元・英雄殺しがダンジョンにいるのは間違っているのか? 作:黒犬@ダクソ民
金髪の少年の剣が青い髪の狂戦士の胸を貫く。
「馬鹿な…この俺が、敗れる…だと…?」
「ああ、これで終わりだ。バルバトス…」
「カイル・デュナミス…!俺は…貴様のような英雄ごっこに敗れるというのか…?そうか…こういう結末か…所詮俺は英雄のなりそこない…。俺のやってきたこそ事が…英雄ごっこだということか…フフフ…なんとも滑稽ではないか」
「ああ、確かにお前は英雄になれなかった男かもしれない。だけれどその力は本物だった」
「なん…だと…」
「フフフ…お前に認められるとはな…。いや、俺は本当は誰かにこの力を認めてほしかっただけかもしれない」
「じゃあな、バルバトス。次があるなら今度は道を誤るなよ…」
「ではな、カイル・デュナミス。いや、『英雄』よ」
そしてバルバトスは神の目に飛び込んだ。
そこで彼の意識はいったん途切れる。そしてそのあとカイルたちの手によって歴史は巻き戻る。そして青い髪の狂戦士の蘇生自体がなかったことになった、かに見えたが…。
「ん…?ここはどこだ…?」
気が付くとバルバトスは洞窟に倒れていた。
「どういうことだ…?俺はカイルに殺されたはず…傷もなくなっている?それに、ここはどこだ?俺は神の目に飛び込んで死んだはず…?」
彼は困惑していた、確かに神の目に飛び込んで死んだと思ったら。見たこともない洞窟で倒れていたのである。これで混乱するなという方が無理というものだろう。
「また、エルレインが俺を復活でもさせたか?だが、ここは神殿というわけでもないしな」
すると、奥の方から…
「ぶもおおぉぉぉ‼」
叫び声をあげながら二足歩行の牛が走ってきた。そしてバルバトスを視認すると襲い掛かってきた。
この世界ではミノタウロスと呼ばれるレベル2のモンスターである。レベル2ではあるが強くレベル2の冒険者でも苦戦する。レベル1はおろか神の恩恵を受けてない人では逆立ちしても勝てない相手ではあるのだが…。
襲い掛かった相手が悪かった。
「屑が…」
一撃。まさしく一撃であった。無造作に振り上げた斧の一撃でミノタウロスは真っ二つになり断末魔をあげる暇もなく塵となった。そしてそこには小さな石が転がっていた。
「なんだ?この雑魚は?切り飛ばしたら石になりやがった」
「ぶもぉぉぉぉ‼」「うわー‼」
近くの脇道からミノタウロスと少年らしき声が聞こえてきた。
「次から次に…?引き裂いてやる!」
脇道に入ってすぐに斧を振った。そして、斧から放たれた衝撃が波となってミノタウロスを襲う。殺・魔神剣と呼ばれる技であり。バルバトスの基本技である。
「ぶるぉぉぉぉ…」
そのまま、ミノタウロスは上半身と下半身が別れ倒れた。
「所詮雑魚か…何やら人間らしい声も聞こえたが…」
ミノタウロスの居た先を見るとミノタウロスの血を浴び真っ赤になった少年が呆然とした顔でこちらを見ていた。
「小僧、大丈夫か?ところで聞きたいのだが「こ」…こ?」「怖かったー‼」
少年はそのままへたり込んでしまう。バルバトスはあきれたように話しかける。
「おい小僧、ここはどこだ?」
「えっ?ここ、ですか?五階層だと思いますけど…」
「そういうことを聞いているのではない。この洞窟はどこなんだと聞いている」
「えっと、ダンジョンですけど?」
少年は不思議そうにこちらを見ている。
(どういうことだ?生きていただけではなくけがもなぜか治っている上に知りもしない場所に飛ばされている?訳が分からん)
唸るように考えるバルバトス。そして後ろから新たなミノタウロスが襲い掛かる。
「うううううう、後ろぉぉぉ!」
しかし、ミノタウロスが掴みかかる直前で逆にバルバトスに掴まれてしまう。
「へ?」
「俺の背後に立つんじゃねぇぇぇ‼」
そのままミノタウロスは地面に叩きつけられ絶命する。
「素手で倒してるぅぅ!?」
さっきまで自分の剣で歯もたたなかった相手を投げるだけで絶命させる男の力に驚く。そして同時に男の姿に憧れた。斧の使い方はもちろん素手でモンスターを屠れる力に憧れた。
「この牛もどきが俺に勝てるとでも思っていたのかぁ? ふぅ…まあいい。おい小僧」
「は、はいぃ!」
「ここの出口まで案内してくれないか?」
「わかりましたぁ!」
「その代わりこの石みたいなのはお前にやる、そこの牛みたいなのの角もやろう。ちょうど落ちていたからな」
「えっ!? この魔石やドロップアイテムをですか?いいんですか?」
「いらん、こんな石ころ。代わりにしっかりと案内を頼むぞ。小僧」
「はい!あっ、僕の名前はベル・クラネルです」
「そういえば名乗ってなかったな。俺の名前はバルバトス、バルバトス・ゲーティアだ。よろしく頼むぞ、ベル」
「はい、バルバトスさん!」
そして二人は出口に向かって歩いて行った。
そんな二人を陰から見つめるものが一人。ロキファミリア所属のLv5冒険者「剣姫」アイズバレンシュタイン。実はバルバトスは気づいていたが敵意がないため放っておいたのだ。
「あの人の強さは私たちのと違う…?」
数奇な運命により出会った英雄に憧れる少年と元・英雄殺し。ここから二人の不思議な物語が始まる。
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