IS 〜アメリカの女〜 作:かきく
『』は英語です
どうぞ
しばらくは二人で突き刺さる視線の中で授業の復習をしていると山田先生が入ってきた。
なんでも一夏の寮での部屋が決まったらしく、それを知らせに来たらしい。
……にしても距離が近いな、IS学園出身ということだから男性に免疫がないのか、出会いの機会がないからなのか色目使っているようにしか見えない。
う、羨ましくなんかない!
「なぁ、オリヴィア、今日はこの辺にして寮に行かないか?」
「いいですよ」
「よし、じゃあ行くか」
2人とも荷物をまとめて教室を後にし、寮へと向かった。
* * * * *
相変わらずこの学園は新設されて間もないとはいえ、綺麗だな。
そんなことを思いながら夕暮れの道を歩く。
「そういえばオリヴィア」
「はい?」
「今日はありがとな、助かったよ」
「いえ、先生から頼まれたことですので。それに一夏から声をかけてくれて助かりましたよ、みなさん学園唯一の男性と喋りたそうにしてましたし、すこし得した気分です」
一夏にそういって微笑みかける。
実際助かったのは本当である。初日に交流がもてるのは最初のうちは面倒だと思ったがよくよく考えると今後に役立つかもしれんしな。
データが取りやすくなるとか。
「いや、みんな珍しがってるだけだと思うぞ」
困ったように頬をかく一夏。
まぁ珍しがってるのも事実だろうが、実際イケメンだからなこいつ。人柄も良いし。
そんな一夏の様子をクスクス笑っていると若干照れたように話題を切り替えられた。
「と、ところで俺の部屋は1025なんだけど、オリヴィアはどの部屋なんだ?」
「私の部屋ですか?ええと確か……」
事前に配られた紙があったはず……。
ゴソゴソとカバンを漁り部屋割りが書かれた紙とメモを探す。
「ありました。……はい、こちらですね」
部屋の番号を書いたメモを渡す。
「ありがとな。意外と近いな。もしわかんなかったこととかあったら部屋に行っていいか?」
「ええ、いいですよ。気軽に遊びに来てくださいね。ただしノックはキチンとして下さいね」
ぐいと近づき見上げるように顔を覗く。
本当にノックはキチンとしてくれ、部屋の中でのラフな格好を見られたらバレる可能性があるのだ。ここら辺はしっかりと言っておかなくては。
流石に何の前触れもなく女性(少なくとも一夏からしたら)の部屋を開けることはないと思うが念には念を入れておく。
「お、おう」
夕日で赤くなった顔を縦に振るう。
そうこう話していると寮に到着した。
これまた小綺麗な外装である。
予算とかどうなってるんだろうか?
「そんじゃ、また明日」
「ええ、さようなら」
別れの挨拶を交わして一夏と別れた。
* * * * *
そして足早に自室へと向かってドアを開ける。
部屋はまるでホテルの一室のようである。下手すると実家の俺の部屋よりも快適そうだ。
ISの操作画面を呼び出し部屋全体をスキャンする。
…………よし、盗聴器や盗撮器の反応はないようだ。
「ふぅううう」
ISの変声機能をオフにしてベットへダイブする。
ようやく自分の声に対する違和感が消える
そのままごそごそと制服を脱ぎISスーツになる。
ついでに髪のエクステを収納してばたりと体を布団に沈める。
俺のISスーツは下は膝上ほど、上は7部丈に首まで覆われた極力肌の露出を避けたものである。
ちなみに胸のあたりには微かながらの膨らみが作られている。
製作者曰く「少しでも胸がないと不自然」とありがたいお言葉を頂いた。
感覚はないため本当にただの飾りである。
『ああ、ようやく一日が終わった〜、疲れた……』
英語でつぶやきISスーツをぽいと脱ぎ捨てる。
下着を履き、スウェットに身を包む。
あーー疲れた本当に疲れた。
女性しかいない状況とその状況での女装で精神的に疲弊したのだ。
本当に織斑一夏には同情する。
異性に囲まれた上に好奇の視線に晒されて、しかも全く知らない兵器について学ぶのはかなりのストレスだろう。
『それにしたってめんどくさい、帰りたい本当に平穏な日々に帰りたい』
ゴロゴロと転がり文句や愚痴を喚き散らす。
どうせ防音がしっかりしているのである、何言っていたって誰にも聞こえまい。
『あー、やだなー先生は鬼みたいな感じだし、本国の担当者も狐みたいだし』
『やっほーオリバーくん、狐みたいと言われた担当者だよ』
『ひぃい!』
びくりと体を震わせベットから飛び起きる。
なんで?こっちからはまだ連絡してないはず!?
