海上自衛官が渡辺曜の妹になりました   作:しがみの

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第69話 鎮魂祭

2016年8月30日

 

浦の星女学院体育館アリーナ。

 

数多くの運動部が活動し、授業や休み時間でも騒がしいことの多いこの場所は沈黙に包まれていた。全校生徒はこの場に集合しているのだが、教師陣の悲しそうな顔を見て何かを察したのだろう。彼女達は何も話さなかった。

 

当然、百香もこの場にいるが、何故こんなに静かなのか皆目見当もつかなかった。今この状況はアニメに無かったからだ。

 

暗い雰囲気の中、理事長である鞠莉はゆっくりと壇上に立ち、口を開いた。

 

「皆さんは知っていますでしょうか。8年前の今日、15人もの生徒が命を落としたのを」

 

鞠莉にしては珍しく、声のトーンが低い。ふざけ通すつもりは毛頭ないらしい。

 

「残暑が続く日でした。不幸にも練習試合に向かうマイクロバスが断続的な土砂崩れにあいました。

 

バスは海に落ち、最初に救助された1名を除き、助けられませんでした。

 

私は一生徒でもあり、理事長の身でもあります。同級生、上級生、下級生、教え子を失う悲しみ、当事者でなくとも痛いほどよくわかります。」

 

教職員の中からすすり泣く声が聞こえてくる。鞠莉が語っている事故で教え子を無くしたのだろう。

 

「今日、この集会はこの悲劇を、皆さんに知って頂きたいたいため、開かれました。皆さん、この日を忘れないでください。

 

浦の星女学院最大の悲劇を──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「浦女最大の悲劇か・・・」

 

数時間後、国道1号を走る2台のバスの車列の先頭1号車。その中に居た百香は窓の外を眺めながらボソッと呟いた。

 

「それってアンタの世界じゃ起こっていなかったってこと?」

 

「ああそうだ」

 

善子の反応にそう言いながら百香は頭を搔く。百香の席は善子と隣り合わせであり、ルビィと花丸は1つ後ろの席に座っている。席順は4人の中で決めたがひと悶着あったのは言うまでもない。

 

「それにな善子、普通のスポコン漫画みたいな世界で過去に部員全滅とか有り得んからな」

 

「た、確かに・・・」

 

最後に百香は1人2人ならまだしもな、と付け加えた。

 

「ってか、もし仮にそんなことが起こりうる世界なんて話の主軸は部活以外の何かだ」

 

「それもそうよね・・・」

 

そうだ。そんなことが起こる世界にとって、部活はサブになる。メインは何かの陰謀や怪奇現象にしかない。

 

「それにしても気がかりだ。アニメには出てこなかった黒い過去がゴロゴロある。何かしら外部要因があるのかもしれん・・・」

 

「外部要因・・・?」

 

()()()()()()()だ」

 

窓枠に頬杖をつきながら百香は答えた。百香が恐れている事、それは百香と同じ転生者が何らかの意志を持ってこの世界に悪影響を与えているかもしれないということだ。

 

元の世界の作品に記されていなかった、と言えばそれまでだが、今現在、自分自身を含め、八名、林、高田、三浦の5人の転生者が居るが、この5人全員しか転生者が居ないとは限らない。

 

もし、この5人以外に知識を持った転生者が居て、この世界に悪影響を与えているとしたら・・・。

 

充分にありえる話だ。

 

「転生者の全部が全部、善人だと思うなよ。前世で得た知識を使って悪事を働くこともある」

 

少し違うが、太平洋戦争に現代のイージス艦がタイムスリップしたマンガが良い例である。日本が甚大な被害を被り、負けるという未来の歴史を当時の軍人に見せてしまい、未来を変えようと手段を選ばずに暴走する。これは未来の歴史を知った故に発生した暴走のいい例だ。

 

「私が曜の妹になって快く思ってない人もいるかもしれない」

 

