海上自衛官が渡辺曜の妹になりました   作:しがみの

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第5話 転校生

春の内浦湾沿いの県道を走っているオレンジ色ラインが入ったバスに私は乗っている。通学時間帯にしては乗っている乗客は少なく、聞こえる音は、バスのエンジン音や、時よりスピーカーから鳴る次のバス停のアナウンスだけだ。

 

妹の百香ちゃんも乗っているが、耳にイヤホンを着けて寝ている。恐らく、音楽を聴いている間に睡魔に襲われて寝てしまったのだろう。

 

〝曜の事が、好きなんだ〟

 

百香ちゃんの顔を覗き込むと同時に、昨日言われたあの言葉を思い出してしまい、全身が熱くなっていく。絶対顔は真っ赤だ。今、私自身でも感じている。その真っ赤な顔を冷やすために首をぶんぶん振り、どうにか正常に近づける。

 

ん?あの時、百香ちゃんは〝俺〟と言った。昨日は興奮してしまったため、良く思考回路が働かなかったが、よくよく考えるとおかしい言葉遣いだった。声の高さは私と同じようになっていたし、口調も男の子っぽい言葉だったからだ。まあ、百香ちゃんは〝俺〟っていう一人称はたまに使ってたけどね。あまり気にしないでおこう。っていうか、〝好き〟って、どっちの意味?〝LOVE〟と〝LIKE〟・・・。どっち?もし、前者だとすれば、絶対私のせいだ。私が千歌ちゃんの事を好きになってしまったことで、百香ちゃんまでも同性愛に抵抗が無くなってしまったのだ。(違います)

 

・・・もう一度、百香ちゃんの顔を覗き込む。私と似ている顔、背中の上半分まで伸びているセミロングの長い髪、そして、同じ髪の色の髪の毛。

 

身長を除いた見た目は殆ど私と同じなのに、私より勉強も出来るし、運動も私よりも出来る。私と彼女の間には気付かぬうちから差が広がっていた。・・・私では到底追いつけないような。

 

私は、百香ちゃんを静岡の名門私立高校に進ませたかった。本人も最初はそれの考えに賛同してきたが、中学三年の秋頃、急に浦の星女学院に進学する事を決めたのだ。中学時代、何もかも完璧、さらに各教科のほとんどの頂点に立っていた彼女が偏差値70くらいの名門私立高校から偏差値40程度の私立高校に進学する事を変更するのは、通常では考えられないことなのだ。彼女にその理由について問いかけたとき、彼女は「距離が近いし、友達もいっぱい居るから。」と言っていた。しかし、我が家からの距離は沼津市内の高校の方が近いし、浦女は何方かと言えば、伊豆市や伊豆の国市、沼津市の内浦より南部からくる人が約7割を占めていて、内浦中出身の子は半分以上沼津市内に行ってしまう。私は何故、彼女は急に進路を変え、浦女に通うことにしたのか今でも分からない。私としては嬉しいが・・・。

 

 

『次は、三津(みと)、三津です。』

 

アナウンスが鳴り、千歌ちゃんが乗ってくる三津バス停にバスはゆっくりと停車した。案の定、千歌ちゃんはバス停で待っていた。私は頭の中を百香ちゃんのことから千歌ちゃんのことに切り替え、横に一人分座れるスペースをつくる。

 

バスのドアが開くと同時に中に入ってきた千歌ちゃんは、運転士に定期券を見せると一番後ろに駆け寄って来た。

 

「おっはよー!!!」

 

車内に響く元気な声。百香ちゃんもこの声で目を覚ました。

 

「おはヨーソロー!!!」

「おはヨーソロ・・・。」

 

私の元気な挨拶と百香ちゃんの眠そうな挨拶が車内に響く。いや、百香ちゃんの声は響いていないのか・・・?そこら辺は曖昧だ。

 

浦の星女学院前のバス停に到着するまでは昨日地上波で放送された映画の話や、課題の話などをした。その時、また「課題のやった所見せて!!!」と千歌ちゃんが私に頼んでいるいつもの光景が広がっていた。バスはゆっくりと学校の入り口のある旧道に向けて交差点を曲がったのだった。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

