そして、千歌ちゃんのソロアルバム。あれ最高ですよ!聞いたとき、ベッドの上で悶えましたよ!これ全員分聞いたら私、死ぬんじゃないかなって思います。
2016年8月9日、夜。
私、高海千歌は、梨子ちゃんの部屋の前ではないほうの窓の窓枠に肘をつきながら考え事をしていた。考えている事は曜ちゃんや梨子ちゃんの事ではなく、百香ちゃんの事だった。
まず一つ、私が最初にスクールアイドル部に勧誘した時、答えをなかなか返さなかったことは、百香ちゃんはあまりスクールアイドル部に入部するのには乗り気ではなかったと考えられる。しかし、彼女は勧誘の次の日に自ら進んでマネージャーになった。理由は聞いていないが、「心代わりして入部した」と考えるのならばそれはおかしすぎる。
二つ、ファーストライブの前日、終バスを逃した曜ちゃんと百香ちゃん姉妹は、2人の母親の運転する車に乗って帰宅した。しかし、その後、2人の母親から「送ってくれてありがとう」という電話が来た。電話を受けたのは私で、その時は〝?〟としか思わなかったが、通話が切れた後、よくよく考えたら母親が迎えに来たのにお礼の電話をするなんておかしいことだ。このことは志満姉や美渡姉には話さなかったが、このことに関して百香ちゃんが何か隠していることは確実だろう。
三つ、ファーストライブの日、百香ちゃんは「事故でバスが渋滞にはまった」と言っていたが、なぜ電話をしたのだろう。普通、公共交通機関のバスの中では通話はしてはいけない。このことは一般常識だ。そそして、百香ちゃんに限って、バスの電話をすることは絶対ない。なのに、なぜ電話できたのだろうか。もしかしたら、あの時、私たちの自転車を抜かしていった自動車って───
・・・そして四つ。それは───
第2話(第55話)
─空ハ雲ニ覆ワレル
「ねえ、百香ちゃんについてどう思う?」
千歌は、梨子、善子、曜と百香以外のメンバーが集まっている部室の中でふと呟いた。梨子はピアノコンクールに向けて東京に行ってしまったし、善子、曜、百香の3人はこの後到着するバスで来るため、まだこの場に居ない。
「え?どうって言われても・・・私からするとただの幼馴染だよ?」
「ルビィは・・・頼りになる人かな・・・?」
「マルは・・・仲のいい友達ずら」
「そうじゃなくて。何か違和感、感じない?」
思い思いの事を言ったAqoursメンバーに対し、千歌は、そう呟いた。今の部室の中の空気は3年生の過去を探し出す時と似ていた。ただ、その時の空気とは少しだけ違和感があった。
「違和感・・・ずら?」
「そう」
千歌は、立ち上がると部室の真ん中壁寄りに置いてあるホワイトボードに向かった。
「まず、最初に私が感じたのは東京でライブがあった時」
「東京・・・ですか・・・?ただ、悔しかったとしか思いませんでしたよ?ルビィも、ほかの皆も・・・」
ルビィは、首をかしげながら思ったことを口に出す。
「そこだよ。百香ちゃんは確かに悔しそうな顔をしていた。でも、何故か演技っぽく見えた」
「演技?」
「そう。百香ちゃんは前から知っているような感じだった」
千歌は、そう言いながらペンを持ち、ホワイトボードに〝知っているような感じ〟と書き込み、そして、丸で囲んだ。千歌がペンを元の位置に戻すと、沈黙に変わってしまった部室内にカチッと言うキャップをペンに指す音と、ペンを置く音が響く。果南と花丸は思い当たる節があったのか、少し暗い顔をしていた。
「何か思い当たる事があるんだね」
「4月、千歌が、私をスクールアイドルに勧誘したでしょ?その時、百香が勧誘されないようにフォローしたってこと」
「それって、その時の表情を読んだ百香さんが、千歌さん自身が地雷を踏まないように考えてくれてたんじゃありませんの?」
「それに、私、誰にも話してないのに、何故か百香は何か知ってそうな素振りを見せてた」
〝ちなみにこれはカマかけたから仮定から確信になった〟と、果南は後に続けた。
そう、千歌が何回か果南をスクールアイドルに勧誘した時、百香が千歌のことを止めていた。しかもその後、果南に理由を尋ねられたとき、適当にはぐらかしていたから、果南は怪しく思っていた。そして、昨日の踊ることの拒否。このことも、果南から百香への不信感が強まった。果南自身、幼馴染の百香を疑いたくなかったのだが、これまでの百香の行動は、この感情以上に不信感を募らせる結果となってしまった。
