今回からアンケートを追加しました。第三章が終了後に行うコラボ回の前後に投稿する番外編のストーリーを一つ決めてほしいです。
およそ一か月ぶりの白い空間で、百香、いや、百香の姿の慶喜は立っていた。
向かい側にいるのは、やはり、百香だった。
この空間は、二、三ヵ月ほど前から睡眠時に見る夢だ。夢と言っても、起床後に記憶が消えるわけではなく、はっきりと残っている。
そういった異常な空間に
「どうやら、貴女のことがバレたみたいだね」
「あれはお前の企みか!?」
軽い口調で百香が
「まさか。私はこの空間の主。それ以上でもそれ以下でもない。貴女のいる現実に影響を与えるなら、それ相応の対価を支払わなければならないしね。それを払う余裕すらも、この世界、そして、私にはない」
良く事情が解っていない
「貴女の行動で世界は変えられる。現実に生きているのだから」
「それってどういう事だ」
「もう貴女の身体が夢から覚める。また会いましょう」
「おい!ちょっと待て!」
「さようなら」
百香の後ろから空間は暗闇に包まれ、百香の姿を完全に闇に包みこみ、そして、
第4話(第57話)
─雨ハ振リ続ク
8月11日。
昨日の朝から降り始めた雨は、今も止むことなくざあざあと降り続けていた。
『昨日から東部地方で降り始めた雨は今も止むことなく、今も降り続けています。今現在の狩野川の水位は平常時と変わらず───』
無人のリビングに置かれているテレビから流れているローカルTV局のニュース番組は、何も言葉が発せられない渡辺家のリビングの中で、唯一言葉を発し続けた。
それ以外で屋内で出されている雑音は、百香の部屋の中から出てくる大きな物音だけだった。
「これは、置いていく・・・、これは持っていく」
今現在、百香は部屋の中で引っ越しの準備をしていた。
明日にはここを発つことになっていた。
急な話なのかもしれないが、もともと母が新静岡高校を選択したときの場合を考えて静岡市に住む親戚に話を通していたため、すぐに出発することになったのだ。
もちろん、母や曜は今までと同じくこのまま沼津市の今現在の自宅に住むことになる。そのため、不要なものはこの部屋に置いていくことができる。
しかし、沼津に来るとなると、曜を含むAqoursメンバーに会ってしまう可能性もあるため、軽々しく帰ってくることはできない。しかも、百香は曜譲りの性格を受け継いでしまったらしく、部屋にある私物は多く、収納はキャパオーバーギリギリ。百香が静岡の親戚の家に住むということは、自分の部屋が2つになるということでもあり、すべての荷物を持っていかなくていいという点では助かった。
「あとは、服と筆記用具、教科書か・・・。教科書は───
持ってかなくてもいいか。
本棚から教科書を出そうとしたが、浦女と新静岡では使う教科書が違うため、持っていく必要はなかった。そのため、百香は本棚を素通りし、自身の部屋のクローゼットから私服を出し始めた。
下香貫のジャンボエンチョーで購入した真新しい無地の段ボールにまず冬服を仕舞い始めた。
「危ねえ・・・。これを置いていったらヤバいことになってたな」
百香がクローゼット内で見つけたものは、今まで書いたおよそ10冊の日記帳だった。この日記帳の中には、今後のAqoursのことも書かれている。百香の秘密をもっと知ろうとした千歌達がこれを見つけてしまったら・・・。
百香は考えたくもなかった。
百香はクローゼットの中の冬服を一通り段ボールに入れ終わったとき、クローゼットのハンガーに引っ掛けてある、クリーニング店のタグが付いたままの制服を見つけた。
「浦女の冬服・・・」
そう、1年生である証である黄色のリボンタイがついた浦女の冬服だった。
「・・・記念として持ってくか」
ハンガーに掛かっている浦女の冬服を手にした百香は、丁寧に折りたたんで段ボールに仕舞った。
彼女にとっての浦女にいたという思い出。2年生の赤いリボンタイと3年生の青緑色のスカーフタイはその学年にならないと支給されないため、少し残念だな。と思ったが、あの世界でラブライバーであった百香自身が浦女に通学できたことだけでも奇跡に近いと思ったため、仕方ないか。と思うこともできた。
30分くらいたち、すべての冬服を段ボールの中に入れ終わったため、次は夏服を段ボールの中に入れることになった。
「んぉ?」
ちょうど、1着目を段ボールの中に入れ始めた時、床に置かれているスマートフォンから音楽が鳴り始めた。
発信者は〝神田 大智〟 百香からは前世の名である八名という名で呼んでいる石川県加賀市の男子高校生だ。
「なんだ、八名。どうしたんだ?」
『ああ、それがな・・・、てかお前、けっこう機嫌悪いじゃないか。何かあったのか?』
「あぁ?ああ、いろいろな。で、要件は何だ」
『今度、盆休みが終わった後に
