ムービーを録画したその日の内に映像編集を行い、どうにかPVを完成させ、次の日に、そのデータの入ったUSBメモリを善子が持ってきたので、千歌のパソコンを持ち、俺を含めた皆で理事長室に向かった。
『・・・以上!!!〝頑張ルビィ〟こと、黒澤ルビィがお伝えしました!!!』
と、ルビィが頑張ルビィのポーズを見せてPVが終了した。千歌は鞠莉に「どうでしょうか」と聞いてみたところ、鞠莉はデスクに手を組みながら寝てるいた。
「もう!!!本気なのに!!!ちゃんと見てください!!!」
「本気で?」
寝ていたことに対し、千歌が鞠莉に苦情を言ったところ、鞠莉はそう答えた。当然、本気で作った千歌は元気良く「はい!!!」と答えた。その千歌の言葉を聞いた鞠莉は、素早くパソコン閉じた。
「それでこの
「ていたらーく?」
「それは流石に酷いんじゃ・・・」
「そうです!!!これだけ作るのにどれだけ大変だったと思っているんですか!!!」
流石に体たらくと言われるのが嫌だったのか、意味を分かっていない千歌を除く2年生組から文句が飛んできた。
「努力の量と結果は比例しません!!!大切なのはこのtownやschoolの魅力をちゃーんと理解してるかデース!!!」
しかし、その文句も鞠莉に反論され、すぐに文句の声は止んだ。
「それって、つまり・・・」
「私達が理解してないって言うことですか?」
「じゃあ理事長は魅力が解ってるって事?」
「少なくとも、貴女達よりは。聞きたい?」
最後の善子の問いかけで鞠莉は微笑しながら言った。その微笑は馬鹿にしているのか、この苦難を乗り越えられるのか楽しみにしているのか。恐らく考えている事は後者だろう。いや、絶対に後者だ。そんな鞠莉を見た千歌は、言わないでいいですと言い、俺達を連れて理事長室を後にした。
そして、階段前まで移動した時、ふと梨子が千歌にある事を聞いた。
「どうして聞かなかったの?」
「なんか、聞いちゃダメな気がしたから」
何意地張ってんのよと善子に言われたが、千歌はそれは意地じゃ無く、大事な事だったから、自分で気づけなきゃPVを作る資格は無いと答え、最初に質問した梨子は「なるほど」と言い、納得した。
「ようそろー!!!じゃあ、今日の放課後、千歌ちゃんちで作戦会議だ!!!皆PVのアイディアを1つずつ持ち寄ろうよ!!!」
「そうだね」
こうして、俺達は階段前で2年生組と俺含めた1年生組に別れたのだった。
そして、午前中のSHLと授業が終わり、昼休みになった。昼休みになると1年生組は花丸と善子の机を繋げて4人で囲み、昼食を取ることになる。俺の正面にルビィ、俺の右に善子、斜め前に花丸が座る。
食事を始めるとすぐに善子が俺に問いかけてきた。
「百香・・・貴女なんかいいアイデアないの?」
「無い」
「速っ!!!ズラ丸は?」
「百香ちゃんが思い浮かばないのにマルが分かるわけないずら・・・」
やれやれといったような表情と仕草でそう答えた。何故俺が思い浮かばなければみんな思い浮かばないと言うことになるのだろう。
「はぁ・・・。ルビィは?」
「ルビィ?」
善子がルビィに話を振ったのだが、ルビィは俺の弁当箱を凝視するだけで反応しない。善子は、「ルビィ?ルービーイー」と言い、ルビィの目の前で手を振っていたが、まだ反応しない。
と、思っていたところ、ルビィが急に立ち上がり、俺が箸で掴んでいた1口だけ食べたスイートポテトをかぶりつき、食べてしまった。
「ルビィ!?」
「ルビィちゃん!?」
「俺のスイートポテト!!!」
「ごめん百香ちゃん。そこにスイートポテトがあったから・・・。で、何の話だったの?」
驚いている俺達を差し置き、スイートポテトを食べ終えたルビィはあっけからんとした表情で座っている。
「・・・まあいいや・・・PVの中身の話で、何かアイデアが無いかって善子が聞いてきたんだ」
俺の説明でようやく話の内容を理解したルビィは、あー、それねと言い、紙パックのジュースを一口だけ飲み──
「せっかくスクールアイドルなんだから踊ってみたらいいかなって思った」
と言った。
「それずら!!!」
「それね!!!」
「それだ!!!」
「それだよ!!!」
皆その事については盲点だったらしく、ルビィに言われるまで気づかなかった。正直俺もルビィに言われるまでスクールアイドルの本分を忘れていた。が、何故か最後のそれだと言った時、千歌の声が混じっていた。俺達が教室の入口を見てみると、そこには千歌の姿が・・・
「「「千歌さん!!!」」」
「千歌姉!!!」
驚きながら千歌の名を呼ぶと千歌はえへへーと言いながら弁当箱を持っていない右手で頭を掻いている。というか、ここ1年生の教室なのに何故千歌がいる。
俺がここ1年の教室だけどと言うと、千歌が言うに、いいアイディアが思いつかなかったから食べながら探していたら俺達の声が聞こえてここに来て、今のルビィのアイディアを聞いたらしい。食べ歩きするなよ。しかも弁当箱だし。食べ歩きするってレベルじゃねーぞ!!!
