IS 〜アメリカの女〜 作:かきく
どうぞ
なぜこんなことになってしまったのだろうか……
そんなこと考えても意味はないのに現実逃避にぼんやりと耽る。
周りを見渡すと隣を除いて見る限り女子生徒のみである。
ここはIS学園、去年まで女子校であった日本にあるIS操縦者育成用の特殊国立高等学校だ。
前より少し伸びた金髪と今までかけてこなかった丸縁のメガネを鬱陶しく思いつつ、首元にある黄色のチョーカーをひと撫でする。
やっぱり違和感あるな、これら全部とっぱらってしまいたい。
ついでにこの女子制服、というよりスカートも着替えてしまいたい、散々着せられたせいで若干違和感を感じなくなった自分に恐怖している。
教壇の上に立つ先生の話をここ1ヶ月半で叩き込まれた日本語の知識を総動員し聞き取る。
あぁ、本当になんでこんなことになったのだろうか……
* * * * *
IS、正式名称「インフィニット・ストラトス」
宇宙空間での活動を想定し、開発されたマルチフォーム・スーツ。
ISはその攻撃力、防御力、機動力は非常に高い究極の機動兵器で特に防御機能は突出して優れており、シールドエネルギーによるバリアーや「絶対防御」などによってあらゆる攻撃に対処できる。
「白騎士事件」によって従来の兵器を凌駕する圧倒的な性能が世界中に知れ渡ることとなり、宇宙進出よりも飛行パワード・スーツとして軍事転用が始まり、各国の抑止力の要がISに移っていった。
ただし、そんな万能な兵器に思えたが致命的な欠陥があった。
__ISは女性にしか使えない。
この欠陥の原因はどんなに研究を重ねても解明されず。その結果女尊男卑の世界が出来上がった。
それから数年、世界は、完全に女尊男卑に染まっていた。
法律でも、税制でも、就職でもあらゆる点で女性は優遇措置を受けていた
政治の世界でも、女性の発言権は大きく増大し女性権利団体が幅を利かせるようになった。
一方、それまで国防や経営、政治を担ってきた男性は急速に力を落とし、地位を追われることとなった。
彼らは再就職しようにも当てがなかった。男性である、というだけで不利を背負ったのである。
しかし、そんな世界にも変化が起きたのだ。
『世界初!!男性のIS操縦者が日本に?!』
そんなニュースが世界中を駆け巡った。
男性権利団体は歓喜し、女性権利団体は激怒した。
そして全世界各国の男性に対しISの適正テストが行われることとなった。
* * * * *
まぁ、そんなことは自分には関係ないんだけどね。
そう一人思いながら列に並び、自分の順番を待つ。
俺の名前はオリバー・キャンベル。
身長は平均を下回り156センチ、肩までかかる野暮ったい金髪、喉仏の自己主張が乏しく、なで肩、淡褐色の瞳、コミニケーション能力はそこそこ、見た目のせいでからかわれることもあるが、9月から始まった学校生活それなりに楽しんでいる。そんな
周りの人間はみんなどこか浮かれたように待っていて、友人同士で楽しそうに「もし俺がなったらどうしよう」「バーカ」「IS学園いけんじゃね」「世界各国のエリート揃いだぜ」なんて笑いながらふざけあっているが、そんな簡単になれるのだったら初の男性操縦者発表から1週間経った今世界各国で見つかっているだろう。
そもそも、もし選ばれたとしても幸せな未来が待っているとは思えないだよな。
よくてISの操縦者として国に仕えることになるか、悪くて__こっちの方が確率が高いが__なぜISが使えるか人体実験されることだろう。
件の男性操縦者はなんでもあの織斑千冬の弟だそうで、バックがあまりに強力なせいか人体実験といった事態にはなっていないらしい。
