なお、クオリティと文字数は(ry
秋になり、内浦湾に浮かぶ淡島の木々が色付き始め、内浦の北から西を貫いている静岡県道17号線は、百香の前世の時とは遠く及ばないが、秋の交通渋滞が目立ち始めていた。
「すっかり涼しくなったね」
「そうだな。風も心地いいし、ハードな練習するならこのくらいの時期が良いよな」
ルビィと百香は話し、善子は「この脳筋野郎」と小声で言い、花丸はまた走るのか、と想像したのか無言だったが善子の今の顔ような少し嫌そうな顔をしていた。そんな4人は朝日に照らされた屋上へ続く階段を登っていた。
屋上には、たまたま廊下で出会ってしまった時雨先生に少量の仕事を押し付けられ、来るのが遅れてしまった1年生4人を待っていた5人が軽い準備運動をしながら立っていた。
2年生の千歌、梨子、曜。3年生のダイヤ、鞠莉だ。
「あれ、果南は?」
屋上を見回した善子がそう言った。確かに屋上には果南の姿がない。
「果南は風邪で休みよ」
早朝に見舞いに行ったら門前払いされたわ。と、両手を少しだけ広げ、鞠莉はため息をついた。
「果南ちゃんが風邪!?」
「あの筋肉オバケが!?嘘でしょ!?」
「果南ちゃんでも風邪ひくんずらね・・・」
ここまでの話を聞いた1年生3人は好き勝手言っている。ここの1年生は果南を異能生存体か何かと勘違いしているのかと思っているのかと思い、準備運動をしながら百香は少しだけ人間扱いされていない果南に同情したのだった。
その日の午後2時頃。沼津市内浦重寺にあるあわしまマリンパークの駐車場に1台のスポーツカーが滑り込んできて、係員のおっちゃんの誘導に従っていた。
シルバーのR33、百香の車だ。部活動の練習が午前中で終了したため、帰宅後に来たのだ。
「松浦のとこの嬢ちゃんの友達じゃねーか。今日はどうした?」
「果南が風邪ひいたから見舞いだ」
車から降り、助手席からボストンバックを取り出した後、近づいてきた駐車場の係員のおっちゃんに制服の上に着ている薄い上着のポケットの中にあらかじめ入れておいた500円玉を1つ手渡した。
「見舞いだけなら料金はいらんよ」
係員のおっちゃんはそう言って駐車場料金を返そうとしてきたのだが、百香は片手を振るという、返さなくていいという合図を出しながらちょうど淡島行きの船が接岸した桟橋に向かって行った。
〝本日臨時休業〟
たどり着いたダイビングショップのガラス戸にはそう書かれた紙が貼ってあった。
ガラス戸を引いてみると、カラカラと軽い音を立てて横に動いた。鍵は閉まっていなかった。
「おーい、果南。鍵くらい閉めたらどうだ?いくらなんでも不用心すぎるぞ」
百香はそう言いながら店内を歩き、店舗後部の住居部分の引き戸を開けた。住居部分に入ると最初にあるのは角に32型液晶テレビが置かれた8畳の居間。靴を脱ぎ、居間の中を見回してみるが、誰の姿を見えないただの静寂に包まれていた。
「果南。果南ー」
百香は建物中の部屋を見て回るが、果南の姿はどこにも無い。最後の部屋、キッチンに入ろうとすると、キッチンに倒れている誰かの足が見えた。
──そう、そこに果南が倒れていたのだ。
「果南!おい果南!大丈夫か!?」
「百・・・香・・・」
百香が抱き上げた果南は顔が真っ赤になっており、それだけでなく息がたえだえになっていた。
百香はすぐさま果南を寝室に連れて行き、熱くなっていた額にさっき買ってきた冷却シートを貼り付けてから寝かした。
すやすやという寝息がベッドから聞こえてきた事を確認してから百香は果南の机の椅子に座り、上着のポケットから携帯ゲーム機を出してプレイし始めた。
「・・・百香」
「どうした?」
30分くらい経った時、果南に呼びかけられた。
「お腹空いた・・・」
「よし分かった。食材勝手に使うからな」
果南の要望を聞いた百香は食事を作るためキッチンに立った。
食器棚から土鍋を出して軽く洗って軽く拭き、白だしと水、研いだ白米、そして戻したわかめを入れて蓋を閉め、コンロの火をつけた。
ぐつぐつと音がなり、水が蒸発し始め、水が少なくなってから溶き卵を土鍋の中に入れて混ぜて、蓋をして水を飛ばしたらわかめ卵粥の完成。
「出来たぞ」
「うん・・・」
寝ながら食事を待っていた果南の前まで土鍋を持って行って蓋を開けた。
「あっ、わかめ!」
中に入ってる具材を見た瞬間、果南の表情がぱあっと明るくなった。それを見た百香は、気分だけでも元気になってよかったなとクスッと笑った。
「ちょ、何笑ってるの」
「いや?なんでもー」
そう言いながら百香はわかめ卵粥を食べ始めた果南の頭を撫でた。
「もう高3なんだから子供扱いしないでよ」
「俺からするとAqours9人は皆子供だ」
「ふうん」
果南はそう言うと、お粥を食べることをやめ、レンゲをトレーの上に置いた。
「どうした?もう食べないのか?」
「あーんして。私、子供だから食べられない」
「はいはい」
百香は少し苦笑いしながらレンゲを持ち、お粥を掬い、自分の息で冷まして果南の口にちかづけた。
「ほら、あーん」
「あー」
果南がパクりとお粥を掬ったレンゲを口に入れた。百香は、レンゲを持ちながらこのシーンがもしも前世の俺の姿のままだったら結構アレな絵面になるかもしれないなーと思っていた。口には出さなかったが。
「ごちそうさまでした」
「おう」
「なんかこんなふうにあーんして貰えるなんて結構久しぶりかも」
そう言って果南はえへへっと笑った。
「今日は泊まってくからな」
「えっ!?泊まってくの!?」
「今日、親父さんリハビリで居ないだろ?甘えてもいいんだぞ?」
百香はそう言いながら笑うと、果南は恥ずかしそうに少し頬を赤らめながら目線を逸らした。
「・・・頭、もう1回撫でて、ハグして・・・」
果南は掛け布団に口元を埋めながらそう言った。百香は、空になった土鍋が載せてあるトレーを果南の机の上に置き、果南のベッドの縁に据わった。
そして──左手で果南を抱いて、右手で果南の頭を撫でた。
日が暮れるまでずっとずっと、果南を抱き、そして撫で続けた。
本編は来月から再開致します。
時間的に余裕が出てきたので1話だけ番外編ストーリーを書きたいと思います
-
渡辺百香と前世の娘
-
スクスタ時空─スクフェス!─
-
百香とルビィの入れ替わり!
-
スクスタ時空─虹学・Aqours対決!─
-
ロリ辺百香