特に印象だったのは、あなたちゃんが話していることと、
・・・
虹学のジャージ、ダサくね?
音ノ木と浦女のジャージもチョイとアレですけど、胸元に校章じゃなくて、〝虹〟って・・・。
曜は、西日に照らされている狩野川沿いを自宅に向けて歩いていた。
しかし、その足取りは重い。
「はあ・・・」
本人は気づいてないようだが、曜は千歌が梨子と仲良くしていることに嫉妬をしていた。だが、気づいていても曜は言い出せないだろう。
千歌との関係性をよりよく保つために、思っていることを言い出さない。これが曜の決めたことだった。
もし、百香ちゃんのようになったらどうしよう。
皮肉にも、こうした考えが曜を秘密主義に変えてしまうトリガーとなってしまった。プラス思考に見える曜も、実は結構マイナス思考である面も多々あり、性格的に正反対に見えてしまう百香と血が繫がっている姉であると自身でも実感できてしまう。
「多分、百香ちゃんは知ってるよね・・・」
曜は、無性に帰りたくない気分になった。もちろん、百香が嫌いなわけではない。だが、この心の中を見透かされているような感じがして、なんとなく嫌な気分になってしまった。
「!?」
「Oh~!これは果南にも劣らない!?」
そう考えていた瞬間、曜の胸が何者かによって揉まれた。
痴漢か、変質者か。
とりあえず、聞いた声が耳元で聞こえていてもそんなことは気にせず無心で背負い投げをした。
「あれ!?鞠莉ちゃん!?」
背負い投げをしたのは鞠莉であった。理事長が生徒にこんな行為をしたら逮捕どころの話ではないが、鞠莉は浦女の生徒でもあるため、そしてAqoursの一員であったため、特に大事にはならずに済んだ。
「とりあえず、曜。私と一緒に来てくれない?」
「え?あ、うん・・・」
とりあえず、鞠莉はアスファルトに強く打ち付けた尻を撫でながら立ち上がり、曜を別の場所に移動させたのだった。
第8話(第61話)
雨ハマタ降ル──
沼津港大型展望水門〝びゅうお〟
沼津市街、駿河湾、富士山を一望できるこの展望台は、たかが100円だろうと、お金がかかるからか全く人がいない。鞠莉はそれを知っていたため、曜との話し合いにこの場所を選んだ。ここなら景色を見ながら話し合いもできるだけでなく、曜の家も近い。まさにいいロケーションであった。
「それで、どうしたの。鞠莉ちゃん」
「んー、それはね、最近曜がチカッチとうまくいってないと思って」
「ん?あ、ああ。それなら大丈夫。あの後二人で練習してうまくいったから」
「いいえ。ダンスではなく、私が言いたいのは、チカッチとの関係よ」
鞠莉のその言葉で、曜の頭には疑問符が浮かび上がった。曜が鞠莉に言われることで想像していたことは、千歌とのダンスでなかなか合わなかったところだと思い込んでいたからだった。
「チカッチを梨子に取られてちょっぴり嫉妬ファイヤー!が燃え上がっちゃったんじゃないの?」
「えっ!?嫉妬!?ま、まさかそんなこと・・・」
図星だったのか、曜は頬をポリポリと掻いた。すると鞠莉は、なかなか本心を出さなかった曜の両頬を引き伸ばし始めた。
「ぶっちゃけトークをする場ですよ。ここは」
「鞠莉ちゃん・・・」
「チカッチや梨子には話せないでしょ?ほら」
鞠莉は、通路の真ん中に置いてある木製のベンチの左端に座ると、空いた右側を左手でぽんぽんと叩いた。
「いや、いいよ」
「どうして?」
「あんなに荒れたのに、今更面倒ごとを持ち込めないでしょ?」
しかし、曜は話すことを拒み、困り顔のような顔をしながら座っている鞠莉を見た。
「いいから、話しなさいよ」
「いや、いいよ」
二人とも譲り合うことはせず、お互いにぶつけあったため、少しずつ場の空気が悪くなり始めた。
「話して」
「嫌」
焦りで早く事態の収拾をしようとする鞠莉と心の中をなかなか打ち明けない曜の互いの衝突はやがて───
「話しなさい!!!」
「うるさい!!!」
大きな衝突に変化する。
一瞬にしてこの場の暑くなっていた空気の温度が下がった。両者とも一杯一杯で余裕がなかったため、頭から繰り出す言葉の選択に頭脳の区画を裂けなかった。
「曜・・・」
「───ごめん」
曜は、鞠莉に顔を向けないまま港口公園方向側のエレベーターに駆け込んでいった。
「曜───」
びゅうおの展望通路にはただ、曜を呼び止めることもできなかった鞠莉がただ、佇んでるだけであった。
「お、おかえり、曜。遅かったじゃないか」
「ただいま・・・」
また黒い雲が沼津近郊を覆い始めた時、元気のない返事をしながら曜が渡辺家に帰宅した。ちょうどリビングには自身のノートパソコンを操作している百香の姿があり、リビングに入ってきた曜の姿を視認した。