……そりゃ生身でISに勝てると噂されるような初代ブリュンヒルデを敵に回したくないだろう。
「オリバー・キャンベルくん」
「……はい」
そんなことを考えていると自分の番が回ってきた。
個室に通され、部屋の真ん中にあるアメリカの量産機『タイクーン』に触れるように指示される。
指示する女性の声は些か疲労しているようだった。
そりゃそうだ、ここら辺の男性全員調べているですもんね。お疲れ様です。
そんなことを思いながら、さっさと済ませようと手を伸ばす。
すると想定外の事態が起きてしまった。
頭の中に情報が流れ込んできて気づいたら『タイクーン』を身に纏っていた
__あぁ、人生終わった。
* * * * *
その後、あれよあれよと事態は進み黒服の人たちが現れ、どこかへと連れて行かれ家族と面会し、あまりの0の多さに卒倒しそうになるほどの小切手を渡され、家族と縁を切られ国の要人となった。
あまりの急展開に頭がフリーズしていたが、いくつかの身体検査を行い、4月から日本にあるIS学園に入学することを伝えられた。
自分の存在をお偉いさんがたはどうするかどうか悩んでいたようだが、公表しないことに決めたらしい。
どうやら自分がなぜかISを使えるかを他国に秘密裏に解明し、自国の男性のみISを使えるようにし軍事面で他国と差をつけることにしたらしい。
ならなぜ自分を人体実験しまくる方針ではなく、IS学園に入れるか疑問に思ったのだが、どうやら俺の人権を尊重する派閥とそうでない派閥があるらしく、さすがにアメリカの内部では守りきれないと考えたらしく手を出せない場所へと送ることにしたらしい。
その結果、俺は女装してIS学園に通うこととなった。
いや、なんでだよ?!もうバラしちゃえよ!!
俺は学園生活が始まるまで、日本語の勉強、ISの操縦訓練、データ採取、女性としての振る舞い方を勉強することとなった。
……最後のだけは絶対に不要だろ。
そんなこんなで俺の生活は激変したのだった。
* * * * *
そんなこんなで幕を開けてしまったIS学園初日
一人一人自己紹介をしていくと、織斑一夏の番となり視線が集中していたが、名前を言ったのみで席についてしまい大いに困惑させていたが、織斑千冬の登場によって女子生徒が騒ぎ出しそんな雰囲気は一瞬で吹き飛んだ。
おかしい、日本の女性は大人しいと聞いていたんだがこれじゃ動物園じゃないか……
そう愕然としていると、織斑先生による「ここは軍隊か」と思われる挨拶によってSHLの時間は幕を閉じた。
……あの、俺自己紹介してないですけど……。
1時間目の授業がおわり十分間の休み時間となる。
俺はいつ軍隊に入隊したんだろうと思うほどのハードスケジュールで座学や実技を叩き込まれたので今のところ授業には問題なくついていけている。
織斑一夏はサムライっぽい1人の女子生徒に連れて行かれてしまい、話しかけることができなかった。
本国から髪の毛一本でもいいので織斑一夏のDNAを入手するように言われており、そのためにも少しは親しくしておこうと思ったんだが……。
ちなみに織斑一夏のDNAを入手できたなら俺1人より正確なデータが手に入るかもしれないので、俺に対する負担や実験が減る可能性が高いと本国の研究所からは言われている。
暇になってしまった。友達も居ないし、どうしたものか、と思っていると袖の余った女の子とそのお友達が喋りかけてくれた。
「ねぇ〜ねぇ〜、おりむーとあの女の子ってどういう関係だったかわかる?〜」
「ほ、本音ぐいぐい行くわね?」
なるほど、織斑一夏とあの女子生徒について気になるのか。
おりむーとは織斑のことだろうか?
