海上自衛官が渡辺曜の妹になりました   作:しがみの

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久しぶりの定刻更新です。
7月は3話くらい更新したいですね・・・。


第41話 加賀へ(上)

2016年7月2日土曜日早朝──

 

 

 

 

 

 

 

 

狩野川沿いの道をスーツケースを転がしながら歩いている百香の姿があった。百香は、ゆっくりと歩きながら自身の車が止まっている月極駐車場に向かっていた。月極駐車場が見える位置までに来ると、月極駐車場に、スーツケースを横に置いている1人の人影を見つけた。

 

「おはよう」

 

「おはよう。早いな。家まで迎えに行くって言ったんだが・・・」

 

月極駐車場に立っていたのは善子だった。

 

「良いじゃない、別に」

 

百香が半ば呆れていると、善子は片腕をスーツケースのとって部に載せながら答えた。

 

「わかった。じゃ、スーツケース載せるぞ」

 

百香は、キーに内蔵されているボタンを押し、車の鍵を開けてからトランクのドアを開けた。

 

カーナビは設定済みのため、2つのスーツケースをトランクに入れ、トランクのドアを閉めれば、出発準備は完了。

 

「出発するぞ。乗れ」

 

百香は善子にそう言うと、車に乗り込み、エンジンをかけ、善子がシートベルトを着けたのを確認した後、車を発進させた。

 

「そうだ善子。音楽は掛けられないから何かビデオでも流してくれ。DVDはそこに入ってるから」

 

百香は、シフトレバーを掴んでいた左手で善子が座っている助手席側のドアポケットを指さした。音楽が流せない理由、それは、入っている曲がAqoursの曲ばかりだからだった。まだこの世で披露されていないAqoursの曲をAqoursメンバーに聞かせる訳にはいかないのだ。

 

「・・・これね・・・。色々あるわね・・・」

 

善子は、ドア横のドアポケットから何枚か、白ディスクを出すと、そこに黒色の油性ペンで書かれていた文字を読み始めた。

 

「〝もう助からないぞ〟〝ぼくはひこーきぱいろっと〟〝機長不在〟〝あのバカ来やがった〟〝長けりゃいいってもんじゃない〟〝みんなだいすきでぃーしーてん〟・・・何これ」

 

善子は少し困惑しながらハンドルを握る百香を見た。

 

「40分強の番組をダビングしたやつだ。オススメは〝もう助からないぞ〟だ」

 

「・・・とりあえず掛けてみるわね・・・」

 

不安な顔をした善子がDVDをカーナビに内蔵されているDVDプレイヤーに入れると、すぐにメイデイ(May Day)メイデイ(May Day)・・・という音声と航空機の映像が流れ始めた。

 

「何これ・・・」

 

「実際にあった航空機事故の解説だ」

 

フィクション(F)じゃないの(N)!?騙されたわ(D)!」

 

善子がそう言っているうちに、車は長泉沼津ICから新東名高速道路に入った。百香は、アクセルを踏み込み、時速90kmほど加速し、本線に合流し時速100kmまで加速した。カーナビからは、レーダー管制官の〝なんてことだ、もう助からないゾ♡〟という声が聞こえてきていた。

 

百香は、善子がどうしているのか気になり、カーナビを見るふりをして善子を見たところ、善子はその番組を脇目も振らずに見ていた。

 

 

車はノンストップで走り続け、豊田東JCTに差し掛かった時には、〝もう助からないぞ〟の他に、〝着氷ストライク(回転回)〟〝プロペラ「ちょっとコンビニ行ってくる」〟の3つを見終えていた。

 

「凄いわね・・・。こんなに凄いストーリーがあの天空の馬車にあったなんて・・・」

 

「これ、まだいいほうだからな」

 

