鞠莉と果南の仲直りが済んで、早2週間以上が経過した。狩野川の花火大会も終わり、季節は夏本番を迎えていた。学校は花火大会よりも前に終業式を終えたため、今は夏休み。この学校の長期休暇中に通常授業は無いが、夏と冬の長期休暇の序盤には課外授業があり、希望した一部の生徒が参加している。
浦の星女学院スクールアイドル部はというと、理事長と生徒会長が所属しているため、全員強制参加となった。果南や部長の千歌、堕天使ヨハネ(笑)の善子など、一部から反対の声もあがったが、部長以上の権力者2名と事実上スクールアイドル部の顧問みたいになっている1名、計3名によって、反対意見は黙殺された。
そして、8月1日。課外授業4日目が終了した。スクールアイドル部部室の中で、千歌が「何故、授業のない日に授業を受けなければならないんだ・・・」と、文句を言いながら折りたたみ机に突っ伏していた。
「ほらほら、千歌姉。話し合い始まるんだから顔上げて」
「うーん・・・、わかった・・・」
百香が千歌の両肩を揺さぶると千歌はゆっくりと顔を上げ、目線の先にあるホワイトボードを見た。
「それでは、夏休み中の練習の話をしますわ!」
ホワイトボードの横に立っているのはダイヤとルビィ、そして、鞠莉の3人。それ以外は千歌のようにパイプ椅子に座っているか、折りたたみ机の横に立っていたりしている。
「まず、サマーバケーションと言えば?」
「はい!あなた!」
鞠莉とダイヤの息があった掛け声とともに、千歌に指を指した。どうやら答えろということらしい。
「やっぱり海だよね・・・」
「夏休みはパパが帰ってくるんだ!」
「マルは、おばあちゃんちに・・・」
「夏コミ!」
この返答を聞き、〝ここにいる連中はまともな考えができないのか〟とダイヤは思ったのか、両手に握りこぶしを作り、わなわなと震えだした。
千歌は、何かまずいことを言ったのかわからなかったが、この後のダイヤの発言に苦笑いしかできなくなることはまだ知らなかった。
「ぶっぶーですわ!あなたたち、それでもスクールアイドルなのです!?片腹痛い、片腹痛いですわ!」
「だったら、なんだって言うんです?」
ダイヤの発言に対し、鞠莉とルビイを除く全員が苦笑いし、ダイヤに問いかけた千歌でさえ少し苦笑いしていたのは言うまでもないだろう。
「いいですか!?みなさん。夏といえば?はい、ルビイ!」
「───・・・・・・、多分、ラブライブ!」
ルビイがダイヤの問いに答えたところ、ダイヤがルビイの頭を撫でだした。
「さすが我が妹、かわいいでちゅねぇ~。よくできまちた~」
「頑張ルビイ!」
ダイヤがルビイの頭をまだ撫でている。しかも、Aqoursが目前にいるのにまだ平気で撫で続けている。しかも、ダイヤの出している声は、いつもの凛々しいような声ではなく、甘々な、しかも、幼児に向けているような声だ。Aqoursの面々は、苦笑いの度合いを高めるしかなかった。
「何この姉妹コント・・・」
「コント言うな!」
しかも、善子のツッコミに対して言い返すということは、自覚なしということだ。千歌は、Aqoursのこれからに対し、色んな意味で少し心配してしまった。
〝あっ、コイツやべーやつだ〟
と。このことを口に出すことは無かったが、結果的にそれは正解であった。
「夏といえば、ラブライブ!その大会が開かれる季節なのです!ラブライブ!予選突破を目指して、Aqoursはこの特訓を行います!」
ダイヤは、自身のスクールバッグからどう見てもはみ出している紙を出すと、ホワイトボードに貼り付けた。
「これは、
「すごいお姉ちゃん!」
そう、アニメ ラブライブ!を見た視聴者なら必ずどこかで見たと言うスケジュール表だ。はい。どう見ても園田海未が作った達成できなかったスケジュール表でしたありがとうございました。帰りましょー。
「百香さん、帰らないでくださいますか!?」
百香は、スクールバッグを持って帰ろうとし、ダイヤに止められた。
「いやだってマネージャーの仕事取りましたよね?」
「な、ななな、何のことでしょうか・・・」
「とぼけやがったこのポンコツ生徒会長が・・・」
「は?キレそう」
「キャラどうしたんだよ・・・」
こんな感じでもう原作とキャラ違うだろという百香の冷静な脳内ツッコミがされている時、スケジュールを見たAqoursの面々は1名を除き、どう考えても嫌そうな顔をしていた。
「遠泳10キロ・・・」
「ランニング15キロ・・・」
「こんなの無理だよ・・・」
「まっ、何とかなりそうね」
「「「えっ!?」」」
体力おばけの果南のみ、楽観的か顔をしていた。運動部所属の男子高校生よりも体力のある果南だ。こういうことを言うのも当たり前なのだろう。
「熱いハートがあればなんでも出来ますわ」
