春。
それは、冬を乗り越えた桜の木々が満開になり、心地よい陽気が眠気を誘う、新年始まってから訪れる最初の過ごしやすい季節だと人々は感じる。そう──
「くしゅん!!!」
── 一部を除いて。
ルビィは、練習着姿で屋上から体育館にある部室に向かっている最中の連絡通路でくしゃみの音を盛大に響かせた。
──そう、花粉症だ。ルビィは、副作用で眠くなるため薬は飲んでいなく、マスクしかしていない。しかもマスクとて完璧に花粉を防げる訳では無い。横、上に空いているすき間から花粉が入ってくる為、気休め程度にしかならない。
それどころか、昨日の雨のせいで今日飛ぶ花粉の量は通常の倍以上になってしまっていた。Aqoursの練習場所は基本的に屋上の為、くしゃみが止まらなかったルビィは、姉のダイヤとその他のメンバーによって無理矢理部室に向かわされたのだった。
「ぶえくしょい!!!あーちくしょー」
ルビィは、鼻をすすりながら部室の扉を開けようとしたところ、中から大きなくしゃみの音が聞こえたため、ぴぎっ!!!と特徴的な声で驚いてしまった。
オッサンみたいな──正体を知っているルビィからすれば中身は本物のオッサンだと突っ込むのは野暮だが──大きなくしゃみをした声の主は渡辺百香。彼女もまた、ルビィ同様に花粉症である。
百香自身の私物であるパソコンの前に座っている彼女は今、マスクを顎まで下げ、鼻に優しい柔らかいティッシュで鼻をかんでいる。彼女が座っている椅子の横に置かれている部室のゴミ箱がティッシュで満杯になっており、柔らかいティッシュでも鼻が真っ赤になっていることから、どれほど多くティッシュを使っているのかが分かる。
「・・・ん?ああ、ルビィも
部室に入ってきたルビィに気づき、マスクを元の場所に戻しながらそう言った百香に対し、ルビィはコクっと頷いた後、くしゃみが凄かったから中に行けって。と言い、少し力なく笑った。
ルビィは、机を挟んで百香の反対側にある椅子に座り、今度のイベントの衣装デザインを考えるために自身のバッグからノートを出した。
描き始めて約五分経過した。部室の中に聞こえる音はパソコンのキーボードをカタカタと叩く音と、ノートに絵を描くサラサラという音だけだ。
「くしゅん!!!くしゅん!!!」
ほぼ静寂したといってもいい空間を消し去ったのはルビィ自身の口から放たれた2回にも及ぶ大きなくしゃみの音だった。
ルビィは、練習着のポケットからポケットティッシュを出すと、ルビィ自身の鼻水と唾液で湿めり、さらに貼り付いた鼻水が糸を引いているマスクを取ってゴミ箱に突っ込むと、赤くなっている鼻をかんだ。この時のルビィの顔は、赤くなってしまった鼻から鼻水を垂らしているというスクールアイドルがしていけないような酷い顔だったというのは言うまでもない。
「これ、あげるよ」
「え?」
そんなルビィを見かねたのか、百香は、自身のバッグの中に入っていた未開封のボックスティッシュをルビィに手渡した。ルビィは、流石に同じ花粉症の人から貰うのはできないとから断ったのだが、百香は、車のトランクににまだ山ほどあると言い、半ば無理矢理にルビィの胸元に押し付けた。
「あ、ありがとう」
ルビィは、躊躇いながらも受け取ったティッシュで鼻をかんだあと、バッグの中にあるポーチから新しいマスクを取り出して着けた。
「薬とか飲んでないの?」と様子を見ていた百香が聞いてきたところ、ルビィは「眠くなるから飲まなかった」答え、そしてまた2回大きなくしゃみをした。
その様子を見ていた百香は、花粉症に効くお茶があると言いながらパイプ椅子から立ち上がると鞠莉が勝手に備え付けたティーセットに茶葉を入れ、ポットのお湯を入れようとした。
・・・したのだが、まだ今日は誰もポットを使っていないのか、中身のお湯の残量を示す目盛りは0を指していた。
「あー、空だ。水入れてくる」
「いいよ。ルビィが入れるよ」
「ん、そうか?ありがとな」
百香がポットを持ち出そうとする前にルビィがポットを掴み、水道へと向かって行った。
内部タンクの水が満タンになり、タプタプと音を鳴らすようになったポット。さらに重さも増えたため、両手で取っ手を持ちながら持ってくる。部室のドアの前に着くとルビィは、持っているポットを床に置いた。ポットで塞がっていた両手が空いたので、ルビィはドアをカラカラと開けた。
「重かったぁ・・・」
ルビィは、そう言いながら部室に置いたポットにコードを繋いだ。
水が温められ始めた。その時、ルビィはふと百香を見てみると、薬の副作用には勝てなかったのか百香は、腕を組みながらスースーと寝息を立てながらパソコンの前で寝ていたのだった。
それを見たルビィは、寝ているからじろじろ見ても気にならないだろうと思ったのか百香に近づき、百香の顔をまじまじと見つめてみた。
そして、完全に寝ていると分かったのか、ルビィは、顔と顔の距離を少しずつ近づける。だんだん距離が近づいていくと心臓のドキドキも増していく。
残り15センチ程となった時だった。急にポットから音楽が鳴り出し、ルビィはビクッとしてピギッ!!!という驚きの声を出してしまった。
ポットが鳴ったのはお湯が沸いたからだった。誰にも見られていない。だが、もしかしたら今ので百香が起きてしまったのではないのかとルビィは思い、百香を見てみた。百香はさっきの事など気にせずすやすやと寝ていた。その様子を見たルビィは、ほっと胸を撫で下ろした。
その時、茶葉が入った急須と沸いたお湯の入ったポットがルビィの目に入ったのだった。
「これ・・・
使えるね」
ルビィはそう呟くと、ティーセットの元へと向かったのだった。
「────ん。ああ・・・。寝ちまった・・・」
目が覚めた百香は、身体を伸ばし、身体をスッキリとさせる。
その後に部室全体を眺めてみると、ルビィが顔を真っ赤にしながら衣装案を描いている。そんな様子を見た百香は、何故か口の中にほんのりの残っているお茶の味と一緒に、不思議に思ったのだった。
アンケートをとりたいと思います。現在、オリ主をライブに出そうかどうか迷っております。(想いよ一つになれのライブを除く)
期限は9月26日です。
なお、アンケートは
なお、次回は9月26日に投稿致します。
時間的に余裕が出てきたので1話だけ番外編ストーリーを書きたいと思います
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渡辺百香と前世の娘
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スクスタ時空─スクフェス!─
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百香とルビィの入れ替わり!
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スクスタ時空─虹学・Aqours対決!─
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ロリ辺百香