私事により、投稿が大幅に遅れてしまった事、そして当話の最後がかなり駆け足になってしまったことをお詫び申し上げます。これからは少なくとも、月に一回、多くて月二回(例外あり)更新致します。果南の誕生日回は来月更新する予定です。
夏が過ぎ、気候的にも過ごしやすくなったある日の休日の昼下がり、百香はルビィと勉強をする為に黒澤家を訪れていた。
今は休憩中。客間で百香は自分の分のプリンを食べていた。
「ルビィィィィ!また
「逃げルビィ!」
黒澤家の中がドタドタと騒がしい。百香が差し入れにと、持ってきた三つの手作りプリンのうち、黒澤姉妹分の二個のプリンをどちらともルビィが食べてしまったため、ダイヤが怒って追いかけているのだ。ルビィは悪びれる様子もなく、食べ終わった空のプリンのプラスチック容器片手に黒澤家の客間と縁側を走り回っていた。
ルビィはダイヤよりもインドア派で体力は少ないのだが、スクールアイドルの練習でダイヤに引けを取らない程まで体力をつけていた。そのため、5分経過しても、ルビィとダイヤの2人の距離は縮まらないでいた。
いや、それどころか、距離が離されていた。半年という時間の差は、かなり大きかった。
「ほとぼりが冷めるまで花丸ちゃんのとこ行ってくる!」
「行ってらっしゃいー」
「待ちなさい!ルビィ!まだ
ルビィは、百香の目の前の座卓に置いてある勉強道具を素早くルビィお気に入りの手提げのなかに滑り込ませるとすぐに肩から下げ、そそくさと玄関から逃げて行った。
「また逃げられましたわ・・・」
ダイヤはそう言い、溜息をついた。これでもう何回目なのだろう。片手、いや、両手でも数えられないくらいの回数、ルビィに食べられているのだろう。
百香さんの手作りプリン・・・
と、小声で言っているダイヤの目にはうっすらと涙が浮かんでいた。
その様子を見ていた百香は、スカートのポケットに入っている車のキーを出し、チラリと時計を見た。充分に時間はある。
「なあ、ダイヤ。ちょっと伊豆長岡行くか?」
俺は人差し指で車のキーを一周、くるりと回したのだった。
およそ2時間後、白色に塗装された一台のスポーツカーが黒澤家の門の前にゆっくりと停車した。運転席からは俺、助手席からは大手スーパー名と大手百円均一店名が刻印された二つのビニール袋を持ったダイヤが降りた。
2人は黒澤家の台所に向かい、ビニール袋の中身を確認した。
卵、牛乳、砂糖、フタ付きの耐熱プラスチックカップ。
エプロンは────持ってきてない。ダイヤかルビィのでも借りれば良いか。
「よし、始めるぞ」
ダイヤから借りたシンプルな赤いエプロンを身につけた百香は、さっそく和風建築の家には似つかない真新しいキッチン台に大きなボウルを置き、そこに卵と牛乳、砂糖を入れて混ぜ、何度かこし、溶けない砂糖を完全に溶かす。
それと同時に、ダイヤはプリンを蒸すのに使う湯を沸かす為、水道水が入った鍋をIHコンロにのせた。
百香は溶かし終わった溶液を台の上に並べた耐熱のプラスチックカップに泡立たないように流し込んだ。
ふう。と、百香が一息つくと、こぽこぽという音がコンロの方から聞こえてきた。
「お湯が沸きましたわよ」
ダイヤがそう言い、百香を見た。
「ありがとう、ダイヤ」
百香はダイヤに微笑み、ダイヤの立っていた位置に立ち、ダイヤは横に移動した。百香がチラッとみたダイヤの顔がほんのり赤くなっていた理由は百香にはわからなかった。
「ゆっくりな」
その言葉を合図として、ダイヤがカップを両手で持ち、一つ一つゆっくりと百香に渡してくる。受け取った百香も、沸騰している水が入っている鍋に一つずつ、一つずつゆっくりとゆっくりと下ろしていく。
全てのプラスチックカップを下ろし終わると、コンロにあるスイッチを押して火を弱火に変えて、鍋に蓋をした。
ここからは簡単だ。およそ10分間蒸し、それからカップに蓋をして冷蔵庫で冷やすだけだ。
百香は、自分自身のスマートフォンで10分タイマーをセットしてから、コンロの前に2つの椅子を置いた。
「百香さん、これは・・・?」
「火を見張るためだよ」
見張るため?とダイヤは首を傾げた。ダイヤのように火が出ないIHなら目を離しても安全だと思っている人は少なくない。だが、目を離した隙に鍋やフライパンの中身が原因で火がつき、火事になってしまったケースも少なくない。湯で蒸すからといって、中身と周辺に燃えるものがある以上、火が出ない確証はどこにもないからだ。
「百香さん、アイスコーヒー飲みますか?市販のですけれど・・・」
