2016年7月4日16時24分
浦の星女学院1階廊下──
百香は、学年主任であり、そしてスクールアイドル部の顧問である時雨先生の元へ向かっていた。
「なんでこーなってんのかなぁ・・・」
百香は、はあ・・・と、ため息をつきながら歩いていた。時雨先生による、いつもの「書類やっといて」という、スクールアイドル部の事務押しつけであった。
重要な書類は時雨先生が行うが、あまり重要ではない書類は全て百香に押しつけ。押しつけるのが百香ではなかったら、処理できないどころか、問題になる。
そもそも、生徒である百香に押しつけているのが問題になるのではないのかという突っ込みもあるのだが、百香は嫌々であるが、誰にも言いつけずに書類を処理していた。
「失礼します。1年A組の渡辺 百香です。時雨先生はいらっしゃいますか?」
「来たね」
百香が職員室に入ると、書類が山積みになっているデスクの前に座っている時雨先生が、百香にこっちこっちと手を挙げた。
百香は、〝また書類溜め込んでいるのか・・・〟と、心の中でため息をつきながら時雨先生のデスクの前に向かった。
「先月の活動報告書です」
百香は、ポケットから報告書のデータが入った緑色のUSBメモリを出し、時雨先生に手渡しで渡した。
「いつもいつもありがとう」
時雨先生は、回転椅子をくるりと回し、百香に身体を向けた。
「いえ、別になんとも思ってないですよ」
「ならいいんだけど・・・」
時雨先生は、少し眉を下げて回転椅子をくるりと回し、百香の方に向けていた体をデスク前に戻した。
百香は部室に戻ろうとするため、時雨先生に一礼し、職員室を後にしようとした。
一礼した後に体を上げた時、職員室の天井からぶら下げてある36型の液晶テレビが目に入った。
液晶テレビからは、いつもの番組を取りやめ、臨時ニュースが流されていた。いつもの百香なら、気に求めなかったニュース番組も、〝臨時〟とついた緊急性の高い事のため、顔を上げて液晶テレビを見た。
臨時ニュースでは、羽田空港に広島発羽田行き扶桑航空713便のB737が不時着した事故が報道されていた。
百香は、墜落原因はレバノン料理だの、アンチアイスオフだの、DC-10だのと、若干偏見を持ちながらも、航空機事故には少しだけ詳しい。ブラックボックス?もちろん「真水につけろ!」と彼女は言うだろう。
そのため、百香には日本国内の飛行機事故のデータと、世界中の飛行機事故10数件が頭の中に入っている。
日本国内で最近発生したB737型機の事故は2007年、那覇空港で発生したチャイナエアライン120便炎上事故のみ。
彼女のデータベース上に、この扶桑航空713便の事故はなかった。
チャイナエアライン120便の事故の後、次に発生した737の事故や問題は、2019年に国土交通省が
つまり、百香が居るこの世界は、慶喜であった時のラブライブ!世界とは別の世界が動き始めていた。日本国内の一部だけという小さなレベルではない。
航空機事故において、米国企業の機体か米国製の部品が使われていると、事故の解明のため、
米国内ではたった小さな変化かもしれない。だが、それは米国内での話だ。日本国内では大きな変化となり、この沼津市にも何かしら変化を与えることとなる。
何故、世界規模で別の世界が動き出してしまったのか──
百香は、その場で頭をフル回転しながら考え始めた。航空機内での爆発は機体に欠陥があったDC-10など一部を除き爆弾テロだ。
首謀者が何を考えていたかは分からないが、国会内の議員の名前も、事件で亡くなってしまう人も全て同じという、Aqoursを除き前世と同じ世界である。もしかしたら、転生者が1枚噛んでいるのかもしれない。
だが、それにしても百香には分からなかった。
〝何故航空機内で爆弾を爆発させたのか。政治関係ならもっと別な場所を爆発させるだろう。
米国に恨みを持っており、米国産の航空機を爆破させるならば、最新型のB787の方が適任だし、多くの人を殺したいならば、B767かB777、A380の方が適任であっただろう〟と。
百香のその疑問の答えは最悪な形で判明することとなった。
──ニュースキャスターの前に1枚の紙が追加された。
『たった今入った情報です。扶桑航空713便の事故で死亡した男性の身元が判明しました』
キャスターが読み上げたと同時にどこから入手したのか分からない被害者の顔写真と、被害者の名前、そして、職業が映し出された。
「ま、まさか・・・!?」
その表示を見た瞬間、百香の頭の中には、この爆発事件の真相が創り出され、それと同時に嫌な予感がした。
百香は不思議な顔でこちらの様子を伺ってくる時雨先生には目もくれず、スカートのポケットからスマートフォンを出し、つい最近電話帳に登録した伊豆駿東新聞社の電話番号をタップした。
早く出てくれ──
百香はスマートフォンから聞こえる信号音を聞かながら〝もし出なかったら〟と思い、一筋だけ冷や汗が流れた。
