海上自衛官が渡辺曜の妹になりました   作:しがみの

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めちゃくちゃ難産でした。これ、なかなかいい話が思いつかず、かなりボツが出ました。ボツだけで5000字は軽く越したと思います。今回だけ3,000字弱になってしまいましたし、少し適当になってしまいました。許して下さい、何でもしますから!
あと、感想の返信ですが、なんて書けば良いのか分からず、あまり返せません。申し訳ございません。


第39話 略説

「ほら。カフェオレで良いか?」

 

「・・・ありがと」

 

百香は、三の浦案内所横、県道沿いに置かれている白色の自動販売機で買ってきた冷たいカフェオレを〝ほいよ〟と言い、善子に手渡した。この時には、百香と善子は既に長浜城跡から三の浦案内所から県道を挟んだ反対側の防波堤に移動し、足をプラプラと宙に浮かせながら防波堤の上に座っていた。

 

「俺のいた世界のAqoursは、ある会社がμ'sの後釜で作り出したグループだった」

 

「後・・・釜・・・?」

 

善子は首を傾げた。当たり前だ。今のAqoursにμ'sとの繋がりは全くないし、会社の指示で作った訳でもないからだ。

 

「そうだ。あっちの世界のAqoursはμ'sの後継としてできたアニメアイドルグループだ」

 

「ちょ、ちょっと待ってよ!アニメアイドルグループ!?どういうことなの!?」

 

善子は少し混乱している。無理もないだろう。急に〝お前はアニメの中のキャラクター〟だと言われて〝はいそうですか〟なんて言える人がいるだろうか。

 

「そのまんまの意味だ。()()()Aqoursはアニメの中の存在なんだ。だから設定もきちんとある」

 

「私が・・・アニメの中の・・・?もしかして、貴女が言った〝媒体上〟って・・・」

 

「ああ。Aqoursの設定では、1年生のメンバーは津島善子、国木田花丸、黒澤ルビィの3人。渡辺曜は一人っ子、そして、浦女1年生の生徒数は12人」

 

善子は、その瞬間、気づいてしまった。〝今、私が話している渡辺百香という存在はこの世界、そして、浦の星女学院にとって異物だったんだ〟と。

 

「でも、別の学校に通えば・・・」

 

「それも考えて、高校は新静岡高校にしようとしていた。合格通知も出ていたしな。だが、ある事が原因で浦女に進学せざるを得なくなった」

 

善子は〝えっ!?〟と、小さいながらも驚きの声を上げた。

 

「で、さらに入学式の日、千歌の勧誘を受けてしまった。千歌の勧誘を受けた人は全員Aqoursメンバーになっている。これで分かるな?」

 

「もしかして、百香は向こうの世界ではなるはずのないAqoursのメンバーになり、世界が違った方向に進んでいくのが嫌って事?」

 

善子が百香の顔を覗きながら聞いてきたため、百香はコクリと1回だけ頷いた。

 

「ああ。しかも別のゴールのハードルが高すぎるし、それを達成できるかどうか分からないだから、俺はAqoursの中ではあまり目立たないようにマネージャーとしていたんだがな・・・、

あの堕天使ムービーで少々目立ってしまった」

 

そこまで言った時、善子が少しだけ申し訳なさそうな顔をしていた。あれは曜の暴走で着せられて花丸の脅迫でムービーに出させられたのだから善子は全く悪くない。というか、事情を知らない曜と花丸も悪くない。全員悪くない。まあ、曜と花丸に関してはいろいろと度が過ぎるのだが。

 

「それからはあまりAqoursでは目立たないようにしてきたつもりだ。変に目立ってこの世界を変えたくないんだ」

 

少しの事が発生しても、すぐに元のレールに戻せば運命が変わってしまうということは無い。俺に対する千歌の勧誘はAqoursにマネージャーとして入った事で一旦止んだ。だが、また勧誘される可能性は少なくない。どうにか2学期まで持ちこたえることが出来れば、そこからは忙しくなり、勧誘する暇は無くなるだろう。そこまでの辛抱だ。