連れていかれるまで誰が話しかけるか牽制しあってたほどだし、みんな気になっていたのだろう。
「私も話が聞こえた程度で詳しくは知らないんです。聞いた限りここに来る前の知り合いぽかったですよ。織斑くんが下の名前で呼んでましたし」
そう俺の喉から女の声が出て説明する。
俺のISは待機状態がこのチョーカーであり、女の声が出るように変声機能がついているのだ。
それ以外にも特殊なエクステをつけ長髪に見せたり、大きなメガネで顔の輪郭をごまかしてる。
「なるほど〜」
「まさかIS学園前から知り合っている人がいるとはね。あ、私谷本癒子、よろしくね」
「布仏 本音だよ〜、よろしくね〜」
「オリヴィア・キャロルです。アダムスワークスのテストパイロットです。よろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げる。
当然偽名である。と言っても本名をもじった程度であるが。
アダムスワークスとはアメリカ内でも有数のISを取り扱っている大企業である。
そこと政府が連携し俺用に機体を作ってくれたのである。
お互いに自己紹介が流れてしまっていたので名乗りながら挨拶をする。
「アダムスワークスってアメリカの?」
「はい、現社長の方と遠縁の親戚でして、データの採取の為に現在試験機を貸してもらっています。」
「もしかして、首のチョーカーが試験機〜?」
「はい、チョーカーなんて趣味じゃないんですけどね。まるで首輪されてるみたいで」
これは政府と企業が作った嘘設定だ。さすがになんでもない一生徒に専用機は持たせられないし、代表候補生というには実力不足なんで、自衛手段としてISを持たせるための建前である。
それからしばらくしゃべっていると織斑一夏とサムライガールが帰ってきたが、話しかけるにはまた硬直状態の雰囲気にクラスが包まれてしまい、手をこまねいていると2時間目の授業が始まってしまった。
2時間目が始まり山田先生の解説の元授業が進む。
あぁなんて分かりやすい解説だろうか、軍隊式教育と違ってバカみたいなハイペースでもないし。
本国の先生(というか、あれはもう教官と呼ぶべきだろう)は座学1日目に電話帳レベルのこの参考書を机に置き「猶予は10日だ、死ぬ気で覚えろ」の一言で授業が始まったからな。
なんだ俺は犯罪者か。
そんな回想をしながら授業を受けていると、隣、織斑一夏からじーっと視線を感じる。
一体なんなんだろうか?まだ何もしていないし、話しかけてもいないんだが。
「え、えっと、どうかしましたか?」
「えっ……あ、あのさ今までの授業ちゃんとわかってるのか?」
ん?なんだ、新手の挑発だろうか?一応必読と書いてあった参考書の授業なんだが?
まさか読んでないわけでもあるまいし。
質問の意図がつかめないがきっちり理解していると答えると「そ、そうか」と顔を前にむけた。
なんだったんだろうか?と思っていると、山田先生が今のやりとりを見ていたらしく織斑一夏にきちんとわかっているか質問し、全くと答え、その上教科書を捨てたと回答した。
なんと、真性のバカなんだろうか、呆れたように織斑先生に注意され出席簿で殴られ(あれはなんの素材でできているんだろうか、少なくとも紙では起こりえない衝撃な気がする)「7日で覚えるように」と言われていた。
ドンマイ、織斑一夏。10日でもしんどかったぞ。
そう思っていると隣の俺が教科書を見せるようにと言われて仕方なく解説の補足をしながら見せる。
世界初の男性操縦者と聞いたからどんな奴かと思ったがなんというか一般的な人だなと思い、少し同情と親近感が湧いた。……少し抜けてるが。
2時間目も終わり休み時間となると織斑一夏が話しかけてきた。
「さっきの教科書見せてくれてありがとな、補足までしてくれて」
「いえ、お困りのようでしたし基礎とはいえISの授業は難しいですからね。初めは私も苦労しました」
ほんとに地獄を見たからな、専門用語のオンパレードで教員は悪魔だったし。
「私、オリヴィア・キャロルと申します。アメリカ出身です。オリヴィアとお呼びください。よろしくお願いします」
