あと、ネタバレですが、百香の衣装のアイディアを募集予定です。曲は、後ほど活動報告にて行われるアンケート内で公表されます。
俺は自分の机の中にある携帯ミュージックプレーヤーと着ていたカーディガン、上着をバッグに押し込み、そのバッグを自転車の前カゴにおしこみ、〝十千万〟に向けて急いで自転車をこいでいた。
行きに上り坂があったため、かなり息が上がっており、汗で下着はびしょびしょに濡れていた。
千歌の家の前のバス停からバスが発車するまであと5分。学校に通じている県道の旧道から新道に出る。
三津シーパラダイスの前を通り、道路を渡り(良い子はあまり真似しないでね)、十千万の車庫に自転車を止め、バッグを取り、バス停に向けて走り出す。が、俺の目の前をバスが走り去って行く。十千万の前にあるバス停向けて走るが、バスは待ってはくれない。
バスは沼津駅に向けて行った。バスのいなくなったバス停に居るのは俺と千歌だけ。
「行っちゃったねー・・・。」
「次の最終まで待つよ。」
俺はそう言いながらスマホで曜に帰るのが遅れる事を伝えておいた。まあ、1回言ってるから知っていると思うけど、念のためだよ。念のため。
「じゃあ、終バス来るまで家で待とうよ。」
「じゃあ、お言葉に甘えてそうしようかな・・・。」
千歌からの提案で、俺と千歌は十千万前のバス停から十千万に向けて歩き出した。
「しかし、どうにかしなくちゃなー。せっかく見つけたんだし・・・。ハア・・・。」
千歌は、自分で作ったポスターを見て、溜息をつきながら話していたが、俺はカーディガンを着ながらずっと海の方を眺めていた。
「ねえ、千歌姉。あれ・・・。」
音ノ木坂学院の制服を着たワインレッド色の髪の女の子、
「ん?」
「へ?」
「あれ?」
千歌は、その場で制服を脱ぎ出す梨子を見て、その場で足を止めた。
「まだ4月だよ?
・・・。百香ちゃん、止めに行くよ!!!」
インナーがスクール水着だと気づいた千歌は、バッグを桟橋に置き、俺を引きずりながら、梨子を止めに走り出した。
「たぁぁぁぁぁっ!!!」
その瞬間、梨子は声を荒らげながら走り出したので、俺はバッグを投げ捨て、千歌が梨子を止めている場所に全力疾走した。
「待って!!!死ぬから!!!死んじゃうからぁっ!!!」
「離して!!!行かなきゃ、行かなきゃいけないの!!!」
「無駄な抵抗は止めなさい!!!オフクロさんが悲しんでいるぞ!!!」
「百香ちゃんふざけてるでしょ!!!」
「私は真面目だよ!!!」
千歌が梨子を止めている場所に俺も止め(?)に入ったが、俺が止めに入った瞬間、重心が前に移動し、俺を含めた3人の体は宙に浮いた。
「へ?」
「はあぁっ!!!」
「嘘!?」
「「「わぁぁぁぁぁ!!!」」」
俺達3人は、冷たい内浦湾の海中に向かって吸い込まれていき、大きな水柱を内浦湾にあげたのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「クシュッ」
「ぶぇっくしゅ」
2つのくしゃみの音が内浦の砂浜に響き渡った。前者に聞こえたのが梨子ので後者に聞こえたのが俺だ。え?女の子らしさ皆無だって?だって元男だもん。
「大丈夫?2人とも・・・。沖縄じゃないんだから。海に入りたければ、ダイビングショップもあるのに・・・。」
「海の音が聞きたいの。」
千歌の問について梨子はそう答えた。だから水着なんだ。と、俺はアニメを見ながら感心していたという記憶がある。まあ、その光景がこれなのだが。
「海の音?どうして?」
「・・・。」
「分かった。聞かない・・・。じゃあ、海中の音ってこと?」
2度目の問については黙秘を貫いた。まあ、昔の千歌だったら答えるまで聞き続けたと思うが。まあ、子供っぽい千歌も成長してるって事だな。顔は成長してないけど・・・。
「ふふっ。私ね、ピアノで曲を作ってるの。でも、どうしても海の曲のイメージが湧かなくて・・・。」
「へー。曲を!!!作曲なんて凄いね!!!ここら辺の高校?」
「東京。」
「東京!?わざわざ!?」
千歌は驚いてるが、俺は驚いてない。まあ、知っているからね。しょうがないね。
「わざわざっていうか・・・。って、何で貴女は驚いてないの?」
「結構コミュ力高くてそっち方面の友人も多いからね。」
「そうなんだ・・・。」
うん。そっち方面の友人は海自時代の友人や部下達の事だから、あながち間違ってはないよ。
「じゃあ誰かスクールアイドル知ってる?」
「スクールアイドル?」
「うん!!!東京だと有名なグループいっぱいあるでしょ?」
「何の話?」
「へ?」
千歌が驚いている。てか、何でμ'sの通っていた学校に通ってる梨子が気づかないのか、それを知りたいんだ俺は。って、この会話俺要らなくね?