 

「で、結局、向こうの世界を知ってる貴女は何者なの?」

 

「俺はその世界から転生してきた転生者・・・、と言ったら信じるか?」

 

善子の問いにそう答えると、善子は〝転生者・・・、転生者・・・?転生者!?〟と小声でブツブツと言い、少しずつ顔が明るくなって行った。

 

「お、おい・・・、善子?」

 

普通の人なら〝こいつ頭おかしいんじゃねーの〟と思うはずの百香の返答に対し、今の善子の様子はどう見てもおかしい。

 

「ねえ、本当に転生者なの!?本当の本当に!?前世の名前は?もしかして、前世って男!?ねえ、百香、どうなの!?」

 

善子は、興奮気味になった顔をガバッと上げると、ずいっと百香に顔を近づけ、質問攻めにし始めた。

 

 

 

「・・・おっと・・・、悪魔に惑わされるところだったわ・・・。このヨハネをここまで追い詰めるなんて・・・」

 

百香は、あまりにも善子がグイグイと来たため、一驚しながらもすぐに冷静になり、返答を考えていたのだが、善子は勝手に自己完結し始めた。

 

「で、転生者だという証拠は?それを見せてもらえなければ私は信じないわ」

 

〝やっぱり聞いてきたか・・・〟百香はそう思った。ふざけた事を言いながらも、善子は極めてまともな事を考えていた。〝こうなったら、アレを言うしかない〟

 

「・・・幼稚園まで哺乳瓶離さなか「うにゃーぁぁぁぁ!」」

 

善子は顔を真っ赤にしながら百香を睨み、背中をぽかぽかと叩き始めた。善子にとっては忘れたい黒歴史なのだろう。この、〝堕天使ヨハネ〟よりも。

 

「だから言ったろ?俺は転生者なんだって」

 

「わかったわ、わかったから絶対にバラさないで!わかった!?百香!」

 

「ああ。その点に関しては確約する」

 

ただし、百香以外がバラさないとは言っていない。この事に関しては善子の母親と仲良くなった梨子がAqours全員の前でバラしてしまう。だが、そんな事はどうでもいい。この時の百香に必要だったのは、情報の極秘性の高さだった。

 

情報の相手自身しか知らない極秘性が高ければ高いほど、相手に信じられる可能性が高くなる。身長、スリーサイズ、好きな食べ物や嫌いな食べ物などの情報は友達とかに聞いたり、診断結果をこっそり見るなどという、簡単な方法で知れる。さらに、そのような簡単な情報だと、信用される確率はグンと下がり、下手すると変人として見られる可能性もある。

 

そのような事をこの短時間で百香は考えつき、すぐに善子に話した。

 

善子は善子と両親しか知らない恥ずかしいエピソードを話されてしまったため、信じざるを得なかった。その後、百香は善子と同じバスで沼津市街地に帰るのだが、百香が一番後ろの席に座った途端、顔を未だに真っ赤した善子が一番前の席に移動し、バスを降りるまで一度も顔をあわせようとしなかった。その行為は、百香にとってほんの少しだけ心の荷が降りた事と反比例した、少し寂しい気分のという、もう1つの気持ちを生み出したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

百香は、その日の夜、自室の窓から外に出てベランダの欄干に左手をぶら下げ、右手はスマートフォンを持ち、右耳にあてていた。

 

「地元密着の新聞社なら・・・もしかしたら・・・な・・・」

 

そう小声で言いながら百香は、左手に持つ名刺を見て、そして、右耳にあてているスマートフォンから発せられている電子コール音を聞いていた。

 




次回更新予定日は6月12日です

時間的に余裕が出てきたので1話だけ番外編ストーリーを書きたいと思います

  • 渡辺百香と前世の娘
  • スクスタ時空─スクフェス!─
  • 百香とルビィの入れ替わり!
  • スクスタ時空─虹学・Aqours対決!─
  • ロリ辺百香

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