海上自衛官が渡辺曜の妹になりました   作:しがみの

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今月と来月は週一投稿出来そうです


第42話 加賀へ(下)

 

ファミリーレストランで夕食を取った後、百香、八名、善子の3人は百香の運転する車で神田家(八名家)に戻って来た。

 

「善子。先風呂入れ」

 

百香は、車のキーや財布が入ったそバッグをソファーに置くと、善子にそう言った。

 

「え?私が先に?いや、さすがにそれは・・・」

 

「いいから。なあ、八名」

 

「あ、ああ。いいぞ」

 

「・・・わかったわ」

 

善子は、来客であるためなのか、先に入ることを拒んだ。だが、百香と今日だけ家主的存在である八名が何度も勧めたため、善子は一番風呂に入ることを決定し、善子のスーツケースの中に入っていた着替えを持ち、脱衣所へと消えていった。

 

2、3分くらい経つと、浴室に入る扉の音が聞こえてきた。この家は、一見豪華そうに見えるのだが、この家は、バブル初期に建てられた木造の家。音なんて全部ではないが、筒抜けになってしまう。唯一、浴室の中だけがリフォーム済みで防音仕様だった。

 

「入ったようだな・・・」

 

八名は、音を確認した後、ソファーに座り、それに続き、百香もローテーブルを挟んで反対側のソファーに座った。

 

「善子に教えたそうだな」

 

「ああ。東京の大会で俺達の話が聞かれたからな」

 

「本当に話しちまって、大丈夫なのか?」

 

八名は、心配そうに聞いてきた。善子に百香が転生者という事を少しだけ話した日、八名に電話をし、この事を話していた。八名はこの時から、百香が一番起こしたくなかったこと、「世界が変わってしまうこと」これが起こってしまうと思い始めたからだったからだ。

 

「俺達は善子の秘密を知ってるからな。軽々しくバラしたらそれがバラされるって思うんじゃないか?善子って、口は以外と堅いからな。他のAqoursの誰かが気づかなければ大丈夫だ」

 

百香はそう言い、他のAqoursメンバーに百香の事が知られてしまった時を考えた。

 

〝曜は、千歌との関係でわかるが、関係が変わり果ててしまうことを恐れているため、恐らく、チラチラ見るだけで何も言ってこず、気がつくと、関係悪化などもありえてしまう。

 

ルビィは、善子にちょっと技をかけられただけですぐに話してしまった事もあるため、聞かれた後、いつ話されるかどうか分からない。

 

花丸は、仲が良くなりすぎると畜生度が大幅に上がる性格であり、一部界隈ではその性格を揶揄されて畜生丸とも言われている。アニメでは善子に向かってだけ毒を吐いていたが、この世界では百香にも毒を吐いている。下手すると仲のいい人にはホイホイとバラしそうだ。

 

千歌は、聞いたら何か変な行動を起こしそうだ。聞かれた事により、世界が変わってしまう可能性は大いに高い。

 

梨子は、曜と並ぶAqoursの貴重な常識人枠であるが、善子の黒歴史を普通にバラしてしまうという畜生さも少しだけ持っている。安易に話してはいけい〟

 

と、百香は考え、いい意味でも悪い意味でも個性的なメンバーが多いAqoursの中で話が聞かれたのが善子で良かったと思っていた。

 

「だがな、俺らが知ってるのはアニメや媒体資料上での津島善子だからな。あの扉の向こう、今風呂に入っている生身の人間じゃない」

 

八名は、善子に出会えた事を喜んでいたが、自分達が知っているのはただの記録であり、実際に長年一緒に過ごした訳ではなく、本当に百香が思っている通りにならないのではないのかと心の中で思っていた。

それでも百香は善子に話した。

百香は、信じるしかなかったからだった。今、転生者の()()を理解してくれるのは善子しかいない。

 

 

そこまでの話が終わった後、百香は思い出したように「ああ、そうだ」と言い、先程とは打って変わり、少し笑いながら八名の方を向いた。

 

「お前と俺は別部屋、善子は俺と同じ部屋にしろよな。お前だからやらないと思うが、もし襲ったら殺すぞ」

 

「お前の場合、最後の言葉は冗談に聞こえねぇんだよなぁ・・・」

 

もちろん、八名は手を出してこない。それは、この前2人だけで宿に宿泊した林が手を出されていないということを知っていたため、手を出してこないということはほぼ確実という事を示していた。

だが、林と善子がどう思うかだ。百香が見る限り、林は八名に好意を向けている。もし同じ部屋で寝た事が林に知られてしまった時、どうなるかは想像がつかない。

善子については、今日まで赤の他人だった人と一緒に寝るのはどうかと百香が思ったからだ。あまり人と積極的に話さない善子にとって、すぐに「お泊まり会(笑)」なんて事は地獄に等しいことだと思ったからだった。

 

「お風呂、あがったわよ」

 

「じゃあ、風呂入ってくるから、布団敷いとけよ」

 

善子の入浴が終わり、部屋着に着替えた善子が脱衣所から出てきたので、百香は換えの下着と部屋着を持ち、脱衣所に向かって行ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

百香が風呂から上がった時、脱衣所の扉の前に立っていた八名が、寝る予定の部屋に案内してくれた。八名が案内した部屋には、すでに布団が並行に2つ敷かれており、左にはすでに善子が入っていた。

 

「ねえ、百香」

 

布団に百香が入った時、ふと、善子がそう言った。

 

「思ったんだけど、貴女が車運転できるのって、転生特典とかいうものなの?」

 

「まあ、そんなもんだな・・・」

 