「まさか知らないの?スクールアイドルだよ!?学校でアイドル活動して、大会まで開かれたりする。」
「有名なの?」
「有名なんてもんじゃないよ!!!ドーム大会まで開かれた事もある、ちょー有名なんだよ!!!」
「まあ、私も詳しくなったのは最近だけど・・・。」
「そうなんだ・・・。私、ピアノばかりやってきたから、そういうの疎くて・・・。」
「じゃあ見てみる?ナンジャコリャー!!!ってなるから。」
「なんじゃこりゃ?」
「なんじゃこりゃ。」
千歌が自分のバッグの中からスマホを出し、ある動画サイトを出し、梨子に差し出していた。通信量大丈夫かな・・・。って、完全に俺、置いてけぼりにされてるな。大人しく音楽でも聴いてるか。
「これは・・・。」
「どう?」
「どうって・・・、なんというか、普通?」
「ああ、いえ、悪い意味じゃなくて!!!アイドルって言うから、芸能人みたいな感じがしたから・・・。」
「だよね。」
「ふぇ?」
梨子が首を傾げながら千歌を見つめていた。俺、このシーン好きなんだよな。
「だから、衝撃だったんだよ。」
「貴女みたいに、ずっとピアノを頑張ってきたとか、大好きな事にのめり込んできたとか、将来こんなふうになりたいって、夢があるとか。」
「そんなの、一つも無くて。」
千歌は、そう言うと、海岸に落ちている石を拾い、海面に投げると、石はチャポンチャポンと音をたてながら3回海面を跳ね、沈んでいった。
「私はね、普通なの。特に目立つ能力もない、普通なんだって。そんなふうに思ってて、思ってたんだけど、気がついたら高二になってた。」
「このままじゃ不味い。このままだったら普通のまま一生を終えるかもしれない。そう思った時に、出会ったの。あの人達に。」
「みんな私と同じような普通の高校生なのに、キラキラしてた。それで思ったの。一生懸命練習して、みんなで心を一つにしてステージに立つと、こんなにもかっこよくて、感動出来て、素敵になれるんだって。スクールアイドルって、こんなにも、こんなにもキラキラ輝けるんだって!!!」
「気づいたら全ての曲を聴いてた。毎日動画見て、歌を覚えて、そして思ったの。私もみんなと一緒に頑張ってみたい。この人達が目指した所を、私も目指したい。」
「私も、輝きたいって!!!」
「ありがとう。なんか頑張れって言われた気がする。今の話。」
「ホントに?」
「ええ。スクールアイドル、なれるといいわね。」
「うん。頑張って!!!千歌姉!!!」
「百香ちゃんもやるんだからね!!!」
「ふふっ。頑張ってね。」
俺と梨子は応援したのだが、何故か俺もスクールアイドル部の部員にされてる。いや、マネージャーしかやらないから。てか、まだやらないから。
「えっ、何それ聞いてな「あ、私、高海千歌。そこの丘の上にある浦の星女学院っていう高校の2年生。」・・・。
私は渡辺百香。千歌姉と同じ学校の1年生だよ。」
しかも異論を唱えたら無視されたし。
「高海さんと同い歳ね。私は桜内梨子。高校は・・・
音ノ木坂学院高校。」
梨子のワインレッド色の髪の毛が海風でふわっとなびいた。
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この日の夜の事だった。
俺が部屋で前世からあるアニメ〝ラブライブ!サンシャイン!!〟のDVDを見ていたいながら日記を書いていた時だった。曜がドアをノックし、静かに部屋に入って来た。
「ねえ、百香。」
「ん?何?」
俺は、曜の目に付く前に素早く動画の画面を消し、ノートを閉じると目線をパソコンの画面と日記用のノートから曜に移した。