なお、この後千歌は曜と梨子に引きずられていって2年生の教室に戻って行った。
そのうちスクールアイドル部は変人の集まりという変な噂が立ちそうだと俺は考えてしまったのだった。
今日1日の授業が全て終わり、俺達は千歌の部屋に集まった。千歌のダイヤ勧誘シーンもあったのだが、俺が1年次主任兼スクールアイドル部顧問の時雨先生に呼び出され、見ることは出来なかった。残念だったね!!!
その日の夕方、俺達は千歌の部屋に集まっていた。ただし、梨子だけは障子から俺達がいる部屋の中を覗いているが。
「しいたけ居ないよ。ね、千歌ちゃん」
曜がベッドのモッコリしている部分にそう言うと、ベッドの布団はもぞもぞと動く。私はしいたけじゃないと言っていると思うのだが、あれはしいたけだ。どうあがいてもしいたけ。これは決定事項。梨子の犬嫌いを治すために千歌と曜が梨子の居ないところで決めたのだ。もちろん俺も居なかった時に決めたので止められなかった。
「それよりもPVだよ。どうすんの?」
「確かに・・・。踊ること以外何も思いついていないずら・・・」
「それはそうだけど・・・」
善子と花丸に犬なんてどーでもいいだろという雰囲気を作り出されたのだが、梨子は相変わらず障子から様子を見ていままだ。
「あら、いらっしゃい」
そんな梨子を茶を持ってきた志満が部屋の中に誘導してくれた。
「皆で相談?」
「はい」
志満が茶を茶盆ごとちゃぶ台に置くと同時に梨子がベッド脇に座ってしまった。そのベッドの中にはしいたけが・・・。だけどバラせない。バラすなという視線が刺さるからだ。
「いいけど、明日皆早いんだから今日はあんまり遅くなっちゃダメよ」
「「「「はーい」」」」
みんなで返事を返したところ、志満は出ていった。これでしいたけが出てくる準備はほぼ完了。しかし、このやりかたもひどいもんだなー。
「明日、朝早いの?」
「さあ、何かあったかな?」
明日の朝について梨子が曜に聞くが、曜は思い出さないふりをし、これを千歌を呼ぶ合図とした。
「海開きに向けた掃除だよー」
「あれ?千歌ちゃん!?
じゃあ・・・」
曜の合図で廊下から姿を現した千歌を見た梨子は、瞬時に後ろのベッドの中に入っているのが千歌ちゃんじゃない何かだと気づき、後ろを恐る恐る見ると・・・そこにはしいたけが・・・
そんな事もありながらも次の日になった。昨日の梨子の悲鳴なんて聞いていない。イイね?
で、今俺達は朝4時からジャージ姿で浦女の全校生徒と内浦の人々と一緒に海岸を掃除している。母さんはこのためだけに俺と曜を車で送ってきてくれた。朝早くからお疲れ様です。
「やっぱ、朝方はまだ寒ぃなぁ・・・」
俺がそう呟くと、千歌が梨子を呼ぶ声が聞こえたため、俺は千歌と曜のいる場所まで向かった。
「おはヨーソロー!!!」
「おはヨーソロー」
「おはよう」
テンションは違うが曜と同じ挨拶をし、梨子からも挨拶の返答をもらう。
「梨子ちゃんの分のあるよ」
千歌は左手に持っていたビニール袋と提灯、トングを梨子差し出し、曜は道路沿いから海の方まで拾って行ってと指示を出していた。
千歌からビニール袋と提灯、トングを受け取った後、しばらく内浦の人々や浦女の生徒のゴミ拾いの様子を見ていた梨子は、ふと、ある事を思いついた。
「これなんじゃないかな・・・。この町や学校のいい所って」
「そうだ!!!」
梨子から意見を貰った千歌はすぐにある事を思いつき、すぐに俺達にビニール袋と提灯、トングを渡すと、ちょうど辺りが見渡せる場所へと移動した。
「あの、皆さん!!!私たち、浦の星女学院でスクールアイドルをやっているAqoursです!!!私たちは学校を残す為に、ここに生徒をたくさん集める為に!!!皆さんに協力して欲しいことがあります!!!」
千歌は、内浦の人々にある願い事をし、PV撮影の回はいよいよ終へと向かっていった。
「あ、沢木さん?例のヤツ、お願い出来ますか?」
俺は、誰にも見えない建設中の海の家の裏で、沢木さんと繋がっている携帯でそう言ったのだった。
その後、撮影したPVは、どこからかすぐに届いたスカイランタンを〝Aqours〟の文字に並べて飛ばし、それを背に踊ったという高校生が作るPVではかなり斬新なものであった。
俺は、ビデオカメラで撮影しながらふふっと誰にも解らないように微笑んだのだった。
次回は10月10日に投稿致します。
時間的に余裕が出てきたので1話だけ番外編ストーリーを書きたいと思います
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渡辺百香と前世の娘
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スクスタ時空─スクフェス!─
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百香とルビィの入れ替わり!
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スクスタ時空─虹学・Aqours対決!─
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ロリ辺百香