スクリーンが眼前に現れ、1人の女性の姿が映し出される。
本国でのトラウマツートップのうち1人である担当者だ。
もう1人は当然悪魔のような教官である。
『指定した時刻になっても連絡がなかったから先にしちゃった』
ハートが語尾に見えそうなほど甘ったるいボイスである。
声に劣らずグラマラスな甘いボディをしているが、外見に騙されてはいけない、こいつは狐だ。
『す、すみません。織斑一夏に勉強を教えていまして』
『あら、予想よりも早く接触できたのね、色目でも使った?』
『使うか?!いえ、何が悲しくて男が男に色目使わなくてはいけないんですか!』
『普通に可愛いわよ、貴女の女装姿』
『前も聞きましたが嬉しくないです……』
ため息をついて画面の女性をジト目で見る。
『でも本当はその部屋にいるのは織斑一夏に
『何度も聞きましたよ、それ』
『まぁ、結果さえ出してくれれば良いのよ』
『うぅ』
何が悲しくて女の子の園で男に迫らなくちゃいけないのだ。
この世は理不尽である。
『ISのデータ収集もしっかりね、試験機の稼働も』
『はい、了解です』
『ついでに織斑一夏のDNAもね』
『……はい』
『髪の毛と言わずに精液でも良いのよ』
『俺が嫌だわ!!!』
クスクスと笑いながら通信が切られる。
なんておぞましいことを言うんだあの女は。
ブルリと体を震わせ再び体を布団に沈め、大きく息を吸いゆっくりと溜息を吐く。
あぁ、お腹が空いた。ご飯作ろう。
冷蔵庫を見て献立を考える。
この部屋は元々先ほどの通信通りハニートラップの子の為に用意されており一人部屋であるので気楽なものである。
……オムライスでいいや。
作った一人分の飯を食べて、その日は早々に夢の世界に旅立ったのであった。
* * * * *
朝7時、適当にシリアルと生野菜を洗って切った簡単なサラダ、茹でたウインナーを食べる。
正直朝はそんなに入らないしこんな感じの簡単なものが楽で良いんだよね。
朝ごはんを食べて登校の準備を始める。
ISスーツに身を包み胸部の膨らみをオンにして鏡をみるとパッと見だと、自分で言うのもなんだがそこそこ可愛い中性的な女の子のようである。
そんな容姿を嘆きつつISからエクステを展開して、制服を着てスカートのチャックを上げた。
最後に教わったメイクを薄く施して変声機能をオンにしIS学園の生徒オリヴィア・キャロルちゃんの完成である。
この一連の動作に対してスムーズになってしまった自分が怖い。
女装に手慣れた男子高校生って一体……。
いや、深く考えないようにしよう。
思考を切り替えて今日の授業の教科書を確認する。
ふむふむ、今日の1限はISの基本特性と機動についてか、ここら辺は最初理解しづらかったなぁ。
「何事も基本が大切だ、基本がなっていないと応用は望めん」と本国の教官も言っていたし、たしかどっかに自分なりに分かりやすくまとめたノートがあったはずだ。だいたい覚えたし一夏にやるか。
そんなことを考えながら一年一組へと向かった。
*****
持って来たノートを手渡すと「おぉ、サンキュー!助かるよ」と歓喜の声を上げた。
順調に上手く仲良くなっている気がする。
不自然にならない程度にこれからデータを集めていくのに役立っているはずだ。
そんなこんなで授業は進み、ノートでも補足しきれなかったところは授業中に教えて時間は過ぎ去っていった。
そして今は休み時間
織斑先生が颯爽と現れた。あ、一夏が叩かれたぞ、また何かいらんこと言ったんだろうか?
「織斑、お前の専用機が準備されている。試合には間に合うはずだ」
「ええ?!」
「せ、専用機⁈この時期に?」
「しかも一年生に!?」
「いいなー、私も早く欲しいな」
ほう、専用機か、本国に連絡することと取ってくるべきデータがまた増えた。
にしても専用機かおもいきったことするなあ。
破格の待遇(男だからか)に驚いていると一夏の頭の上に疑問符を幻視した。
「一夏、簡単に説明しますと、限られた数しかないコアなので自分専用の機体を持つことはとても珍しいことなんですよ、教科書の6ページに書いてあります」
俺が言ったページを読み、説明を聞いて理解したような表情をみせる一夏。
それにしたって実験機とはいえ専用機か、まるで俺の機体のようだな。
教室中が湧き活気付いていた。
その上篠ノ之さんが篠ノ之束博士の姉妹と織斑先生が明かすと更に教室のテンションは上がる。
がしかし、どうやら余り姉妹仲がよろしくないようで急に大声を出すと空気が変わりシンとした。
……本国の人間は篠ノ之箒が篠ノ之束の妹と知っているのだろうか?女の姿のまま篠ノ之箒を落とせと言われたら卒倒する自信があるんだが。
授業開始のチャイムが鳴り、わずかに気まずい空気の中で次の授業が始まった。
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作者の原作知識は8巻くらいとアニメのみです。