曜は、部屋着を着て、首からタオルをかけている。湯気も上がっているため、恐らく、入浴後直ぐに来たのだろう。
「私もスクールアイドルもやってみたいんだけど、どうすればいいか分からないんだ。」
「何で?」
「・・・私、水泳部に入ってるでしょ?」
「うん。」
「だから。」
「・・・。」
俺は、一応考える振りをした。だって考えなくても、答えが出てるんだから。
「やってみたら?ずっと千歌姉と同じ部活やりたかったんでしょ?」
「でも・・・。」
「やってみろよ。好きなんだろ?千歌の事。」
この俺の一言で曜はトマトの様に顔を赤くし始めた。恐らく、図星なのだろう。
「そ、そそそそ、そんな事無いよ!?」
曜は、恥ずかしそうに顔を赤くしながらその場であたふたしている。
「動揺してるぞ。好きなんだろ?」
「・・・。うん・・・。」
「わかりやすいんだよ。曜は。」
「え?そうなの?」
「千歌と話している時、とても嬉しそうじゃねえか。」
気付かぬうちに素になってしまった俺だが、今更口調を戻す訳にはいかないので、そのまま話を続ける。曜もさっきの事で動揺して口調とか気にしてないように見えるから大丈夫だろう。それに、小さい頃に一人称が〝俺〟になった時が何度かあったからな。
「そ、そう?」
「バレバレだよ。
兼部だって、大変かどうかはやってみないとわからないだろ?やってみな。」
「うん・・・。」
「俺は応援しか出来ねぇ。言うかどうかは曜、お前次第だ。」
「何で・・・、何で普通の人には嫌われそうな同性愛者なのに、応援してくれるの?」
「好きだからさ。」
「同性愛者が?」
「いや、
この一言で、曜の顔がから火が出るように真っ赤に染まり、曜は、「な、何言ってるの!?じ、じゃあ私寝るからね!!!お、おお、おやすみっ!!!」と言いながら部屋を出ていった。隣の曜の部屋からベッドの上で足をバタバタさせている音がしていることは気にしないでおこう。っていうか、さっき言ったみたいにお前千歌が好きなんじゃなかったけ?
俺は、曜の言動に疑問を感じながらも、替えの下着、寝間着を持って入浴する事にした。
脱衣場で、服、下着を脱ぎ、全身裸の状態で鏡の前に立つ。
曜に似た髪の色と顔と・・・
豊満の胸・・・。
俺は転生して16年経っても、未だにラブライブ!サンシャイン!!!の世界にいることが信じられない。前世では下半身にぶら下がっていた穢れたバベルの塔が無くなってもだ。俺は、鏡を見ながら自分自身の頬をつねり、この世界を現実だと捉えようとする。
「イタタタタ・・・。」
うん。痛い。
・・・。おっと。このままでいると身体を冷やして風邪をひいてしまう。さっさと入浴してしまおう。
チャポン。水音が浴室内に広がる。
〝お風呂は命の洗濯よ〟と、どこかのアニメね誰かが言っていたような気がすると、湯船に浸かりながら考える。
俺は命よりも脳みそを洗濯したい。洗濯して記憶を消してしまいたい。そうすれば、曜と何も隔たりも無く接することが出来るのに・・・。でも、そうすると、一希との約束を忘れてしまう・・・。
複雑な気持ちになった俺は、自分自身の顔の下半分を湯船に沈めたのだった。
〇次回予告〇
ーμ'sと高坂穂乃果に経緯を尽くしてー
次回、人足りぬ
※予告と異なる場合があります
次回投稿日は11月8日です。
時間的に余裕が出てきたので1話だけ番外編ストーリーを書きたいと思います
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