「なるほど・・・。花丸ちゃんは?」
「マルは、善子ちゃんを追いかけた時ずら・・・。あの時、善子ちゃんがどこに行くか分からなかったのに、タクシーに乗った時、行き先を深海水族館にしていた。もしかしたら、行き先を知っていたのかもしれないずら」
「やっぱり、百香ちゃんは何か知ってる」
千歌のこの言葉は、百香に向けていた疑問を確信に変えたことを決定づけていた。
「チカッチはどうするの?このまま百香に聞くの?」
珍しく鞠莉が神妙な顔で千歌に聞いた。鞠莉が言うのには、大会が近く、さらに、今のままでもいいのではないのか、そして、この件については聞いてはいけないかもと思っていたため、聞くことには消極的だった。
「私は聞いたほうがいいと思う。梨子ちゃんが東京に行ったように、ちゃんと百香ちゃんの心の中を聞いたほうがいい。百香ちゃんがAqoursをどう思ってるのか、浦女にどうなってほしいのか・・・」
「なるほど・・・。チカッチがそう言うなら、私は止めない」
鞠莉は、組んでいた腕を解き、納得したような表情をした。これから千歌が百香に何を言おうと、鞠莉は止める気はないのだろう。部室にいるメンバーはそれを悟った。
「おっはヨーソロー!!!」
「おはヨーソロー」
「おはよう」
それから十数分後、曜、百香、善子の三人が部室に現れた。
「お?どうした?皆して暗い顔して」
「そうだよ!そんな顔みんなに似合わないよ!」
「それもそうね」
この言葉にもにある通り、3人は部室に入った瞬間、同じようなことを思っていた。それほど、この部室内にいるメンバーは深刻そうな顔をしていた。
「百香ちゃん、聞きたいことがあるの」
「お、何だ?」
深刻そうな顔をした千歌と対になるように、百香は少し笑いながら千歌に聞いた。
「百香ちゃん、あなたは何を知ってるの?」
「何がだ?」
百香の顔はまだ笑顔。
「東京の時の顔。演技のように見えた。まるで知っていたことみたいに?」
「演技?何言ってるんだ?」
少し変な顔をしているが、百香の表情からするに、まだ余裕があると思われる。
「善子ちゃんを追った時、何故か行き先を知っていた」
「あ、ああ、勘だよ、勘」
暑さからか、それとも緊迫からか、百香の顔に一筋の汗が流れるが、まだ表情を崩さない。
「それに、なんで踊らないの?」
「昨日言っただろ?身長が大きいし、それに、俺はマネージメントだし」
「〝俺〟?」
「あ、いや、私はマネージャーだし・・・」
ずいずいと千歌が百香に迫ってくるため、百香は少しだけ後ずさりした。この光景を曜は不思議そうに眺めているだけであり、善子はこの状況を何か考えながら見ていた。
「百香ちゃん、正直に答えて」
「あ、ちょっと、私、用事を思い出した」
「待ちなさいよ」
「・・・善子」
ついに、百香の余裕がなくなってきたのか、千歌に背を向けて部室から出ようとしたが、ドアを塞ぐ感じで善子が立ち、百香を部室から出さないようにしていた。
「もうこの際、話したら?」
「言える訳ないだろ」
ついに、百香の顔の余裕が無くなった。
「言えばいいのに。貴女が「言うな!」百香がAqoursのこの先を知っている転生者だって!」
善子は、百香の制止も聞かずに話を続けていく。そして───
「善子ォ!!!」
スクールアイドル部の部室に百香の怒号が響いた。
時間的に余裕が出てきたので1話だけ番外編ストーリーを書きたいと思います
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渡辺百香と前世の娘
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スクスタ時空─スクフェス!─
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百香とルビィの入れ替わり!
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スクスタ時空─虹学・Aqours対決!─
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ロリ辺百香