「ん?どうした?なんか機嫌が悪そうだが」
「何でもないよ、何でも」
当然、長年一緒に暮らしている百香は帰宅してきたときの曜の異常に気付いた。しかし、曜はなかなか話してくれない。
「そんなわけがないだろ。話してみろよ」
「うるせえ、百香。少し黙ったら?」
迷惑をかけてしまった百香は、〝次はみんなの力になろう〟と決意し、元気がなさそうであった曜に対して百香が心配そうに話しかけるが、曜はそれを睨みながら冷淡な言葉を浴びせ、すぐにリビングを出て二階の自室に向かってしまった。
その時の呼び捨ての言葉は、曜の機嫌が本当に悪い時にしか使わない。基本的に曜は、みんなを〝〇〇ちゃん〟と呼び、言葉遣いは百香と比べ物にならないくらい丁寧だ。しかし、渡辺姉妹の中で最初に話し方を確立したのは百香であり、その話し方は男の子の様であった。もちろん、曜の話し方も百香にかなりの影響を受けていたが、日常生活の中で自分はもっと丁寧な言葉を使うのが良いと気づいたのだろう。
気づけば、曜の話し方はかなり丁寧なもとのなっており、曜はよく百香と対比されていたが、百香と長年一緒にいたことにより染みついた癖はなかなか治らないものであった。自分を制御できなくなると、ああいった言葉使いになってしまう。
もっとも、百香が曜の言葉使いが乱雑になるのは今までで数回しかなかったが。
「はあ・・・。これも私が原因かなぁ・・・」
百香は、リビングの窓から黒い雲を眺めていた。
あの後、結局百香はアニメ一期と二期のブルーレイを見なおしてしまった。もちろん、全部見ることはできず、二期を見始めてすぐのところで朝を迎えてしまった。
アニメを見返したのは、この後の未来をAqoursにかいつまんで教えようと思ったからっだった。いろいろ矛盾が生じているかもしれないが、百香は知っている情報を全て教えることで、百香と同じ認識を持ってほしかった。だから、拒否されない限り、この後のことを聞かせようと思った。
それが、知るものとしての決意だった。
アニメの世界だと、曜があんな風に怒るのはなかった。というか、アニメ内に曜が怒るシーンなんてなかった。
十中八九、百香がこの世界で生きていることで世界が変化してきている。
おそらく、曜はもともと本心をなかなか言えない性格だったのだろう。そして、百香の存在。百香がいることによって、曜は一人っ子から姉になる。
姉になると、甘やかされていた生活から一気に変わる。妹が甘やかされ、姉は〝お姉ちゃんなんだがら〟と言われ、甘やかされるのは少なくなり、我慢するのが増える。
おそらく極めつけとなったのが、百香の一件だ。
血が繫がっていない仲間から問題が出たのならば、まあ、まだ良かった。しかし、同じ渡辺家、しかも妹から出してしまったという状況下、曜は面倒ごとを増やしたくないと思ったのだろう。
だが、鞠莉がそんな曜の悩みを聞こうとして曜が鞠莉と対立。結果、曜はかなり機嫌が悪くなってしまっていた。
そんな曜に一番近く、多くの同じ時間を過ごしてきた百香には、ため込んできたいろいろな思いが爆発する曜の兆候に気づくことができなかった。
「曜のことに気付けなかったなぁ・・・。家族なのに・・・」
百香は、カーテンを開けて黒い雲に隠れ始めた西日を眺めた。
せっかく止んだ雨は、黒い雲の隙間から降り注いできていた。風によって流された水滴が窓に打ち付け、滴り落ち始める。
今朝と同じ天気になってしまう。
「ん・・・?」
そんな時、テーブルの上に置かれた百香のスマートフォンからバイブレーションが発せられていた。
雨夜はまだ始まったばかり───
時間的に余裕が出てきたので1話だけ番外編ストーリーを書きたいと思います
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渡辺百香と前世の娘
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スクスタ時空─スクフェス!─
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百香とルビィの入れ替わり!
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スクスタ時空─虹学・Aqours対決!─
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ロリ辺百香