1分近く信号音が鳴っているのだが、一向に出る気配がない。
嫌な予感がした百香は、通話終了のアイコンをタップすると、職員室から飛び出した。
脇目も降らず、「走るな!」と呼び止める教師を無視し、体育館アリーナ横のスクールアイドル部の部室に全速力で向かった。
百香はスクールアイドル部部室のアルミサッシ扉を荒々しく開け、ズカズカと部室の中に入っていった。
「ど、どうしたの百香ちゃん」
「急用ができた。もしかしたら泊まりになるかもしれないと曜に伝えておいてくれ」
折りたたみテーブルの前にある折りたたみ椅子に座っている千歌が一連の百香の行動を見ていたため多少驚きながら聞いてきたが、百香はそれを無視し、自分のスクールバッグを手に取った。
「ねぇ、ちょっと!待って!百香ちゃん!」
百香は一方的に話しを終わりにし、千歌の呼び止める言葉を無視して飛び出して行った。
浦の星女学院前の坂を駆け下りた百香は、浦の星女学院前バス停の時刻表と自身の腕時計の両方を確認した。
現在時刻16時49分──
次に浦の星女学院前バス停を通過するバスは17時20分。あと30分以上もあるし、バスは必ずと言っていいほどよく遅れる。
すぐに本数が多くなる県道沿いにある重須バス停に向かって走り出した。重須を通過するバスは16時51分通過予定。間に合うか──
16時51分。N24系統木負農協発沼津行きのバスが定刻通り長井崎トンネルを抜け、重須バス停を通過した。
結論を言うと、百香はそのバスに乗れなかった。バスは遅れるが、それは始発からの距離が長いバス停でしか通用しない。始発の木負農協バス停は重須バス停からわずか2つ前のバス停。遅れろという方がの難しいだろう。
次のバスは30分後。それを知っていた百香は、伊豆・三津シーパラダイスから出る伊豆長岡駅行きのバスに間に合うため、また走り出した。
17時01分。
伊豆・三津シーパラダイスに着いた百香は、バスの折り返し用スペースに置かれている椅子に腰掛け、あがっている息を整えた。体力があっても全力ダッシュで約1キロは辛い。
全力ダッシュした後、百香は時刻表で伊豆長岡駅行きの発車時刻を調べた。次の発車は17時30分。歩いてきても十分間に合った時刻であった。
「なんだよ・・・、歩いても・・・、間に合う・・・、じゃねえか・・・」
過ぎ去った
息が整う前にスマートフォンを出し、もう一度百香は伊豆駿東新聞社に電話をした。彼女の頭の中には〝もしかしたら、輻輳で繋がらなかったのかもしれない〟という考えが浮かんでいた。いわゆる、現実逃避というやつだろう。
17時19分。百香は何回もかけ直しをしたが、結局新聞社には繋がらず、到着した伊豆長岡駅行きのバスに乗り込むしかなかった。
18時03分。伊豆・三津シーパラダイス発伊豆長岡駅行きのバスが定刻通りに発車し、予定通りダイヤより遅れて伊豆長岡駅に到着した。百香は1番最初にバスを降り、券売機で三島までのきっぷを購入した。
三島行きの駿豆線の電車が18時06分に発車し、18時29分、ダイヤ通りに終点・三島駅の頭端式ホームにゆっくりと滑り込んだ。ワンマン運転のため、停車後、運転手が確認するまでの数秒間ドアは開かない。その数秒間でさえ、百香には数十秒のように感じられた。運転手の指差し確認の後、ドアが開くと同時に百香はホームに飛びだし、改札口を抜けた。
伊豆駿東新聞社は、三島駅南口から数百メートルの場所にある。百香の足なら10分もかからずに到着できるが、今日は物理的に到着することができなかった。
それは、警察が規制線によって伊豆駿東新聞社周辺を閉鎖していたからだった。伊豆駿東新聞社の入居するビルは───
──時折爆発音を轟かせながらメラメラと炎を上げ、炎上していた。
「う、嘘だろ・・・」
百香は、今起きている現実をただ、見ているだけしかできなかった。
その日の夜、百香の所有するパソコンに狩野川花火大会の運営から出演依頼のメールが入った。残酷だが、本人の意思無くともAqoursの歴史は順調に流れていったのだった。
次回本編更新予定日は7月31日です。
※本編以外を更新するかもしれません
時間的に余裕が出てきたので1話だけ番外編ストーリーを書きたいと思います
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渡辺百香と前世の娘
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スクスタ時空─スクフェス!─
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百香とルビィの入れ替わり!
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スクスタ時空─虹学・Aqours対決!─
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ロリ辺百香