨子の弱みを握ってるが、これでもどうにかプラマイゼロになったくらいだ。それほどこの黒歴史は心にきてるのだ。
「焼くぞ・・・。」
俺は、あらかじめ余熱で温めておいたオーブンにさっきの生地が入った型を入れ、スイッチを押した。
焼いている間、俺達は3、40分適当にコーヒーを飲み、雑談しながら待ったのだった。
「じゃあ、今日は一日ありがとうね。また明日」
「ああ」
梨子は、ケーキが中に入ったケースを持っていない手で車の運転席に座っている俺に手を振ると梨子は、十千万の横の自宅に通じる道を登って行った。
俺は、帰宅後、車のカーナビ下の小物入れに入れていた予備の緑、黒、銀の3つのヘアピンについてふと気になり、灰皿を改造した小物入れを確認したところ、緑色のヘアピンだけなくなっていた。この前ヘアピンを着けるのを忘れた時、ここの緑のヘアピンを使い、戻したと思ったのだが、どこかに忘れてしまったらしい。俺は家に予備があるため、あまり気にしなかったのだが。
次の日、新しい緑のヘアピンを車内の小物入れに補充して曜と一緒に車で浦女に登校すると、校門前で会った梨子が珍しくバレッタだけではなくヘアピンを着けていて、何故か俺を見た瞬間、俺から逃げるようにして校舎の中に消えて行った。いつもは「あ、ヘアピン着けてきたんだ」としか俺は気にしておらず、それだけでなくなぜ走り出したのか?という疑問が残ったのだが、その時梨子が着けていたヘアピンの色までは分からなかった。その後、部活中に梨子が着けているヘアピンの色が緑色、しかも、俺が失くしたヘアピンだと気づいてしまった俺はその瞬間ある事を悟り、誰にも気づかれないところでハァ・・・と、ため息をついたのだった。
〇次回予告〇
次回はルビィちゃんのBirthdayStory!!!
次回、Happy Birthdayルビィ
次回更新予定日は9月21日0時0分です。
アンケートです。現在、オリ主をライブに出そうかどうか迷っております。(想いよ一つになれのライブを除く)
期限は9月26日です。
なお、アンケートは
活動報告↓
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=190908&uid=133483
時間的に余裕が出てきたので1話だけ番外編ストーリーを書きたいと思います
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渡辺百香と前世の娘
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スクスタ時空─スクフェス!─
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百香とルビィの入れ替わり!
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スクスタ時空─虹学・Aqours対決!─
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ロリ辺百香