「もう少しだったのにね」
帰りの新幹線、誰かがポツリと呟いた。
そう、Aqoursは3位だった。勝ち進めるのは2位まで。予選敗退。
「でも、次もあるよ」
その言葉にAqoursは賛同する。しかし、百香にとってはこの後に待ち構える〝廃校〟という試練にAqours全員で立ち向かわなければならないと思い、あまり楽観視はできなかった。
もし、ここでAqoursが決勝まで行けていたら───
いや、過ぎたことを悩んでも仕方ない。今現在でも問題は山積みなのだ。将来像が浮かばない百香は、ため息をついた。
そんな中、百香のスマートフォンがバイブレーションを発した。
その日の夜、百香は自室のベランダで沢木と通話していた。新幹線で発したバイブレーション、それは沢木からの〝電話をするように〟との呼び出しだった。
しばらくたわいもない世間話をした後、ボディーガードの話になった。百香が新静岡行きを辞めたことでボディーガードを百香の近辺に常駐させるという話となった。
もちろん、怪しまれるためホームステイする留学生という名目で来るらしいが。
『受け入れ、大丈夫か?』
「かなり前から母に話していたので大丈夫です。それよりも──」
『来るのは誰かって?』
「っ・・・!」
百香が一番気になっていたことはそこだった。が、沢木もそれには気づいていたのか間髪入れずに答えた。
『信頼できるヤツだ』
安心しろ──
沢木はそう言い、終話した。
誰が来るのか、不安に思いながらも百香は就寝したのだった。
2016年9月1日8時10分
浦の星女学院校長室。
始業式の最中、百香は校長室に呼び出されていた。生徒ではほぼ入ることの無いこの部屋。訪れる生徒は大抵何かやらかした人が来るのだが、ももの場合はなにかやらかした訳では無いから安心して欲しい。
百香が入室したのを確認した校長、志田川は椅子から立ち上がり、百香に歩み寄ってきた。
「ごめんね、急に呼び出して」
「いえ。それで話って何です?」
「今日から留学生が来るでしょ?」
「ああ、はい」
〝なんだ、そんなことか〟と、百香は思った。
留学生が来るかもしれないことは終業式の時に話があったし、百香自身には夏休み中に新静岡行きの話と一緒に来た話であり、既に周知のことだった。
しかし、志田川が呼び出したのはそのような事ではないらしい。志田川は、自身のデスクから封筒を出して百香に手渡した。
「これは・・・」
赤色の富士山と白抜きのQマークが描かれている茶封筒。どう見ても重要そうなものには見えない。
「その留学生のホームステイ先として渡辺さん宅を使わせていただいたからそのお礼」
中を確認すると、山梨にある絶叫系のアトラクションが多い遊園地のチケットが10数枚入っていた。
「良いんですか?」
「いいのいいの。急に決まったのに受け入れてくれたから・・・。それに、ここの職員全員絶叫系苦手だからね」
「ありがとう、ございます」
最初は申し訳なく思い、あまり受け取る気にはならなかったのだが、からからと笑う志田川を見た百香は、半ば諦めた感じで受け取った。
「他の生徒には内緒ね」と、志田川は笑いながら言った。もしかして〝Aqoursの全員と留学生で行ってこい〟ということなのだろうか。
「しかし、よく廃校になる学校に留学しに来るねぇ」
「物好きも居るんですね」
志田川の呆れたような態度に、百香は内心怒りを覚えながらも賛同するような意見を言う。
ここからも話が続きそうな感じがしたのだが、運悪く予鈴が鳴り、会話は終了となり百香は自身の教室に戻ることになった。
校長室の戸を開けようとした時、ふと百香は何か思い出したかのように振り返った。
「あ、私達Aqoursは浦女を廃校なんかにさせませんよ。絶対に阻止してみせます」
そう言い放つと、百香は戸を閉めて自身の教室に歩いて行った。
1年A組教室───
百香が中に入ると、百香の席の横にもう1つ座席が用意されていた。
教室の中は留学生の話で持ち切りである。
「あ、百香!」
「校長に呼ばれたんだって?」
「何やらかしたぁ?」
そんな中、数人のクラスメイトが百香に気づき、近づいてきた。校長に呼ばれた事も、また話題として上がっていたらしい。
百香は、志田川から受け取った封筒を見つからないように隠した。
「いや?留学生ウチに来るからその話」
「え?マジで?」
「金髪巨乳美少女が!?」
「毎日揉み放題じゃん!」
1人変態が紛れ込んでいる。
「誰だ揉むとか言った奴。スカイウォークに吊るすぞ」
百香のこの言葉に〝ちえっ〟という声が聞こえてきた。変態な同級生に頭を抱えそうになったが、その瞬間、手が百香の胸に伸びてきた。
「痛ったァ!?」
「当たり前だバカ」
百香は、胸を揉もうとしてきたクラスメイトの手を叩き落とした。留学生を揉めないなら目の前の百香を揉もうという算段だろう。
渡辺山脈に登らせてくれてもいいのに・・・と言いながら百香の横を通り過ぎて行った。
ようやく済んだか、とホッとしたが───
「スキあり!」
またもや揉もうとしてきたため、直ぐに横に避けて腕を叩いた。
「二度も叩いた!親父にもぶたれたことがないのに!」
「お前何歳だよ」
「はいはい、席ついて──」
そんなこんなしていたら、担任が教室に入ってきた。どうやらSHRの時間らしい。これにてお胸騒動は終わりを迎えた。
「えー、始業式でもあった通り、このクラスにアメリカからの留学生が来ます」
担任のその言葉の後に、廊下から浦女の夏制服を着た留学生が姿を現した。留学生の姿を見た瞬間、どこかで見たような違和感を感じた。
「ん?」
「どうしたずら?」
「いや、まさかな・・・」
花丸に心配されたが、百香は知り合いなんかが来るわけが無い、他人の空似だろうと思い、もう一度教卓を見た。
───やっぱりどこかで見たことがある。
「はじめまして。シャーロット・ガルリアです。よろしくお願いします!」
自己紹介、名前でピンと来た。いや、ピンと来てしまった。
「あ───────っ!」
百香の叫びが脳内にこだました。
時間的に余裕が出てきたので1話だけ番外編ストーリーを書きたいと思います
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渡辺百香と前世の娘
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スクスタ時空─スクフェス!─
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百香とルビィの入れ替わり!
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スクスタ時空─虹学・Aqours対決!─
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ロリ辺百香