「おう、俺は織斑一夏。一夏でいいぜ」
「知っていますよ一夏。むしろ、この学園内で知らぬ人などいなのではないでしょうか?」
そういうと織斑一夏、一夏は困ったように笑った。
それはそうと周りからの羨望と嫉妬の視線が突き刺さってくる。特にさっきのサムライガール。
いや、恋愛目的じゃないから、欲しいのはDNAだけだから安心して欲しい。
そう会話してると金髪の生徒が割り込むように会話に入り込んで来た。
ザ・女尊男卑といった感じの態度ですこぶる好感度は低かったのだが、なんでもイギリスの代表候補生らしい。教員も倒したようで実力も申し分ないようだった。
さすがに一夏に「代表候補生ってなんだ?」と聞かれたときはみんな絶句してしまった。
「国家代表IS操縦者の候補生、つまりエリート」というと一夏は納得し、金髪__セシリア・オルコットも引きながらフリーズから復帰してもとの様子に戻り高飛車な感じで演説を続けていた。
言い方はアレだったが「ISについて教えてあげてもいい」というような発言をすると「俺はオリヴィアに教えてもらうよ」と一夏が発言しやがった。
おい、巻き込むな。
それ以降も一夏にオルコットは噛み付いていたがチャイムが鳴り流石に帰っていった。
全く騒がしいものだ。
3時間目が始まり教壇に立つのが山田先生から織斑先生にかわっていた。
なんでもISの武装についての授業らしい。
だが授業に入る前になんでも今度クラス対抗のトーナメントがあるらしく、その出場者でもあるクラス代表を決めるらしい。
クラス代表、面倒の予感しかしない。自薦・他薦問わないらしいがやりたい人間なんているのか?いや世界各国の才女たちだ、行動意欲も高いかもしれない。
「はいっ。織斑くんを推薦しますっ!」
ただの
いや彼女が例外かもしれない。
「私もそう思います!」
やはり
おかしい、世界各国の才女じゃないのか?IS学園のイメージが音を立てて崩れていく。
一夏はどう思っているのだろうかとちらりと覗くとどうやらたった今現実を認識したようで、猛抗議を始めた。
がしかし、織斑先生は取りつく島もなく、代表が一夏に決まる雰囲気になる。
……さすがにかわいそうだな。
「織斑先生」
「なんだキャロル」
「私、オルコットさんを推薦します。クラスで唯一の代表候補生ですし」
え〜わかってないな〜みたいな雰囲気が流れ始める。
いえ理屈はあってるでしょ。
どうせなら勝ってもらいたいし。
それはそうと勢いづいてオルコットが喋り始めた。
……それはもう想定以上に。
やれ男が代表なんぞ恥だ、屈辱だ、やれ実力が大事だと長々と喋り始めた。
終いには日本についても否定しはじめたが、流石にこれは一夏もキレて口論となった。
そして、代表を決める為に決闘となった。
……なんでや、多数決とかもっとあったろ
一夏はハンデも蹴ってしまい、代表候補生と純粋に実力勝負となった。
俺はISについて一夏に教えることとなった。
なんでや。
放課後
そこそこ人が多い教室の中一対一で織斑一夏相手に授業の復習と解説をしていた。
なかなかの集中力である。
「ところで一夏。先ほどまでとは随分と顔つきが変わりました。何か心境に変化でも?」
そうさっきまでの織斑一夏はどこか嫌々といった表情で授業を受けていたが、今はわりと真剣な顔つきで勉強をしている。
「ん?あー、さっき決闘の約束しただろ、そこで無様に負けるのは嫌だなって思ってさ。やっぱりやるなら勝ちたいだろ」
と清々しい表情で言われた。
なんというか、本気で勝つつもりだろうか?代表候補生相手に。
まぁ男らしくてかっこいいとは思う。自分が相手の立場なら無理だったと思うし。
三年間同じ学校に通うし、織斑一夏は知らないが同じ男子生徒のよしみだ。無様には負けないようにくらいには面倒見てやるか。
ネタバレ?
優しい(同情)
思いやりがある(打算)
嫉妬をしない(惚れてないから)
暴力を振るわない(疲れるから)
素直(友人としか思ってないから)
可愛い(女装)
ヒロインじゃないか(錯乱)
感想ください