ただでさえ、アニメキャラクターとファンの距離は一千光年より遥かに遠い。その距離をわずか数センチにまで縮めたどころか自分自身も組み込まれてしまっている。そんな百香のことを憎く思っている人だって中にはいる筈だろう。

 

「これは公になってない事だが、私とルビィが昔誘拐されたことがある」

 

「えっ・・・?それって───」

 

「性癖を抑えきれなくなったクソ野郎か、イレギュラーである私が目的だったか───」

 

口には出さなかったが、十中八九後者である。

 

事実、百香の記憶の中での犯人達の会話では私の誘拐が目的であることを話していた。ルビィは誘拐現場を見られたからついでに───と、いう訳らしい。

 

ルビィ、とばっちりすぎる・・・。

 

「ま、今なってはどうでもいいことだけどな」

 

そう言って笑ったが、実際はそんな訳ない。本私だけならともかく、ルビィにまで手を出したからだ。心では腸が煮えくり返っているほどだ。

 

沢木さんが秘密裏に調べたところ、首謀者は上条財閥の重要人物ということがわかった。しかし、裏を返せば、それしか分からなかった。ということだ。

 

これ以上調べようと思ったが、調査員が消されるのは避けたかったため、ここまでしかわからなかった。と、沢木さんは後に語っていた。

 

この情報は知りすぎては危険である。危険な目にあうのは百香自身だけという考えであり、適当に誤魔化したのはあまり善子に興味を持たせないようにするためだった。

 

「ほら、もうすぐで着くぞ」

 

善子に返答の時間を与えず、直ぐに窓の外を指さす。

 

窓の外には穏やかでも何時人を飲み込むか分からない大崩海岸の海原が広がっていた。

 

バスは、現場に向けて走り続けている───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

浜当目トンネル入口横路肩───

 

バスが1.5台ほど停められるこのスペースには百香達を乗せた観光バスが頭から突っ込んで停車している。

 

路肩の奥には、銀色のフェンスが立っている。フェンスの下には消えかかっているオレンジ色の線───

 

昔、ここが道として使われていた名残だ。

 

そして、フェンスの横には慰霊碑が立てられており、花束やお供え物が多数備えられていた。

 

「あれ・・・?ここ、どこかで・・・」

 

百香は、この場所に既視感を覚えたが、その慰霊碑にバスに乗っていた浦女の生徒達が次々に手を合わせ始めたため、百香も気持ちを切りかえて慰霊碑に手を合わせた。

 

「悔しかっただろうなぁ・・・」

 

「そりゃそうよ。先輩達は挑戦できずに亡くなったんだから・・・」

 

良いところまで行った先輩達。全国まで行けるかもしれないと、内浦中が活気立った矢先の出来事だった。

 

それからずっと、浦の星女学院から予選通過をする部活動は無かった。が、〝想いよ一つになれ〟を踊ったAqoursが地方大会を1位通過。そのまま中部地区大会に出ることになり、またもや内浦中が活気立つ事となった。

 

結論から言うと、Aqoursは力及ばず中部地区大会で敗退した。全国大会進出のグループとあと数票足りなかった。

 

それでも、内浦の人達は応援を続けてくれている。嬉しい限りだ。だが、内浦を歩くと色々おすそ分けされる事が多くなり、家に物が溢れ始めているのが悩みになりつつあった。

 

確かに負けたのは悔しかったが、次挑戦できるチャンスがある。今この瞬間、しみじみと感じる。こう思っては彼女達に失礼なのだが・・・。

 

 

 

 

 

 

しばらく手を合わせていた百香はふと気づいた。

 

あれ、時雨先生どこ行ったんだ、と─────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

慰霊行事の最中、辺りを見渡しても学年主任の時雨教諭の姿は見えなかった。

 

行事が終了し、バスが浦の星女学院に帰校した時に担任と副担任に確認したところ、ただ単に体調不良だと判明した。夏バテらしい・・・。

 

このような日に部活動はどこも活動は自粛しており、当然、理事長である鞠莉が所属しているスクールアイドル部ももちろんら休みであった。

 