百香はため息混じりの声で、善子にそう言った。今まで見たのは、全員無事に生還した例だった。酷い例だと、警報を無視(というか、なぜ警報が鳴ったのかわからなかった)し、飛び立とうとして失敗し、墜落した〝ぼくらはずっと一緒だからな〟や、修復作業をマニュアル通りにやらずに修復後20数年後に空中分解した〝古傷(ポテト回)〟、投資に失敗した機長が乗客乗員全員と無理心中をした〝パートナー〟など、事故原因が胸くそ悪い回もある。(胸くそ回の方が多いため、あげるとキリがないため一部のみ紹介)

 

 

「・・・もうすぐ、休憩するか。3時間近く走り続けてるからな」

 

「そうね」

 

百香と善子の2人の合意があったため、百香はハンドルを切り、豊田JCTを過ぎて最初のSAの駐車場に向かって車を走らせて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最初に寄ったSAでは、どこも店は開いておらず、開いている店はコンビニか土産物店だけ。東海圏に住んでいる人が自分自身に買う東海圏のお土産なんて誰が得をするのか。

 

そのため、そこでは飲み物を買い、トイレを済ませただけで出発した。

 

その後、また2~3時間ほど車を走らせた後、一箇所、北陸自動車道のあるSAに寄った。そこは、最初に寄ったSAよりも施設が少なかったため、そこではトイレを済ませたのと、給油しただけで発車した。

 

そこからは、別のDVDをセットし、それを見ながら過ぎていく時間を過ごした。

 

『コ☆カ☆イ☆ン☆だ』

 

『今夜暇かい?』

 

『クソして寝な』

 

『ああどうも。最近の姉ちゃん、キツいや・・・』

 

『バスの運転なんてどこで習った?』

 

『キエフだ。軍隊で』

 

『すまねぇ、ロシア語はさっぱりなんだ』

 

 

 

見ているDVDで、主人公である、ロシア警察のマッチョマンがシカゴからモスクワに向かう飛行機に乗り、エンディングが流れ始めたと同時に北陸道の加賀ICで高速道路を降りた。

 

そこからまた20分から30分ほど車を走らせ、カーナビが示したゴールのある、一軒家にたどり着いた。百香は、家の前の3、4台程の砂利のスペースに車を止めた。

 

百香と善子がそこに降り立つと、辺りは、畑や、田んぼ、山ばかり広がっており、百香にとっては前世の実家を彷彿させる風景であった。

 

トランクを開けて中の2つのスーツケースを出し始めていると、一軒家の中から八名が出てきて、百香の姿を見ると「よっ」と言いながら手を挙げた。

 

「おう、慶喜。よくこんな所まで来たな」

 

「大変だったよ。ここまで運転してきたのは」

 

八名と百香が軽く会話し、百香は、百香の後ろに隠れ気味になっていた善子を八名の前に出した。

 

「・・・つ、津島善子です・・・」

 

「神田大智だ。・・・も、もも、百香には前世の名前の八名って呼ばれて・・・笑うな慶喜!」

 

善子と八名が自己紹介をしていると、百香は急にニヤニヤと笑いだした。いつも会う度に〝慶喜〟〝慶喜〟と言っていた八名がぎこちない口調で〝百香〟と言っていた事に百香は笑いをこらえられなかったからだった。

 

「とりあえず、よろしくな。津島さん」

 

「よ、よろしくお願いします」

 

八名が善子に右手を差し出すと、右半身だけ百香の後ろに隠れていた善子はおずおずと両手を差し出し、八名の右手をゆっくりと握った。

 

 

 

「本物・・・本物だ!本物の善子で本物のヨハネだ!夢じゃないんだ!すげぇ!触れられる!」

 

八名は、そう言い出すと善子の手を上下にブンブンと振り出したため、善子は、最初だけ呆気に取られていたが、八名が百香と同じ転生者であったことを理解したのか、納得したような顔に変わっていた。

 

「お前きしょいな」

 

百香の冷やな目と言葉でそう言ったところ、八名は善子の手を離し、百香に「辛辣ゥ!」と言った。

 

