「状況を開始する」
『おい、今のはなんだ?状況ってなんだ!?』
2016年7月10日日曜日
午前5時14分
あわしまマリンパーク駐車場前
Aqours6人と百香はあわしまマリンパークの看板の後ろに隠れ、果南が淡島から来るのを待っていた。
結局、泊まりの許可は全員取れ、2年生組が千歌の部屋。といっても、内浦に住んでいない曜だけだったのだが。1年生組と百香は花丸の家に泊まらせてもらった。
唐突に決めた事なのに、全員の保護者が許可を出した。しかも渡辺家では二つ返事で許可を出したので、さすがの百香も母の回答に対し、困惑したのだった。普通に考えればありえない事なのだが、アニメ通りに進むためなら多少強引でも仕方ないのだろう。百香はそう考えた。
5時20分程になると水上バイクの音が聞こえ、その音はあわしまマリンパーク駐車場前で消えた。
桟橋から現れたのは練習着姿の果南だ。
「よし、現刻より作戦を開始する」
百香の一言でAqoursの尾行が始まった。果南は早朝で車通りが全くない県道を横断し、山側にある歩道に走りながら移動し、そこから南へと走っていった。Aqoursも走って果南を追う。
梨子が最初のカーブを曲がった時にふと、言った。
「ねえ・・・、こんな大人数で尾行したらバレるわ」
正しくそうだ。今、果南を尾行しているのはAqours6人と百香の計7人。見つかりやすいと思ってしまうのは最もである。
「だって、みんな来たいって言うし」
曜がそう言う通り、昨日尾行する人を決める時、全員立候補し、揉めたのだ。その時「じゃあ、みんなで行けばいいじゃん」という千歌の意見で、皆で追うことになったのだ。
「しっかし、速いね・・・」
「どこまで行くつもり・・・?」
果南は三津三差路を横断し、歩道のないトンネルを避けるためにもう一度県道を横切って伊豆・三津シーパラダイスの横の細い道を通り、県道の海側の歩道を走って行った。
「もう、かなり走ってるよね」
「マル・・・、もうダメずら・・・」
果南の高ペースにずっとついて行ったため、体力が1番少ない花丸がダウンしそうだ。だが、花丸の後ろに百香が着き、走り続けるようにずっとずっと背中を押し続けた。それに百香なら果南が向かう場所も分かるからだ。
「何か気持ちよさそうだね」
ふと、曜がそう言った。淡島から長井崎トンネル付近までずっと走ってきている果南の顔は清々しく、嫌なことや、抱えている悩みから解放されているようであった。
果南は長井崎トンネル前の十字路を右に曲がり、県道の旧道であり、浦女通学路でもある道へと進み始めた。
果南は浦の星女学院前の坂に通じている道をずっと進む訳ではなく、すぐに右の路地へと進んで行った。
その先にあったのは小さな小高い山。そこには階段があり、そこを登ると弁天神社がある。人気のない、静かな神社だ。
「ひえぇ・・・階段・・・。もう無理ずらぁ・・・」
花丸は、そこの階段を上る前に力尽きてしまった。他のAqoursメンバーも、果南の高ペースについて行っていたため、階段を登り始めてからすぐに力尽きてしまった。
果南の隠していることを知りたかった千歌は、最後の力を振り絞り、頂上にある弁天神社にどうにか辿り着いた。
果南は、既に頂上に着き終わって、少しだけの休憩を終えていた。そして、木の影から果南の姿を見た千歌の目に入った光景は──
「綺麗・・・」
果南が弁天神社の本堂前で踊っていた事であった。その時の果南は、何事からも解放されて大海原を自由自在に泳ぎ回るイルカのようであった。
「あの人は・・・」
その果南の踊りを見ていたのは千歌だけではなかった。浦の星女学院3年生兼浦の星女学院理事長、小原鞠莉。彼女は果南の目の前に堂々と姿を現し、果南のダンスに向けて拍手を送っていた。鞠莉は弁天神社の本殿の後ろに隠れていて、果南が踊り始めてから出てきた。そのため、果南は鞠莉に背を向けている状況である。
「復学届、提出したのね」
「まあね」
「やっと逃げるのを諦めた?」