「ふんばルビィ!」
傍から見ると妹と息のあった漫才をしているように見えるダイヤ。この姿を見て梨子と曜が鞠莉になんでこうなったのかを聞いたところ、〝ずっと我慢してきただけに、今までの思いがシャイニーしたのかも〟と、2人が苦笑いするしかない答えが返ってきた。
「何をごちゃごちゃと。さあ、外に行って始めますわよ!」
「そーいえば千歌ちゃん。海の家の手伝いがあるって言ってなかった?」
「あっ!そうだ!そーだよ!自治体で出してる海の家の手伝いをするように言われているのです!」
ダイヤが今すぐにあのクソみたいなハードスケジュールを実行しようとしたため、曜と千歌がわざとらしく声をあげながらダイヤの立てたスケジュールに対し異議を唱えた。
このまま断行したら生徒会長の独裁政治になってしまう。まあ、理事長ここにいるけど。比較的常識人が多い2年生がブレーキ役になっている。1年生や3年生はいい意味でも悪い意味でも頭のネジが抜けている。鞠莉の根は真面目なのだが・・・。
「あ、私もだ」
「そんなぁー!特訓はどうするんですの?」
2人の意見ならハッタリの可能性があったのだが、体力おばけの果南までもが海の家の手伝いがあると言い出したため、ダイヤはこの海の家の手伝いについて蔑ろにはできなくなってしまった。
「残念ながら、そのスケジュールでは・・・」
「もちろん、サボりたい訳では・・・」
曜と千歌が言い訳を続ける。百香から見ればどう見ても、どう考えてもサボりたいという心が見えるがダイヤには見えないらしい。何故かって?坊やだからさ。(は?)
「じゃあ、昼間は海の家手伝って、涼しいmorning and eveningに練習ってことにすればいいんじゃない?」
「それ賛成ずら!」
「それでは練習時間が」
鞠莉の提案にダイヤが難色を示した。沼津市街から通う曜と善子の2人が朝早く来るのと夜遅く帰るのはバスの時間もあり、朝と夜に練習となると多くの時間を確保するのは厳しいからだ。
「じゃあ、夏休みだしうちで合宿にしない?」
「「「合宿?」」」
ダイヤが話をまた平行線に戻し、悩み始めたAqoursに千歌が提案をしたところ、空気が変わった。
「ほら、うち旅館でしょ?頼んでもらって一部屋借りればみんな泊まれるし」
「そっか!千歌ちゃんちの目の前は海だもんね!」
「三津にあるし、移動がないぶん早朝と夕方、時間とって練習できるもんね」
確かにその通りだ。拠点を海の家の近くにある千歌の家にすれば、移動時間はほぼ無いと言っても過言ではない。しかも、千歌の家は旅館でもあり、部屋も沢山ある。だが・・・
「でも、こんなに急に泊りに行っても大丈夫ずらか?」
「この時期だし、無理なんじゃないのか?」
そう。この時期、つまり、世間一般で言う夏休みの時期は繁忙期。こうした時に1つでも部屋を失うわけにはいかない。そうしたら断られる可能性が高くなってしまう。
「なんとかなるよ!じゃあ、決まり!」
その答えは、じつに曖昧とした事だった。この後の展開を知っている百香としては、この時の〝本当に大丈夫なのだろうか?〟という不安を簡単に取り除けたのだが。
「それでは、6日の朝4時、海の家集合ということで!」
そんなこんなで、何故かダイヤの暴走で4時集合ということとなり、この日の部活動は解散となった。
その次の日。屋上で練習中の百香は善子とペアになって柔軟をしていた。
「なあ、善子」
「何・・・よ」
百香が問いかけると柔軟体操で百香の下敷きになっている善子が苦しそうにしながら百香の方を向いた。
「お前、ダイヤさんの言う通り4時に行くか?」
「行くわけ・・・ないでしょ。バスも・・・ないし」
その答えを聞いた百香は、年甲斐もなく、満面の笑みでウキウキしているダイヤの顔をチラッと見てため息をついたのだった。
次回更新予定日は1月22日です。
時間的に余裕が出てきたので1話だけ番外編ストーリーを書きたいと思います
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渡辺百香と前世の娘
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スクスタ時空─スクフェス!─
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百香とルビィの入れ替わり!
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スクスタ時空─虹学・Aqours対決!─
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ロリ辺百香