2016年7月4日12時26分
房総半島上空
広島空港11時00分発、羽田空港12時25分着、スカイチームメンバーである扶桑航空713便のB737-800は浦賀水道を西に進みながら羽田空港に向かっていた。
羽田発広島行きANA677便に使用されているB767の機材故障による機材変更の為、代わりの機体となったB787の到着が遅れ、当便には少しばかりの遅延が発生していた。
広島空港は滑走路が1本だけだ。そのため、ANA677便の到着を待っていた当便は離陸が遅れてしまった。
この扶桑航空713便として使用されているこのB737-800を操縦する2人のパイロットは飛行時間11000時間以上を持つ機長と飛行時間約5600時間の副操縦士という、ベテラン同士であった。
さらに、機長の父親は政府専用機のパイロットに抜擢されたこともあるエースパイロット、祖父は日本海軍のエースパイロットであり、機長は、パイロット家系の3代目であった。
だからといってどこぞのパイロットよろしく片目が義眼とかではない。
副操縦士については、特に特筆すべき点がない。強いていえば、彼女の姉妹は全員パイロットになったという事と、気を抜くと彼女の癖である名前の上に〝クソ〟をつけてしまうことくらいだろう。
天気は晴天。格好の飛行日和の中を自動操縦で飛ぶB737のコックピット内で、機長と副操縦士は雑談を交わしていた。
「そういや、この前休暇だったよな。どっか旅行でも行ったのか?」
「函館です。もちろん飛行機で」
機長の問いかけに副操縦士はにこやかに答えた。コックピット内のパイロット2人の関係も良好。このまま着陸すれば最高のフライトであった。
「もちろん使ったのは
「行きがANAで帰りがJALでした」
機長は、副操縦士が悪びれることも無く競合他社を使った事を暴露したため、機長は笑いしか出なかった。
「仕方ないじゃないですか。ウチの会社の函館線は本数少ないんですから」
『
「
機長は機長席と副操縦席に挟まれているコントロール・ペデスタルにある無線の操作パネルを慣れた手つきで操作し、
「
無線周波数変更後、機長はすぐに東京進入管制に必要な今の情報を全て伝えた。1万時間以上の飛行経験を持つ機長にとってはいつも通りの事だった。
『
「
機長の復唱後、操縦を担当している副操縦士が自身のサイドテールを揺らしながら自動操縦装置の設定変更をダイヤルを回し、方位の数値を〝015〟に変えた。
「もう少しで羽田ですね」
「これが終わったら休暇だ。
っ!?」
「きゃっ!?な、何なのよ!?」
副操縦士と機長が話をしていると、爆発音とともに機体が急に左に傾いた。
自動操縦中であったため、機体はすぐに垂直に戻されたが、爆発音がしたということから、どう考えても機内で異常事態が発生したと考えるしかなかった。
「I have control!」
「ゆ、You have control.」
異常事態が発生後すぐに操縦は機長が請け負い、副操縦士には通信と今の状況を確認させた。
今、重要なのは機体にどれくらい被害があるかを確認し、至急近隣の空港に緊急着陸させることだった。
「綾波!機体状況を確認してくれ!」
「わ、わかりました」
副操縦士が装置の確認を始めた時、機長はいつ不具合を起こすか分からない自動操縦を監視しながら機内電話で客室乗務員に連絡をした。
客室乗務員からの情報は、〝客室前方、9Kの座席で小規模の爆発が発生し、その座席に座っていた乗客1名の下半身が無く、生死不明。他の乗客数名が怪我をしている〟という事だった。
「わかった。とりあえず、機体にヒビが入っていないか確認してくれ」
機内電話で通話する前に副操縦士から機体の装置類は大丈夫だと報告を受けたため、機長は次に機体本体の状況チェックをしようとした。もちろん、機長はコックピットを離れられないので、客室乗務員が行うのだが。
飛行機の機体は非常にデリケートである。小さなヒビでも墜落する可能性がある。最悪、空中分解するかもしれない。
そのため、機長は、客室乗務員からの報告で驚きを隠せなかったのだが、機長は生死不明の乗客を気にする暇もない。気にして動揺してしまったら死ぬ。冗談ではなく乗客乗員全員死ぬ。
〝海に着水すれば助かる〟そういった意見もあるが、そういう人は何も分かっちゃいない。〝ハドソン川の奇跡〟と言われているUSエアウェイズ1549便不時着水事故は、抵抗の少ない川だったため出来たことであった。
海に着水してしまうと波とエンジンに与えられる抵抗によって機体がバラバラになる。海上は救助隊がすぐ来るか分からない場所である。そんなことをしてしまったら死んでしまう確率が高くなってしまう。
助かる可能性が高いといわれている、陸地から近い海に着水しても乗客乗員の3分の1しか助からなかったエチオピア航空961便ハイジャックの例もある。
リスクが高い着水よりも空港に着陸するのが最善の策である。
「綾波、東京
「は、はい!