バスを降り立った時、千歌ちゃんは、私と百香ちゃんにもう一度提案した。もう一度部活動設立書を持って行くと。

 

「もう一度?」

 

「うん。ダイヤさんの所に行って、もう一回お願いしてみる。」

 

「でも・・・」

 

「諦めちゃ駄目なんだよ!!!あの人達も歌ってた。その日は絶対来るんだって。」

 

飽きっぽい千歌ちゃんがここまで諦めないで行動するのは珍しい。

 

「・・・本気なんだね。」

 

「え?」

 

「よっ。」

 

私は千歌ちゃんの右肩をちょんと叩き、注意が右に向いた時、左から部活申請書を取った。

 

「ああっ、ちょっと!!!」

 

千歌ちゃんはちょっとビックリしていたけど、私は気にかけず、千歌ちゃんの背中に私の背中を合わせた。

 

「私ね、小学校の頃からずっと思ってたんだ。千歌ちゃんと夢中で何かやりたいなーって。だから、水泳部と掛け持ち、だけど!!!」

 

私はバッグの中からペンを出し、千歌ちゃんの背中を机代わりにし、部活申請書の名前の欄に〝渡辺 曜〟と書き加えた。

 

「えへっ。はい!!!」

 

「あ、ちょっと待って曜姉!!!」

 

笑顔でいる千歌ちゃんに差し出したところ、百香ちゃんが差し出す私から部活申請書を取り、自分のペンで〝渡辺 百香〟と、書いたのだった。

 

「私も、マネージャーだけどね。」

 

「曜ちゃん、百香ちゃんも・・・。

 

曜ちゃぁぁぁぁん!!!百香ちゃぁぁぁん!!!」

 

私と百香ちゃんの名前が追加された部活申請書を涙ぐみながら受け取った瞬間、私達に抱きついてきた。嬉しい。このまま昇天してもいいかも。

 

「苦しいよぉ・・・。」

「苦じい・・・。」

 

「よーし、絶対凄いスクールアイドルになろうね!!!」

 

「うん!!!」

 

私は、千歌ちゃんに元気よく答えたが、目の前をヒラヒラと部活申請書が舞い、水溜りにゆっくりと着陸していった。

 

「「「ん?」」」

 

「「「ああああああああああああ!!!」」」

 

浦女前のバス停には、私達3人の叫び声が響いた。

 

 

 

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「よくこれでもう一度持ってこようと思いましたね。しかも1人が3人になっただけですわよ。」

 

ダイヤは、ゲンドウポーズをし、机にのっかっているしわくちゃになった部活申請書を見ていながら言っている。

 

「やっぱ、簡単に引き下がってはダメかなって思って。もしかしたら、生徒会長は私の根性を試してるんじゃないかって。」

 

「違いますわ!!!〝何度来ても同じ〟とあの時言ったばかりでしょう!!!」

 

「何でですか!!!」

 

ダイヤと千歌との言い合いが始まった。ちなみに俺と曜は見物人。・・・かも。

 

「この学校にスクールアイドルは必要ないからですわ!!!」

 

ダイヤは机に足を乗っけていて、千歌は机に正座をしている。千歌はともかく、良いのか?生徒会長であり、家元の後継であるダイヤがそんなことして。しかし、鉄壁スカートだな。中が見えそうで見えない。

 

「何でです!!!」

 

「「ぐぬぬぬぬぬ・・・。」」

 

二人は顔を近づけていく。このままダ〇ョウ倶楽部のようにキスとかすればいいのに。1年生ペアとかギルキスメンバーだったらやりかねないけどね。

 

「まぁまぁ・・・。」

 

「落ち着いて・・・。」

 

曜と俺が2人をなだめ、どうにか机から下ろした。

 

「貴女に言う必要はありません!!!大体、やるにしても曲は作れるのですの?」

 

「曲?」

 

机の上から窓際に立つ場所を変えたダイヤは私達に問いかけたのだが、千歌は相変わらずだ。首をかしげている。ほんと、よく調べない千歌さんの悪い癖だ。事を急ぐと元も子もありませんよ、閣下。・・・。誰が閣下だ。

 

「ラブライブに出場するのにはオリジナルの曲ではなくてはいけない、ですか?」

 

俺の答えに対し、ダイヤは「その通りですわ。」と言い、俺達の方向を向き、また更に言い出した。

 

「スクールアイドルを始めるのに最初に難関になるポイントですわ。東京の高校ならいざ知らず。うちのような高校だと、そんな生徒は・・・。」

 

ダイヤの問いかけで、千歌は「探すぞー」と言い出し、生徒会室を飛び出していった。いや、いや、お前さっきまでダイヤの言ってた事聞いてたか?

