「はぁー・・・」
部室の中で百香は、大きなため息をついた。今日は6月3日金曜日。クマゼミがやかましい合唱を行い始める6月に入り、まだ1週間も経過していないが、それでももう数えられないほど多い回数の溜息を百香はついている。そしてクマゼミはそのため息掻き消すほどの大合唱をおこしている。
百香がため息をつく理由は、制服だ。月は5月から6月に移り、衣替えによって制服は冬服から夏服に移行する。当然、制服の生地は基本的に薄くなり、下着が見えやすくなってしまう可能性も高まるし、学校の制服によっては別デザインを用意し、冬服の時とは違った気分で登校できるところだってある。
そして、百香がため息をついている問題は浦の星女学院、1年生の夏服のデザインにあったのだ。
「何で1年の夏服はノースリーブなんだよ・・・」
そう、今百香が着ているのは
しかし、いざ着てみると腋毛とかのムダ毛処理は面倒臭いし、来年の夏服は何故か袖有の制服になるし、腋はあまり見せたくないし、下手すると水で濡れてすらいないのに袖口から下着が見えてしまうかもしれないし・・・と、いうように良いことなんてひとつも無い。
そんな制服を着なければならないとか普通に死ねる(精神的にだが)。だから今は一時期のみ冬服で着ていたカーディガンを着てどうにか精神を落ち着かせている。6月と7月の初めくらいはあんまり暑くないからどうにかなるだろう。
しかし、何故1年生の制服だけ袖無セーラーなんだろうか。もしかしたらアニメ製作陣か、原案者の趣味だったのかもしれない。
「はぁー・・・」
そしてまた百香はため息をつく。このため息はこれから夏服の間は精神が削られていくことを意味していた。
そんな俺を見ていた善子が「そんなにため息ついてると幸せが逃げるわよ」と言ってきたため、俺が「いつも不幸な善子に言われた
そして、善子を止めた花丸はため息をつき、「遊んでないで、早く千歌さん家いくずら」と呆れるように言いながらスクールバッグとパンパンになっている薄い黄色のダッフルバッグを持った。2年生3人はもう千歌の家に向かったのか、スクールアイドル部室に姿はなかった。
そう、実はあの時作ったPVがアニメ通り高評価をもらい、6月初めに東京行きが決まったのだった。そして、今のままではヤバいと千歌からの進言があり、6月の第1週の金、土、日の3日間にわたって合宿が行われることとなったのだ。合宿の内容は歌詞とダンスの大まかな決定ということで、ほとんど遊びみたいな事となってる。よくこの合宿にルビィが参加することダイヤが許したな。千歌は、この計画に俺が反対すると思っていたらしく、バレないように秘密裏に進めていた。で、Aqours皆のOKを貰ってから俺のところに来たという事は、この事を「皆からOK貰ってるからー」とか言って無理やり俺にOKさせようとしたのだろう。
合宿について聞いてきた時の千歌の顔はどうか!?通るか!?という千歌としては珍しい真剣な顔だったからだ。
もちろん俺は二つ返事でOKを出した。千歌は最初その事を信じられなかったのか俺に何度か「本当に?本当の本当に!?」聞いてきたので、「じゃあダメ」と言った。すると千歌は「え!?」と悲しそうな顔をすぐにしたので笑いながら冗談だと返したところ、千歌は安堵の表情を見せたのだった。本当、千歌って裏表の少ない子でわかりやすい。
それはともかく、俺が二つ返事した理由はその合宿の日時と前世の最期で約束した時の日時が一致していたからだ。それに合宿場所であろう十千万から内浦の船着場までは目と鼻の先。途中抜け出して容易に会えるし、もし誰も来なくても怪しまれることもなく戻れるからだ。
「百香ちゃん。そろそろ行くよ」
「あ、ああ」
部室と校舎に続く連絡通路の入口付近にピンク色のリュックサックを背負いながら立っているルビィにそう言われ、俺は深緑色のダッフルバッグとスクールバッグを持ち、千歌の家である十千万にバスで向かうため、部室を出て鍵を閉めたのだった。その時、わざと3日目の下着の入った袋を部室に置いてきたのだった。
鍵を職員室のキーボックスに戻した後、善子、花丸、そしてルビィと合流し、一緒に十千万に向かったのだった。合宿初日である金曜日に土日の宿題をすべて済ませることを予定していたため、活動は軽く運動(3kmランニング)をしただけとなった。その時、千歌や善子が全然少しじゃないと文句を言っていたが・・・。
そして、夕食を食べ、宿題を終えた後に皆で十千万の露天風呂で入浴をする事となった。もちろん、入浴時刻は一般のお客に配慮したらしいのか、少し遅い9時30分頃だったが。
服を脱ぎ、全身を洗った後に髪が湯船の中に入らないようにアップヘアーに纏め、浴槽の中に入り、梨子の横に座った。周りを見渡すと、髪が長いメンバーは皆髪を纏めているし、善子や梨子のようにきめ細やかな白い肌をしている子も多い。善子は、自分の肌をタオルで隠して中々湯船に入らないのだが。
・・・可愛らしいくしゃみをしてようやく湯船に浸かった善子を苦笑いしながらながらふと思いついた事があった。
明日、もし仮に転生した一希と菜月と会い、この姿を見たとならば2人はどんな反応をするだろう。女になった俺を見て驚くのだろうか。それとも曜の妹になった事を羨むのだろうか。それとも──
──世界を変えてしまうのかもしれないのにAqoursに、いや、浦女に入ってしまった俺の事を軽蔑してしまうのだろうか──
とりあえず、明日アイツらに会ってみてなければならない。この
俺はそう思い、もくもくと湯気がたっている湯船から立ち上がったのだった。
「あっ、2日目用の下着も忘れた・・・」
まあ・・・、考えすぎるのも良くないか・・・。
アンケートを取りたいと思います。当作品に登場する新しいオリジナルキャラクターを決めたいと思います。期限は11月27日です。
なお、アンケートは
↓活動報告
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=196630&uid=133483
次回更新予定日は
10月24日0時0分です
時間的に余裕が出てきたので1話だけ番外編ストーリーを書きたいと思います
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渡辺百香と前世の娘
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スクスタ時空─スクフェス!─
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百香とルビィの入れ替わり!
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スクスタ時空─虹学・Aqours対決!─
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ロリ辺百香