8月6日午前3時30分。
日が昇るのが早い夏とはいえ、この時間では辺りはまだ暗闇に包まれている。
三津海水浴場に建てられた海の家の1つに花丸の姿があった。どう考えても沼津組は来れないのにあの時のダイヤの話を信じ、集合時間である朝4時前に来てしまった。
当然、誰も居ない。1番早く集合場所に着いた花丸は海の家の壁に寄りかかるような感じで座り込み、恐らく始発バスが来るまで来ないであろう残りのAqoursメンバーを待つことにした。
5分経過しても誰も来ないため、花丸はバッグの中から今読み半端の文庫本を出し、日が昇るまで来ないだろうとと決まっているAqoursメンバーを待つことにした。
「おはようさん」
文庫本を読み始めてからおよそ20分後。花丸の耳に呼びかける声が聞こえてきたため、目線をページから海に向けたところ、百香が立っていた。
「も、百香ちゃん!?
嬉しいずら!百香ちゃんもちゃんと来たずらぁ・・・!」
花丸は、驚いたと同時に、嬉しくなり、百香に抱きついてきた。誰も来なかったことが心細かったのだろう。
「おーよしよし」
百香は、とりあえず花丸の気が落ち着くまで頭を撫で続けた。何度も、何度も。優しく、ゆっくりと。
落ち着いた後、花丸は顔を上げて百香の顔を見上げた。
「で、どうやって来たずら?」
「え?ああ、
・・・タクシーだよ」
百香は、額から冷や汗を流しながら答えた。まだ百香も花丸も15歳。車なんてまだ運転出来る年齢ではない。それだから百香は車を運転して来たなんて言わなかったのだ。花丸は、途中の間に疑問を感じながらも首を縦に振ったのだった。
「おはようございます」
「おはよー」
ダイヤとルビィがやってきた。ルビィは何回か欠伸をしており、ダイヤに無理やり起こされたような感じであった。が、今の時間は午前7時。集合時間の3時間後だ。
「おせーよホセ。何時間待ったと思ってんだ」
「1年生が3年生にタメ語ですって!?ルビィ、処しますか?処しますか?」
「とりあえず、お姉ちゃんは重りつけて遠泳行ってこようか」
「ルビィが辛辣ですわ・・・」
「ざまみろずら」
ダイヤに辛辣な言葉が次々と飛んでいく。ルビィまで花丸のように畜生になりつつある。
「行かないの?お姉ちゃん」
「ルビィは
「さあ、入ってくるずら」
「お姉ちゃんならできるよ!ルビィの大好きなお姉ちゃんだもん!」
「そうずら!ダイヤさんならできるずら!」
「頑張ってください!生徒会長!」
「そうよ!ダイヤのパウァーを見せるのよ!」
ダイヤは拒否していたが、ルビィ、花丸、百香、そしていきなり現れた鞠莉がダイヤの事をはやし立て始めた。そして・・・ダイヤは・・・
「ということで、そこで伸びてると。自業自得じゃない?」
「そうだな。このくらい妥当だろ」
始発バス組と同時に来た果南が呆れながらレジャーシートに倒れ込んでいるダイヤを見ながら言った。結局、ダイヤは両足に漬物石をつけて海に向かって走って行ったのだが、海に入る前に躓いて転び、その反動で漬物石が頭にあたって気を失ってしまった。とんでもないピタゴラスイッチだったが、この程度で死んでいないのが不思議だ。
百香は、海岸を1度見渡してAqours9人全員がこの場に集まっていることを確認し、息を思いっきり吸い込んだ、
「よし、軽食堂の営業時間が10時半だ。10時まで自由時間となる!皆の者、遊べェ!」
百香の吐き出した大声によってダイヤを除く8人の声が内浦の中心地の三津海水浴場に響き、ボロい海の家の更衣室兼ロッカールームの中に消えて私服から水着に着替え始めた。
「しっかし、改めて見てもかなりボロいね。これ」
「仕方ないよー。昔から使ってるし」
「それに比べて隣は・・・」
私服から水着に着替え終わった果南、千歌、百香は海の家から出て横に建つ、真新しい海の家を見た。白のペンキで塗装された建物とウッドデッキを備えた海の家は、こちらの自治会のやっているボロ屋の海の家と比べると月とすっぽんである。
しかも人気もなければ人気もない。その証拠に、自治会の海の家の更衣室兼ロッカールームは閑古鳥が鳴いていた。