 

俺はそう思いながらダイヤに一礼してから曜と千歌の後ろ姿を追ったのだった。

 

 

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浦女の中で作曲が出来そうな人を探していた私達だが、

 

「一人もいない・・・。」

 

一人も居なかった。千歌ちゃんが溜め息をついているけと、常識的にかんがえて居ないよね。こんな田舎の学校に作曲が出来る人なんて。居てもそれは少数だからね。

 

「百香ちゃんも流石にピアノとかは駄目なんだよね。」

 

百香ちゃんは大抵の事は出来るけど、流石にピアノは出来ないんだよね。そもそも百香ちゃんはピアノ習わないって言ってたからね。まあ、小さい頃だけど。

 

「何それ・・・。完璧なら出来て当然じゃん・・・。」

 

「千歌ちゃんは私の妹をなんだと思ってるの?」

 

「何でもできる超人。そのうち生身で空とか飛んだり、一人で一つの軍隊滅亡できそう。」

 

あ?私の妹をなんだと思ってんだコラ。たとえ相手が千歌ちゃんだろうと妹に変なイメージを持つ奴は許さんぞ?

 

「ちょっと1年生の教室に行って熱々の鉄板の上で土下座しようか。」

 

私がバッグの中から1㎡の鉄板を出すと、ガスバーナーで熱し始めた。え?何で持ってるかって?気にしたら負け。

 

「冗談だってー。で、やっぱり曲は私がどうにかして作るしかないのかな・・・。」

 

千歌ちゃんが机の中から音楽の教科書を出して、私が作るとか言ってるけど、できっこない。もし今すぐ出来ても、それは奇跡以上の出来事でしかない。だから私は千歌ちゃんに出来る頃には卒業してると思うとの事を言うと、千歌ちゃんは、「だよねぇ・・・。」と言いながら机に突っ伏してしまった。

 

その時に丁度チャイムが鳴り、担任の先生が入って来た。

 

「はーい、皆さん。ここで転校生を紹介します。仲良くしてくださいねー。」

 

担任の先生の言葉の後にはワインレッドの長髪の子が入って来た。私は千歌ちゃんの方をちらっと見ると、千歌ちゃんは転校生の事をじっと見つめていた。

 

「今日からこの学校に転入することになった」

 

「くしゅっ!!!失礼・・・。東京の音ノ木坂という学校から転校してきました、くしゅっ!!!桜内梨子です。よろしくお願いします。」

 

自己紹介をしたワインレッドの子、桜内梨子さんは、深々とお辞儀をした。

 

「奇跡だよっ!!!」

 

「貴女は!?」

 

千歌ちゃんが急に立ち上がり、桜内さんに手を差し伸べた。桜内さんも驚いていたから多分面識があるのだろう。

 

「一緒に、スクールアイドル始めませんか!?」

 

千歌ちゃんがスクールアイドル部に桜内さんを誘った。その答えは?

 

「ごめんなさい!!!」

 

はい、千歌ちゃん☆残念☆。NOでした。




????「勝てる・・・!!!


ノンケの反撃は・・・これからだ・・・!!!」

次回、入学式の夜
※予告と異なる場合があります。
次回更新予定日は11月22日0時0分です。

時間的に余裕が出てきたので1話だけ番外編ストーリーを書きたいと思います

  • 渡辺百香と前世の娘
  • スクスタ時空─スクフェス!─
  • 百香とルビィの入れ替わり!
  • スクスタ時空─虹学・Aqours対決!─
  • ロリ辺百香

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