百香にとっては唯一と言ってもいいほど便利な転生特典だった。もうひとつの転生特典である記憶は、百香にとってはいらないものであった。そもそも、百香はこの世界に転生しただけでも充分なのに、曜の妹になるなんて願ってもいなかった程の事だった。

 

「転生して良かったって思ってる?」

 

「ああ。こうしてAqoursみんなに会えてるからな。こうして善子と話ができるのも、転生したおかげだ」

 

百香が答えた後、善子は何も返事を返さなかった。百香が善子の方向を向いてみると、善子は百香に背を向けていた。

 

「・・・善子?」

 

「な、何でもないわよ!おやすみ!」

 

百香が善子に問いかけたとろ、善子は明らかに動揺しながら言い、布団を頭から被ったのだった。

 

「おやすみ・・・」

 

百香は、頭にはてなマークを浮かべながら電気を消し、明日の運転に備え、寝たのだった。

 

 

 

 

 

 

「思ったより荒れてない・・・」

 

「日本海が荒れるのは冬だからな」

 

「そうなの!?」

 

海開きをまだ迎えてない夏が始まったばかりの塩屋海岸。砂浜には善子、八名、百香の3人の姿以外数人の釣り人しかない。

 

「濡れると面倒になるから海には入るなよー」

 

「わかったー!」

 

百香の忠告の後に善子の声と、八名がこちらに手を振ったのが見えた。2人とも楽しそうだ。

 

「ん?」

 

善子と八名に手を振った後、スカートのポケットの中が振動した。

 

「はい、渡辺ですが・・・」

 

百香は振動していたスマートフォンを出してから通話ボタンを押し、耳にあてた。通話相手は、新聞記者の芝山だった。

 

『この前の件、渡せる日が決まった』

 

芝山は、まだ新人新聞記者。ほとんどの取材に新人研修と称して駆り出され、今は日本各地と三島を行ったり来たりしている。百香とカラオケボックスで会った日の次の日には札幌、そして、そのまま広島に飛んでいたため、重要な資料を百香に渡せないでいた。

 

「いつですか?」

 

『明日だ』

 

「じゃあ、明日、沼津駅南口で」

 

『ああ。あと、明日の11時から1時間ほど電話は無理だからな』

 

「飛行機にでも乗るんですか?」

 

スマートフォンのスピーカーからは、空港らしきアナウンスが聞こえてきたから本当なのだろうと、百香は推測していた。

 

『ああ。今広島だからな』

 

「広島ですか。良いですね」

 

『良くねえよ。こちとら仕事だよ。仕事。静真高校弓道部の全国大会の取材』

 

芝山が言った〝静真高校〟というのは、百香の1歳歳上の従姉妹、渡辺 (つき)が通っている私立の共学高だ。これは余談であるが、アニメでは、ここと浦の星女学院が統合になるのだが、この世界ではどうなるのかは分からない。

 

『しかも、今日来たのに明日帰るとか、早すぎだろ』

 

「ははは。あと、言い忘れましたが、会う時刻は夜8時でいいですか?」

 

『ああ。大丈夫だ』

 

「それでは、失礼します」

 

そう返し、百香は小さくガッツポーズをしながら通話を切った。

 

〝ようやく黒幕が分かるかも〟

 

そう思った後、百香は一息つき、腕時計を見ると10時30分を指していた。これ以上ここに居ると帰宅する時刻が遅くなるため、もうそろそろ帰らなければならない。

 

「おーい!もうそろそろ帰るぞー!」

 

百香が両手でメガホンを作るような形を作り、善子と八名に呼びかけた。善子は何時ものトーンで、八名は少しだけ寂しそうに返していた。

 

「大丈夫だ。また会えるからな」

 

百香は、そう言って少しだけ寂しそうにしていた八名の左肩をポンと叩いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の就寝後のことであった。

百香は、真っ白の空間で目を開けた。

 

 

 

 

「およそ1ヵ月ぶりか・・・」

 

 

 

 

およそ1ヵ月前に見た不思議な夢をまた百香は見ていた。1ヶ月前と同じく、服は浦女の冬服と黒のカーディガン。今の時期では暑いこの服も、この空間内では不思議と暑くなかった。

 

 

 

 

「久しぶり。どお?1年生組が加入したAqoursは。ちゃんと浦の星ライフを楽しんでる?」

 

 

 

「毎日賑やかだよ。ってか何だよ、浦の星ライフって・・・。

 

 

っで、何の用だ」

 

 

 

百香は呆れながら向かい側に立っている百香と同じ顔と声をしている百香らしき女性に話しかけた。服は相変わらず白のワンピースを着ており、同じ顔とは思えないほどお淑やかに見える。

 

 

 

「貴女に──

まあ、忠告かな。それをしよーって。

 

 

貴女が知ろうとしていることは、とてつもなく大きな事」

 

 

 

 

百香らしき女性はそう言って彼女自身の身体の後ろで手を組んだ。

 

 

 

「あまり詳しくは言えないけど、下手すると、100年、いや、1000年に及ぶこの世界のグランドデザイン。そこまで及ぶ問題。気をつけなさい。百香。貴女のやろうとしていることは、歴史に残ってしまうかもしれない事なのよ────」

 

 

 

女性は最後の部分を強調した口調で言い、強調した辺りから辺りが真っ黒の闇に包まれはじめ、言い終わる頃には、漆黒の闇の中に女性は消えて行ったのだった。

 




次回更新予定日は7月17日です

時間的に余裕が出てきたので1話だけ番外編ストーリーを書きたいと思います

  • 渡辺百香と前世の娘
  • スクスタ時空─スクフェス!─
  • 百香とルビィの入れ替わり!
  • スクスタ時空─虹学・Aqours対決!─
  • ロリ辺百香
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