「勘違いしないで。学校を休んでいたのは父さんの怪我が元で、それに、復学してもスクールアイドルはやらない」
果南はそう言うと、一切振り向かずに階段に向けて歩き出した。
この時既に階段を上りきっていたAqours一同と百香は、2人にバレないようにこの光景を木の影から見ていた。
「私が知っている果南は、どんな失敗をしても笑顔で次に向かって走り出していた。成功するまで諦めなかった」
「卒業まで、あと1年も無いんだよ」
果南は、一刻も早くこの話を終わりにしたかった様である。鞠莉の話に答えずに一方的に答えていく。
「それだけあれば充分。それに、今は後輩もいる」
鞠莉は果南を引き留めようとするが、果南はずっと歩き続けていた。
「だったら、千歌達に任せればいい」
「果南・・・」
果南は足を止め、ようやく鞠莉の方に顔だけを向けた。
「どうして戻って来たの?私は戻って来て欲しくなかった」
「果南・・・。相変わらず果南は頑固」「もうやめて。もう貴女の顔、見たくないの」
全身を向け、鞠莉に残酷な事を言いきった果南の顔はどこか切なく、悲しそうであった。それからの果南は鞠莉に一切顔を向けず、そのまま走って帰って行ってしまった。
先程までの鞠莉と果南の声が鮮明に聞こえていた時とは打って変わり、弁天神社の境内には木の葉をさわさわと鳴らす微風しか吹いていなかった。その風は、今の2人の心情を示しているかのように、止むことは無かった。
弁天神社の境内にしばらく留まっていた鞠莉が帰宅したのを確認したAqours6人と百香は、とりあえず、話をまとめるために十千万に向けて歩き始めた。
弁天神社の参道から県道の旧道に出るまで、Aqoursは果南と鞠莉の先程の会話について相談していた。1年生組からは〝言い過ぎ〟〝流石に可哀想〟という意見が出ており、曜からは〝何かありそう〟という意見が出ていた。
「〝逃げるのを、諦めた〟か・・・」
その中で、果南と鞠莉の話の中で違和感を感じていたのは梨子だった。もしかしたら自分自身に重ねた部分もあったのだろう。
「多分、学校に来ないと解らないよね・・・」
「・・・そうだな。鞠莉と果南のあの性格なら必ず教室内で衝突するからな」
「・・・果南ちゃんはともかく、鞠莉さんのことはどこで知ったの?」
〝ヤバっ──〟
千歌が少し疑うような顔で百香の顔を見た事と、善子がギョッとしながら百香の顔を見ていた事を見て、百香は何を言ったかをすぐに自覚した。事情を知っている善子が居るため、どこか心が緩んでしまったのだろう。
「あ、ああ。結構書類出す時に頻繁に会ってるしな」
「・・・ふーん・・・なら、良いけど・・・」
百香の説明で千歌は、少しだけ納得していないような様子で頷き、そこからは千歌は何も詮索はしなかった。
「よし、まだ朝早いし、これからランニングでもするか!」
百香はドキドキしている心を誤魔化すために十千万に向かって走り出した。
果南を尾行して疲れていたAqoursから「もう走りたくないずらァ!百香ちゃんは畜生ずらぁ!」「鬼、悪魔、百香!」「ピギィ・・・」などとブーイングの声があがってきたが、百香は「置いてくぞ」と言い、Aqoursを置いて行ってしまい、Aqoursは百香の後を追いかけ始めたのだった。
Aqoursに隠し事をしている百香は、さっきまで気持ち良さそうに走っていた果南が複雑な顔になったときの気持ちが少し解ったような感じになったのだった。
遅れました。申し訳ございません。実家に帰るとやる気がなくなるんですよ。いや、本当に。大丈夫ですよ。次回分のストックはあります。次回はちゃんと更新出来ますよ!
次回更新予定日は9月25日です
時間的に余裕が出てきたので1話だけ番外編ストーリーを書きたいと思います
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百香とルビィの入れ替わり!
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