「お前も気をつけろよな。コイツは男なんだから」

 

百香は、そう言いながら善子の左肩をポンと叩き、一軒家の中に入って行き、八名も、「お前の中身もオッサンだろ!」と言いながら百香の後ろをついて行ったのだった。

 

「本当に、これ大丈夫なのかしら・・・」

 

砂利のスペースに残された善子は、この後の展開を予想し、小さくため息をついたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、善子の不安は的中せず、楽しい時間が過ぎていった。荷物整理後、あるレースゲームを3人でプレイし、そのゲームプレイ最中に、八名が百香に甲羅を当てられてコース外に落ちたり・・・

 

 

「お前、甲羅はやめろ甲羅は!」

 

 

「ざまぁ」

 

八名がコーナーで善子にコース外に落とされたり

 

「おい善子!なにしゃがんだ!」

 

「よそ見してるのが悪いのよ」

 

コーナーで外から百香に抜かされたり・・・

 

「なにィ!外からだとぅ!?ナメてんじゃねーぞ!外から行かすかよォ!」

 

「お前はいつから妙義の32ドライバーになったんだよ・・・」

 

何回やっても八名がビリであった。何度も何度も抜かそうとしても百香と善子の謎のチームプレイでコーナーでコース外に落とされ、甲羅で飛ばされ、雷を落とされ・・・と、散々であった。

 

気づけば、八名と善子の間にあった壁もほとんど無くなっており、八名と善子の間には世界の壁を越えた(文字通り)友情が芽生えていた。

 

その後は、中心部付近にあるファミリーレストランに百香の運転する車で食事をしに行く事になった。助手席に八名、後部座席に善子が座っていた。

 

「今回は泊めてくれてありがとな」

 

百香がそう言うと、八名は、今日は両親が居ないから、むしろ助かったと答えた。料理をするのが死ぬほど嫌いな八名は、両親が居ない日は近所のコンビニとかで弁当を買って過ごしていた。さすがに来客にコンビニ弁当は不味いと思ったのだろう。

 

ファミリーレストランに着くと、店員にボックス席に案内され、八名は1人で、百香と善子は一緒のシートに座った。10分ほどメニュー表と睨めっこした後、店員を呼び出しボタンで呼び、とりあえず、個々に別メニューを頼み、それにドリンクバーをつけた。

 

「ほらよ。八名の分だ」

 

百香は、善子と共にドリンクバーを取りに行き、八名の目の前にドリンクの入ったのグラスを置いた。

 

「お前・・・。全部混ぜただろ・・・」

 

八名は、呆れながらで百香を見た。八名の目の前に置かれたグラスの中身は黒色だった。コーラではない。いや、コーラの色より酷い色をしている。コーラの黒色は透き通っている黒色だが、このドリンクは透き通っていない。

 

「いーっき、ほらいーっき」

 

八名が飲むのを躊躇っていると、百香が手をパンパンと叩き、八名をはやし立て始めた。

 

「「いーっき、いーっき」」

 

善子が席に戻ってくるやいなや、百香と一緒にはやし立てた。ここに八名に味方は居なかった。

 

「お前こんな時だけ子供っぽくなるよな。しゃーねぇ、飲むよ」

 

半ば諦めながら八名はソフトドリンクを飲み干した。まさか飲むとは思わなかった百香と善子の2人は八名に拍手を送ったのだった。

 

それから料理が届き、3人はたわいない話をしながら料理を食べ始めた。

 

 

 

夜はふけていく──

 




次回更新予定日は7月10日です

時間的に余裕が出てきたので1話だけ番外編ストーリーを書きたいと思います

  • 渡辺百香と前世の娘
  • スクスタ時空─スクフェス!─
  • 百香とルビィの入れ替わり!
  • スクスタ時空─虹学・Aqours対決!─
  • ロリ辺百香
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