この単語が発せられた瞬間からこの周波数は〝May Day〟を発した便が独占し、周辺空域はこの便以外を退かす事となる。
そのため〝MayDay〟は、最上級の緊急事態が発生した時にしか使われない。
そして〝May Day〟は緊急事態が発生したという事を知らせるためであるが、他機に迷惑をかけたくないと思う機長が居るため、発信するのが遅れ、助からなかった事態もある。
そのため、機長の判断は勇断であっただろう。
『
ヘッドホンから聴こえる東京進入管制の管制官からの声。彼の声は震えていた。
1983年、ヤード・ポンド法とキログラムの計算間違いでその時の担当機であるB767には予定の半分しか燃料が積まれず、目的地の途中で燃料がカラになってしまった事があった。
それが、ギムリーグライダーと呼ばれているエア・カナダ143便不時着事故。
事故当時の143便を担当していた管制官が発した、有名なセリフがある。
〝
この言葉が示すとおり、今、管制官のヘッドホンから聞こえてくる声は、この後故人になってしまう可能性が高い。
管制官が震えてしまうのも無理もないだろう。
余談であるが、エア・カナダ143便不時着事故の時の乗員乗客は全員生存している。
「機内で爆発発生により、負傷者有り。飛行には問題無いですが、乗客の怪我が酷いため羽田に緊急着陸したい」
『わかりました。では、方位340に』
「了解。方位340」
機長は副操縦士の復唱後、自動操縦装置の設定変更をダイヤルを回し、方位の数値を〝340〟に変え、羽田空港に着陸する体勢を少しずつとりはじめた。
「ご搭乗の皆様、こちらは副操縦士です。当機は羽田空港に緊急着陸いたします。皆様、シートベルトを着用の上、ご着席し、客室乗務員の指示に従ってください。客室乗務員は着陸位置に」
副操縦士は、落ち着いた声色で機内アナウンスをしていたが、内心は緊張状態であった。
副操縦士は、こういったトラブルに逢うのは初めてであり、下手したらここで一生を終えるかもしれないと危惧してしまっていたからだった。
『フソウ713。空港を目視できますか?』
「フソウ713。できています」
副操縦士は、コックピットの窓から羽田空港を目視にて確認した。空港までもう少しだ。
『フソウ713。滑走路は34Lと34R、どちらでも使えます』
管制官からの報告で、機長は進入経路や使用滑走路についてを頭の中で考えていた。
「着陸体制に入る。ギアダウン」
「了解。ギアダウン」
副操縦士は、復唱後にレバーを下げると、ウィーンという機械音が機内に響く。タイヤが下ろされた証拠だ。
「3グリーン」
「フラップ2」
「フラップ2」
緑色のランプが点灯し、ギアが固定された。フラップも出し、着陸準備は出来た。
滑走路上には、〝May Day〟コールにより出動していた消防車と救急車、そしてその2つが出す赤色灯が見えていた。
「よし、行くぞ!」
「はい!」
機長と副操縦士は覚悟を決め、羽田空港34L滑走路にゆっくりとB737を降ろして行った。
────大丈夫だ、737。俺を信じろ
ふと、コックピットで機長が機体に向かって呟いた。まじないか、願掛けかは分からない。
737は羽田空港に降りていく────
当話上でのスカイチームへの酷い風評被害
デルタ航空「訴訟も辞さない」
エールフランス「ボナン送るぞ」
アエロフロート「児童操縦の航空機はいかが?」
・・・だって日本の航空会社2社はワンワールド(JAL)とスターアライアンス(ANA)加盟なんだもん。つまりスカイチームは余り物だったから扶桑航空(架空)が割り込んだ。
次回更新予定日は7月24日0時0分です。
下手ですが、一応挿絵です。
【挿絵表示】
時間的に余裕が出てきたので1話だけ番外編ストーリーを書きたいと思います
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渡辺百香と前世の娘
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スクスタ時空─スクフェス!─
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百香とルビィの入れ替わり!
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スクスタ時空─虹学・Aqours対決!─
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ロリ辺百香