2016年8月31日9時56分
沼津市東椎路地区
(株)静岡東部自動車サービス本社・新沼津営業所
沼津市の中心部にあり、手狭になった沼津中央営業所から移ってきた本社と敷地内に営業所新設により一部路線の移管がされた新沼津営業所。数年前にできただけあり、まだまだ社屋は汚れが少なく、ところどころに光沢が見られる。
そんな本社内の資料室に、浦女の夏服を身にまとった百香の姿があった。
「おっ、あったあったー。こんな奥深くにあるとは・・・」
狭い資料室でもさらに一際奥にある埃かぶっている数箱のダンボール箱を、周りのダンボールにぶつけないように配慮して出した。
百香が探しているのは、東部自動車サービスが2008年に統合した(有)狩野川交通の資料だった。
狩野川交通は、ある事故の後直ぐに東部自動車に合併された貸切バス会社だった。
ある事故。
そう、女子バスケ部が土砂災害にあったあの事故だ。この時のバスの運行会社が狩野川交通。
当時の新聞には運行会社がこの事故の対応の悪さにより吸収合併されたと書かれていた。
───対応の悪さ。
新聞にはそう書かれているが、目立った事がほとんど無かった。しかも、書かれていたのは社長からの死者へ対しての冒涜の言葉であった。さてはコイツ、人間の心捨ててるな?
しかし、2008年当時であれば記者会見の様子なども動画サイトに掲載されているはず。事実、過去の記者会見である乳製品製造会社の「私は寝てないんだ」発言、証券会社の「社員は悪くありませんので」発言、老舗料亭の囁き女将など、印象に強く残る記者会見は動画サイトに投稿されている。
が、この会社の記者会見は1つも残されていない。昨晩、日本国内で視聴できる(海外も含む)動画サイトを片っ端から確認したが、1つもそれらしきものは無かったのだ。
もうこの時点で昨日以上のきな臭さは大きく感じていた。
インターネットではこれ以上の情報収集は期待できないと考えた百香は、今日の営業開始と共に社長にアポを取り、合併された会社である東部自動車サービスの本社に資料を探しに来たのだ。
「さてさて、何か収穫はあるかな・・・?」
事故に関係あるような資料は片っ端から確認し始めた。
しかし、今日の百香にはあまり時間が無い。今日はラブライブ!の中部地区大会が開催される日。
Aqoursの順番が午後3時程からであるため、その合間を縫って資料を探しに来れたのだが、12時20分くらいに三島を出る新幹線に飛び乗ることになっている。そのため、探せるのは頑張っても2時間は確保できるか怪しかった。制服で来たのは少しでも時間を短縮したかったからだ。
明日以降になると、学校が始まってしまう。学校が始まると平日日中は授業、夕方は部活。休日は部活があるし、そもそも本社機能は休みになる。
社長と顔見知りではあるが、休日に本社を開けるように要求するという行為をする事はさすがに気が引けた。だから今日にしたのだ。
しばらく資料を漁ると、それらしき資料がいくつか出てきた。それらの資料をダンボールの中から引き出すと、テーブルの上にドサッと置く。
百香が腕時計を見ると、時間は10時15分を越していた。これ以上の捜索は時間がかかるし、電車に乗り遅れるリスクもある。
捜索はここで一旦終わりにして中を確認することとした。
たかが数冊の資料。コレだけでも、何か手がかりが見つかれば大きく前進することとなる。たかが数冊、されど数冊。情報はどこに転がっているか分からないため、案外侮れないのだ。
百香が取り出した資料は、会社要項、事故報告書、当該便の運行計画書だ。もしかしたら破棄されてるかもしれないと思ったのだが、とんだ取り越し苦労だったようだ。
運行計画書を見て、まず最初に気づいたのは、通るルートが最初から大崩海岸を通るルートだったということだ。
沼津から掛川に向かうのならば東名か国道1号だ。通ったからといって特に何も無い道だ。わざわざ遠回りして向かうほどでもない。そして、この道は国道150号の旧道。なぜ通ったと疑問に思うほどの道だ。
さらに、同じ方面に向かっている他の運行計画書を見てみると当該便を除いて大崩海岸を通るバスは1本も無かった。
そして、会社要項と第三者委員会による事故報告書を読んだ時、百香の中ではこれは仕組まれたことではないか、という考えが生まれていたのだった───
第三者委員会による事故報告書。ここには、崩れた道路は崩落一週間前に法面工事が終わったところであった。工事を施工したのは上条コントラクトという上条グループに所属している上条組の子会社だ。そして、この会社は崩落の事件後から経営難になり、今では組織解散している。
そして、狩野川交通の会社要項。会社要項には、狩野川交通は上条グループである北武蔵急行という大手私鉄の子会社である、北武蔵バスの子会社だ。
つまり、狩野川交通は北武蔵急行の孫会社。上条グループからすると曾孫会社である。
上条コントラクトと狩野川交通。どちらも上条財閥が関わっている。唯一の救いは狩野川交通が東部自動車に吸収されたことだろう。
東部自動車は沢木グループの一員でもあり、さらに上条グループと全く関係のない他社に吸収されたことで資料が全て東部自動車に移籍されたことでこの資料が残っていたのだろう。
上条コントラクトのように組織解散してしまったらおそらく、上条グループに証拠隠滅されていた可能性もあった。
何故この会社を吸収したのか疑問に思うが、今は素直に
資料を一通り見た百香の前に、一人の中年男性が現れた。
「よお、どうだ?渡辺の嬢ちゃん。目的の物は見つかったか?」
「
無常髭と少し汚れたツナギ姿からは想像できないが、彼が東部自動車の社長、その人であった。
「なあ、何で何も聞かずに資料室を解放したんだ?」
今回の資料室解放。社長は理由を何も聞かずに二つ返事で了承してくれた。理由を何も聞かなかったのは百香にとってはありがたかったが、何故今回も理由を聞かなかったのか、彼女はその訳が知りたかった。彼女の車の整備をしているのも彼の会社の自動車工場。車を制服姿で持ち込んでも、「整備を依頼されたらやるだけだ」と、何も聞かずに整備してくれた。今も整備は彼の工場に持ち込んでいる。今更教えてくれる希望もなかったが、ダメ元で尋ねた。
「お前が知りたいって言ったからだ。それだけだ」
「すまない・・・。恩に着る・・・」
今回も、同じ理由であった。同じ理由であったことに安堵した彼女はもう一歩踏み込んだ質問を彼に問いかけた。
「あと、なぜ狩野川交通を吸収したのか、差し支えなければ教えてほしい」
一歩間違えれば大事になってしまう質問。だが、彼は嫌な顔せずに答えた。
「他会社とはいえ、倒産したら無職になる。そうならないために買収した。これは、社員の家族を守るためさ。それ以上でもそれ以下でもない───」
その時の彼は、無常髭とツナギ姿には似つかわない社長の風格のある顔をしていた───
「それよりも、新幹線の時間は大丈夫なのか?」
「あっ、やっべ」
彼の言葉で、時計を見た百香はもうすぐでタイムリミットの時間に迫っていることに気付いた。
「ありがとうな、
百香は資料をすぐにコピー機で資料を全てコピーした後にスクールバックに押し込んだ。
「運転、気をつけろよな」
「ああ!」
彼女はスクールバッグを持ち、資料室を飛び出した。
時間的に余裕が出てきたので1話だけ番外編ストーリーを書きたいと思います
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渡辺百香と前世の娘
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スクスタ時空─スクフェス!─
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百香とルビィの入れ替わり!
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スクスタ時空─虹学・Aqours対決!─
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ロリ辺百香