そう言った後、八名は嬉々とした声で「善子とまたゲームするんだ」と言っていたが、百香はため息をつき、残念そうに返答した。
「すまん。沼津に来るのは良いが、私は居ないからな?」
『え?何でだよ』
八名が聞いてきたため、百香は昨日のことをすべて話した。
・千歌達が百香の疑問に思っていたことを問い詰めてきたこと
・善子が百香自身のことを話したことでAqoursメンバー9人全てに前世がバレたこと
・千歌に未来を問いただされたこと
・艦長から提案された新静岡高校への転入を承諾したこと
・明日、沼津を発ち静岡に向かうこと
を話した。八名はしばらく考え、
『慶喜。お前、それでいいのか?』
そう百香に聞いてきた。
百香は、段ボールに仕舞おうとしていた1着の白のブラウスを床に置いた。
「───ああ」
『お前のその声、後悔しているように聞こえるが───』
「後悔なんかしてない。これでいいんだ。これで」
その時の百香の声は、後悔しているような、とても暗い声だった。この時のこの感情は、百香自身には分からなかった。
心なしか、降り続く雨が強くなったように感じた。
百香からの電話が切れた後、八名はリビングの中心に置いてあるソファーにどっしりと座った。
ソファーの向かい側にあるローテーブルには、八名のスマートフォンが、電源がつけられたまま置かれており、画面には電話帳を表示していた。
「善子が話した・・・、か・・・」
八名は、百香からの報告を思い出しながら、そう呟いた。
八名は、この場所で百香と話したとき、善子は口が堅いと言っていた。たしかに、アニメなどを見れば善子は口は堅いのかもしれない。
だがこれは現実だ。
そのアニメでは描写しきれない部分もある。
善子が百香のことを話したのは、言い訳ができないほど百香が追い詰められたのか、それとも、八名達が知らなかっただけで本当は何でも話してしまう愚か者だったのか。
それとも、ふとした拍子で善子がぼろを出してしまったのか───
当事者ではない八名には何があったのかはどうしてもわからない。
「どうすればいいんだ・・・」
直接会って話をしなければ、百香は本音を話してはくれない。過去もそうであった。
一番効果的なのは、こんな文明の利器で話し合うのではなく、百香やその時の当事者に面と面で向かい合って話を聞くことだ。
しかし、護衛艦という狭い空間に165名も居た過去のあの時とは全く違う。
本人に会おうとしても加賀市と沼津市は日本列島の反対側。移動だけで1日を使ってしまうため、易々と行けるわけもない。
沼津に比較的近いところに住んでいる林や艦長にこのことを任せようとも思ったが、林は八名と同じくらい百香と仲が良かったわけでもない。
林と百香はラブライブ!という共通の話題があること以外は、ただの上官と部下という関係であり、昔よりも仲が良くなったとはいえ、まだ百香とは付き合いが浅く、完全に仲が良くなっているとは言えない。そんな彼女に百香を託すのは危険だと八名は感じた。
艦長は、百香のことを八名と同じくらい知っている。しかし、艦長は沢木グループの令嬢であることに加え、今は百香の新静岡高校への転入手続きについての関係各所への手回しをしているらしい。八名は、そんな艦長にこのことを託すのはさすがに気が引けた。
しかも、この件は八名を含め、詳細を知らない。八名は百香自身から話を聞いたが、実際に見たわけでもないため、百香からの話に疑問符をつけていた。
「となると、この件を任せるのは・・・」
八名はソファーから身を乗り出し、ローテーブルの上に置かれているスマートフォンの画面を見た。ディスプレイに映された電話帳には高校の友人、中学の友人、小学校の友人などの八名の身近な人物が載っていた。
「まあ、博打になるが、やってみるしかないか・・・」
覚悟を決めた八名は、ソファーから立ち上がると、ある一件の電話番号をタップした。
〝蝶なんてどうでもいい。慶喜の悲しい姿なんて見たくない〟
左耳に聞こえる信号音を聞き漏らせまいと神経を集中しながら、雲一つない加賀市の青空を眺めていた。
時間的に余裕が出てきたので1話だけ番外編ストーリーを書きたいと思います
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渡辺百香と前世の娘
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スクスタ時空─スクフェス!─
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百香とルビィの入れ替わり!
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スクスタ時空─虹学・Aqours対決!─
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ロリ辺百香