「こちらには人っ子一人居ませんわ・・・」
「このままでは都会の軍門に下るのデースか?私達はラブライブ!の決勝を目指しているのよ。あんなチャラチャラした店に負けるわけにはいかないわ!」
「鞠莉さんの言う通りですわぁー!」
ダイヤは、鞠莉の挑発的な言葉により刺激されたのか、海の家の屋根に登ってAqours8人と百香に指示を飛ばし始めた。
果南が驚いたような顔で鞠莉を見たところ、鞠莉は舌をペロッと出して笑っていた。この顔で果南は確信した。これは鞠莉が面白くなるようにわざとダイヤに火をつけたのだ。
「では、お2人共はこの看板を着けて道行く車に宣伝してください」
ダイヤは、千歌と梨子に海の家の宣伝が書かれたボックスを被らされた。罰ゲームだろコレという思いがダイヤを除く全員にあったのは黙っていて良かっただろう。
「果南さんは、そのグラぁーマラスな水着姿でお客をひきよせるのですわ。他の砂利どもでは女の魅力に欠けますので」
そして、他のAqoursメンバーを砂利扱いしたダイヤ。千歌が〝砂利ってなーにー?〟と梨子に聞いていたが、梨子は答えなかった。千歌は何も知らないそのピュアな姿のままでいて欲しい。っていうか、1番スタイル良いのって鞠莉のような・・・と、百香は思ったのだが、何も言わなかった。
「そして、鞠莉さん、曜さん、善子さん「ヨハネ!」には、料理を担当してもらいますわ!百香さんは
ダイヤが次々と指示を飛ばす。百香の呆れ顔なんて目に入っていない。
「さあ、これで客がドバドバと!」
ダイヤがこれで完璧と勝手に思い込み、客が来るもんだと思っていたが、全く来なかった。隣の海の家には行列が出来てるのにも関わらず。
「なんで来ないのですの!?」
「知らんがな」
俺に聞くな。と心の中で思った百香はため息をついた。
「こんにちはー」
「はーい」
「ここが千歌達が手伝っている海の家?」
ダイヤが他人向けの声を出しながら振り向いたところ、後ろにいたのは千歌が連絡した制服姿のクラスメイト6、7人。
「よ。百香。相変わらずいい体型し「〇ねっ!変態!」解せぬっ!」
千歌のクラスメイトの後ろからどこから情報を仕入れたのか知らないが、私服姿の八名が現れたのだが、百香に対してセクハラ発言されたため、八名の尻が犠牲となった。
この空間に八名をぶち込むと何されるか分かったもんじゃないため、百香が中に入り、八名の監視することにした。
こういった人が入るといった行動でこちらの海の家に1組、また1組、そしてまた1組と入っていく人が増え始めた。
「最初からこうすれば良かったんだね。ほーんと、ダイヤはおバカさん」
「本当、オ・バ・サ・ン」
果南と鞠莉の言った言葉でダイヤが怒りだし、千歌が着けていた看板を持ち、ブンブンと振り回しながら笑いながら走り回る2人を追いかけ始めた。
なお、午後の練習でダイヤと鞠莉がいち早くバテてしまい、ダイヤが〝μ'sはこんなに凄い練習をしていたのですか・・・!?〟と漏らしていたのだが、2人がいち早くバテた原因は行われなかったμ'sの練習内容ではなくこの追いかけっこだったのは黙っておこうと、追いかけられた果南と鞠莉は思ったのだった。
次回更新予定日は2月5日です。
時間的に余裕が出てきたので1話だけ番外編ストーリーを書きたいと思います
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渡辺百香と前世の娘
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スクスタ時空─スクフェス!─
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百香とルビィの入れ替わり!
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スクスタ時空─虹学・Aqours対決!─
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ロリ辺百香