ふと、ダイヤがそう言った。ダイヤの手にはスーパーなどで売っている市販のコーヒーが入った1リットルペットボトルを持っていた。
「ああ、ありがとう」
そう言うと、ダイヤは2つのマグカップにコーヒーを注ぎ、片方にはミルクと砂糖を入れている。百香はストレート派だから恐らくダイヤのだろう。
「どうぞ」
「ありがとう」
百香は、ダイヤからアイスコーヒーを受け取り、一口飲んだ。
「そういえば百香さん」
「なんだ?」
「百香さんは・・・、その・・・、前は殿方でしたわよね」
「・・・そうだけど、どうしたんだ急に」
百香がダイヤの方を見ると、ダイヤは両手で持っているマグカップに目線を下ろしていた。
「その・・・、いきなり女性の身体になって生きづらいとか思ってませんの?」
「そりゃそうさ。元々男だったからな。記憶がそのままで急に女性として産まれたらそら混乱もするよ。多分、これが
百香は、そう言いながらこの身体になってから初めのことを思い出していた。前世とは別の性別の身体。初めての色々な体験。もう慣れてしまった今にとってはいい思い出だ。
「もし、
ダイヤはマグカップから百香に目線を向けた。その時のダイヤの顔は真剣だった。
百香は、片手で握っているマグカップに目線を落とした。
「このままかな。男女の身体、どちらもメリットデメリットがあるけど、男に戻るとAqoursとしても活動出来なるし、それに、ダイヤにももう会えなくなっちまうからな」
ピピッ、ピピッ──。百香のスマートフォンから電子音がスヌーズと一緒に10分経過した事を伝えた。
百香は、立ち上がってマグカップを持っていない手でアラームを止めて、マグカップを台の上のスマートフォンの横に置いた。
「画面の向こうなんて嫌だ。こうして一緒の世界に居たい」
IHの電源を切ってからもう一度ダイヤを見ると、ダイヤはまた顔を赤くしていた。
何故だ──?
プリンのプラスチックカップのフタを閉めている百香は、一生懸命理由を考えたが、結局頭上には?のマークしか浮かばなかった。
出来上がったプリンを冷蔵庫に入れて扉を閉める。後は冷やすだけ。
「多分食べられるのは明日かな」
「そうですか・・・」
ダイヤはしょんぼりとしていた。よほど今日食べたかったのだろう。
「・・・。私の食べるか?食べかけだけど」
百香は、別に好物でもないし、さらに中身はプリン好きとも言えないいい歳したオッサンだったため、まあ、別にダイヤにあげてもいいだろうと思った。
「えっ、・・・そ、それは・・・」
提案されたダイヤは、また急に顔を赤くした。
(何故顔を赤くするのだろう・・・)
百香は頭の中でまた疑問に思いながらダイヤに別に好物でもないから食べていいともう一度促した。
「・・・わ、わかりましたわ」
ダイヤは顔を赤くしながらプリン作り前に冷蔵庫に仕舞った百香の食べかけのプリンを出した。
さすがに食べる時に使ったステンレススプーンは冷蔵庫の中に置けず、流しに置いてしまっていたため、百香は食器棚から乾いたスプーンを出し、ダイヤに手渡した。
「い・・・、いただきます・・・」
ダイヤは、スプーンでゆっくりとプリンを掬い、パクッと食べた。少し落ち着いたのか、真っ赤だった顔は薄ピンク色になっている。
「あーっ!
「ああ、あああああ──────!」
「ダイヤさんがご乱心ずら!」
百香の食べかけのプリンをダイヤに渡していたところを気づかないうちに帰宅していたルビィと、ルビィがダイヤに謝るのを助けるために黒澤家に来た花丸の2人が目撃してしまい、ダイヤは悲鳴まがいの声を出して、また顔を真っ赤にして、今度はダイヤが外に走り出してしまった。
何故、顔を真っ赤にして外に走り出したのか、百香にはよくわからなかった。
時間的に余裕が出てきたので1話だけ番外編ストーリーを書きたいと思います
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渡辺百香と前世の娘
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スクスタ時空─スクフェス!─
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百香とルビィの入れ替わり!
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スクスタ時空─虹学・Aqours対決!─
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ロリ辺百香