もちろん、2学期が始まる前の登校日のためなのか、午前中に実施した慰霊行事のみ。

 

そのため、百香はSHR終了直後のバスに乗り、帰宅する事とした。

 

「結構急いでるわね」

 

「一分一秒も惜しいからな」

 

バスの横には何故か善子も乗っていた。

 

「今日の件について調べるんでしょ?」

 

この善子の返答については、予想がついていた。バスの中であの話をしたのは善子だけ。そして、あの話の後に急ぐ百香の姿を見てこの返答が来ると予想できるのは善子だけだったからだ。

 

「私も手伝うわよ」

 

今日暇だし──と、善子は続ける。

 

「ありがとう。恩に着る」

 

正直、百香は驚いた。が、手伝ってくれるならありがたい。

 

バスは沼津市街へ向かって行く────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1時間後。市立図書館の駐車場に1台の白いGTRが止まった。中からは私服姿の百香と善子が現れる。

 

「何で調べるの?」

 

「新聞かな・・・」

 

善子は百香に歩きながら確認をとり、一生に図書館内に進み、新聞のアーカイブに向かう。

 

「とりあえず、事故日以降の新聞、置いてあるやつ全部確認するぞ」

 

「わかったわ」

 

全国紙、ブロック紙、県紙、地方紙、ローカル紙───

 

「週刊誌も入れるの・・・?」

 

デスクの上には新聞と呼ばれるもの全部と集められるだけ集められた週刊誌の束が積み上げられている。

 

「週刊誌ってあることないこと書いてあることが多いんでしょ?」

 

善子の言うことは最もだ。週刊誌は読者が惹かれるような題材を記事に選ぶ。もちろん、脚色しすぎて事実無根のような物になったり、完全に嘘ということも有り得る。だが───

 

「善子。情報っていうのは思いがけないところに転がっているんだ」

 

「ってことは・・・」

 

善子は週刊誌の山をちらりと見る。

 

「この中にも何か重要な情報があるかも知れないだろ?」

 

「ひえぇ・・・」

 

どう考えても善子は卒倒しそうになる。この反応を見るに、1~2時間程で終わると思っていたらしい。残念だったな。

 

「時間はたっぷりある。砂の中から砂金を探すとしますか!」

 

げんなりとした様子の善子を横目で見ながら資料探しの時間だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねえ、これって本当に関係あるの・・・?」

 

2時間ほど週刊誌とにらめっこしていた善子がため息をついた。善子からすれば、こんな嘘八百の記事にヒントとなるような情報などないと、思い込んでいる。

 

「文句なら最後聞くから、今は記事を読み進めろよ」

 

「はぁーい・・・」

 

善子はやる気が出てないようだ。仕方ない。あの方法を使うしかない。

 

「あと、終わったらスタバ奢るからな」

 

「!!!スタバ!!!リア充の響き!!!」

 

まだ行ったことがないのか、〝スタバ〟という言葉に善子は直ぐに反応し、目を輝かせながら文書を読み始めた。

 

そもそも、リア充ではなくてもスタバは行くのでは?百香は訝しんだ。

 

そんなこともありながらも閉館時間ギリギリまで資料集めをした百香と善子であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、目的の記事はあったの?」

 

「いや、微妙だな」

 

善子の問いかけに、ハンドルを握る百香はため息をつきながら答えた。

 

が、微妙とは言い難い何かが、百香の中に宿っていた。実際、1面トップニュースにも劣らないほどの被害の事故であったのにも関わらず、記事は2面や3面の小さなスペースにちょこりと書いてあるだけだ。

 

「これは何やらきな臭いぞ・・・」

 

善子に聞こえない声で、ボソリと呟いた。

時間的に余裕が出てきたので1話だけ番外編ストーリーを書きたいと思います

  • 渡辺百香と前世の娘
  • スクスタ時空─スクフェス!─
  • 百香とルビィの入れ替わり!
  • スクスタ時空─虹学・Aqours対決!─
  • ロリ辺百香
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